【巨額損失の怪】オリンパス1000億円の損失計上
◆ オリンパスは過去の財テク失敗による最大1350億円もの損失を過去の決算に計上することになった。訂正報告書によると、07年3月期連結決算の利益剰余金を
1172億円減額修正した。純資産も大きく目減りし、自己資本も激減したが
オリンパス9月中間決算:
連結純損益、323億円の赤字=債務超過は回避
時事通信
売上高は0.7%減の4145億円、経常利益は50.8%減の94億7600万円。自己資本比率は11年3月末時点の11.0%から4.5%に低下した。オリンパスは同日、07年3月期以降、過去5年分の決算内容を修正する訂正有価証券報告書を関東財務局に提出。東証は報告書を精査し、同社株の上場維持または廃止を判断する。同社は、過去の巨額損失隠しの発覚を受けて中間決算の公表を延期していた。
林オリンパス社外取締役の「密」
「獅子身中の虫」が社外取締役という悪い冗談。
これが日本式コーポレートガバナンスの実態か。
[ ファクタ 2011年12月号 BUSINESS ]
それを社名「アングラム」の由来とした個人企業のオフィス(日本橋)に電話してみた。
「林純一さん、ご在席ですか」。
「いません、誰にも会いたくないと言ってますから」。ガチャン!
間違いなく本人だった(笑)。
オリンパスの社外取締役である。
慌てて居留守を使った理由を本誌は知っている。
◇ マイカルCMBSの裏側
証券化のポイントは格付けだ。経営不振と内紛の続くマイカル本体の格付けはBa3だが、優良店舗を抜き出し3ランク上のAaの格付けを得て「優良証券」となった。社債は上から格付け順に輪切りにされて投資家に売られた。残った担保価値の劣る30億円分が優先株に構成され、それをオリンパスが買ったのだ。
マイカル証券化は、「決算操作の錬金術師」といわれた山下幸三マイカル経理部長と組んだクレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ(CSFP)が進めた。野村大阪の事業法人出身の高田裕之と小瀬良一、野村アメリカ出身の出口俊司の3人が担当だった。しかし“飛ばし”請け負いでCSFPは金融監督庁(現金融庁)から銀行免許停止処分を受け、彼らはアルティマ・ラボラトリーという会社をパリバ社内に作って証券化を続行。
野村アメリカの浅井俊彦を代表とするエイエム・リサーチ・アンド・リポート社(AMRAR)を設立、SPCを管理させた。オリンパスに優先株30億円を引き受けさせたのは林で、丸投げしたのはその翌年財務部長になる中塚誠(現オリンパス常務・ITX会長)だった。投資は香港法人経由で行われ、オリンパス本体の有価証券報告書では資金の流れが確認できない。「このような劣後投資はギャンブルに近く、プロ中のプロでないとできない。企業の財務担当者にそんな能力があるとは思えない」とある証券化専門家は驚きを隠さない。
優先株の償還は証券化の本体である社債、その次に返済される開銀融資の後になり、元本割れのリスクが大きい。通常は買い手がつかず、不動産の原所有者(この場合はマイカル)が買い取って、証券化のスキームを組み上げることが多いのだ。林と3人組は貪欲に金を吸い上げていく。AMRARは「非エクイティー部分の管理代」をコープ社から得ていたが、「オリンパスからもフィーをとれないか」と、アルティマ・キャピタル・マネージメント(アルティマCM)を設けて毎月数百万円を吸い上げたのである。
しかしマイカル破綻でこのCMBSは元本割れの危機に陥った。マイカルが他に発行していた普通社債・転換社債は債務不履行となり、初の個人向け社債のデフォルトを起こす。管財人団は証券化にも目をつけ、「マイカルの賃料に基づく証券化債権は更生担保権だ」と主張して、破綻前の資産切り出しであるCMBSも会社更生資産に組み入れようとした。
◇ 開銀幹部が「見返り」要求?
