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2020年10月13日 (火)

【耳学】“犯罪者天国”✍「南アフリカ共和国」警察機構の闇

 日本の凶悪バラバラ殺人犯南アフリカで17年も野放しだったワケ 

現代ビジネス 2020年10月13日(火)14時01分配信/時任 兼作(ジャーナリスト)

コロナを恐れて突然出頭

 「指名手配されている紙谷惣です」――。2003年に殺人を犯し、南アフリカに逃亡後、現地で事業を行い、潜伏を続けた犯罪者。それが17年後の今年8月下旬、同国で感染が拡大する新型コロナウイルスに怯えて自ら南アフリカの日本大使館に出頭し、警察関係者を驚かせた。この出来事は、いまなお捜査関係者の間で話題となっている。

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 殺人事件が発生したのは2003年9月。元飲食店員が千葉県市川市のレストラン駐車場で暴行を受け、その後、埼玉県戸田市のマンションに監禁された挙句殺害され、遺体はバラバラにされて遺棄された。その年の10月、東京都奥多摩町の町道で、切断された腕が見つかり捜査が開始された。

 背景には、飲食店を訪れる客のクレジットカード情報を抜き取り、カードを偽造する詐欺計画をめぐってのトラブルがあったという。殺害された元飲食店員が、詐欺に加担することを断ったのだ。

 2004年1月、警視庁は逮捕監禁容疑で男女8人を逮捕し、のちに殺人、死体遺棄などの容疑で再逮捕したが、主犯格と目された松井知行容疑者と今回、殺人の実行犯として出頭した紙谷惣容疑者は事件直後に国外に逃亡。米ハワイ経由で南アフリカに入国していた。警視庁は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際指名手配したものの、身柄を押さえることはできなかった。

南アフリカ警察はまったく動かず

 その後について、捜査関係者が語る。

 「海外逃亡後、ふたりは別の詐欺事件にかかわっていたようだ。そのことが判明したのは、2010年のこと。南アフリカで開催されたサッカーワールドカップに際し、架空の観戦ツアーを名目に高額の旅行代金がだまし取られる事件が発生した。その捜査を進める中、松井らが主導していることがわかった。

 警視庁は2014年6月、詐欺の容疑で日本国内の共犯者5人を逮捕し、松井らについては新たに同容疑で国際指名手配をした。それと同時に、ふたりの南アフリカにおける所在もつかめたため、南アフリカの警察当局にコンタクトを取り、身柄の引き渡しを求めた。しかし、『死刑制度のある国(日本)に引き渡しはできない』と断られてしまった」

 この事件の最中、紙谷容疑者は松井容疑者とたもとを分かち、その後は中古車販売を行っていたという。一方、松井容疑者は逮捕されぬまま、2016年に自殺してしまった。

 つまり、南アフリカの警察当局は日本側から依頼を受けていたにもかかわらず、まったく動かなかったわけである。

殺人犯と知りつつ見逃した

 南アフリカ警察の消極的な姿勢はその後も変わらず、紙谷容疑者の今回の出頭も捜査当局の働きかけではなく当人が自発的に行ったものだという。捜査関係者が続ける。

 「中古車販売業が行き詰まり、借りていた家の大家とトラブルもあったうえ、コロナに感染した疑いが出てきた。紙谷が出頭してきたのはこうした理由があったからとみられる。

 出頭先は在南アフリカ日本大使館で、南アフリカ警察はまったく関与しなかった。紙谷は大使館員に対して殺人や指名手配について認めたうえで、『コロナで仕事も金もなくなった』『同居人がコロナに感染した』などと繰り返し、『日本に帰りたい』としきりと訴えたと聞いている」

 大使館は外務省本省経由で警察庁、警視庁と相談のうえ、日本に送還することにしたというが、コロナが蔓延する南アフリカは現在に至るまでロックダウン(都市封鎖)状態にあり、国際線の発着が原則禁止されていたため、紙谷容疑者を8月末まで大使館付近のホテルに滞在させたのち、9月1日、特別臨時便を手配。3日に帰国させた。同日、警視庁は逮捕監禁容疑で逮捕した。今後、殺人と死体損壊、死体遺棄容疑を追及するという。

 それにしても、なぜこんなことになったのか。どうして17年もの間、自由気ままに日々暮らすことができたのだろうか。もともと南アフリカの警察官のモラルが低いことは有名だが、まさか殺人犯の存在を知りつつ長年見逃し続けるとは、驚くほかない。

