【ナショジオ】骨や肉まで<真っ黒>そんなの🐔いる!?
骨や肉まで真っ黒なニワトリ🐓ここまで黒いのは何故??
NIKKEI STYLE 2020年2月1日(土)9時33分配信/JASON BITTEL(作家)
インドネシア原産のニワトリ品種「アヤム・セマニ」は、地球上でもっとも色の濃い生物かもしれない。羽だけでなく、くちばし、とさか、骨、そして肉までもが真っ黒なのだ。
ほかにも「烏骨鶏(うこっけい)」や、ベトナムの「フモン」、スウェーデンの「スウェディッシュ・ブラック・チキン」も同様に黒い皮膚や組織をもつ。これは黒色色素が過剰に沈着している状態で、科学的に「ファイブロメラノーシス」と呼ばれている。
なぜ、このように黒いニワトリが誕生したのか。
黒いニワトリ「アヤム・セマニ」。皮膚から内臓まで真っ黒だ。フランスのロレーヌ地方で撮影した(PHOTOGRAPH BY BIOSPHOTO, ALAMY)
「ゲノムで複雑な並び替えが起こっていることがわかっています」と、家畜の遺伝子について研究しているスウェーデン、ウプサラ大学の遺伝学者リーフ・アンデション氏は語る。
同氏によると、前述の4つのニワトリはいずれも、数百年前、あるいは数千年前に生きていた1羽の鳥にさかのぼることができるという。「ファイブロメラノーシスの原因となった突然変異はあまりにも特異なので、これが起きたのは1度しかないと確信しています」
■ 肉や骨まで黒くなる理由
インターネットで探せば、黒いヒョウやサーバル、黒いフラミンゴ、黒いウロコのヤモリやヘビなど、さまざまな黒い動物を見つけることができる。だが、アンデション氏が研究しているニワトリは、色素の沈着がまったく違うレベルで起きているという。
ほとんどの脊椎動物は、エンドセリン3(EDN3)という遺伝子を持っている。この遺伝子の大きな役割は、皮膚の色を決めることだ。通常のニワトリの場合、発達の過程で皮膚や羽嚢(うのう)などの一部の細胞でEDN3が発現し、色を作成するメラニン芽細胞の移動が始まる。
しかし、色素過剰沈着が起こるニワトリでは、体中のほぼすべての細胞でEDN3が発現する。そのため最大10倍のメラニン芽細胞が生成され、骨や内臓まで真っ黒になる。
「つまり、行き先がおかしくなるのです」とアンデション氏は言う。「たくさんのエンドセリン3が間違った場所で発現すれば、色素細胞も間違った場所に移動してしまいます」
幸運にも、この変異には健康面での副作用はなかったようだ。
それどころか、黒いニワトリはブリーダーや美食家に珍重されるようになった。彼らの間では、黒い肉や骨には独特で豊かな風味があると言われている。
■ 黒いニワトリの過去と現在
黒いニワトリの謎は科学的に解明されたが、これらの品種の歴史はまだ解き明かされてはいない。
黒いニワトリについて初めて記したのは、マルコ・ポーロだと言われている。1298年、アジアを旅行していたマルコ・ポーロは、「ネコのような黒い毛を持ち、最高の卵を産む」と記している。確かなところはわからないが、この説明は烏骨鶏を指すものと考えられている。
その後、この珍しい色のニワトリは珍重され、世界に広まったものとアンデション氏は考えている。ある船員が東アジアの交易から戻ってきたときに黒いニワトリを持ってきたという逸話もある。黒いニワトリがヨーロッパにもいるのは、そのためかもしれない。
「人間が多様な家畜を好むのは間違いないと思います」とアンデション氏は話す。同氏は烏骨鶏の羽の遺伝子の由来についても研究しており、現在はニワトリのとさかの成長について研究している。
黒いニワトリが生まれたのは何世紀も前のことだが、このニワトリが珍しいことには変わりない。
ショー用に育種された烏骨鶏の品種。アヤム・セマニと同じく皮膚も内臓も黒い。米テキサス州にあるフォートワース動物園で撮影(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
