教育現場・いじめ問題

2020年12月22日 (火)

【耳学】児童精神科医が語る<境界知能>認知機能の弱い子供たち

 日本人7人に1られざる“境界知能”とは…悲惨な事件の背景にある問題 

デイリー新潮 2020年12月22日(火)6時20分配信

 不幸な生い立ちは犯罪を起こした理由にはならない。正当化の理由にもならない。同じような境遇でもまっとうに生きている人はいるのだから――こうしたコメントはよくネット上で目にする。また、日常会話でもこういう意見を言う人は珍しくない。

 もちろん貧しさは窃盗の動機にはなるが、それを正当化する理由になる、とまでは言えまい。また、いかに相手に腹が立ったからといって傷つけてよいはずもない。

 これは正論ではあるが、一方で議題にあがりづらいのは、犯罪者の知能の問題である。犯罪の中には、「一体、この行為をして何のメリットがあるのか」と首をひねってしまうものが一定の割合で含まれている。

 たとえば今年10月、話題になった埼玉県桶川市の自転車危険運転“ひょっこり男”。少年時代の生い立ちが不幸だった、という報道もある(「週刊女性PRIME」11月4日)が、それではどうにも説明がつかない行為なのは間違いない。道行く人に迷惑をかける以外に、「ひょっこり」をすることに何の意味もないのだ。

 また同じ10月、札幌市で29歳の男が同居する60代女性を殺害するという事件が起きた。容疑者には前科があったが、女性はそれを承知で同居させていたという(「文春オンライン」12月1日)。冷静に考えれば、庇護者ともいうべき女性を殺害することにはまったくメリットがない。しかし、「金銭をめぐるトラブル」で口論となり、彼女をボコボコに殴打したという。同記事では、彼は健常者として認められるIQをギリギリ上回る、または下回る可能性のある人物であると指摘。ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治・著)で扱われている「境界知能」の可能性が強く示唆されている。

日本人の7人に1人

 そうであるならば、メリットのない犯罪に簡単に手を染める説明はつきやすい。同書で紹介されている「ケーキの切れない非行少年たち」の特徴としては、たとえば以下のようなものがある。

 ・すぐにキレる
 ・思いつきで行動する
 ・人のせいにする

 これらは特徴のごく一部だ。しかしこの容疑者の行動を合理的に解釈するには有効だろう。つまり、本来なら世話になっている相手に対して「すぐにキレ」て、後先を考えずに「思いつき」で殴りかかる。「金銭トラブル」云々というのも「人のせい」に等しい(彼の収入はほとんど無かったはずだ)。

 誤解してはならないのは、こうした解釈は決して彼らを甘やかすために行っているのではないという点だ。ただし、仮に知能に問題があるのだとすれば、通常の受刑者とは別のプログラムを用意する必要はある。児童精神科医である著者の宮口氏は、医療少年院で勤務していた時に「コグトレ」という認知機能向上への支援として有効なトレーニングを自ら開発したが、これは一定の効果を見せているという。

 宮口氏が指摘しているのは、こうした人々には「認知の歪み」がありえるということ。つまり一般的な人と同じものを見て、聞いてもまったく別の受け止め方や解釈をしている可能性があるのだ。宮口氏は、彼らは「反省以前の問題」を抱えている、と指摘している。彼らに対して「不幸な生い立ちをバネにしている人もいる」「努力は報われる」といった常識的な説諭は必ずしも有効ではない。罰を受けるのは当然としても、その罰の意味を理解させること自体が難しいのだから。

 同書によれば、実はこうした「境界知能」の可能性のある人は意外と多く、日本人の7人に1人はそれにあたる可能性がある、という。もちろん、そうした人の中には、家族や社会とうまく折り合っている人も多くいる。それだけに、早めに(なるべく子供の頃に)そうした傾向に気づいて、トレーニングなどで周囲が支えることが重要だ、と宮口氏は述べている。

 最新研究で分かった「スマホにまれる 

新書ベストセラー:ブックバン 2020年11月28日(土)6時45分配信

 11月25日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、新書第1位は『ペルソナ 脳に潜む闇』が獲得した。

 第2位は『息子のトリセツ』。第3位は『ケーキの切れない非行少年たち』となった。

 4位以下で注目は9位に初登場の『スマホ脳』。著者のアンデシュ・ハンセンさんはスウェーデンで最も注目されている精神科医だ。私たちの日常に欠かせないスマホやiPadが人間にどのような影響を与えるのか、数々の研究結果により解明された恐ろしい答えを説得力のある言葉で解説している。スマホから得る情報には脳を夢中にさせる仕組みが徹底的に張り巡らされており、「スマホは私たちの最新のドラッグである」と述べている。アップル社の創業者スティーブ・ジョブズが、自身の子どもたちには厳しくiPadの使用制限を課していたエピソードなどもこうした説を裏付ける一助として紹介されている。

1位 ペルソナ 脳に潜む闇中野信子[著](講談社)

人間関係が苦手だった私は、その原因を探ろうと、いつしか「脳」に興味を持つようになった。 親との葛藤、少女時代の孤独、男社会の壁…人間の本質をやさしく見つめ続ける脳科学者が、激しくつづった思考の遍歴。初の自伝! (講談社ウェブサイトより抜粋)

2位 息子のトリセツ黒川伊保子[著](扶桑社)

40万部『妻のトリセツ』、13万部『夫のトリセツ』ベストセラー連発! 【男性脳】を知り尽くした脳科学者が母たちに贈る! タフで戦略力があり、数学も料理も得意で、ユーモアも愛嬌もあり、とろけるようなことばで、優しくエスコートもしてくれる。 母も惚れるいい男。手に入ります。 ※男性が、自分を知る本としても活用できます(扶桑社ウェブサイトより)

3位 ケーキの切れない非行少年たち宮口幸治[著](新潮社)

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる境界知能の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。(新潮社ウェブサイトより)

4位『政治家の覚悟』菅義偉[著](文藝春秋)

5位『たちどまって考える』ヤマザキマリ[著](中央公論新社)

6位『絶対に挫折しない日本史』古市憲寿[著](新潮社)

7位『部長って何だ!』丹羽宇一郎[著](講談社)

8位『その言い方は「失礼」です!』吉原珠央[著](幻冬舎)

9位『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン[著]久山葉子[訳][著](新潮社)

10位『人新世の「資本論」』斎藤幸平[著](集英社)

〈新書ランキング 11月25日トーハン調べ〉

📺さくらの親子丼で注目ケーキの切れない非行少年とは

デイリー新潮 2020年11月7日(土)11時15分配信

境界知能というある種タブー視されている領域に踏み込んだドラマ

 ドラマ「さくらの親子丼」(東海テレビ・フジテレビ系土曜23:40~)は、現在放送中のものが3シーズン目となる人気シリーズだ。一貫して扱っているのは、居場所をなくした子供たちの問題。必然的に虐待や育児放棄など、重い話題を多く扱うことになるのだが、10月31日に放送された第3話では「境界知能」を取り上げた。

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 粗暴でキレやすく、少年院にいたこともある隼人。この少年について、真矢ミキ演じる主人公さくらは、境界知能が原因にあるのでは、と思い至り、その考えを山崎静代演じる多喜に伝える。少年院で彼を診察した精神科医によれば、「明らかに字を書いたり、計算したりする能力が劣っている」ことがわかった。知的障害とまではいかないけれども、それに近い知能、すなわち境界知能だというのだ。そういえば、隼人はみんなで餃子作りをやった際、皮を10等分することができなかった。おそろしく不均等になってしまった(第2話)。あれも境界知能ゆえではないか――。

 この説明をするにあたって、さくらが多喜に示したのが『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治・著)だ。昨年刊行の同書は、現在60万部のベストセラーとなっている。

「この本に出てくる境界知能の子に、ケーキを3等分にするように言ったんだけど、うまく切れないらしいの。こんな感じ」

 さくらはそう言って、カバーにある不思議な“3等分”の図を見せる。隼人が10等分できないこととそっくりだ、というわけだ。そして、こう続ける。自分たちは、隼人が生まれつき障害に近いものを持っていることを前提にして付き合うべきではないか、そうでないとまた問題を起こすだけではないか……。

 実際の「ケーキの切れない非行少年」とはいかなるものか。同書から、「ケーキの3等分問題」につい説明した個所をそのまま引用してご紹介しよう。(以下、同書第2章「『僕はやさしい人間です』と答える殺人少年」より)

 ***

 私は少年院で勤務するまでは公立精神科病院に児童精神科医として勤務してきました。色々と思い悩んだ末に、いったん医療現場から離れ医療少年院に赴任したのですが、そこでは驚くことにいくつも遭遇しました。その一つが、凶悪犯罪に手を染めていた非行少年たちが“ケーキを切れない”ことだったのです。

 ある粗暴な言動が目立つ少年の面接をしたときでした。私は彼との間にある机の上にA4サイズの紙を置き、丸い円を描いて、「ここに丸いケーキがあります。3人で食べるとしたらどうやって切りますか? 皆が平等になるように切ってください」という問題を出してみました。

 すると、その粗暴な少年はまずケーキを縦に半分に切って、その後「う~ん」と悩みながら固まってしまったのです。失敗したのかなと思い「ではもう1回」と言って私は再度紙に丸い円を描きました。すると、またその少年は縦に切って、その後、悩み続けたのです。

 私は驚きました。どうしてこんな簡単な問題ができないのか、どうしてベンツのマークのように簡単に3等分できないのか。その後も何度か繰り返したのですが、彼は図2-1のように半分だけ横に切ったり、4等分にしたりして「あー」と困ったようなため息をもらしてしまいました。

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 他の少年では図2-2のような切り方をしました。そこで、「では5人で食べるときは?」と訊ねると彼は素早く丸いケーキに4本の縦の線を入れ、今度は分かったといって得意そうに図2-3のように切ったのです。

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 5個に分けてはいますが5等分にはなっていません。私が「みんな同じ大きさに切ってください」と言うと、再度彼は悩んだ挙句諦めたように図2-4のような切り方をしたのでした。

 これらのような切り方は小学校低学年の子どもたちや知的障害をもった子どもの中にも時々みられますので、この図自体は問題ではないのです。問題なのは、このような切り方をしているのが強盗、強姦、殺人事件など凶悪犯罪を起こしている中学生・高校生の年齢の非行少年たちだ、ということです。彼らに、非行の反省や被害者の気持ちを考えさせるような従来の矯正教育を行っても、殆ど右から左へと抜けていくのも容易に想像できます。犯罪への反省以前の問題なのです。またこういったケーキの切り方しか出来ない少年たちが、これまでどれだけ多くの挫折を経験してきたことか、そしてこの社会がどれだけ生きにくかったことかも分かるのです。

 しかし、さらに問題と私が感じたのは、そういった彼らに対して、“学校ではその生きにくさが気づかれず特別な配慮がなされてこなかったこと”、そして不適応を起こし非行化し、最後に行きついた少年院においても理解されず、“非行に対してひたすら「反省」を強いられていたこと”でした。

100-73

 こういった少年は他にも大勢いました。いつも少年たちへの面接では簡単な計算問題を出します。具体的には「100から7を引くと?」と聞いてみます。正確に答えられるのは半数くらいでした。

 多いのが「3」「993」「107」といったものでした。「93」と正しく答えられたら次は、「では、そこからさらに7を引いたら?」と聞いてみます。すると、もうほとんどが答えることができません。「1/3+1/2は?」と尋ねると殆どの少年たちが予想通り「2/5」と返してきます。

 基本的に「漢字は読めない」ことを前提に、少年院での教材には全てフリガナがついています。新聞にはフリガナは付いていませんので、新聞を読めない少年たちも多く、自由時間に新聞を順に回して閲覧できる機会もあるのですが、少年たちが見ているのはもっぱら雑誌広告欄にある女性の写真ばかり、といった状況でした。

 少年院の中ではこういった少年たちに漢字ドリルや計算ドリルをさせているのですが、大体小学校低学年レベルからのスタートです。最初から小学6年生レベルの計算ができればかなり優秀な方でした。

計画が立てられない、見通しがもてない

 ルーチンの面接の中で、少年たちにどうして非行をしたのかを尋ねてみます。するとみんな、「後先のことを考えていなかった」と、口を揃えたかのような答えが返ってきます。そして、今後の目標として「これからは後先のことを考えて行動するようにしたい」と答えます。

 この“後先のことを考える”力は計画力であり、専門用語で“実行機能”と呼ばれています。ここが弱いと、何でも思いつきで行動しているかのような状態になります。彼らは「ゲーム機のソフトを買う金がなかったから人を刺してお金を奪った」「女の子に興味があったけど同級生は怖いから幼女を触った」といった、思いつきに近い非行をやっているのです。

 たとえば、彼らに次のような質問を投げかけたとします。

「あなたは今、十分なお金をもっていません。1週間後までに10万円用意しなければいけません。どんな方法でもいいので考えてみてください」

「どんな方法でもいいから」と言われると、親族から借りる、消費者金融から借りる、盗む、騙し取る、銀行強盗をする、といったものが出てきます。「(親族などに)借りたりする」という選択肢と、「盗む」という選択肢が普通に並んで出てくるのです。「盗む」などという選択をすると後が大変になるし、そもそもうまくいくとも限らない、と判断するのが普通の感覚でしょうが、そう考えられるのは先のことを見通す計画力があるからです。

 しかし先のことを考えて計画を立てる力、つまり実行機能が弱いと、より安易な方法である盗む、騙し取るといった方法を選択したりするのです。

 世の中には「どうしてそんな馬鹿なことをしたのか」と思わざるを得ないような事件が多いですが、そこにも“後先を考える力の弱さ”が出ているのです。非行少年たちの中にも、見通しをもって計画を立てる力が弱く、安易な非行を行ってしまう少年が多くみられました。

 ***

 ドラマに出てくる問題少年は、愛情に飢えていて、それを埋めることで更生するという展開が多いのだが、今回の「さくらの親子丼」はその定型から離れて、境界知能という特にテレビではある種タブー視されている領域に踏み込んだと言えるだろう。

 不器用な暴走する大人になる1つの経緯 

東洋経済オンライン 2020年10月26日(月)10時21分配信/宮口 幸治(医学博士、立命館大学産業社会学部・大学院人間科学研究科教授)

“あおり運転”で事故を起こす大人や、コロナ禍の中で不適切な言動をする大人など「どうしていい年をした大人が、こんなことをしてしまうのか?」という事件が多々ある。そんないわゆる“厄介な大人”たちは、実は「生きづらさ」を持った子どもたちがそのまま大人になった可能性もあるかもしれないというのは、『不器用な子どもがしあわせになる育て方 コグトレ』を上梓した児童精神科医の宮口幸治氏だ。

あおり運転をする大人たち

 ニュースを見ていると、何度も万引きを繰り返す大人、ちょっとしたことでいきなりキレる大人、近年のあおり運転事件、新型コロナウイルスで自粛が求められる中での不適切な行動など、「どうしてそんな馬鹿なことをするのだろうか?」と不思議に思うような事件が時々あります。