警察トップが賄賂をもらう国

 南アフリカ警察の実態を知る日本の警察幹部はこう話す。

 「警察トップからして、賄賂をもらって殺人を見逃すような国だ。南アフリカ警察長官のジャッキー・セレビ氏は、2008年に収賄容疑をかけられICPO総裁を辞職している。つまり、ICPOの統制すら効かないということだ。だから、不正や怠慢があろうと、一向に驚かない。『死刑制度がある国には容疑者を引き渡さない』などという綺麗事は、まったくのおためごかしだ」

 紙谷容疑者が南アフリカに逃亡したとみられる2004年頃、同国では警察長官が2代続けて汚職で更迭されている。先に更迭されたのは、前述したジャッキー・セレビ警察長官。同氏は2005年、殺人容疑で逮捕されたビジネスマンから賄賂を受け取っていた。その後、収賄罪で逮捕され、懲役15年の実刑判決を受けた。同長官は更迭直前までICPO総裁を務めていた。

 その後任となったベキ・セレ警察長官も、警察庁舎の賃貸契約に際し、競争入札を行わずに不当に契約業者を選定したとして、2012年に更迭されている。

 「まさに、紙谷らが南アフリカに逃亡したときの警察長官が、2000年に就任したセレビだ。ちなみに、このセレビの在任中に使われていた南アフリカ警察幹部の公用車が、日本国内で盗まれた盗難車であったことも2007年に発覚している。逮捕要件となった賄賂を渡していた人物も、正体はビジネスマンと言うより麻薬取引業者。つまり、南アフリカ警察は犯罪集団に近い。

 そのあとを継いだセレ長官がやはり汚職で更迭されてからもう8年が経つが、南アフリカ警察の体質は変わっていないとみられる。犯罪者にとっては天国のような国だ」(前出の警察幹部)

 もしコロナが蔓延していなければ、殺人犯はいまなお遠く離れた異国・南アフリカでのうのうと暮らしていたことだろう。

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 バラバラ殺人“半グレ”遺書残し首つり自殺、一体が起こったのか 

文春オンライン 2020年9月16日(水)6時01分配信

 新型コロナウイルスは積年の手配犯の気力すら挫くようだ。警視庁は9月3日、不良グループによる殺人事件に絡む逮捕監禁容疑で、約17年間、南アフリカに潜伏を続けていた紙谷惣容疑者(46)が帰国したのに合わせ、逮捕した。

 警視庁担当記者の話。

「紙谷の同居人が新型コロナに感染した上、生活にも困窮して家賃が払えず、大家とトラブルになって現地の日本大使館に8月下旬から相談していたようです。南アでは、世界で6番目に多い62万人超の感染が確認されている。本来なら捜査員が現地に赴いて同じ飛行機に乗って逮捕しますが、コロナで飛行機も満足に飛ばないような状況です。異例なことに本人が1人でドーハ経由で帰国し、成田で身柄を確保されました」

 事件は語るだに凄惨だ。紙谷らは2003年9月、元飲食店員の古川信也さん(26・当時)と別の男性を車で拉致し、埼玉県内のマンションに監禁。その後、山梨県内のキャンプ場で首を絞めて殺害し、バラバラに刻んで山梨県や奥多摩町の山中に捨てたのだ。紙谷は飲食店などで使われたクレジットカード情報を盗んで使うスキミンググループの1人で、古川さんはスキミングへの協力を断ったことから殺害されたという。

 だが、紙谷に犯行を指示した“首謀者”は別にいる。同じく南アに逃亡した松井知行容疑者(48)だ。

「松井は関東連合グループとも仲が良く、半グレの先駆け。スキミングなどを手がける犯罪集団のトップで、新宿で起きた別の殺人事件に関与した疑いでも国際手配されています。南アに逃亡後も10年のサッカーW杯にかこつけたチケット詐欺事件を主導。被害総額は約1億円で、一部は逃亡資金に充てられたと見られていますが、この詐欺事件でも手配中です」(同前)

16年に南アの海岸で見つかった首吊り遺体の身元は……

 なぜ逃亡先が南アだったのかと言えば、「死刑制度のない同国は死刑制度のある国への犯罪人の引き渡しを拒んでいるから」(同前)だとされる。特に松井の死刑は濃厚で、逆に“安心”して滞在できたわけだ。

 松井が絡んだ事件は他にもある。捜査関係者の証言。

「16年にコンビニのATMから18億円が不正に引き出された事件にも関与が疑われています。元関東連合の男が主犯格ですが、南アの銀行がハッキングされており、関東連合と近い松井の存在が浮上しました」