たとえば、先に紹介した4種のうち、烏骨鶏だけはアメリカ家禽協会(APA)の品種標準に掲載されており、ショーに出展することができる。APAの理事長であるジョン・モナコ氏によると、この標準に掲載するために必要な手続きには数年かかることもあるという。
「アヤム・セマニは古くから存在する種ではなく、知られ始めたのも最近のことです」とモナコ氏は言う。「しかし、烏骨鶏はあちこちにいます。さまざまな変種が存在し、ショーで優勝する鳥もいます」
アンデション氏は、黒いニワトリ品種はすべて「勝者」だと、著書で述べている。これほどの色になるのは一般的にとても珍しい。「ふつうは不完全な部分があって、白い斑点や色素の不足などが生じるものです」
黒いニワトリが生まれたのは、偶然のたまものだ。しかし、それを育てて広めたのは、人間の選んだ道だ。「ほんとうに面白いのは、その点だと思います」とアンデション氏は語る。
山羊🐐に荒らされ「死にゆく島」の自然が劇的に再生、一体何が?
NATIONAL GEOGRAPHIC 2020年2月5日(水)7時13分配信/MICHAEL HINGSTON(作家)
外来種のヤギやネズミに100年以上荒らされ続けたレドンダ島、カリブ海
カリブ海西インド諸島に位置するレドンダ島は、周囲を高い断崖に囲まれた小さな火山島だ。島を覆う草むらにはカツオドリやグンカンドリの巣が点在し、その主たちが何十羽も頭上を飛び交うなか、島の固有種であるアノールトカゲの仲間(Anolis nubilis)や体長3cmにも満たないヤモリが、近くの日陰をうろついている。レドンダグラウンドドラゴン(Pholidoscelis atratus)と呼ばれる、体長15センチの希少な黒いトカゲはもっと大胆だ。こちらが数秒間足を止めている間に、スニーカーの上を群れが横切って走っていく。
島の固有種のトカゲに出会うのにも、島をほんの2分も散策すれば十分だが、この島の自然はずっとこれほど豊かだったわけではない。わずか数年前まで、近くに浮かぶアンティグア島(レドンダ島は、アンティグア島など複数の島からなる国家アンティグア・バーブーダに属する)の島民たちからは、いずれは海に消える「死にゆく島」と見られていた。
19世紀末から20世紀にかけての50年間、レドンダ島はにぎやかな鉱山として栄え、大規模な滑車装置が、肥料として使われるグアノ(海鳥などの糞の堆積物)を海岸線まで運び降ろしていた。最盛期には100人以上の作業員が雇われ、その大半は島に住み着いて働いていた。
しかし、鉱山が第一次世界大戦の勃発で閉鎖されると、人々はこの島の自然に重大な影響を与える2種類の生き物を残して去っていった。ヤギとネズミだ。それからの100年間で、外来種であるヤギとネズミは、目にとまるものすべてを食い尽くし、この島に残るものは砂埃と古い装置の残骸のみとなった。
ところが近年、レドンダ島では、信じられないほどのスピードで自然環境が改善されつつある。「自然再生(再自然化)」という言葉を聞くと、たいていの人は、たとえば庭園を立ち入り禁止にして自然の雑草が復活するのを待つといった、穏やかで受け身のプロセスを連想するだろう。しかし「レドンダ島自然再生プロジェクト」で採用された再生の方策は、もっと込み入ったものだった。
元の姿に戻すのは不可能とされていた
長年の間、レドンダ島を元の姿に戻すのは不可能だと考えられてきた。動物による被害が大きいうえ、島へのアクセスが悪く、さらには自然保護という概念が、地元になかなか受け入れられなかったからだ。
「アンティグアでは一般に、自然保護はエリート主義的なものと考えられています」。レドンダ島の自然再生プロジェクトを監督するNPO「エンヴァイロメンタル・アウェアネス・グループ(EAG)」のコーディネーター、ナタルヤ・ローレンス氏はそう語る。「お金がある人には、樹木やトカゲを気にかける余裕があるでしょう。しかし自分の子供に食べさせるために今1ドルが必要な人に、長期的な影響まで考える時間はないのです」