 こういったよくわからない行動をする大人が生まれる背景には、次のような原因も考えられるかもしれません。

 世の中には、「生きづらい人々」がいます。「境界知能」(「知的障害グレーゾーン」ともいう)という、かつて「軽度知的障害者」と定義されていたIQ70~84までの、さまざまな困難さを抱える人々のことです。この「知的障害グレーゾーン」は、実に人口の約14%(日本では、約1700万人)に相当します。

 この障害程度の軽い軽度知的障害やグレーゾーンは、日常生活でさまざまな困難に直面しているにもかかわらず、健常人と見分けがつかず、さらに軽度といった言葉から「支援もあまり必要でない」と誤解されるため、支援を受ける機会を逃してしまうのです。

 もし、この「生きづらい人々」が、子どものうちになんの支援も受けずにそのまま大人になったら、いったいどうなるのか……。つまり、冒頭のよくわからない大人のように、さまざまな局面で、次のようなトラブルにつながる大人になってしまう可能性があるかもしれません。

 認知力の弱さから……

仕事のミスが多い
仕事が覚えられない
仕事が続かない
時間を守れない

 対人力の弱さから……

上司や同僚の気持ちが想像できない
カッとなって取引先とトラブルになる
失敗しても反省できない
うまい話に流されやすい
他者からのアドバイスが聞けない
プライドだけは高い

 身体力の弱さから……

細かい作業ができない
物を作ったり、うまく運んだりできない
力加減ができず物をよく壊す

 こういった大人があなたの職場や近くにいたらいかがでしょうか?  大人のくせに、もっとしっかりしてほしい、と思わないでしょうか。生きづらかった子どもたちは、そのまま大人になるとこのように“不器用な大人たち”と見えてしまうことがあるのです。

 子どもが学校にいる間は先生の目がまだ行き届き、なんらかの支援を受けられる可能性もありますが、学校を卒業するともう誰も目をかけてくれません。

 「大人になっても生きづらさのある人なら、周囲が気づいてくれて、支援を受けられるのではないか?」と思われるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。たとえ「生きづらさ」を持っていたとしても、日常生活を送るうえでは、一般の人たちとなんら変わった点が見られないのです。

 友人とショッピングや飲食をしたり、コンサートに行ったり、運転免許を取ったり、簡単な仕事はできたり……と、通常の生活はできるため、「生きづらさを持っている人」として気づかれることはほとんどありません。

 しかし何かトラブルやいつもと違うことが起こったりすると、様子が変わります。例えば、「これまでやっていたやり方を変えて」と言われても、「いつもこうやってきたので」と頑として譲らなかったり、いきなりキレたり、他者から親切心で言われたことを「小馬鹿にされた」と感じて不機嫌になったり、簡単にうまい話に乗ってだまされたりしてしまうなど、うまく対処できなかったりするのです。

 困ったことに遭遇して柔軟に対応できる力は、ある意味「知恵」と言えるものです。逆に、困ったことさえ起こらなければ普通に生活できるので、普通の人と見分けがつかず、生きづらさを持った人たちは「気づかれずに忘れられてしまう」可能性があるのです。

軽度の知的障害や境界知能は気づかれないことも多い

 かつての「生きづらかった子ども」が刑務所に入ったケース(個人が特定できないよう一部内容を変更)もあります。

<ケース>刑務所ではじめて生きづらさに気づかれた

 Qさんは、子どもの頃から勉強ができず、友だち付き合いも苦手でした。中学を卒業してすぐに土木関係の仕事に就きましたが、なかなか仕事を覚えられず仕事を転々としていました。景気が悪くなると仕事がなくなり、その日に食べる物にも困るようになりました。そこで悪いとはわかっていつつも、スーパーで食料品を万引きしてしまい、とうとう警察に捕まってしまったのです。

 しかし刑務所でも作業がなかなか覚えられないため知能検査を受けたところ、「軽度知的障害」と診断されました。Qさんは出所後、福祉サービスを受けながら生活しています。「もっと早くにわかっていたら……」と、Qさんも支援者も思っています。

 受刑者の中には、Qさんのように生きづらさを抱えた人たちがかなりの割合いるのではないでしょうか。この問題は山本譲司氏の『獄窓記』(新潮文庫)にも詳しく書かれています。刑務所の中は凶悪犯罪者ばかりと思っていたのが、実は「福祉のサポートが必要な受刑者がたくさんいた」というのです。法務省の矯正統計表を見ると、半数近くは認知機能に問題があるのではと推測さえできます。

 アメリカ知的・発達障害協会から出版されている『知的障害定義、分類および支援体系(第11版)』の第12章にはまさに認知力が弱い、生きづらさを抱えた人たちについて、次のように書かれています。

一般集団と明確に区別できない
多くの支援が必要にもかかわらず、より要求度の高い仕事を与えられる
失敗すると非難され、自分のせいだと思ってしまう
自らも普通であることを示そうとして失敗する
必要な支援の機会を失うか、拒否する
所得が少ない、貧困率が高い、雇用率が低い
運転免許証を取得するのが難しい
栄養不足の比率や肥満率が高い
友人関係を結んで維持することが難しい、孤独になりやすい
支援がないと問題行動を起こしやすい

 これは、「生きづらさ」を持った子どもたちがそのまま大人になった姿ではないでしょうか。不器用な子どもたちは、成功体験が少ないため、なかなか自信を持てません。そのため彼らの心はガラスのように繊細で、傷つきやすい存在でもあります。

 そんな大切に守ってあげないといけない子どもたちが、学校や社会の中で気づかれないどころか、反対に傷つけられ、いじめ被害にあったりして、引きこもりや心の病になったり、場合によっては犯罪者になったりしてしまうケースもあるのです。

生きづらい子どもを見逃さないために

 私が勤務していた少年院はまさにそういった少年たちの集まりでした。「こんなひどい状況が続けば非行化しないほうがおかしい」といった過酷な状況下にあった少年たちもいたほどです。

 学校で気づかれないことと同様に恐ろしいのは、大人が心配して病院を受診させ、診察や検査を受けても、医師から「問題ありません」と言われた場合です。

 一度「問題がない」と診断されてしまうと、教師や保護者はそれを信じます。すると通常の子どもたちと同じ扱い・評価をされてしまいますが、実際にはなかなかついていけません。

 そういった子どもが問題を起こすと、「やる気がない」「怠けている」「ずる賢い」「気を引きたい」「親の愛情が足りない」といった残酷な判断が下されてしまうのです。

 非行少年たちも、出院後は社会で真面目に働きたいという気持ちを持っています。そこで支援者は、「やる気があるなら仕事を紹介する」と、期待して仕事を紹介します。

 しかし、たいていが1カ月、長く続いても3カ月くらいで仕事を辞めます。やる気はあっても、働き続けられないのです。なぜなら、これまでに述べた通り、認知力の弱さ、対人力の弱さ、身体力の弱さなどから、言われた仕事がうまくこなせない、覚えられない、職場の人間関係がうまくいかない、時間通りに行けないなどのトラブルメーカーとなり、雇用主から何度も叱責を受けて辞めてしまうのです。

 職がなくなったあとは……お金がなくなるので、生活ができません。その結果、簡単にお金が手に入る窃盗などをして再非行に走ってしまうのです。

 つまり、トラブルを起こす大人は、実は生きづらい大人であり、かつて生きづらかった子どもだったかもしれません。生きづらい大人を相応の支援につなげるとともに、今現在の生きづらい子どもたちへの理解を進め、誰もが適切な支援を受けられる社会を実現させるべきだと考えます。

 

2020年12月20日 (日)

【座間9人殺害】“死刑囚”白石隆浩✍彼を「どう捉えるべきか」

 座間事件の「論じ方」~専門家が「経験と想像で分析する危険 

現代ビジネス 2020年12月20日(日)7時01分配信/原田 隆之(筑波大学教授)

座間事件でわかったこととわからなかったこと

 2020年12月15日に死刑判決が下された座間9人殺害事件について、私は判決当日に「現代ビジネス」に寄稿し、「結局、事件の肝心なところはわからなかった」と述べた(「座間9人殺害事件『死刑判決』、“最大のナゾ”は結局わからなかった」)。

 わかったことと言えば、白石隆浩被告の特異なパーソナリティ、前途を悲観した多数の若者の存在、そして本来なら出会うはずのない被害者と加害者を結びつけたSNSの危険性などである。

 白石被告のパーソナリティについては、事件発生直後から「サイコパス」の特徴に当てはまる部分が多いことを指摘したが(「犯罪心理学者が読み解く、座間9遺体遺棄事件『最大のナゾ』」)、それは裁判で明らかになった事実からも確認できた。

 しかし、本件に至るまで大きな反社会性や攻撃性が見られなかった被告が、なぜ20代も半ばを過ぎて、突如としてこれほどの猟奇的事件を連続的に起こしたのか、その原因については結局わからないままなのである。

 サイコパスと呼ばれるような犯罪者や重大事件の犯人は、幼少期から多種多様な問題行動を頻発させていることが、エビデンスの示すところなのだが、白石被告にはそれがあてはまらない。幼少期からの反社会性は、脳の機能障害の可能性が大きいこともわかっている。しかし、白石被告にはこれらが当てはまらないのである。

 これが科学の限界であり、現時点での犯罪心理学の限界である。したがって、残念ではあるが、わからないことはわからないと述べることが、科学者としての誠実な態度であると私は考えている。

座間事件の本当の理由

 一方、判決の翌日、同じく「現代ビジネス」に「マスコミが絶対に報じない、猟奇的な『座間事件』が起きた本当の理由」という寄稿があった。

 その記事の筆者は国際社会病理を専門とする阿部憲仁氏であるが、彼の主張によれば「専門的には、幼少期の家庭環境が影響しているのではないかと考えられる」「白石被告の場合も、幼少期の家庭環境が犯行に何らかの影響を与えたことは否定できないだろう」ということである(太字引用者)。

 つまり、阿部氏のいう「座間事件の本当の背景」なるものは、一言で言えば「親が悪い」という乱暴な「分析」である。そして、彼の分析や結論は、すべて想像の域を出ていない。そこには何の科学的、客観的根拠もない。

 社会に大きなインパクトを与えた重大事件であるから、社会的関心も大きい。その事件について、「専門家」を名乗る者が、想像に頼って全国的なメディアで発信をすることは、大きな問題がある。

 私はある通信社の協力を得て、77日間全24回に及んだ公判の記録をすべて熟読したが、実際、公判を通して被告の家庭内での大きな問題は何も出てきていない。報道でも家族の問題については、何も触れられていない。

 しかし、それに対しても阿部氏は「家庭環境や幼少期の経験を明らかにすると、せっかく一新した自分のイメージに傷がつくため、口を閉ざしていると推測できる」とまた「推測」を重ねている。

 つまり、自分の結論に合わせて都合よく「推測」をつなぎ合わせているだけなのだ。これは「確証バイアス」の見本のような主張だといえる。被告が家庭に問題があったと語らないのは、本当に問題がなかったからかもしれないのに、それでは都合が悪いのである。

経験に頼ることの危険性

 阿部氏の分析手法は、本人自身が書いているように、これまで何人かの重大犯罪者と面会などをしてきたことの「経験」に基づいて事件の考察をするというものである。記事にも「その経験から、座間事件の特徴を以下で考察してみたい」と書かれている。 

 つまり、科学的なエビデンスやデータに頼るのではなく、「経験」という個人的体験や主観に頼るのだということをはっきり述べている。

 私自身もこれまで千人を超える犯罪者との面接の「経験」があるが、その分析において個人的「経験」に頼ることはない。「経験」から何かの示唆を得たとしても、必ず科学的エビデンスと照らし合わせて、あるいは自ら科学的研究を行って、それがどの程度正しいのか実証的裏付けがあるのかを検証する。

 経験には、思い込みや偶然などのバイアスが必ず紛れ込んでおり、それに頼ることは危険だからだ。これが科学的態度というものである。

 特にこのような連続殺人の場合、どれだけ過去のケースを集めてみても、たかだか十数件程度にしかならない。阿部氏自身も過去の、しかもアメリカの連続殺人事件を引き合いに出しているが、少数の事例はもとより、どれだけ多くの事例を集めてもそれはエビデンスとは呼べない。

 一方、連続殺人に限定せず、犯罪のリスクファクターに関する膨大なデータを集積したメタアナリシスによるエビデンスを見ると、虐待など逆境的な家庭環境やトラウマは、犯罪の原因としてはさほど重要なものではないことがわかっている(1)。つまり、阿部氏の「経験」に基づく「推測」を、エビデンスは明確に否定している。

 また、サイコパスの原因に関しても、サイコパス研究の第一人者であるカナダの犯罪心理学者ロバートヘアは、結局のところ、サイコパスが幼い頃の社会的、あるいは環境的要因に直接基づいているという確かな証拠はどこにも発見できないと語っている(2)。

 イギリスの心理学者マーシャルらの研究では、サイコパスと非サイコパスの間に非虐待経験率には有意差がなかったことが見出されている(3)。

 さらに、犯罪神経学者のエイドリアン・レインは、反社会的行動に対する家庭環境などの寄与率は、4%にすぎないと指摘している(4)。もちろん言うまでもなく、これらはさまざまな研究データに基づく知見であり、彼らの経験や推測ではない。

 30~40年前ならいざ知らず、現在の犯罪心理学では、これらは周知の科学的事実である。それを知らないのなら、「専門家」を名乗る資格はない。

粗雑な犯罪理解の問題点

 「犯罪の原因は家庭にある」という素朴で粗雑な「推測」は、加害者家族を傷つける。加害者の家族は、ただでさえ非常なバッシングを受ける。

 これまでも重大事件の家族が、自殺をしたり一家離散したりという例は枚挙に暇がない。「専門家」を名乗る者が、それを焚きつけるような主張をすることは、到底容認できるものではない。

 重大事件の原因がよくわからないと、人は不安になる。だからといって、それを軽々しく想像で埋め合わせてわかったことにしてしまうことのほうが、よほど問題である。

 現在、「専門家」というものが、自称すれば誰でもなれる簡単なものに成り下がっており、専門家のデフレが甚だしい。論文を1本も書いていないような人が、ある日突然「専門家」を名乗って、メディアで発信できる世の中なのである。また、その自称に乗っかってありがたかっているメディアの責任も非常に大きい。

 SNSやウェブメディアが発達し、簡単に情報発信ができるようになった今だからこそ、専門家にしろ、メディアにしろ、その影響力を自覚して、責任ある発信を強く望みたい。

 阿部憲仁マスコミが絶対に報じない、猟奇的な座間事件が起きた本当の理由  2種類の殺人の「ハイブリッド」だった  

現代ビジネス 2020年12月16日(水)6時01分配信/阿部 憲仁(桐蔭横浜大学教授)