 ところが――。

「今年に入り、16年に南アの海岸で見つかった首吊り遺体が指紋などから松井と見られる、という報告が入りました。ATM事件から間もない時期の自殺ですが、『ごめんなさい』と書いた遺書もあり、本人でまず間違いない。一連の事件の全容解明は難しくなります」(同前)

 逃亡劇の末路はかくも悲惨なものだった。

南ア逃亡殺人出頭コンビニ18奥円引き出し事件にも関与か

デイリー新潮 2020年9月17日(木)5時57分配信

 17年の時を経て南アフリカから帰国した紙谷惣(そう)(46)。「コロナで仕事も金もなくなった」と出頭した殺人犯に、知能犯の一面があることは知られていない。

 ***

 2003年10月、東京都奥多摩町で、拉致された男性の切断遺体が見つかった。

「この事件で、警視庁が殺人容疑などで紙谷を国際手配していました。今月3日、潜伏先の南アから帰国した紙谷を逮捕監禁容疑で逮捕。警視庁は男性の拉致の経緯とともに、殺人と死体損壊・遺棄容疑でも調べを進める予定です」

 と、警視庁担当記者。事件には松井知行(48)というリーダー格がいるが、

「03年当時、クレジットカードやキャッシュカードの偽造グループにいた紙谷は、不良の遊び人だった松井とつるんでいました。その“仕事”の一環で、東京の六本木に高級クラブを開店する予定だった男性に、松井が、スキミングによる客のカード情報の不正入手を要求。この手口で松井たちは大儲けしていたのですが、この時は拒否されたため拉致して殺したのです」

 男性の遺体発見前後、紙谷と松井はハワイを経由して南アへと飛んだ。

南アから中国を経由

 以来17年。男性殺害の容疑ではこれまでに男女10人が逮捕されているが、彼らは潜伏を続けた。なお松井は南アで自殺したとされる。紙谷こそが、男性殺害事件における真相解明の“最後のピース”なのである。

「南アに逃げた紙谷や松井は、日本から送られてくる盗難ベンツを売り捌いて逃走資金に充てていました」

 捜査関係者がこう明かす。

「紙谷は南アの公用語である英語も理解し、先住民族も使って商売をしていた。10年にサッカーの南アW杯が開催されましたが、その観戦ツアーを騙った被害総額1億円の詐欺事件が日本で起きた。スキミングの知識のある彼の関与も疑われました。居場所を突き止め、翌11年6月に捜査員が南アに赴いたのです」

 だが、南アは死刑廃止国。死刑制度のある国には容疑者の身柄を引き渡さない。

「それで、東京地検検事正名で“死刑は求刑しない”との誓約書をたずさえた捜査員が派遣されたのです。身柄引き渡しが実現しそうなところまでいったものの、結局、叶いませんでした」

 ここで紙谷の身柄をとれなかったことが、のちに、新たな事件を生む結果となった。

「16年、コンビニATMから約18億円が一斉に引き出された事件が起きた。すでに“指示役”や“出し子”など約260人と主犯格を逮捕しているものの、事件は17都府県の広域にまたがっており、盗まれた金の流れを含め、4年経っても全容解明にはほど遠い。一斉引き出し事件に関与していたのは総じて暴力団員や半グレですが、“紙谷が重要な役割を果たしていた”という関係者の供述があるのです」

 その供述とは、

「“一斉引き出し事件で使われたカードは紙谷が作り、南アから中国を経由して日本に入ってきた”というもの。確かに不正利用された偽造クレジットカードは、南アの銀行が発行したクレジットカードの情報が悪用されていた。カード偽造に精通した紙谷が、そのクレジットカードに手を加えた磁気を張りつけていたと見ています。紙谷から“このカードが使えるから、コンビニで1回10万を引き出せ”と指示された人物もいる」

 殺人事件とコンビニ一斉引き出し事件。南アと日本、中国。その“点と線”がつながる日はくるだろうか。

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 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年10月7日(水)17時01分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

 2017年10月に発覚した神奈川県座間市での男女9人殺害事件。本格的な審理が10月5日、東京地裁立川支部で始まった。精神鑑定を担当した精神科医の証人尋問が行われた。裁判では、お金と性欲のために行った殺人か、自殺願望者の希望にそった承諾殺人なのかが最大の争点だ。ただ、この日の鑑定医の証言は、事件そのものよりも、筆者が自殺の取材をしてきた過去を振り返るような内容だった。