04年、社債や優先株は無事償還時期を迎え、オリンパス保有の優先株にも配当がついて10億円を超す利益を生んでいた。ところが、林は「賃借人のマイカルが倒産した案件で元本が戻ってくるだけでもありがたいはず」とオリンパスを説得、なんと30億円の原価での償還に同意させる。残った利益はアルティマCMに入り、林ら旧野村4人組で山分けされたという。メンバーのひとり出口はそれでフェラーリを買ったという話まである。
だが、この旧野村4人組にさらにたかる“ワル”がいた。SPCのコープ社に融資した開銀の幹部が「見返り」を要求したというのだ。アルティマ・ラボの株主に匿名組合があり、開銀関係者が入っていて蜜を吸い上げる仕組みだったという。事実なら「官製プロジェクトファイナンス」の腐敗もここに極まれり、だったことになる。
当時の開銀の窓口役は06年にモルガン・スタンレーに移籍、現在はフォートレス・リアルエステートのマネージング・ディレクターだが、本誌の電話に「昔のこと。何もお話しすることはありません」と答えた。時効だとしても、現在の政投銀にその根は残っているのではないか。
複数の証券化関係者は「マイカル証券化のスキーム自体に不正があったとは認められない」と分析する。しかし高度な金融技術だけに、複雑な迷路にカネの導管を隠すことは容易だ。週刊朝日11月18日号が報じた92年12月にオリンパスが発行した4億ドルのワラント債(新株引受権付社債)も損失先送りは同じである。
オリンパス取締役会はいまだに「先延ばし」「小出し」という最悪のパターンを繰り返している。しかし本来、お目付け役の社外取締役に3年前から林が起用されたのは、金庫の見張り番に怪盗ルパンを指名したようなもの。辞意を申し出ている山田秀雄監査役も、もとは張本人の副社長だから、悪い冗談である。グルになった彼ら根なしの「気中植物」こそ、日本株式会社のコーポレート・ガバナンス(企業統治)の象徴なのである。(敬称略)
「ポチ」ではなく「番犬」が必要だ(°д°;;) つД`)・゚・。・゚゚・*:。ウゥウゥゥ
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バフェット基準では、社外取締役は一般株主の代理人として経営陣を監視するよう求められる。いわば「番犬」の役割を担うのだ。バフェット氏来日中、オリンパスの損失隠し問題が世界的に注目を集め、日本企業のガバナンス欠如が改めて議論されていた。オリンパスも、バフェット基準から大きく外れていたことはいうまでもない。オリンパスの「番犬」は、15人の取締役のうち社外出身の3人だ。
だが、2011年3月期を見ると、3人のうち2人はオリンパス株を1株も保有せず、1人は700株保有しているにすぎない。それでありながら、社外取締役3人と社外監査役2人は合計で6600万円、1人当たり1320万円の報酬を得ている。平均的サラリーマン家庭の倍以上も稼いでいるわけだ。
つまり、社外取締役2人はオリンパスが経営破綻し、持ち株が紙くず化してもまったく痛みを感じない。700株保有する社外取締役についても報酬水準と比べればオリンパス株の下落は無視できるほどだ。これだと社外取締役は一般株主の「番犬」というよりも経営者の「ポチ」になりかねない。「経営陣に気に入ってもらい、毎年1320万円をもらう」が何よりも重要になるからだ。
バフェット氏が経営する米投資会社バークシャー・ハザウェイでは「番犬」の置かれた状況は180度異なる。
同氏保有分を除くと、10年度に同社取締役11人は家族保有分も含め全員で30億ドル、1ドル=80円換算で2400億円の自社株を保有している。1人当たり200億円以上だ。一方、10人の社外取締役は1人当たり平均で3630ドル、1ドル=80円換算で30万円弱の報酬を得ているにすぎない。交通費を賄える程度の金額だ。
バフェット氏はバークシャー株主向けに書く2010年度版「会長の手紙」の中で、「当社取締役はオーナー(株主)のように考え、行動します。経営悪化を招いたら、一般株主と同様に損する仕組みになっているからです」と書いている。他方、社外取締役は一般株主よりも経営陣に気に入ってもらえるように行動する-。これがオリンパスのガバナンス構造である。深刻なのは「番犬」よりも「ポチ」が主流のガバナンス構造は、日本企業全体にも見受けられる点だ。バフェット氏がこれまで日本企業に見向きもしなかったのもうなずける。
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