9人が亡くなった凄惨な事件

 「はい、わかりました」

 判決を聞いた被告人は、あっさりとこう答えたという。

 12月15日、東京地裁立川支部で「座間事件」の犯人・白石隆浩被告に死刑判決が下された。2017年の8月から10月にかけて、彼は自殺願望を抱く9人の男女を1人ずつTwitterで勧誘し、神奈川県座間市の自宅アパートに連れ込んだ。うち8人の女性被害者には性的暴行を加えたうえで、全員の首をロープで絞めて殺害。

 その後、遺体から小額の金品を盗み、証拠隠滅のためバラバラに解体して近隣のゴミ捨て場に廃棄した。その一方で、被害者たちの頭部は自宅で保管していたという。彼は一体なぜ、このようなむごたらしい殺人事件を起こしたのだろうか。

 白石被告自身は法廷で、金銭や性交渉、証拠隠滅が目的だったと証言している。しかしこの座間事件は、本人が語ったシンプルな動機だけでは説明がつかないと感じている。金品や性的興奮を目的として起こった他の殺人事件と比較すると、被害者たちの頭部を自宅で保管していたことや、法廷で死刑を受け入れたかのような言動を繰り返したことなど、座間事件には異様な特徴がいくつも見られる。

 私はこれまで、アメリカの有名な殺人犯や相模原障碍者施設殺傷事件の植松聖など、数多くの犯罪者たちと直接面談したり、電話や手紙でやり取りするなどコミュニケーションを重ねてきた。その経験から、座間事件の特徴を以下で考察してみたい。

 結論を先に述べれば、私はこの事件が典型的な2タイプの殺人を混ぜ合わせた「ハイブリッド」ではないかと考えている。

大量殺人と連続殺人の相違点

 自分と直接関係がない複数人を殺害する事件を「無差別殺人」と呼ぶが、その中でもさらに「大量殺人」と「連続殺人」の2種類に分類することができる。まずは有名な殺人犯を挙げながら、この2種類について解説していこう。

 前者の「大量殺人」とは、文字通り一度に1ヵ所で多くの人間を殺害する事件のことを指し、アメリカなどでしばしば発生する銃乱射事件や2008年に起きた秋葉原通り魔事件などが該当する。代表的な事件として、2012年にアメリカのコロラド州で発生した「オーロラ銃乱射事件」を挙げておきたい。

 犯人であるジェームズ・ホームズは上映中の映画館に銃を持ち込み、映画の銃撃シーンに合わせて拳銃やショットガンを観客に向けて乱射した。死者は12名、負傷者は58名にも上った。このように、一度の犯行で何十人もの人々を無差別に殺害するのが、大量殺人の特徴である。

 そのため、その多くは、逮捕される前に自殺する、あるいは警察官に銃を向けて逆に射殺されるケースがかなり多い。1999年にアメリカの同州で発生したコロンバイン高校銃乱射事件の場合、犯人であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドはたった45分間で13名を射殺、24名に重軽傷を負わせた後、自殺している。

 彼らのように自ら命を絶つ犯人が一定数見られるのは、犯人が「自分自身の生」に対しても執着が乏しいからだろう。こういったケースを、他人を巻き添えにした「拡大自殺」と解釈する専門家もいる。

 一方「連続殺人」は、一般に1人の人間が複数の相手を別々の場所で殺害するような事件の指し、「シリアルキラー」と呼ばれるのはこちらの犯人である。連続殺人の特徴は、犯人が「強い攻撃性」と殺害行為に対する快感を抱いていることだ。それゆえ、被害者を拷問するなど、犯行にサディスティックな特徴を見せるケースも少なくない。

 たとえば1974年から1991年にかけてアメリカのカンザス州で10人を殺害したデニス・レイダーは、被害者を縛り上げて自由を奪ってから、拷問を加えて殺害していた。他にもいわゆる「めった刺し」や性的暴行など、被害者に対して過剰なまでの攻撃性を見せることもある。

座間事件が持つ2つの要素

 座間事件は、この2パターンの特徴を併せ持ったハイブリッド型の事件だと言えるだろう。連続殺人的な側面は、自殺願望を抱く被害者たちに1人ずつコンタクトを取り、自宅に誘い込んで性的暴行を加えたうえで殺害した点からも明らかであろう。

 座間事件の場合、厳密には「スプリー殺人」に分類される。たいていの連続殺人事件の場合、犯行と犯行の間に一定の間隔がある。それら事件の犯人たちは、誰かを殺害した後に「冷却期間」を設けて、しばらくの間は普通の生活を送ることが多い。

 やがて日常生活で溜まっていく鬱憤やストレスに我慢できなくなり、次の犯行へと進むことになる。たとえば先述のデニス・レイダーは、最長で7年半も犯行の間隔を空けている。

 一方、座間事件の特徴は、約2ヵ月間で9人を殺害するという驚異的な犯行スピードだった。犯行の間隔は、最短で2日間、長くても18日間しかなかった。このような犯行の展開を見るに、冷却期間を置くことなく、まるで「ひとまとまりの出来事」かのように一連の殺人が行われた座間事件は、典型的なスプリー殺人のケースである。

 前述の通り、この事件の異様な特徴の一つが、白石被告が被害者の頭部を自宅に保管していたことだが、それはこのようなスプリー殺人の結果だと考えられる。

 白石被告は被害者たちの遺体をバラバラにしてゴミ捨て場に廃棄した一方で、頭部はクーラーボックスに入れて自宅で保管していた。頭部や大きな骨は解体するのに手間がかかるが、不可能ではない。わざわざ見つかるリスクを承知で遺体の一部を手元に置いておいたのは、非常に不可解である。

 だが、約2ヵ月間に9人を殺害するという、驚異的なスピードで犯行を重ねていた白石被告は、遺体の処理よりも次の犯行へ意識が向いてしまったと考えれば納得がいく。胴体部分は解体できても、手間のかかる頭部が後回しになっていたのであろう。

 もっともこの点については、被害者たちの頭部が、白石被告にとって殺人の「記念品」になっていた可能性も捨てきれない。連続殺人犯の中には、犯行現場に戻って自分の殺人行為を確認したり、被害者の所持品を「記念品」として手元に置いておいて犯行を思い出したりする者もいる。彼らにとっては、「殺害=偉業の達成」といった意識があり、「記念品」はそのトロフィーに当たるため大事に保管しておく傾向がある。

 たとえば1978年から1991年にかけて、アメリカのオハイオ州やウィスコンシン州で17人の青少年を殺害した「ミルウォーキーの食人鬼」ジェフリー・ダーマーは、頭部や胴体など被害者たちの遺体の一部を意図的に自室に保管し、すでに処分して手元にない遺体についても、写真を撮影して保存していたという。遺体そのものや写真を定期的に見返すことで、犯行の瞬間を思い返していたのだろう。

 警察がアパートに踏み込んだ際、白石被告は「Aさんの頭はここ、Bさんのはここです」といったように、被害者の頭部の場所を正確に説明している。おそらく彼は、頭部の存在を意識しながら生活していたのではないだろうか。

 少し話がそれたが、大量殺人と連続殺人に話題を戻そう。ここまで見てきた通り、座間事件には、連続殺人的な特徴が色濃く見られるが、一方で大量殺人的な要素も見られる。そう感じたのは、公判での白石被告の言動がきっかけだ。

 「(一審で下された判決が)極刑でも控訴しない」

 「すべてを終わらせたい」

 このように白石被告はすべてを諦めて、死刑を受け入れているような素振りを見せたという。ほとんどの連続殺人犯はこうした潔い態度を見せない。彼らの多くは司法取引により何とかして死刑を逃れようとするし、たとえ弁護を引き受ける人間がいなくなったとしても、自ら弁護人を務めて法廷で徹底的に闘う。

 「被害者たちは自ら死を望み、白石被告に殺されることを承諾していたかどうか」という点について、公判では検察側と弁護側が議論を戦わせた。白石被告はTwitter上で出会った自殺願望を抱く人々を殺害していたため、弁護側は「被害者も同意したうえでの殺人だった」と主張し減刑を狙った。

 しかし白石被告本人は、死刑につながることを理解しながらも「被害者たちの承諾はなかった」とする検察側の起訴事実をすべて認めていて、「(弁護士と)方針が合わず、根に持っています」とも話している。

 これらの白石被告の法廷での言動は、彼の「生への執着の乏しさ」を示唆するものと考えられ、大量殺人的な特徴と言える。それゆえ、座間事件は2タイプのバイブリッドではないかと分析している。

猟奇性の根源はどこにあるのか

 連続殺人犯と大量殺人犯、同じ凄惨な殺人事件であるにもかかわらず、なぜそれぞれ異なる特徴があるのだろうか。その理由として、専門的には、幼少期の家庭環境が影響しているのではないかと考えられる。

 これまで分析してきた無差別殺人犯たちを振り返ると、0~3歳(特に0.5~1.5歳)の期間である「臨界期」の経験が、犯行に影響を与えているケースがよく見受けられる。脳の形成と感情の発達が進むこの時期にある種の出来事を体験すると、成長してからの行動にも影響が現れることが多い。

 連続殺人犯を分析していると、幼少期に家庭内で虐待を受けていた事例が数多く見られる。たとえば33人の青少年を殺害した「キラー・クラウン」ことジョン・ウェイン・ゲイシーは、幼少期に父親からひどい虐待を受けていた。父は「グズ」「間抜け」といった侮蔑的な言葉を投げかけながら、よく息子を革のベルトで叩いたという。

 このように、幼少期に他者から度々「攻撃性」をぶつけられた経験が、その後の破壊的犯行の一因となったことは否定できない。

 一方で、大量殺人犯の幼少期の家庭環境を分析していると、保護者による「ネグレクト」が見られるケースがままある。たとえば、2007年にバージニア工科大学で銃を乱射し33名を射殺、17名に重傷を負わせたチョ・スンヒは、非常に口数が少なかった。幼少期に両親と十分なコミュニケーションを取れず、その後も人間関係がうまく築けなかったという。彼も大学で銃を乱射した後、自ら命を絶っている。

座間事件の根源を探る

 先述の通り、座間事件は連続殺人と大量殺人の側面を併せ持った「ハイブリッド」だった。白石被告の場合も、幼少期の家庭環境が犯行に何らかの影響を与えたことは否定できないだろう。では、白石家はどのような家庭だったのか。

 白石被告は幼少期の家庭についてあまり話したがらないという。これは、彼が幼少期を「負の歴史」として認識している可能性が高い。殺人犯の中には、殺人を犯すことで「過去の弱い自分」を乗り越えたと感じる者もいる。

 白石被告の場合も、殺人によって過去の自分を乗り越えて、殺人犯としての「強いイメージ」を打ち立てることができたと考えているのではないだろうか。家庭環境や幼少期の経験を明らかにすると、せっかく一新した自分のイメージに傷がつくため、口を閉ざしていると推測できる。

 彼の家庭については断片的な情報しか漏れ聞こえてこない。白石被告の父親は大手自動車メーカーの下請け企業で部品設計の仕事についており、「仕事中心で、子育ての時間はなかった」という。一方で、母親については、このように話している。

 「母はとても優しく料理が上手な方でした。親からの愛情という意味では恵まれたと思います。歯の矯正をしてくれましたし、視力矯正で病院に通わせてくれました。お母さんの料理も美味しかったです」

 他にも「完璧」「きれい」「パチスロにハマった時お金を貸してくれた」など、一見温かい母親を思わせる発言が多い。しかしそのどれも、表面的あるいは物質的な話ばかりなのが気にかかる。なお白石被告が20歳の頃、母親は彼の妹と一緒に家を出て、それ以来彼とは別居している。

 確かに、これだけの情報から過去の白石被告に何が起こったのか断定するのは難しい。しかし、他にも報道されている白石家の家庭環境の情報から推察するに、白石被告がまだ非常に幼い時期に、家庭内で何らかの「大きな変化」が生じたと考えられる。

 これは決して「白石家に虐待とネグレクトの両方があった」と断言するものではない。しかし幼少期に家庭内での人間関係やコミュニケーションのあり方が「AからB」へと正反対の方向へ劇的に変化し、それが虐待と類比できるような影響をもたらした結果、異なる2つの要素をあわせ持った凄惨な殺人事件へとつながったのではないだろうか。

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 死刑囚無期懲役囚の“”元暴力団の牧師「人間性可能性はある 

ABEMA TIMES 2020年12月18日(金)16時42分配信

 3年前、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で強盗殺人などの罪に問われていた白石隆浩被告に対して、東京地裁立川支部は15日、死刑判決を言い渡した。遺族の大半が極刑を望んだ末の判決。しかし被害者遺族の中には「被告の思うように死刑になって簡単に終わらせたくない」「怒りをどこにぶつけていいのか分からない。相手が死刑になったってぶつけようがないんだから」と話す人もいる。

 また、11日には鹿児島県日置市で親族ら5人を殺害するなどの罪に問われていた岩倉知広被告に死刑判決が言い渡されている。岩倉被告は判決を聞くや「許されんぞ」と叫び、検察官や遺族に飛びかかろうとして刑務官に取り押さえられた。弁護側は判決を不服として、即日控訴している。

 このところ相次いだ死刑判決。一方、今年は死刑の執行はなく、13日には外国人女性2人を殺害、2012年に死刑が確定していた男が東京拘置所内で病死したことが報じられている。これで執行を待つ死刑囚は109人となった。

反省の言葉もないまま刑場の露と消えていくのが人間的なことだろうか

 死刑制度について、元暴力団員で服役した経験も持つ牧師の進藤龍也氏は「死刑制度を肯定している人たちを批判しているわけでも、被害者のことを無視しているわけでもない」としつつも、クリスチャンとしての視点も交えた4つの理由から反対の立場を取っていると説明する。

 「一つ目は、国際的に取り残されてしまう可能性があるということ。二つ目は、命のやりとりは神ご自身によって行われるべきことだということ。

 三つ目は、罪を犯した人が悔い改め、被害者に謝罪する気持ちを持つ、つまり人間性を取り戻すチャンスを奪ってしまっていいのか、ということ。実際、被害者遺族の中には、死刑が執行されてもスッキリしなかった、というケースがある。極刑にしてくれと言っていた遺族の方が、その後のやり取りの中で変わってくることもある。それどころか、遺族の方が生きて償ってほしいという除名嘆願を出しているのに死刑を執行してしまうことだってある。あるいは死にたいから罪を犯したという人がすぐに執行されるケースもあるが、言いなりになる必要はないと思う。人間性を取り戻して刑に服すのか、反省の言葉もないまま刑場の露と消えていくのか、どちらが人間的だろうか。

 四つ目が、人間のジャッジは完璧ではないということ。実際、袴田事件のようなことも起きているし、実は冤罪だったのに刑場に消えていった人もいるかもしれない」。

 進藤氏がこのように主張をするのは、自身が死刑囚や無期懲役囚との関わりを経験したからでもある。

 「私に連絡をくださる方々は、“罪責感で押しつぶされそう、どうやって生きたらいいか分からない”というような手紙をくれる。ある本の中には、“殺人者には殺人者の正義がある”、つまり“俺は殺す理由があったから殺したんだ”というところから抜け出せない人もいるし、そうであれば改心なんかできる訳がない。だからやっぱり死刑制度に賛成だ、という人もいると思う。僕も神様ではないので、本当の心の中までは分からない。確かに死刑囚の方も殺人の罪で無期懲役になった方も、最初のうちは反省や謝罪の言葉はなく、人生を儚んでいるだけだ。