死にたいとはどういうことなのか

「本当に死にたい人はいませんでした」

 白石隆浩被告(29)は取り調べでも、筆者との面会でも同じことを言っていた。そのことを問いただすと、「学校に行きたくないとか、彼氏にふられたとか……」と答えた。白石被告にとってみれば、“そんなこと”に見えたに違いない。しかし、被害者にとってみれば、少なくともその時は、“死ぬほどの苦痛”だったのではないだろうか。

 ただ、「本当に死にたい」とはいったいどういうことなのか。裁判員は、精神医学的、または心理学的な知識があるという前提にはない。裁判員裁判のため、精神医学的な基礎知識が必要だったのか。

 最初の尋問では、なぜ、死にたいという気持ちが表出されるのかということから始まった。弁護側の質問に鑑定医はこう答えた。

「苦痛や悩みがあるとき、人は解決しようとします。しかし、解決ができない場合は、苦痛や悩みを耐えられません。そんなときに不安定な心境になり、もう耐えられないと思うようになります。そのときに、自殺を思いつくことがあります。希死念慮の他にも、逃げるしかないと思ったり、ひきこもったり、行方不明になったり、アルコールや薬物に走ったりします。自暴自棄にもなり、自傷行為をすることもあります」

 しかし、自殺願望と、自殺を決心して行動に至ることはまた別に考えなければならないとも言っていた。そして、計画性がなくても、衝動的に人は自殺する。周囲がその自殺願望に気が付かないとすると、SOSを発信していないか、発信していても、受け止められない場合もある。

結果として自殺してしまった人も

 筆者は、1998年に生きづらさに関連した取材を始めた。きっかけは、援助交際をしている高校生たち、家出をしている少年たち、摂食障害の女性たちとの出会いだった。彼ら彼女らを取材していると、共通して多かったのは、希死念慮、つまり「死にたい」という感情だった。また、「消えたい」との言葉を使う人も出始めていた。当時は、自傷行為をする人たちや、自殺未遂をしていた人のネット・コミュニティが出来つつあった。オフ会をよく開いたり、参加したものだ。

 私の取材で、自殺願望が強い時期ではなく、自殺を決心してないだろうが、結果として自殺をしてしまったという人がいた。動機としては、そのとき、嫌なことがあり、長い眠りにつきたいと思い、処方量以上の薬を飲んで、そのまま亡くなってしまった。通常、その量では死なないはずとみんなが思う量だった。自殺願望も、決心も強いわけではなかった。むしろ、寝ることで逃げたかった。いわゆる「寝逃げ」をしたかったのではないかと思っている。

周囲が自殺願望に気づかないこともある

 また、鑑定医は「亡くなってしまった人はあまり経験がないが、(自殺を)試みましたという人が一定数いる」と言っていた。そういえば、現場の精神科医に話を聞くと、「それほど患者が自殺をしてない」という話をよく聞く。この裁判でもそんな話を聞くとは思わなかった。

 どのくらいの人数を指してそう言っているのかわからないが、筆者は20年以上、自殺に関連する取材をしているが、数十人が自殺している。亡くなってすぐ友人から知らされ、葬儀に出席したこともある。また、数年後に、家族が故人の日記を整理していたら、筆者の連絡先が書いてあり、電話をしてきたということもあった。まれに、本当は亡くなっていないが、ネット上でのやりとりが疲れたために、自殺したことにした、と話した男性もいた。

「周囲が自殺願望をわからないこともありますか?」と弁護側は聞いた。鑑定医は「あります」と回答した。筆者の取材する人の中に、家族や友人、恋人が、自分の気持ちを知らないし、伝えたくないと言っている人も多い。そのため、亡くなった後に、遺族から「どうして教えてくれなかったのか?」と迫られたこともあった。

自殺直前の言動をそのまま受け取ることはできない

 ある女性が尋ねてきたことがある。恋人と2人で旅行をした翌日、相手の男性が自殺した。女性は「きっと何か原因があったが、私に言えなかったんだ」と思い、会社関係、相手の家族、友人関係から話を聞いたが、誰一人、自殺の理由を知らなかった。ネットやパソコンに痕跡もない。そのため「理由のない自殺ってあるんですか?」と聞かれた。周囲にサインを出さない場合もある。

「死を決めることと、死への決心が強いかどうかは整理する必要がある。方法を思いついたり、死んだ後のことを考えたり、死後の世界を考えたり、様々なことを考えています。死について計画をしたからといって、今すぐ死のうとするかは別。ふいに電車に飛び込む人もいます。一方、うつ病の治りかけがリスクが高かったりします。医療者の立場とすると、『やっぱり生きて行こう』『自殺するつもりはない』と言って退院したけれども、その後、事故になることはあり得ます」(鑑定医)