1980年代末の設立以来、EAGはアンティグアとその周辺地域で多くの自然再生プロジェクトを実施してきた。その数十年の間に、彼らは地域の十数の島々でネズミの一掃に成功している。そしてついに2016年、幾度にもわたる利害関係者との協議や実現可能性に関する調査を経て、レドンダ島での作業が開始された。
最初のステップは、レドンダ島にいる約60頭の野生ヤギの群れを移動させることだった。ボランティアたちが計画をもとに作業を進めたものの、2カ月たっても捕獲できたヤギはたったの1頭だった。
「あのヤギたちはとても賢いのです」。レドンダ島自然再生プロジェクトのコーディネーターであるシャナ・チャレンジャー氏はそう言って笑った。「わたしたちが仕掛けた罠を見ると、飛び越えてしまうんですから」
食べ物や新鮮な水でおびき寄せる作戦もうまくいかず、最終的には、さらに多くの人手を集めて直接ヤギを追い詰め、ヘリコプターで島から運び出すというやり方が功を奏した。ヤギが興奮して暴れないよう、ビニール袋で1頭ずつ体を首まで包み、使い古しのヨガパンツで作ったフードで目隠しをし、さらに角はプールヌードル(大きなマカロニ状のプール用玩具)を巻いて保護。そのうえで、アンティグア島まで20分かけて空輸した。
ヤギの空輸と並行して、島の隅々にまではびこっている約6000匹のクマネズミの駆除も進められた。ネズミの体は大きく、作業員が毒を仕掛けた罠の様子を見に戻ると、死んだ仲間の体にほかのネズミがかじりついているほど食欲旺盛だった。また、レドンダ島の大部分はアクセスが非常に困難なため、EAGは英国登山協会の登山家たちを雇い入れて島の隅々にまで毒入りのえさを置いた。
ヤギとネズミが完全にいなくなったことを確認した後、EAGは次の行動を起こす前に、まずは人の手を入れずに自然がどのように再生するのかを観察することにした。そしてわかったのは、人間が何かをする必要はほとんどないということだった。
1年もしないうちに、陸鳥の数は10倍になり、ツリートカゲやグラウンドドラゴンなどの希少な固有種もまた、急速に増加した。自生の草木が予想よりも早く成長したおかげで、茶色だった島は緑色になった。2012年の研究では、レドンダ島に自生する植物は17種だったが、2019年の調査ではその数は88種となった。
「少し手を貸すだけで、自然は回復できるのです」
大半の自然保護プロジェクトがそうであるように、レドンダ島の自然再生プロジェクトにも、決まった完了日があるわけではない。訪れる人のほとんどいないこの島の自然が順調に再生し、ネズミなどの外来種が突然復活することのないよう、EAGは今も監視を続けている。また現在、レドンダ島とその周辺の海を恒久的な自然保護区域にする計画が、アンティグア・バーブーダ政府に提出されている。
いずれにせよ、EAGにとってレドンダ島は、数十年間にわたる自然再生の取り組みにおける最も大きな成功事例となった。島の再生のスピードは、保護活動の有効性のみならず、どんなに不毛に見える土地でも再生が可能であることを示している。「少し手を貸すだけで、自然は回復できるのです」と、チャレンジャー氏は言う。
ローレンス氏の望みは、レドンダ島の事例が世界の人々から評価されると同時に、これだけの規模の自然再生プロジェクトを支える裏方の作業が理解され、称えられることだという。「島の美しさに驚くだけなら簡単です」と、ローレンス氏は言う。「しかし、それを維持するために必要な作業については、あまり知られていないのです」
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