 しかし、私が人間同士として関わってきた人たちには、少しずつ自責の念が生まれてきたし、文通や面会をしていく中でインスピレーションがある。実際、刑務所で稼いだ全額を被害者の方に送っている方もいる。裁判で死刑が無期懲役になるという経験をし、命の尊さというのを知って改心に向かった方もいる。そして、皆さんびっくりするくらいに家庭というものと縁が薄い。言ってしまえば、“そんなにかわいそうな幼少期だったの”という方々が犯罪に走っているということは間違いない。

 また、私が関わった死刑囚のうち2人はキリスト教に出会ったので、死への恐怖についてはあまり話さない。むしろ自分が生かされている価値というか、執行までの年月をどう生きるかということを常に考えている。それが生き直すとか、悔い改めるということだと思う。被害者感情を無視する訳ではないが、“この人は変わってくれたんだ”と感じられれば、被害者遺族の方々も慰められると思う。神の目から見れば、私のような前科者や犯罪者も大統領も、同じ愛する人には変わりはない。壊れたものが直るというのはとても嬉しいことだし、逆に諦めるというのは、その愛に反することだと思う」。

死刑制度には反対だが、その理由がなかなかうまく説明できない」パックン

 州によっては死刑が存置するアメリカ出身のパックンは「大学時代のルームメイトが死刑制度の研究をしているが、犯罪抑止には効果ないと言っていた。日本のことは日本国民が決めることだが、人の命を取るような国じゃないというイメージの方がいいと思うし、その意味ではアメリカでも死刑が執行されているのは残念に思っている。ただ、限られた人材、税金、時間の中で誰を助けるのか。DV、貧困、教育格差など、様々な境遇で苦しんでいる国民を救わずに、どうして2人以上を残酷な手段で殺したような死刑囚のために頑張らなくてはいけないのか、あるいは死ぬまで生活の面倒を見なくてはいけないのか。こうした疑問にはなかなか答えられない」と話す。

 EXITのりんたろー。は「死刑が抑止力になっているのだし、なきゃダメだと思っていたし、終身刑でもいいんじゃないかなと思っていたが、様々な問題があると感じた」、兼近大樹は「法律の名の下で、実際に人を裁き、人の命を奪っているのは人間だ。だから完璧に正しい人間がこの世界にいるなら、死刑も成立すると思っているし、少なくとも僕は正しく生きてきた人間じゃないので、誰のことも裁くことはできない。完璧に死刑制度を遂行できる、完璧な人間っているのかな」と話していた。

 追記 

 白石隆浩被告(30控訴取り下げ死刑確定」の見通し 

時事通信 2020年12月23日(水)11時07分配信

 神奈川県座間市のアパートで10~20代の男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交殺人罪などに問われ、一審で死刑判決を受けた白石隆浩被告(30)が、弁護人による控訴を取り下げたことが23日、分かった。

 21日に取り下げ書を提出した。控訴期限は来年1月4日で、同5日午前0時に死刑が確定する見通し。

 東京地裁立川支部が明らかにした。白石被告は一審公判で、裁判が長引くことで「(自分の)親族に迷惑をかけたくない」と説明。「(判決が出れば)控訴せず、罪を認めて罰を受けるつもりだ」と述べていた。

 裁判では殺害時の被害者の承諾の有無が争点となったが、同支部は今月15日、被害者9人全員が「承諾していなかった」と認定。「犯罪史上、まれに見る悪質な犯行」として、求刑通り死刑を言い渡した。弁護人は18日に控訴した。

 判決によると、被告は2017年8~10月、金銭欲や性欲を満たす目的などで、ツイッターで自殺願望を示した被害者に接触。自宅に招き、ロープで首をつって殺害した。女性8人には乱暴したほか、被害者全員から所持金を奪い、遺体を解体、遺棄した。 

 

2020年12月19日 (土)

【座間9人殺害】弁護人が控訴<白石被告✍死刑判決>判決不服。

座間事件白石被告の弁護人控訴 死刑判決不服

共同通信 2020年12月18日(金)17時57分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年、男女9人の切断遺体が見つかった事件の裁判員裁判で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職白石隆浩被告(30)の弁護人は18日、東京地裁立川支部の死刑判決を不服として控訴した。地裁立川支部が明らかにした。

 被告は公判で「裁判を早く終わらせたい。死刑でも控訴しない」との意向を示していた。

 判決によると、自宅アパートで17年8月下旬~10月下旬、女性8人に性的暴行した上、男性1人を加えた9人をロープで首を絞めて殺害し、現金数百~数万円を奪った。

座間9人殺害弁護人として控訴」の意図若狭勝

日刊スポーツ 2020年12月15日(火)20時25分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の切断遺体が見つかった事件で強盗強制性交殺人などの罪に問われた白石隆浩被告(30=無職)の裁判員裁判判決公判が15日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれ、求刑通り、死刑判決が言い渡された。白石被告の弁護人は判決後に「控訴を検討する。被告が控訴しない意向を示したとしても、弁護人として控訴する可能性はある」と述べた。

 若狭勝弁護士(元東京地検特捜部副部長) 控訴の申し立てを1審の弁護人が行うことはできる。上訴期限は2週間なので、それまでに控訴手続きをすれば、高裁の場に移り、新たな弁護人が選任され、控訴審が始まることになります。

 ただし、被告人が心底、固い意思で「絶対に控訴しない」「刑に服します」ということを明示している場合、その気持ちに反して控訴の手続きはできず、刑は確定します。また2審で選任された弁護人も被告人の意思に反して、控訴審を戦うことはできないと思う。

 被告人が「控訴しない」という意思表示が、あいまいなものだとすれば、弁護団としては死刑判決なので慎重を期するためにとりあえず、控訴しておこう、ということはありえる。弁護団はおそらく、死刑判決に対し、1審だけじゃなく、高裁の判断を仰ぎたい、1審で確定させてはいけない、という思いを持っている可能性はある。

 死刑判決後白石被告控訴しない気持ちわらない」「獄中結婚の相手を探している 

毎日新聞 2020年12月17日(木)6時00分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われ、15日に死刑判決を受けた白石隆浩被告(30)は16日、立川拘置所(東京都立川市)で毎日新聞の取材に応じ「気持ちは変わらない」と、改めて控訴はしない意向を示した。

 東京地裁立川支部の裁判員裁判は判決で「犯罪史上まれにみる悪質な事件で、SNS(ネット交流サービス)の利用が当たり前の社会に大きな衝撃や不安感を与えた」と述べ、求刑通り死刑を言い渡した。白石被告は、矢野直邦裁判長の判決理由の朗読を聞いていた際の心境について「正直、何も考えていなかった。不思議なくらい汗もかかないし、心臓もどくどくしなかった。分かりきっていたことだからですかね」と落ち着いた様子で振り返った。

 判決は、承諾殺人罪にとどまるとする弁護側の主張を全面的に退けた。判決後、弁護人が記者団に「被告と話して決めるが、控訴の方向で検討する」と述べたことを伝えると、「相談されたら、控訴はしませんと言うつもり。(弁護人が)控訴したら、自分で取り下げる」と話し、判決後も極刑を受け入れる姿勢に変化はなかった。

 一方で、死刑が確定すると、面会が原則として親族や弁護士に限られることから「獄中結婚の相手を探している」と明かした。その理由は「今は寂しさはないが、もしかしたら寂しくなるかもしれないので、誰かが支えてくれたらいいなと」と説明。これまでも面識のない女性から手紙が届くことがあったとし、「最近面会した女性は2人いるが、具体的には誰とも話が進んでいない。(死刑確定までの)残りの期間は女の子探しをしたい」と語った。

白石被告弁護人承諾有無もう一度判断控訴

毎日新聞 2020年12月18日(金)18時31分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の弁護人は18日、東京地裁立川支部の死刑判決(15日)を不服として東京高裁に控訴した。

 主任弁護人の大森顕弁護士は「究極の有罪判決を確定させることはできない。白石被告とも話し、控訴はしない、(弁護人が)しても取り下げるということだったが、承諾の有無、責任能力の有無はもう一度判断されるべきだ」と話した。

 被告はこれまでの毎日新聞の取材に「(自分の)家族にこれ以上迷惑は掛けたくないので控訴はしない」と話していた。刑事訴訟法は弁護人による控訴を認める一方、被告による控訴の取り下げを認めている。白石被告が控訴を取り下げると、死刑が確定する。

 立川支部判決は、被害者全員が被告に殺害されることに承諾していなかったと認め、「犯罪史上まれに見る悪質な事件」と指摘した。弁護側は、被害者には承諾があり承諾殺人罪の成立にとどまるとして死刑の回避を求めたが、被告本人は弁護人の主張を否定し、起訴内容を全面的に認めていた。

 白石被告精神プロファイルなぜ9つ遺体頭部暮らせたのか 

東スポWeb 2020年12月19日(土)11時30分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年、男女9人の切断遺体が見つかった事件の裁判員裁判で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職白石隆浩被告(30)の弁護人は18日、東京地裁立川支部の死刑判決を不服として控訴した。地裁立川支部が明らかにした。

 被告は公判で「裁判を早く終わらせたい。死刑でも控訴しない」との意向を示していた。

 被害者はツイッターに「死にたい」と書き込むなどしており、殺害の承諾の有無が争点だった。弁護側は「被害者は死ぬために被告に会いに行き、殺害のタイミングと方法は被告に委ねられていた」として、承諾殺人罪の成立を主張していた。

 クーラーボックスに入れた頭部と暮らしていた…凶悪犯罪史上でもまれな残虐事件だが、改めて白石被告の精神状態はどうだったのか。

 米国で連続殺人犯、大量殺人犯など数多くの凶悪犯と直接やりとりしてきた国際社会病理学者で、桐蔭横浜大学の阿部憲仁教授はこう語る。

なぜ9つの遺体頭部と平気で一緒に暮らせるのか? 白石にとって死体は我々が想像するほど不快でなかったはずです。その答えはサイコパシーと関係します。サイコパシーとは感情のハンディキャップのことであり、サイコパシーチェックリストが存在しています。これまでに明らかになっている情報として、送検時の車内で顔を隠したり、自分の家族や限定した被害者にはすまないと感じるなど、白石のサイコパシーレベルは最高レベルではないにしても、上位には位置するものと推測されます

 同氏によると、脳や感情の発達する「臨界期(0~3歳)」に、愛情に基づいた十分なスキンシップやコミュニケーションが欠如すると、人間は温かい血の通った「有機的存在」にならず、むしろ、「無機物(モノ)」に近い存在になってしまうという。

 阿部氏は「そのため、自分とは異質な人間と一緒にいるよりも自分と同質の無機物(死体)といる方がむしろ違和感がなくなるのです」と分析した。

 白石被告に殺害された9人の被害者は本当にたかったのか 

文春オンライン 2020年12月16日(水)11時31分配信

切断された頭部は猫砂をいれたクーラーボックスに…死刑判決を受けた白石被告の残忍な犯行

 2017年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が発見された事件で、強盗や強制性交等殺人などの罪に問われている白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の判決公判が12月15日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。矢野裁判長は、検察側の求刑通り、死刑を言い渡した。

緑の作業着のような服を着て、白いマスクをしていた

 白石被告は「死刑判決が出ても控訴しない」などと述べているが、弁護側は控訴を検討している。16席の一般傍聴席を求めて、435人が並んだ。約27倍の倍率だった。

 白石被告は公判中、ずっと同じ緑の作業着のような服を着て、白いマスクをしていたが、この日も同じ姿だった。判決を言い渡される時、矢野裁判長に促され、証言台に立った白石被告は、「座ってください」と言われ、席についた。そして主文は後回しにし、判決理由から読み上げた。その瞬間、死刑判決の可能性が高まり、傍聴席には緊張感が漂った。その後、判決理由を述べ終わると、裁判長は「死刑」と言い渡した。

 裁判長 主文は聞こえましたか。

 白石被告 はい。聞こえました。

 裁判長 控訴する場合は2週間以内に東京地方裁判所で手続きをしてください。

 白石被告 (うなずく)

 その後、白石被告は被告席に戻った。筆者にはいつもよりゆっくり歩いていたように見えた。一方、閉廷時に裁判官や裁判員に向かって起立した後の着席は、いつもよりも早めと感じた。

白石被告は死刑でも控訴しない

 結審の時に、裁判長に「他に何か言うことは?」と聞かれて、白石被告は「ありません」と静かに語っていた。この日も一言応じただけだった。被告人質問で「死刑は怖いか?」と検察側に聞かれて、「怖い」と答えていた白石被告だが、「死刑でも控訴しない」と、各メディアの取材に述べている。理由は、「親族に迷惑をかけたくない」というものだ。

 判決によると、死刑という量刑になった理由について、「まず何よりも、9名もの若く尊い命が奪われ、女性の被害者8名は強制性交までされたという本件の被害結果は極めて重大」であり、被害者らの遺体は「ばらばらに解体された後、ごみとして投棄され、切断された頭部等は猫砂をいれたクーラーボックス等に入れられた状態で被告人方から発見された」として、「死者としての尊厳も踏みにじられている」として、遺族の処罰感情が高いとした。被害者参加型論告のときも、6組の被害者遺族のうち、5組が「死刑」という言葉を出していた。

 また、犯行態様としては、「狡猾、巧妙で卑劣というほかなく、生命侵害等の危険性が高い犯行」として位置付け、次のように認定した。

「白石被告は、SNS上で自殺願望を表明するなど悩みを抱え、精神的に弱っていそうな女性を狙い、自分にも自殺願望があるかのように装うなどして言葉巧みに被害者らをだまして被告人方へ誘い込み、悩みを聞くふりをするとともに、酒や薬を勧めて抵抗しにくい状態に陥れた後、突如襲い掛かり、手や腕で頚部を絞め付けるなどして失神させた後、女性被害者に対しては強制性交もした上でロープで首を吊って殺害している」

首吊りのためにあえてロフト付きの部屋を借りた

 殺害方法や遺体の解体方法について調べるなど、計画的だったともした。

「被告人は、一連の犯行に先立ち、殺害方法や死体の解体方法を調べたり、首吊りのためにあえてロフト付きの部屋を借りたり、首吊りや死体の解体等の際に必要な遣具をそろえたりするなどの準備行為をしているほか、当初の3名の被害者に対しては、被告人との接点を目立たなくするために、殺害する前に失踪を装わせるなどの発覚防止策も講じた上で犯行に及んでいる。殺害後には、犯行の隠ぺいを図って遺体の解体等の行為にも及んでいる」

 犯行動機としては「金銭等を得る目的や、性欲を満たす目的、あるいは、口封じ目的の犯行と認められ、いずれも専ら自己の欲望の充足あるいは自己の都合のみを目的とした身勝手な犯行」と断じた。