 自殺直前の言動は、必ずしも、本人の気持ちを表出しない。「生きていこうと思います」という言葉が出たとしても、前向きになったとは限らない。2003年から05年にかけてネット心中が連鎖したが、その取材の一環で、当時19歳の男性と会った。彼は虐待を受けたことで自殺を考えるようになった。取材をしていると、前向きになってきたような印象だった。精神科にも亡くなるまで通院していた。しかし、数週間後、自殺系サイトで知り合った30歳の女性と一緒に亡くなった。

レイプされて殺されるということを知っているのか

 座間の事件の被害者の中には、何度も自殺未遂をしている人がいる。ネット心中やTwitterで自殺相手を募集する人たちの取材をすると、不思議な話ではない。この事件は、白石被告がなぜ短期間で9人も殺害したのかに注目が集まっている。ただし、一方で、若者たちが自殺願望をつぶやく心理についても考えなければならない。特に、今年の8月は、女性の自殺者が40%ほど増加している。若年層ほど、自殺者が多くなっている。

 座間事件後、筆者は、Twitterで「死にたい」とつぶやく人たちに取材した。すると、「10人目になりたかった」という女性が複数いた。そのことを面会で白石被告に伝えたところ、「驚きです。その人たちはレイプされて殺されるということを知っていて言っているのか」と、声を荒らげた。取材した人の中には、むしろ、性被害にあえば、死に向かう衝動に勢いがつくと話していた人もいた。事件の裁判を傍聴して、改めて、そうした人たちの声に耳を傾ける必要があると感じた。

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 座間9人殺害事件は「被害者んだ承諾殺人」なのか 

文春オンライン 2020年10月7日(水)17時01分配信

 承諾殺人か通常の殺人か――。2017年10月までに神奈川県座間市内のアパートで男女9人を殺害した、白石隆浩被告(29)の公判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれている。検察側は殺害されることを承諾していないと、通常の殺人を主張している。一方で、弁護側は承諾殺人を主張する。

 9人とも、自殺を考えて、自ら白石被告に会いに行っている。一方では、殺害前には、生きようとしていると思わせる内容のLINEを友人に送っていたりする。これには自殺者の心理が関わっているが、法廷で鑑定医が「自殺をしようとする人が、直前に『生きようとした』と言ったとしても、自殺を試みることはある」と証言するように、裁判員の判断は容易ではない。

◆ ◆ ◆

殺されてもいいから終わりにしたいと書く一方で

 現在は、殺害された被害者9人のうち、3人の被害者について審理されている。被害者はプライバシー保護のためすべてアルファベットで呼ばれる。傍聴席には、被害者の家族が傍聴するために衝立が設けられていた。そんな中に、白石被告が気怠そうに被告席に座っている。

 最初に殺害されたのはAさん(女性、当時21)。弁護側によると、Aさんが自殺を考えるようになるにはいくつかの理由がある。中学時代にいじめにあったり、恋愛での悩みがあったりした。高校1年のときには、1ヶ月ほど家出をしている。帰宅後、精神科に通院すると「適応障害」と診断されたという。その後、自ら通院を止めたが、市販薬で過量服薬し、入退院を繰り返す。入院中にリストカットしたり、自殺未遂を試みたりしたが、看護師に止められた。

 一方、高校時代にスマホを購入。TwitterやLINEをするようになった。と同時に、自殺系サイトを閲覧する。そこで知り合った女性と、海で自殺を図ったこともある。しかし、自分だけが生き残った。弁護側は、この時のことが「心に突き刺さっていた」とする。そして、2017年8月、死のうとして1年が経ち、希死念慮が強まった。「記念日反応」があったのだろうか、自殺をめぐるネット・コミュニケーションの結果、白石被告と出会うことになった。

 白石被告と出会った後にも、Aさんは日記に「殺されてもいいから終わりにしたい」と書いている。殺害される前日にも他の人と「殺されたい」とのメッセージのやりとりをしていた。そのため、弁護側は「承諾していた」と主張する。

 一方、検察側は、殺害される当日、白石被告から「携帯電話を海に捨ててくるように」と指示されたものの、海には捨てず、駅のトイレ内に放置したことのほか、白石被告が「自殺を止めるように」と言うと、前向きな変化があったこと、Aさんは白石被告との新しい生活を考えていたことから、承諾も同意もないと主張している。

いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います

 また、Bさん(女性、当時16)は、学校生活での悩みがあった。弁護側によると、課題の提出が苦手だった。そのため、中学時代から、学校と母親から注意を受けて、叱責をされていた。そのため、学校へいくのを嫌がるようになり、早退や欠席が多くなっていた。

 中学2年生の頃、「部活ノート」を提出することになるが、やはりなかなか書けず、出せないでいた。学校へ行けないという思いが強くなり、出したとしても、先生から「本心を書いてない」と言われるようになる。そんな中で、学校に行くふりをして、家の中で身を隠していたことがあった。Bさんがいた付近には、犬のリードがあったため、自殺をしようとしたのではないかと母親は考えた。Bさんにとっては、提出物が出せない悩みは、死にたいと思うほどのことだったようだ。このことで、学校側は特別支援の対象にした。

 2017年4月、高校に入学したが、入学前の課題提出がまた難関になった。母親に強く指摘されると、家出をしたこともある。1学期の成績は「赤点」だったが、その原因も、提出物を出せていないことだったという。このことで、夏休みは補習をすることになるが、夏休みが明けようとする時期になって、再び提出物が問題になった。そんなときに、Bさんは自殺系サイトを閲覧した。さらに、Twitterに「関東で一緒に死にませんか?」と投稿した。

 その投稿がきっかけで白石被告とつながる。白石被告が「首吊りですか? 飛び降りですか?」と送ると、Bさんは「首吊り」と返事をしている。また、日程に関しても、Bさんは自ら提示をした。そんなことから弁護側は「承諾があった」と主張する。

 一方、検察側によると、Bさんは殺害される当日、「いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います」とLINEをしている。白石被告は「しばらく家にいたほうがいい」と言い、居場所がわからないように、携帯電話を海に捨ててくるように伝えた。Bさんは、海には捨てず、海近くの駅のトイレに放置した。言いなりになっていないことを含めれば、承諾も同意もしてないと、述べた。

オレ、これからは生きていきます

 Cさん(当時20)は男性だ。弁護側によると、小学校高学年のときに「高機能自閉症」と診断された。人の気持ちを汲み取るのが苦手で、対人関係に悩みがあった。そんなこともあり、高校卒業後は、知的障害者の支援施設で働くようになった。しかし、体力的にも、精神的にもきつい仕事であり、利用者から暴力を受けることもあったようだ。

 恋人との別れも経験した。事件の2ヶ月前の2017年6月、2年間付き合っていた彼女から別れを告げられた。翌日、その女性にあてた遺書を書き、睡眠薬を過量服薬した。結果、救急車で運ばれることとなり、強制入院する。仕事は7月末まで休むことになったが、退院してすぐに、その女性を駅で見かけたことで、電車に飛び込もうとしたことがあった。

 一方で、音楽活動もしていた。本格的に取り組むようになったものの、バンドリーダーは厳しい存在だった。叱責されることで、精神的に不安定な状態が増した。事件数日前の8月27日、バンドが遠方でライブをすることになった。車の運転はCさん。往復で12時間かかったが、リーダーはCさんに動画の編集をお願いする。すると、リーダーの登場場面が少なかったのか、「余計な編集をするな」と言われ、再編集をする。

 8月前半、Cさんは、すでに知り合っていたAさんと、白石被告に「自殺の手伝い」をお願いするため、3人で会っていたが、このときは希死念慮が弱まった。しかし、再編集となった翌日の8月28日、再び、白石被告と連絡を取る。そのときには「Aさんにやった方法で殺してください」とメッセージを送っている。白石被告がAさんを殺害していたことを知ってのやりとりだ。メモアプリで遺書を書いていたことで、弁護側は「承諾していた」と説明する。

 一方、検察側は、白石被告と会った後、Cさんは「オレ、これからは生きていきます」などとLINEをしている。やはり、白石被告に携帯電話は海に捨ててくるように言われたものの、海に行く途中の駅のコインロッカーに預けている。「しばらく家にいれば」と言われて、Cさんは白石被告宅にいることになるが、それは殺害の承諾でも同意でもない、と断言する。

生きたいという思いと、死にたいという思いが交錯

 いずれも、ある時点では、殺してほしいという気持ちが見え隠れする。ただし、どこかの時点で「生きようとする」メッセージを送ったり、その思いを反映するような行動をとったりしている。そもそも、自殺をしたい、という気持ちと、殺されたいという思いはどこまで一致するのか。仮に一致するとしても、殺されることを同意していたのか。仮に、同意していたとしても、その条件として何が必要なのか。そんなことを裁判員が判断しなければならない。取材をしていると、自殺を企図する直前まで、生きたいという思いと、死にたいという思いが交錯するように感じている。裁判は、自殺の心理だけでなく、裁判員の死生観や倫理観を大いに反映することになるだろう。