 その上で、「被害者らがSNS上に自殺願望を表明するなどしていた未成年者を含む若年者であったこともあり、SNSの利用が当たり前となっている社会に大きな衝撃や不安感を与えたといえ、社会的な影響も非常に大きい」などとして、死刑を言い渡した。

被害者9人全員が必死で抵抗をしていたなどと供述

 最大の争点は、白石被告が、被害者9人の承諾に基づいて殺害したかどうかだった。

 被害者の抵抗状況のみで承諾がなかったとする検察側の主張について、たしかに、白石被告は、「首を絞めたときに被害者9人全員が必死で抵抗をしていた」などと供述している。しかし、AさんとBさんが首を絞めている手をどかそうとしたと話したことを除くと、被害者によっては抵抗状況に関するはっきりとした記憶が残っていないとも認めている。そのため、「抵抗状況のみをもって被害者が白石被告に殺害されること等について承諾していなかったと認定することは相当ではない」とした。

 白石被告の供述の信用性については、弁護側は「記憶にある内容を語っていない部分が多いし、犯行態様や被害者の抵抗状況などの重要な点について変遷が見られる」などと主張する。しかし、判決では、「意図的に自己の記憶に反する供述をしている様子はない」などとして、弁護側の主張を退けた。

予告や前触れもなくいきなり襲われ

 承諾の有無については、4つの類型にわけて判断した。

 3人目までのAさん(当時21)とBさん(当時15)、Cさん(当時20)については、当初は、白石被告に自殺を手伝ってもらうか、一緒に首吊り自殺をしてもらうために連絡を取っていた。しかし、Aさんにしてみれば、同居生活を送ろうとしていた相手、Bさんにしてみれば一時的に養ってくれる相手、Cさんにしてみれば新たな仕事を紹介してくれる相手である白石被告から、予告や前触れもなくいきなり襲われ、そのまま失神させられるなどして殺害された。3人は殺害されることを想定していなかった、とした。

 また、4人目のDさん(当時19)、7人目のGさん(当時17)、8人目のHさん(当時25)、9人目のIさん(当時23)については、どの程度の希死念慮かは不明だが、4人とも、白石被告との間で首吊りの方法で死ぬなどのやりとりをした上で、白石被告宅に来た。しかし、自ら命を絶つ行為の重大性に照らして、タイミングは自分自身が最終的に決定することを予定しているはずで、死亡の仕方は、自ら首を吊るか、白石被告に首を吊ってもらうかのいずれかであり、「なるべく苦しまない方法によって死亡したい希望を有していた」と推認できるとした。

恐怖心等をともなう方法で失神させ

 5人目のEさん(当時26)については、白石被告と一緒に首吊りで自殺をするというやりとりをし、合流した当初は「私が寝たら殺してください」と告げていた。ただ、白石被告宅につくと、Eさんは頻繁に部屋を出入りし、長時間、元夫と連絡をしていた。そのため、白石被告は、このままでは帰ってしまうのではないかと感じた。Eさんは、いまだ命を絶つ決意を固めることができていなかったと見るのが合理的で、いきなり白石被告に襲われて殺害された。承諾をしていたとは判断できない、とした。

 6人目のFさん(当時17)は、「首吊り士と一緒に死ぬために神奈川に行く」などと友人に告げ、首を吊って殺害をしてもらうつもりだったことも否定できない。その中でも、想定していた死亡の仕方は、決意した時点で自ら首を吊るか、白石被告に首を吊ってもらうか。しかし、実際の殺害方法は、就寝中に手足を緊縛した上で、目を覚ましたあとにも、意思確認のないまま、身動きができない状態にし、ロープを引っ張って頚部を締め付けるという恐怖心等をともなう方法で失神させ、強制性交までした上で殺害するという、明らかに想定とはかけ離れていた行為として、承諾を認めなかった。

白石被告と弁護人は信頼関係が築けていない

 判決後、弁護団の一人は、「判決前に(白石被告と)接見したときには、控訴しない意向だった」と話したが、一方で、控訴を検討中でもある。控訴するかどうかの方針は、今後、白石被告と接見して判断するとして、即日控訴はしなかった。

 なお、白石被告と弁護人は信頼関係が築けていない。公判中でも、弁護方針をめぐって「親族に迷惑をかけたくない。しかし、公判前整理手続きに入ってから争うとなりました。話が違う。そのため、受け入れられません。方針が合わず、根に持っています。以上です」などと答えている。控訴するかどうかは、判決後の接見で、白石被告の意向を確認する。

被告本人が控訴を取り下げた事例も

 過去には、死刑判決を受けて、弁護側が控訴したものの、被告本人が控訴を取り下げた事件があった。 

 2015年8月、大阪府寝屋川市の中学生男女2人が行方不明になり、遺体となって発見された。この事件で殺人の疑いで逮捕、起訴されたのは山田浩二被告(50)。2017年12月の大阪地裁で求刑通り死刑の判決を受けた。弁護人は大阪高裁に控訴したが、山田被告は弁護人に相談せずに控訴取り下げの書面を提出した。

 一度、山田被告の死刑は確定したが、弁護人は大阪高裁に取り下げを無効のするように申し入れし、「今回限り無効」となった。検察側は異議申し立てをしたが、山田被告も再度、控訴取り下げの書面を提出した。2020年11月26日、大阪高裁は、控訴取り下げを有効とする決定を出した。

 2016年7月、神奈川県相模原市にある知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」(県立の施設、運営は社会福祉法人)で入所者45人が殺害された事件で、植松聖死刑囚(30)が殺人罪に問われた。横浜地裁は2020年3月16日、死刑判決を出した。弁護側は27日に控訴したが、30日に植松は控訴を取り下げた。3月31日に死刑判決が確定した。

 果たして本件ではどのような展開になるのか。控訴期限は判決から2週間後となっている。

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関連エントリ 2020/12/15 ⇒ 【座間9人殺害】東京地裁<白石被告✍死刑判決>求刑通り

 多発する性犯罪ドキュメント示談の現場」“示談の相場”

文春オンライン 2020年12月10日(木)19時21分配信/田畑 淳(弁護士)

 11月20日、「ミスター慶応」ファイナリストの元慶大生が20代女性に性的暴行を加えて強制性交の容疑で逮捕された。

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 この事件では、容疑者が過去5回も準強制性交や準強制わいせつなどの疑いで逮捕されながらも、被害者との間で示談が成立したため不起訴となっていたことに対して、世間からは「大金を握らせて被害者を黙らせたのではないか」「無理やり示談にさせたのではないか」といった声が湧きあがった。

 性犯罪における示談の現場はどういうものなのか。現役の弁護士が解説する。

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 一口に性犯罪と言われるものにも多様な側面があります。実際の示談については当然どの事件も守秘義務の対象となりますので、ここでは架空の事例を一つ挙げてみましょう。

1.ある示談の流れ

 郊外のターミナル駅、駅の近くではあるが、あまり客の入りの多くないファミリーレストラン入り口近くに、弁護士がたたずんでいる。彼は時間を確認すると、コートを脱ぎ小脇に抱えて入店する。

 時刻は午後5時55分、被害者に指定された午後6時より5分前に入店した彼は、ドリンクバーだけを頼みホットコーヒーを入れると、携帯電話であらかじめ聞いていた被害者の携帯電話に電話をする。

 弁護士が選んだのは、便利な場所ではあるが、あまり込み合うことなく、かつ、ボックスシートの間がそれなりに背の高い仕切りで分けられているため、目立たずに話ができるファミリーレストランである。

 ほどなくして仕事帰りの被害者が現れる。弁護士は立ち上がり名乗って名刺を差し出すとまず深々と頭を下げる。

 次に弁護士は痴漢行為を行った加害者に代わって短いお詫びの言葉を被害者に伝える。

「本人は大変反省しております。しかし事件の性質上、本人の謝罪や反省のお手紙などはむしろご迷惑になるのではないかと考えて今はお持ちしておりません」

 被害者に緊張は見えるが、激怒したり泣き出したりするような感情の動きはあまりなく、少し戸惑ったような表情で「何分こういう事は初めてなので」と口数少なに話す。

「このようなことをしておいて、私どもの方から申し出るのは大変心苦しい話ではあるのですが、今回お時間をいただいたのは、

 弁護士は示談書を取り出す。被害者に示談の意思があることは事前に確認しているものの、なかなか電話での話し合いも難しく、細かい条項については詰めきれていない。支払える金額もあらかじめ伝えてあるが、細かい文言等について当日までにやり取りする余裕がなかったのである。

示談書に含まれる内容とは

 示談書には何が書かれているのか?

 刑事事件の示談書は、複雑な事件でなければ1ページ程度の短い内容であることが多い。

 示談書には、(1)事実の確認と謝罪、(2)示談金の金額といった内容に加え、(3)被疑者を許してもらうことができるのか、被害届を取り下げてもらえるのかといった「宥恕(ゆうじょ)文言」が含まれている。弁護士はこの示談書にサインをしてもらえるかを被害者に尋ねる。実は弁護士のカバンの中には、もう1通、宥恕文言がもらえなかった場合の示談書も念のために用意してある。

 今回は、加害者による謝罪が通じたのか、あるいは別の事情によるのか、被害者は首を縦に振って示談書に宥恕文言を入れることに納得してくれた。

被害者からの質問

 被害者から1点だけ質問があった。

「私の名前は本当に(被疑者に)伝わらないのでしょうか」

 弁護士は、裁判所で被疑者の勾留の手続きを行う際に行われた、「勾留質問」の中で、被害者の名前が読み上げられているかもしれないという点については伝えた。ただ、示談書の中に書かれた名前については弁護士の方でマスキングをするので、名前や住所が被疑者に伝わる事は無いと約束した。

 弁護士は、何も書いていない茶封筒に入った示談金を被害者に手渡し、その場で内容を確認してもらう。被害者が金額について確認すると、弁護士は、あらかじめ用意していた領収書にサインをしてもらい、領収書を引き取る。

 その時点で時計は18時15分。およそ15分足らずの出来事である。

 弁護士は、忙しい中仕事帰りに時間を割いてくれたこと、示談に応じてくれたことのお礼を伝え、改めて事件について被害者に謝罪する。頭を下げた後、弁護士はコーヒーには手を付けず、ドリンクバーの代金だけを精算し、足早にその場を去り、事務所に向かう。

 事務所の時計は19時を指している。検察庁に示談書と領収書を提出するにはもう時間が遅いようだ。提出は明日の朝一番と言うことになろう。取り急ぎのファックスを検察庁に入れた後、弁護士は身柄拘束されている依頼者の家族の携帯電話に電話を入れ、示談が成立したことを報告する。

2.加害者から見た示談

 このケースだけについていえば、弁護士は示談をとりまとめることができ、胸を撫で下ろしているといえます。しかし、すべての事件がこのように進むわけではありません。

 金銭を受け取るくらいなら、加害者の厳罰を求める被害者もいますし、そうでなくても嫌悪感や恐怖、不安から示談する気になれない被害者もいるのは当然でしょう。

(1)被害者との連絡は簡単ではない

 被疑者側弁護士にとってまず最初の難関は、被害者と連絡をとることが必ずしも容易ではない点です。

 痴漢などの性犯罪では、加害者が被害者を「誰だか知らないまま犯罪をしている」ケースが多く、そのような場合、当然加害者は被害者の連絡先を知らず、示談をするためには担当の検察官から連絡先を教えて貰う必要があります。

 しかし多くのケースで、被害に傷ついている被害者は加害者とあるいは加害者の弁護士と連絡を取りたいとも思わないことが多いでしょう。強制性交のような酷い犯罪ではそのような可能性が一層高いと思われます。

 また仮に偶然連絡先を知っている関係であったとしても、検察官を通しての連絡を拒絶している被害者が示談に応じる可能性は極めて低いと言わざるを得ませんし、被疑者側弁護士が検察官を通さず直接被害者に接することで問題が起きる場合もあります。

(2)示談の相場はあるのか?

 次に、示談には相場があってないようなものであると言う点が挙げられます。

 弁護士には、一応の相場観がないわけではありません。

 むしろこれくらいのことをしてしまった事件ではこれぐらいの金額を支払わねば、という相場感覚は、ある程度事件の数をこなした弁護士であれば頭に浮かんでくるでしょう。例えば本件が着衣の上からの痴漢行為なら、弁護士は10万から50万のどこかを念頭に置いていたのかもしれません。

 また示談金は判決のように公開されているものではありませんが、量刑資料の一部を参照するなどの方法で、過去の事件の示談金についても少し知ることができるケースがあります。

 とは言え、これは弁護士が勝手に考えている「相場」に過ぎません。

「相場の金額」を弁護士が被害者に押し付ける事はもちろん許されませんし、被害者は嫌ならいつでも連絡を絶つことができます。被害者が納得できる金額、というものはあくまで被害者個人の感覚によるのです。

 とすれば、「連絡を受けるかどうか」「いくらで示談を受け入れるか」は完全に被害者の手に委ねられており、被害者は強い立場でいくらでも条件を吊り上げられそうにも一見、見えます。

3.被害者から見た示談

 では被害者は本当に状況をコントロールできる「強者」の立場なのでしょうか。逆に、被害者の観点からこの事件を見てみましょう。

 この被害者は、被疑者側弁護士からは高額な示談金を提案されていますが、示談をすることは気が進まないようです。

(1)知識の不足

 そもそも被害者は示談金の相場など知りません。ただ目の前におかれた金額をジャッジしないといけない立場なのです。弁護士が被害者側にも就任しているケース以外では、自分に提案されている条件が相場なりであるかどうかも分からないでしょう。

 また、殆どの事件で初めての体験を、精神的に追い詰められた犯罪被害者としての心境で判断しなければならないことのハードルも高いのです。

(2)示談しないことへの不安

 被害者が示談をしなければ、被疑者は重く責任を問われる可能性が高くなります。

 これは事実ですが、この事実が被害者を追い詰めることもあります。すなわち、自分が示談を拒絶したために逆恨みされることはないか、と言った不安が被害者にはあります。

(3)示談しなかった場合の損害賠償について

 任意の示談が成立しなかった場合、原則として被害者には、一定の犯罪については損害賠償命令の制度がありますが、被疑者が任意に示談金を持ってくる示談よりは遥かに大変な手続きですし、弁護士に委任せねばならないかもしれません。

 被疑者が若年や無職で賠償金を払うだけの金銭的余裕がなく、示談なら親族が立て替えると言っている場合など、判決を取っても本人以外から取り立てることはできませんから、示談をしないと賠償が実質受け取れないようなケースもあるのです。

 こうした状況を考え、悩みながら示談を選択する被害者も多いのです。一方的に被害者が強い立場で振舞っているとは、少なくとも言えなそうです。

4.示談の是非

 こうしたバランスの中、被害者と加害者の合意が成立したケースが示談となります。

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 示談を後で後悔する被害者もいるかもしれませんが、殆どのケースで、示談は被害者の意思でもあるわけです。