 ただ、白石被告本人は、承諾殺人ではないと言うつもりであるという。

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 最初の犠牲者Aさん(当時21歳)を殺したワケ「他に男がいる雰囲気 

文春オンライン 2020年10月10日(土)11時01分配信

「私以外の男性との付き合いがあるような雰囲気だった。2度目のホテルで性交渉を持ちかけたが断られたこと、そして、自分のこれまでの過去の経験上、短期的にお金をひっぱることはできるが、長期的には難しいと思っていたことです」

 被害者の一人、Aさん(女性、当時21)殺害について、裁判員から「迷っていたのに最終的に殺害をしたきっかけは?」という質問を受けた白石隆浩被告(29)は、淡々とこう答えた。

白石被告の素と思われる部分が出た

 神奈川県座間市内のアパートで男女9人を殺害した白石被告の裁判が、東京地裁立川支部で開かれている。最初に殺害されたAさんに関して、白石被告は弁護側からの質問を拒否。弁護側が質問した内容を、検察側や裁判官が繰り返すという異例の展開になった。

 また、これまでの証言と矛盾すると弁護側が指摘した場面もあったが、「答えるつもりはない」とつっぱねた。しかし、法廷では、白石被告の素と思われる部分が出たような気がした。

 白石被告は被告人質問の初日から、弁護側の質問に答えていない。2日目となった10月8日、ようやく弁護側の質問に答えるつもりがない理由をこう話した。

「裁判が長引くと、親族に迷惑がかかる。そのため、(承諾殺人ではないという)検察側の起訴事実を認めてると、最初から弁護人には言っていた。弁護人も『わかりました』と言っていました。ずっと私の希望に合わせますと言っていた。

 しかし、公判前整理手続きに入ってからは『争う』と言ってきた。話が違うので、受け入れられません。解任したいと思ったのですが、裁判所に受け入れられませんでした。仕方がないですが、(承諾殺人ではないという)今の主張は変わっていません。結局、今の国選(弁護人)で裁判に臨むことになりましたが、方針が合わず、根に持っています。以上です」

被告と弁護人の主張が違ったまま進行

 白石被告は、裁判前から弁護人と方針が合っていなかった。公判が開かれる前の報道でも、弁護人の方針とは違っていることが報道されていた。

 私が拘置所にいる白石被告と面会したとき「裁判はどんなスタンスなのか?」と聞いたことがあった。すると、白石被告は、「基本的には(起訴事実を)認める方法。私本人は争わないつもりです。最初の弁護士は『黙秘して』と。その弁護士はお断りした」とも言っていた。弁護人を一度は解任していたためだろうか、裁判所が解任を認めなかった。だからこそ、白石被告と弁護人の主張が違ったまま、裁判が進行することになった。

家族にはもう会うこともないでしょうから

 裁判が長引くと「家族に迷惑がかかる」と思っているようだが、今年7月の面会で家族への思いを聞いた際には「ごめんなさい」とだけ言っていた。ただ、2019年4月の面会では、「ごめんなさい。いや。違うな。もう忘れてください。もう会うこともないでしょうから」と語っていた。

 白石被告によれば、家族は面会にもきていないし、手紙も届いていない。そうした関係が断絶した家族にも「迷惑がかかる」と話す。本心なのだろうか。それとも、弁護人と話が合わないことへの苛立ちから出てきた言い訳のような言葉なのだろうか。

 答えない理由を白石被告が言う前、弁護人は、6つの視点で質問をしていた。

 これらの質問には答えない白石被告だが、同じ質問を検察側が問うと答える。ある意味で、人を操作する戦術なのだろうか。弁護人が思う通りにならないなら、思う通りになる検察側や裁判官の心理を操っているようにも見える。ネット・ナンパでも、長年、そうしてきたのだろう。自分についてくる人だけをターゲットにしたときと似ているのかもしれない。

なぜロープを使って殺害したのか?