 全く事件と関係のない第三者が「示談で事件をねじ伏せた」と論評するとき、そこには被害者の意思はありません。ましてや示談金の金額について是非を論じるのは、被害者として最も知られたくない内容の一つでしょう。

 性犯罪について考えるとき、「加害者を罰する」ことより「被害者の力になること」を主眼に置いてみる必要があると私は思います。加害者を罰するためには検察官が奔走しますが、被害者を救い、平穏な生活を過ごすための助力は、まだまだこの社会に欠けているように感じます。

 

2020年12月15日 (火)

【座間9人殺害】東京地裁<白石被告✍死刑判決>求刑通り

 座間9人殺害事件で死刑判決 白石被告が唯一好きだった女性 

AERAdot. 2020年12月15日(火)15時26分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)に対し、東京地裁立川支部は12月15日、死刑判決を言い渡した

 白石被告は本誌と拘置所で面会した際も死刑判決について達観したように心境をこう語っていた。

「警察の調べでも『しょうがないよね』と言われた。覚悟しています」

 何度も重ねた白石被告との面会で事件について、いろいろと質問すると、「それはここでは、話せない」と遮り、「いくらですか?」と金銭の請求を口にすることもあった。

「殺害した9人の中で、好きな女性はいたのか」

 こう尋ねると、白石被告は「好みの女性はいましたよ」と笑顔で話した。しかし、詳しく聞こうとすると、「今は言わない」と自ら話を打ち切ってしまった。

 白石被告の裁判員裁判が進むにつれ、検察側の細かな質問でその心の闇の奥底が垣間見える瞬間があった。公判で白石被告の好みの女性とは、Xさんであることがわかった。

 他の被害者同様に白石被告はXさんをツイッターで「死にたい」の検索ワードから誘い出した。白石被告はXさんから送られてきたツイッターの写真を見て、好意を持ったと明かした。

「外見はかわいらしいと思った。スタイルもよかった。好みだった」

 もともと自殺願望のあったXさんは白石被告とのSNSのやり取りで「ワクワクする」などと書いていた。白石被告は実際に会ってみたいという気持ちを募らせ、「ロフトで首を吊って死にませんか」と返信して、Xさんを呼び出し、犯行現場となったアパートに連れ込んだ。

 言葉巧みにXさんの悩みを聞き出し、ウィスキーのお茶割りを飲み始めた。Xさんが気を許したとき、白石被告は、部屋のドアのカギを閉め、チェーンをかけた。そして、背後にまわってXさんの首を絞め、失神させたという。白石被告は法廷でこう述べた。

「Xさんと性行為に及びました」

「ロフトベッドにロープをかけて、Xさんの首を吊って殺害した」「その後、Xさんの遺体をスマホで撮影した。Xさんが好みだったからです。他の人は撮影していない」

 また、公判では白石被告がXさん殺害後、コンビニエンスストアに向かったことも明らかにされた。

 そこで自分用の食事、パスタとともに「キムチ鍋の素」「ジップロック」を買ったことを検察が指摘した。白石被告はその理由を問われ、公判でこう明かした。

「バラバラにした遺体のうち、大きな骨はキムチ鍋の素で煮込んで、肉を削いで、ジップロックに入れ、匂いが出ないようにした」

 あまりにおぞましい犯行だった。拘置所で面会した時には、白石被告自身もためらい、言葉にできなかったのではないかと思えてならない。

 公判では、被害者が本当に自殺を了承していたのか、が大きな争点となった。白石被告は公判でXさんや他の被害者について「死にたいと言った人はない」と淡々と語っていた。

 法廷では自身の弁護士の質問に対し、たびたび「黙秘します」と証言を拒否。しかし、検察側の質問にはしっかりと答えた白石被告。

 記者との面会では「被害者への謝罪の気持ち?それは沸いて来ない」と軽い口調で話していた白石被告。だが、かなりの重圧だったのか、法廷でたびたび、顔をしかめるような表情を見せた。そして何人かの被害者には「申し訳ない」と謝罪の言葉を述べていた。

「どんな判決でも控訴しません」

 面会では気丈に話していた白石被告。死刑判決がくだされた今の心境は知る由もない。

 判決前の心境白石被告極刑怖い控訴はしない 

毎日新聞 2020年12月13日(日)8時00分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)が、15日の東京地裁立川支部での判決言い渡しを前に、立川拘置所(東京都立川市)で毎日新聞の取材に応じた。検察側が死刑を求刑し、厳しい判決も予想される中、「身体的苦痛があるので極刑は怖いが、家族にこれ以上迷惑は掛けたくないので控訴はしない」と心境を語った。

 白石被告は3日と8日に面会に応じた。11月26日の公判で死刑を求刑された際の気持ちを問われ、「予想通りで、動揺も全くなかった」と淡々と振り返った。

 白石被告は公判終盤の被告人質問で、被害者9人のうち4人に「私の起こした行動により命を簡単に奪ってしまい、申し訳ありません」と謝罪した。一部の被害者・遺族にしか謝罪しなかったことには「私はうそをつきたくない。好意を持ってくれたり、同情できるところがあったりするなど、私が思い入れを感じた被害者には申し訳ない気持ちが出てきたが、他の被害者には本当に何も思わなかったので、謝っていない」と独自の理屈を展開し、事件を起こしたことへの反省の言葉はなかった。

 埼玉県春日部市の女性(当時26歳)については、幼い子どもがいるため、「これから育っていく中で、母親がいないのは可哀そうだと思う」と話した。

 法廷には、遺族の姿が傍聴席や被告から見えないよう、ついたてが設置されていたが、埼玉県所沢市の女子大生(当時19歳)の母親は意見陳述の際、白石被告との間のついたてを外し、「反省や後悔が感じられず、今までにない嫌悪感と激しい怒りを感じた」と思いをぶつけた。この場面に記者が触れると、白石被告は頭を抱え、「きつかった。遺族が沈痛な面持ちをしていて、まともに見られなかった」とした。

 遺族の思いがつづられた調書が法廷で読み上げられたことには、「これまで調書は読まなかったが、聞かされて、思うところはあった」と心を動かされたことを明かした。

 「育て方が悪かったのか。ご遺族に謝っても謝りきれない」などとする自身の母親の調書も読み上げられた。「あれはこたえました。精神的な負担になっていたことが改めて分かったので、家族のために、もう波風を立てたくない」と話し、控訴はせず、弁護人が控訴しても取り下げる方針だという。「あの密室(法廷)での気力と体力の消耗は半端じゃない。正直ほっとしています」とも語った。

 死刑が確定すると、面会は原則として親族や弁護士らに限られる。「こうして会いに来てくれる人もいなくなるわけで寂しい」と吐露した。

 被害者の同意の有無が最大の争点に

 東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で15日に言い渡される判決は、ツイッターで自殺願望をほのめかしていた被害者が、被告に殺害されることに同意していたかどうかが最大の争点だ。検察側は「自己中心的な『単なる殺人』だ」と死刑を求刑し、弁護側は「承諾殺人罪の適用にとどまる」と死刑回避を求める。

 検察側は、被害者全員が被告に首を絞められた際に抵抗したとして「殺されることを明確に拒絶していた。承諾がなかったことに疑問を差し挟む余地はない」と主張。起訴内容を認めた被告の供述について「一貫性があり、客観的事実と符合し、内容も自然、合理的で信用できる」とした。

 対する弁護側は「被害者が被告に会ったのは命を絶つため。自ら被告の部屋に入り、薬や酒を飲み、死のタイミングを委ねた」と述べ、抵抗は「『何らかの反応』に過ぎない」と反論する。被告の供述は「曖昧で変遷もあり、信用できない。裁判を早く終わらせるためのものだ」と主張した。

 責任能力の有無も争点。検察側は、周到な計画に基づく一貫した行動で、徹底した隠蔽工作をしたとして「責任能力には全く問題がない」とし、弁護側は「凄惨な事件を起こしたのに精神疾患が一切ないとは本当か」と精神鑑定が不十分だとした。

 被告は起訴内容を認め、弁護人の主張と食い違った。主任弁護人は結審後、取材に「苦労したが、(主張を)証明する弁論はできた」と述べた。

 起訴状などによると、被告は17年8~10月、当時15~26歳の男女9人を自室に誘い、女性8人に性的暴行したうえ、9人の首をロープで絞めて殺害したなどとされる。

 ◇ 白石被告の公判での主な発言

・「いずれの事実についても間違いありません=9月30日、初公判で起訴内容を認める

・「女性からお金を引っ張り、『ヒモ』になりたかった=10月7日、ツイッターで自殺願望のある女性を探した理由について

・「方針が全く合わず、裏切られている=10月8日、承諾殺人罪にとどまると主張する弁護人への不満を述べる

・「すごく迷ったが、部屋に証拠が残っており、観念した=11月12日、逮捕後に自白した理由について

・「何もありません=11月26日、死刑の求刑後に裁判長から判決前に述べておきたいことを問われて

 白石被告に殺害された9人の被害者は本当にたかったのか 

文春オンライン 2020年12月14日(月)6時12分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

被害者たちは本当に死にたかったのか――

 2017年10月、神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗や強制性交等殺人などの罪に問われている白石隆浩被告(30)の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)は12月15日、判決を迎える。

 筆者が裁判を傍聴する中で、もっとも気になった言葉が「本当に死にたかったのか」というものだ。裁判で明らかになった事実などを振り返りながら、改めて考えてみたいと思う。ただし、この稿では、白石被告本人の意図は考慮しない。

日記には殺されてもいいから終わりにしたい

 そもそも「死にたい」という感情に「本当」と「本当じゃない」が存在するのかどうか。あるいは、Twitterで「死にたい」とつぶやくこと、そのつぶやきに対するダイレクトメール(DM)に返事をすること、返事をしたとして白石被告に会いに行くこと、会いに行ったとして死のうとすること、死のうとしたとして途中で止める可能性……は、どこまで一体なのか。

 筆者は、「自殺系サイト」に投稿をする人たち、「ネット心中」の志願者、TwitterなどのSNSで「死にたい」とつぶやく人たちを取材してきた経験から、実際の自殺に至るまでには、いくつもの“壁”があると感じている。

 被害者9人すべて、どこかのタイミングで自殺に対する気持ちを表明し、何人かはTwitterで「#自殺募集」などの文言を投稿していた。その意味では、被害者全員が、濃淡の差はあるだろうが、自殺願望があったと言えるのだろう。例えば、1人目のAさん(当時21、女性)はTwitterで自殺に関する投稿をして、それを読んだ白石被告がDMを送った。そのことをきっかけにカカオトークでのやりとりが始まった。

 弁護側によると、Aさんは、中学時代のいじめ、恋愛などで悩んでいた。2016年8月、ネットで知り合った女性と「ネット心中」をしようと、江ノ島の海で入水自殺を図ったことがあった。しかし、Aさんだけが助かった。その後も入退院を繰り返し、入院中も首吊りを試みて、看護師に止められている。

 その1年後の2017年8月上旬、Aさんは死にたい気持ちが強まり、少なくともTwitterで「ネット心中」を呼びかけるくらいの自殺願望があった。そして、DMやカカオトークでやりとりをしていた白石被告のもとを訪ねる。その際、Aさんは白石被告の指示で「失踪宣告書」を書き、自宅に置いている。そこには、「絶対に自殺をしません」と書いてあった。ただ、日記には「殺されてもいいから終わりにしたい」と綴っていた。

選択や決定ではなく自殺するしかないという思い込み

 判例では「自殺とは、自殺者の自由な意思決定に基づいて自己の死の結果を生ぜしめるもの」(1989年3月24日、福岡高裁)とされている。法律論としてはわかりやすいが、自殺直前の心理は、自由な意思決定を正当化できるほどの状態なのだろうか。

 自殺を試みる人たちは、心理的視野狭窄が生じているとも言われている。つまりは、自由な意思決定というよりは、自殺を選択せざるを得ないという切迫した心理状態なのだ。選択や決定ではなく、「それしかないという思い込み」がある。それを前提とすれば、生か死かの揺れ動きの中で、死に向かう行動をせざるを得ない心の動きがあることになる。

 裁判官の「Aさんが書いていたパソコンの日記ですが、8月18日、21日に『死にたい』と書かれていました。内容の確認はしましたか?」との質問に、白石被告は「失踪宣告書を書くようにやりとりはした。そのときは、私以外の人と自殺をするとお願いをした。私の存在を薄くするようにお願いしたのです。内容については見ていません」などと答えている。内容を把握していないことが事実なら、失踪宣告書の「自殺しません」はダミーだとしても、日記で書いていたように、「終わりにしたい」気持ちがあったのかもしれない。

苦痛があっても力任せに、殺してください

 揺れ動く心理は、3人目に殺害されたCさん(当時20、男性)にもあったようだ。Cさんと白石被告が知り合ったのは2017年8月13日。AさんがCさんのLINEのQRコードを白石被告に送ったときからだ。8月15日、AさんとCさん、白石被告の3人で会っている。このとき、白石被告は、自殺を手伝う方法として、Aさんに柔道の締め技をかけ、Cさんはそれを見ていた。このときは死ぬのをやめたため、3人は解散した。

 弁護側によると、Cさんの自殺願望の理由は、(1)小学生のときに高機能自閉症と診断され、相手の気持ちを汲み取れない悩みがあった、(2)仕事が2年目でプレッシャーがあった。バンド活動もしていたが、リーダーは厳しく、叱られるのが辛く、精神的に不安定だった、(3)恋人との別れ――。そんな中で白石被告と出会っている。

 そして、バンドリーダーからライブ映像の編集に絡んで叱責があった後、8月28日、再び、白石被告に「お久しぶりです。先日は失敗して申し訳ありませんでした。また、お願いできませんか?」とのLINEのメッセージを送っている。このとき、Cさんの自殺願望が高まったことになる。「苦痛があっても力任せに、Aさんにやった方法で殺してください。寝落ちしたところでしてください」というメッセージだった。

本当に死にたい気持ちと、本当は死にたくない気持ち

 つまり、Cさんは死にたい気持ちと、死ぬのを止める気持ちの間を揺れ動いていた。8月29日夕方、白石被告から、スマホを江ノ島に捨ててくるように言われ、白石被告のアパートを出た後、Cさんは「これからは生きていこうと思います」とLINEをしている。

 厚生労働省の自殺対策のホームページの中で、「迷信(myth)と事実(fact)」というコンテンツがある。例えば、「一度自殺を考えた人は、ずっと自殺したいと思い続ける」というのは迷信で、事実は「自殺リスクが高まることは一時的なものであり、その時の状況に依存することが多い。自殺念慮が繰り返し起きることはあるかもしれないが、長く継続するものではなく、過去に自殺念慮や自殺未遂があった人でも、その後の人生を長く生きることができる」としている。