 検察側の問いには素直に答えた。

Q「初めてAさんと会った日に、ホテルに泊まることになるが、その途中でガムテープとロープを購入している。一緒に買ったのか? ホテルに持っていったのか?」

A「一緒に買いに行ったのかどうかは覚えていませんが、記録から考えると、おそらく一緒に買いに行っている。購入したものを持ってホテルに行ったのだと推察します」

Q「スマホを片瀬江ノ島駅に捨てるという話になったが、その駅は、1年前にAさんがネットで知り合った人と入水自殺をした場所から近い。それをAさんから聞いていたのか」

A「聞いてなかったかもしれません」

Q「携帯電話を捨てた後、Aさんと一緒に生活をする予定だったが、別の新しい携帯電話の契約の話は出たのか?」

A「新しい携帯電話の契約の話はしていません」

Q「Aさんは片瀬江ノ島駅のトイレ内に携帯電話を置いてきた。財布を捨てたのは確認したのか? 殺害後に奪った所持金はどこにあったのか?」

A「財布を持っていたかどうかは覚えていない。しかし、家を出るときには思っていなかった服を着ていたし、バッグを持っていた。どこかにあったのではないか」

Q「Aさんか片瀬江ノ島駅から戻った後、部屋に戻るが、殺害前にAさんはお酒と薬を飲んでいる。お酒と薬の種類と量は? 首を絞めて動かなくなったAさんをなぜロープを使って殺害したのか?」

A「Aさんがコンビニで買ったお酒。種類はわかりません。薬は、Aさんが日常的に飲んでいるもので、具体的には見ていない。いつも以上に飲んでいたかは、正直、わからない。ロープを使ったのは、山に遺棄しようと考えたときに、首を絞めて殺したのではなく、ロープを使った自殺に見せかけようと画策したから」

私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示

「薬の種類がわからない」と言っていたが、2019年4月の面会では「酒を飲ませて、睡眠薬と安定剤を飲ませた」と答えていた。「睡眠薬と安定剤」という種類を認識していたが、裁判では答えないだけなのか。それとも、面会時の回答が「嘘」あるいは「勘違い」だったのだろうか。

 事件当初、病院で嘘をついて睡眠薬を処方してもらったとの供述をしたとの報道もあった。精神安定剤は「被害者が持っていたもの」と言っていた。睡眠薬や精神安定剤の違いを認識していた可能性があるが、検察側はそれ以上の追及をしなかった。たとえ、誤報だったとしても確かめる価値はあったのではないかと筆者は思う。なかなか証言をしない白石被告。検察側の質問に答えたというだけでも、弁護側に優位に立てると思わせることができ、詳細な部分は、話さない作戦なのか、と思わされた。

 8月23日には、AさんとAさんの母親がLINEをしている。Aさんは「明日の夜、帰る」と送っている。また、友人と電話をしている。これに関連して白石被告は「私は内容の指示はしてない。私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示したが、電話の内容の指示はしていない」と詳細に述べた。

 冒頭陳述等によると、白石被告は8月23日、預かった金と所持金を奪う目的で殺害を決意した。Aさんの首を絞めたところ、失神した姿に欲情して、Aさんを姦淫。その後、ロープで首を吊って殺害した。遺体をバラバラにしたが、その方法はインターネットで検索したという。肉片や内臓等は一般ゴミとして処分。頭部はクーラーボックスに隠した。

ヒモになろうと思ったんです

 この日の質問で、捜査段階で供述していないことを引き出したのは、冒頭の裁判員による「殺害を決意したきっかけ」についての質問だった。

 弁護側は、「性交渉を断られたと証言したが、それは、捜査段階では言っていないのではないか。手書きの上申書を含めて、警察の捜査資料には、そのことはない。この質問にも答えませんか?」と質すと、「はい」と言い、白石被告は答えない。ちなみに、Aさんを殺害した理由について、面会ではこう答えていた。

「早く口説けた。お金を持っていることがわかり、ヒモになろうと思ったんです。しかし、他に男がいるとわかった。だとすれば、他の男に行くかもしれない。部屋を出て行けと言われるかもしれない」

 しかし、実は、白石被告はAさんに彼氏がいることを確認していない。裁判で、「なぜそう思ったのか?」と聞かれ、「彼氏がいないという会話はなかった」「男に困っている雰囲気ではなかった」と答えている。思い込みが強いのと、自信のなさからきた判断のようにも筆者には感じられた。裁判官から「Aさんとの関係を続けていく選択はなかったのか?」と聞かれ、「そういう選択もあったが、Aさんをひきつけておく自信がなかった」と答えた。白石被告の素の部分を垣間見た気がした。

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関連エントリ 2017/11/01 ⇒ 【生首コレクター】<逮捕された部屋の男性>✍殺害も認める・・・・

 

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