 その意味では、Cさんも「本当に死にたい」気持ちと、「本当は死にたくない」気持ちの間を行き来しているとも言えるのだろう。

 もちろん、短時間で殺害された被害者の場合は、白石被告と出会ってから殺害までに明確に自殺の撤回をした文言はなく、気持ちの上で生と死を彷徨っていたと判断できる材料はない。ただし、白石被告の法廷での証言によれば、待ち合わせ以後は、積極的に自殺に関する話題は出ていない。

被害者が実現しようとしたのは、殺害の被害者ではなくネット心中

 そのため、白石被告の認識がどうあれ、被害者が死にたい気持ちを持ち続けていると思わせても不思議ではない一方で、「本当に死にたい人はいなかった」と白石被告が証言するほど、自殺から遠ざかっている印象を持たせていた。自殺をした人が、家族や恋人、友人には「そうは見えない」という場合がある。白石被告から見れば、「ヒモになれるかどうかの見極め」のための「深掘り」だったとしても、被害者からすれば、悩みを聞いてくれる時間だったのだろう。

 弁護側は、被害者は黙示的に承諾をしていたと主張している。承諾殺人は、明示的に承諾をしていなくてもいい。ただし、殺害時に、殺されてもいいなどの被害者の真意に基づいてされたものかどうかがポイントだ。翻意したり、殺害自体への抵抗があれば、承諾とみなされない。首を締めるときに手足の動きが抵抗なのか、反応なのか。裁判所や裁判員はどう判断するのか。

 検察側の主張では、被害者の意図が死を実現させることだとしても、同じように「死にたい」と思っている白石被告と一緒に自殺をするというものだ。被害者の多くのやりとりは、「一緒に死にましょう」というものだったからだ。そして実現するとすれば、やりとり通りに首吊り自殺だったはずである。いきなり、殺されることを承諾はしてない。被害者が実現しようとしたのは、殺害の被害者ではなく、「ネット心中」のはずだった。

白石被告の逮捕に協力した女性は後日自殺

 被害者が自殺をしたいと思う理由は、他人から見れば「小さいこと」であっても、当事者からすれば、「死にたいと思うほどのこと」だ。いじめがあっても、教師の不適切な指導があっても、叱責や失恋があっても、それを我慢できる人もいれば、「死にたい」と思い詰める人もいる。その人の置かれた環境や、人間関係などによっても変化する。

 ちなみに、事件の発覚と白石被告の逮捕に協力した女性(当時30)がいた。9人目の被害者Iさん(当時23、女性)の兄がTwitterで協力を呼びかけたことがきっかけだった。日本テレビの報道によると、この女性は事件発覚6日前、白石被告と町田駅近くのファミレスで会ったものの、白石被告のアパートには行かなかった。そして、この女性の協力で警視庁は囮捜査をした。JR町田駅で待ち合わせの約束をするが、ドタキャンとなるようなものだった。しかし、白石被告が逮捕された後、この女性は自殺している、という。

 同じようなことは以前もあった。自殺系サイトを介して見知らぬ人と出会い、自殺をする「ネット心中」が知られるきっかけとなったのは、2003年2月11日。埼玉県入間市下藤沢のアパート内で、近くの無職男性(当時26)と千葉県船橋市の無職女性(当時24)、川崎市の無職女性(当時22)の3人が室内で死亡しているのが発見された。

 119番通報をしたのは、栃木県に住む女子高生(当時17)。2002年12月ごろ、亡くなった3人とその女子高生はインターネットを通じて自殺計画のやり取りをしていた。「男性がインターネットで、この部屋で自殺する人を募っていた。しかし、連絡が途絶えたため心配になった」と警察に話した。女子高生は死亡した男性らと連絡が数日前から取れず、計画に上がっていた同アパートを訪れたところ、室内で人が倒れているのを見つけた。このときの女子高生ものちに自殺している。

死にたい気持ちは繰り返す

「ネット心中」をしようとして、一度は相手に会って、実際には心中をしない場合もあるが、だからといって、自殺をしない心情になっているわけではない。むしろ、選択肢の一つとして、リアルに自殺という手段が頭に残り、より心理的視野狭窄を強化していく場合もあるということを示している。自殺遺体の発見者、事件の目撃者は自殺リスクを高めるのかもしれない。そのため、協力者や目撃者のケアやサポートはしなければならないだろう。

 つまり、「死にたい」気持ちは繰り返す。一度、自殺を止めたとしても、再度、「死にたい」気持ちが浮上する。もちろん、そんな浮き沈みは、家族だけで支えられるものではない。ある遺族の論告で「死ぬのはダメという前提のもとに話をしていても、だんだん面倒になることがあります。遺族はそうなっていました」と述べている。家族だけでなく、福祉や保健、医療、心理の専門的なサポートと、ボランティアなどのネットワークによって支えることが大切だ。「死にたい」気持ちの改善と、社会に対する信頼感を抱くようになる環境整備が必要ではないだろうか。

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 女性記者が面会、白石被告女性の胸や足を見ると元気になります 

NEWSポストセブン 2020年12月10日(木)16時05分配信

 東京・立川拘置所の「9番面会室」。新型コロナ対策なのか、さらに補強された分厚いアクリル板を挟み、「座間9人殺害事件」の被告・白石隆浩(30才)が満面の笑みで座っていた。

「おしゃれですね、立って全身を見せてください」
「しばらく会ってませんでしたね。お元気でしたか」

 公判が11月26日に結審。検察は「万死に値する」という厳しい表現で「死刑」を求刑した。その6日後、本誌女性記者が白石被告に面会した。2017年秋、神奈川県座間市にある白石被告のアパートで、男女9人の切断遺体が見つかった。希死念慮があった被害者を言葉巧みに自宅へ誘い込んで殺害。被害者の女性8人は失神後に強姦されていた。裁判は多方面に配慮がなされ開廷された。

「被害者9人は、A~Iと匿名で呼ばれました。また、証拠の遺体写真はあまりに凄惨なため、ショックを与えないようイラストに差し替えられた」(全国紙社会部記者)

 争点は「被害者に殺害の承諾はあったかどうか」。「承諾があった」という弁護側に対し、検察側のみならず当の白石被告さえも「承諾はなかった」と主張した。

「遺体解体の具体的な手順や、遺体の一部を鍋で煮ていたことなど、裁判での発言はおぞましいものでした。白石は当時を振り返り“自分の快楽を追い求めたような生活だった”と話した。ほかにも“金にならなければレイプする。証拠隠滅のため、レイプしたら生きて帰さないと決めていた” “失神した女性をレイプすることに興奮した”などの発言で、裁判員の心証はかなり悪い」(前出・全国紙社会部記者)

 本誌・女性セブンは事件後、拘置所で十数回、白石被告に面会。その言葉は「事件への反省や被害者への謝罪の気持ちが一切ない」ということ以前に、場当たり的で、とことん軽薄なものだった。

「女性の記者のかたと話すといいですね。胸や脚を見ると元気になります」
「もらった手紙、すごくいいにおいがしました。手首のにおいかと思った。袋に包んで保存して、落ち込んだときにかいでます。もう、そのにおいをかぐことだけがいまの楽しみです。こんなこと言って、変態ですね(笑い)」(白石被告・以下同)

 何度かの面会を経ると、そのような発言が増え、ハイテンションにしゃべり続けることが多くなった。

 初公判は2020年9月30日。直前の面会では、どこか投げやりな様子で「獄中結婚をしようとしていた子も、(自分の)誕生日にケーキを差し入れようとしていた子も、一般の女性も、もう誰も来なくなりました。性犯罪者だからモテないんですよ」と話した。

 12月2日、死刑求刑直後の面会。

──裁判は結審した。

「法廷の椅子は硬かったので、ずっと同じ姿勢をしていたのがつらかったです」

──求刑をどう受け止めたか。

「前々から、警察からも、検察からも、求刑はそう(死刑)なるだろうとは、示唆されていましたから」

──法廷で遺族のかたの話を聞いて思うことは?

「一部の遺族には『そうだよな~』と思いましたよ。自分が逆の立場だったらと考えると……」

──公判前よりもいまの方が元気に見える。

「ええ!? 元気に見えますか(笑い)? だとしたら、(記者に)会えたからテンションが上がってるんですよ!」

──自分とどう向き合っているのか。

「短歌を作っています。漫画を読んでいて浮かんだ情景や人生、いまの境遇について。刑が決まったら、もう面会はできなくなりますね。お元気で、体に気をつけてください。元気で、元気で」

 12月15日、判決が下る。

 白石被告に死刑判決、東京地裁「座間9人殺害全員承諾なし”」 

産経新聞 2020年12月15日(火)15時26分配信

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、15~26歳の男女9人が殺害された事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の判決公判が15日、東京地裁立川支部で開かれた。矢野直邦裁判長は、9人全員が殺害を承諾していなかったと認定。「犯罪史上まれに見る悪質な犯行。SNS(会員制交流サイト)が当たり前となっている社会に大きな衝撃を与えた」などと述べ、求刑通り死刑を言い渡した。

 白石被告は公判で起訴内容を認め、死刑でも控訴しない意向を示していた。これに対し、弁護側は判決後、「控訴する方向で検討する」と述べた。

 一連の事件では、ツイッターに「死にたい」と書き込むなどした若者が狙われ、約2カ月間に9人が犠牲になった。被害者が殺害を承諾したかどうかが最大の争点で、弁護側は有期刑のみの承諾殺人罪が成立すると主張していた。

 矢野裁判長は判決理由で、被害者の抵抗状況だけでは承諾がなかったと認定できないと指摘。一方で、事件に至る経緯や犯行状況に関する被告の供述は「信用性を基本的に肯定できる」とした。

 その上で、被害者はいずれも被告に殺害されることを想定していなかったり、自殺の意図があったとしても、想定とはかけ離れた方法で殺害されたりしたなどとして、全員が「黙示を含め承諾はしていなかった」と認定。「金銭や性欲などが目的の身勝手な犯行で、精神的に弱っている被害者を誘い出す手口は巧妙で卑劣というほかない」として「死刑をもって臨むことが真にやむを得ない」と述べた。

 判決によると、白石被告は座間市の自宅アパートで29年8月下旬~10月下旬、女性8人に性的暴行した上、男性1人を加えた9人をロープで首を絞めて殺害し、現金数百~数万円を奪った。

 座間9人殺害判決、匿名審理刺激証拠表示されず 

産経新聞 2020年12月15日(火)18時57分配信

 15日に判決公判が開かれ白石隆浩被告(30)に死刑を言い渡した座間9人殺害事件の裁判員裁判では、東京地裁立川支部が、多数の犠牲者が性的暴行を受けて遺体を切断されるという凄惨な犯行態様などを考慮し、異例の対応を取ってきた。

 男性1人を除く女性8人が性犯罪の対象となったことなどから、公判では被害者保護を目的とした被害者特定事項秘匿制度に基づき、被害者は「A~I」のアルファベットで呼ばれ続けた。矢野直邦裁判長は白石隆浩被告にも被害者の氏名などを口にしないよう再三、念を押した。傍聴席の約3分の1を遺族ら被害者参加人用とし、他の傍聴者から見えないよう遮蔽板を設置した。

 傍聴席から見える法廷のモニターには、遺体の写真など「刺激証拠」が映し出されることはなく、被告が逮捕後の実況見分で人形を相手に首を絞めた再現写真を表示するなどにとどめた。ただ、被告が遺体の処理手順について生々しい供述を続けた場面では、遺族らの退廷が相次いだ。

 また、最大の争点となった「殺害の承諾」の有無を丁寧に検証し、裁判員にも理解しやすいようにするため、発生順に1~3人目、4~7人目、8~9人目の3組に分けて審理した。

 実際、最初の3人は他の被害者と異なり、いずれも犯行前に自殺の意思を撤回するメッセージを白石被告に送っていた記録が検察側から提示された。一方、最後の2人は被害者の抵抗があったとする検察側主張に対し、被告が「抵抗はあったと思うが、具体的な反応は覚えていない」と証言するなど、グループごとの違いが浮き彫りになった。

 座間9人殺害で白石被告死刑判決自己の欲望断罪 

ダイヤモンドオンライン 2020年12月15日(火)16時10分配信

 神奈川県座間市9人連続殺人事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判判決公判が15日、東京地裁立川支部で開かれ、矢野直邦裁判長は「犯罪史上まれに見る悪質さで、SNSが当たり前になった大きな社会に不安を与えた」として、検察側の求刑通り死刑を言い渡した。SNSに自殺願望を投稿していた9人に「一緒に死のう」と誘い、女性には性的暴行を加えて殺害し現金を奪い、遺体をバラバラに切断してアパートに放置していた凄惨な事件。公判では殺害を巡って承諾があったかどうかが争点となったが、判決は被告が苦悩する被害者をだまして誘い出し自己の欲望の赴くまま蹂躙していたと断罪した。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

初公判で微塵も感じられない緊張感

 判決によると、白石被告は自宅アパートで2017年8月下旬~10月下旬、女性8人に性的暴行をしたほか、男性1人を含む計9人を絞殺して現金数百~数万円を奪った。その後、遺体を切断して、自宅アパートに遺棄した。

 公判を巡っては9人の生命が奪われたという重大性から、1つ1つの事件について慎重な審理が必要なため、事件の時系列順に被害者を3つのグループに分け、それぞれ冒頭陳述や被告人質問、中間論告する手続きで実施された。

 また遺族の希望により、被害者の氏名を伏せて審理する「被害者特定事項秘匿制度」が適用され、A~Iのアルファベットで呼称。遺族の傍聴席は衝立で遮蔽される異例の審理となった。

 初公判が開かれたのは9月30日。白石被告は緑色の上下つなぎの服で入廷した。黒いフレームの眼鏡にマスクを着け、ぼさぼさで肩まで伸びた髪の毛。開廷前、全員が立ち上がって一礼するのがマナーだが、裁判官と裁判員が入廷しても着席したままで、刑務官に促されて面倒くさそうに立ち上がり、礼をせずにそのまま座り直した。

 罪状認否では間延びした声で「え-、間違いありません」と起訴内容(判決と同内容)を全面的に認めた。検察官の起訴状朗読の間、首を傾けたり、椅子にもたれかかって脚を投げ出して広げたり、何度も背中をかく仕草も。

 人定質問でも、けだるそうに証言台に。生年月日や住所、職業を尋ねられた際にもはっきりと答えるものの、緊張感は微塵も感じられなかった。

 検察側は冒頭陳述で、白石被告は17年3月にツイッターを開設。自殺願望がある女性を狙い、一緒に死のうとだましていたと指摘した。8月23日ごろ、最初に神奈川県厚木市の女性会社員(当時21)を殺害後、犯行を重ねた理由を「働かずに金を手に入れることができ、性欲も満たせると考えた」と説明。10月下旬までのわずか約2カ月間に9人に対し、前触れなく首を絞めて殺害したのは「承諾によるものではなく、ただの殺人だ」と指弾した。

 遺体については証拠隠滅のため切断し、肉片や内臓は一般ごみとして遺棄。頭部は自宅アパートのクーラーボックスに入れて放置していたとした。

 弁護側は冒頭陳述で「被害者に死を望む気持ちがあり、被告によって実現されることを想定していた」とし、殺害は承諾の結果で、量刑の軽い承諾殺人罪を主張した。強盗についても被告が金銭を得ることは承諾しており、成立しないとした。強制性交や死体遺棄・損壊の罪は争わない姿勢を示した。

 また弁護側は刑事責任能力について争う方針を示したが、検察側は「被告は一貫して目的にかなった行動をしている。責任能力に問題はない」と反論した。

自殺の意思撤回も躊躇なく殺害

 第2回公判は10月5日に開かれた。被害者がSNSに自殺願望を投稿していたことを巡って、争点となっている承諾の有無について、弁護側証人の精神科医は「死にたい気持ちを積極的に表現できなかったり、周囲も気付かなかったりすることもある」「今後の予定を入れても、自殺することはある」としつつ「死について深く考えていたとしても、自殺する決心がついたとはとらえないほうがいい」と説明した。

 また、3人目までの審理が行われ(A)厚木市の女性、(B)群馬県邑楽郡の高校1年女性(当時15)、(C)神奈川県横須賀市の介護支援員男性(同20)までの冒頭陳述で検察側は、3人は白石被告に「生きていこうと思います」とメッセージを送るなど自殺の意思を撤回していたことを明らかにした。そして「被害者は白石被告の殺害計画を知らなかった。自殺願望と承諾はイコールではない」と強調した。

 第3回公判は6日開廷。検察側が最初の被害者とのやりとりで、預金額を聞き出した後は「死ぬのは良くない。もう少し頑張って」などと励まして親密になったと言及。そして、女性は事件現場となったアパートの費用を出し、借金の申し込みにも応じていたと述べた。その上で、生きようとする前向きな姿勢を示していたと強調した。

 第4回公判は7日開廷。白石被告は殺害の承諾について「なかった」、犯行の動機は「金と性欲」と明言。「悩みがある方が口説きやすく、思い通り操作しやすいと思った」と述べた。検察側の質問に答えた。弁護側の質問は「答えるつもりはありません」と拒否した。

 第5回公判は8日開廷。被告人質問で裁判官から殺害承諾の有無について問われ「分からないというのが本当のところ」と述べた。前日、弁護人の質問に答えなかった理由は「裁判を早く終わらせたいのに、方針が合わないから」と説明した。

 第6回公判は12日、第7回公判は14日に開かれ、唯一の男性被害者について、最初の被害者を通じて白石被告と知り合ったことが明らかにされた。その上で動機について、最初の事件がばれないように口封じだったとした。死にたいという気持ちは、白石被告に「これからはちゃんと生きていきます」とLINEを送り、自殺の意思を撤回していたことも明らかにされた。

 第8回公判は19日に開かれ、3人についての中間論告と弁論で、検察側は「殺害の承諾がないことは明らかで、単なる殺人行為だ」「承諾があったなら抵抗するはずがない」と強調。弁護側は「承諾は成立する」、抵抗については「条件反射」と反論した。

 21日には4人目以降の被害者(D)埼玉県所沢市の大学2年女性(当時19)、(E)同県春日部市の無職女性(同26)、(F)福島市の高校3年女性(同17)、(G)さいたま市の高校2年女性(同17)について審理。

 検察側は、4人が一緒に自殺する相手を募集するSNSの投稿がきっかけで白石被告と知り合ったが、会っている最中に母親へ「今から帰る」と連絡したり、美容室に予約を入れたりしており、自殺を連想させる発信もなかったとした。弁護側は被害者が家族関係などで悩んでおり「いずれも死を望んでいた」とし、死を撤回する言動もなかったと反論した。

 11月10日は残る2人の被害者(H)横浜市のアルバイト女性(当時25)、(I)東京都八王子市の女性(23)について審理された。

 検察側は2人が「被告が殺害を考えていることは知らなかった」と主張。弁護側は「死を実現するために被告宅に向かった。いずれも自分の意思で睡眠薬を飲んだ」と反論した。

 翌11日の公判では、被害者Hについて「深刻な様子ではなく、ツイッターは出会い目的と思う」「今から死のうという感じではなかった。明るく笑っていた」と供述。殺害した理由は「口説けそうと思ったが、(貢がせるには)収入面で難しいと判断した」と説明した。

 また7人目の殺害以降も、首を絞めるロープや遺体を隠すクーラーボックスを購入し「3~4人分を準備した。犯行をやめるつもりはなかった」と計画性を示唆した。

 翌12日は被害者Iについて、会う前から殺害を計画していたと述べた。また所持金が1000円ほどしかないことを認識していながら誘い出したことに「(犯行当初は)金が第一だったが、(途中から)レイプに変わっていった」と明かした。

 24日の被告人質問では、検察側に被害者と遺族に対しての思いを問われたが「正直、何とも思わない」と抑揚のない口調で答えていた。

極刑でも控訴しないと投げやりに言い放った

 最後の被告人質問となった25日の公判で、検察官の問いに「このままいけば極刑になるとは思う」と述べたが、その後も態度を変えることなく「極刑でも控訴しない」と投げやりに言い放った。

 翌26日には論告求刑公判が開かれた。白石被告はいつも通り無表情で、この日も開廷前に立ち上がりはしたものの礼をせず着席。求刑に先立つ遺族の意見陳述で「お前を許さない。娘を返せ」と罵声を浴びても、身じろぎもしなかった。

 検察側は論告で「遺族は苦しみと悲しみが一生続く。まさに生き地獄」「自殺志願者を標的に、SNSで巧妙に誘い出した手口は世間を震撼させた」と強く指弾。その上で「殺害の承諾がなかったことに疑いを差し挟む余地はない」「犯行は計画的で卑劣かつ冷酷」「わずか2カ月という短期間に9人もの若く尊い命を奪い、万死に値する」として死刑を求刑した。

 弁護側は被害者が首つりなど具体的な方法を白石被告と重ねていたとして「殺害を承諾しており、死ぬために被告宅に向かった」と改めて主張。殺害行為については「被告宅で酒や薬を飲み、タイミングは被告に委ねられていた」と訴えた。公判で白石被告本人が一貫して承諾を否定したことは「真実ではなく、早く終わらせるための供述だ」と強調した。

 結審直前、白石被告は矢野裁判長から発言の機会が与えられたが「何もありません」とだけ一言。再度「何もないでいいのですか」と念押しされたが「はい、そうです」と述べて着席した。死刑を求刑されても動揺した様子はなかった。

 (※筆者注:記事は被害者とご遺族に配慮し、犯行の手口は簡略化、遺族の陳述も可能な限り割愛しました。また、法廷での被告の様子や検察側と弁護側の主張を中心に記事を構成しました)

【悩みを抱えた時の相談窓口】

「日本いのちの電話」

▽ナビダイヤル「0570-783-556」午前10時~午後10時
▽フリーダイヤル「0120-783-556」毎日:午後4時~午後9時、毎月10日:午前8時~翌日午前8時

東京自殺防止センター(電話相談可能) https://www.befrienders-jpn.org

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2020年12月 2日 (水)

【座間9人殺害】事件が映す<若年層の死因>1位✍自殺

 座間9人殺害公判、被害者遺族の意見陳述と裁判員裁判の様子 

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読み上げの途中、検察官は涙声に…犯人は娘を言いくるめ、無残にも命を奪った

文春オンライン 2020年12月1日(火)12時12分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

 2017年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件をめぐり、強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)が東京地裁立川支部にて行われている。被害者遺族の意見陳述の模様をレポートする。

体を抱きしめてあげることもできないまま3年間

 2人目に殺害された群馬県の高校生、Bさん(当時15)の両親の意見陳述は11月25日に行われた。両親に代わって女性の検察官が代読した。読み上げの途中、検察官は涙声になった。

◆ ◆ ◆

 2017年11月9日。この日は、娘の誕生日で16歳になるはずでした。この日は身元が特定された日でもあり、かけた言葉が「おめでとう」ではなく、「お悔やみ申し上げます」と言われるようになりました。被告人の部屋から娘の荷物が発見されていたので、覚悟はしていました。

 事件の翌年になってようやく娘が家に戻ってきました。体を抱きしめてあげることもできないまま3年間が経ちました。気持ちの整理はまだできません。どうして、15歳の娘が、こんな無残なかたちで殺されなければならなかったのか。

 たしかに、自殺に関連した書き込みをしました。しかし、本気だったとは思えません。高校生のころなら、深く考えず、発信してしまうこともあるでしょう。少なくとも、事件当日、自殺願望は消えていました。事件当日は2学期の始業式です。その場しのぎで逃げたい気持ちがあっただけではないでしょうか。

 娘の書き込みは、私も知っています。私たちに伝えたかったのではないか。気付いてほしくて書き込んだのではないでしょうか。もっと早く気付いていればと繰り返し思い出し、後悔しています。同時に、犯人に対して怒りが強くなってきました。

 事件翌日、片瀬江ノ島の駅でスマホが発見されました。娘は(白石被告が江ノ島に捨てるよう指示した)スマホを捨てていなかったのです。帰るつもりだったからです。娘は一人で遠い距離の相武台前駅まで行きました。勇気が必要だったことでしょう。無事に帰ったら自信になり、成長していたはずです。被告人に対して約束をしてしまい、話を聞いてくれたので、帰れなかったのでしょう。黙って家を出た後ろめたさから帰りにくかったのかもしれません。

「やっぱり生きていこう」といった娘を犯人は言いくるめ、無残にも命を奪ったのです。許せません。娘には生きていてほしかった(※読み上げた検察官が涙声に)。

 今は大学1年生の年代です。でも、私たちにとって娘は高校1年生のままです。成長する姿を見たくても、時間はあの日で止まったままです。自己中心的で理解ができない被告人には極刑を要求します。凄まじい怒りがわきあがります。娘は生きていこうという結論を出していました。娘の命を被告人の命では償えません。死刑だとしても、その時まで、苦しみ、絶命するまでもがいて欲しい。それが願いです。

◆ ◆ ◆

ほんのわずかでも癒されることがあるとすれば……

 8人目に殺害された横浜市の女性Hさん(当時25)の兄と父親は11月26日、意見を陳述した。まず、兄が短いながらも、妹を失った苦悩を打ち明けた。

◆ ◆ ◆

 事件から私の生活は一変しました。家族や友人との、たわいもない会話で笑っていた日々がなくなってしまいました。時折、妹の夢を見ます。妹と会話をしたり、ぬいぐるみを抱いてむじゃきに笑っています。「もしかしたら妹が帰ってきたんじゃないか?」と思うことがあります。しかし目覚めると、涙のあとだけが残っています。

 妹が被告人に残虐に殺されて以来、私は人を信じることができなくなりました。一歩外にでれば、人が敵に見えてしまいます。公判で殺害状況を淡々と話す姿を見て、被告人は反省がないと思いました。すぐにでも被告人を殺し、仇をとってあげたい。何度も切り刻んでやりたい。

 犯行内容をすべて聞いた私の心は完全に死にました。しかし、ほんのわずかでも癒されることがあるとすれば、被告人がこの世から消えることです。これ以外にはありません。

◆ ◆ ◆

お前の家族が殺されたら、冷静でいられるのか

 続いて、Hさんの父親が声に感情を込め、声を荒らげながら、心情を訴えた。

◆ ◆ ◆

 娘が殺害されたのは2017年10月18日です。当日、私は朝早く、仕事のため家を出発し、娘の姿を見ることはありませんでした。まさか、こんな事件に巻き込まれるなんて思いませんでした。

 帰宅が遅いので、バイト先に電話をすると、定時にあがったと言われました。すぐに近くの交番に行きましたが、なかなかうまく説明できず、「写真をもってくるように」と言われました。一度、家に戻り、写真を持って行きました。結局、安否を確かめることがないまま、朝を迎え、行方不明届も出しました。その日から、家の電気をつけても、暗闇の世界にいるような気持ちでした。

 11月初旬、報道の人たちが押し寄せました。間違いであってほしいと思いました。警察からも連絡があり、辛い毎日でした。娘は二度と帰ることはありません。

 被告人をどれだけ強く憎んだことか。裁判でお前を見て、いっそう憎くなりました。おい、白石! お前の家族が殺されたら、冷静でいられるのか。それが親であり、家族だ。同じ年ごろの女性がいると、娘ではないかと思ってしまいます。

 この思いは一生消えません。娘を返せ。平穏な日々を返せ。どうか、心の叫びを受け止めて、被告人には厳罰を科してください。

◆ ◆ ◆

「お前の家族が殺されたら、冷静でいられるのか」と問われた白石被告だが、11月25日の検察官からの質問で「もし自分の家族が殺されたら?」と聞かれたときは、「自分でも家族が同じことをされたら、殺した人間を執拗に追い詰め、殺していただろうと思います」と答えている。家族を思う気持ちは白石被告もあるようだが、一部の遺族には謝罪したものの、すべての被害者遺族の心情を理解しているようには見えなかった。

 「『まらなきゃいい』という状態続けた」白井被告、死刑求刑の瞬間 

文春オンライン 2020年12月1日(火)12時12分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

 2017年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判(矢野直邦裁判長)で11月26日、強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)に対して、検察側は「万死に値する」として死刑を求刑した。また、被害者参加代理人6人のうち、5人は死刑を求めた。白石被告は求刑のとき、目をつぶり、息が荒くなったように見えた。

さらに殺人を続ければ、死刑になると理解した?

 検察官の論告は、次のような内容だった。

 1)犯罪の性質、2)動機や計画性、3)犯行態様、4)結果の重大性、5)遺族の処罰感情、6)社会的影響、7)被告人の年齢、8)前科、9)犯行後の状況――といった、死刑の基準となる「永山基準」に照らして、「一連の犯行が自分の欲のためであると、潔く認めているものの、自分の罪の重さと向き合っているのか疑問である」「前代未聞の猟奇的かつ残虐で非人間的な犯行。9人の命を奪ったことは万死に値する」「被害者の承諾がなかったことに疑いはない」として、「死刑」を求めた。

 求刑されたとき、白石被告は、目を瞑っていた。言い渡された後、メガネを直し、息づかいが荒くなったように見えた。ちなみに、求刑前日の被告人質問では、検察側とは死刑に関するやりとりがなされていた。

検察官 (2017年)8月30日夜、永山事件を検索していましたね? 何人殺せば死刑になるのかと。

白石 自分の行っている行為が死刑になるのかと思ったんです。

検察官 さらに殺人を続ければ、死刑になると理解した?

白石 はい。

検察官 死刑になることは怖くない?

白石 本気でつかまらないと思っていた。その都度、欲求が満たされていたので、死刑を考えなかった。

検察官 犯行を続けるのをやめようとは?

白石 「捕まらなければいいや」という状態を続けていた。

検察官 死刑は怖い?

白石 はい。

あらためて死刑を望みます

 続いて、被害者参加制度のもとで遺族代理人6人が意見陳述をした。最初に殺害されたAさん(当時21、神奈川県)の母と兄の代理人はこう述べた。

「自らが殺されることの承諾はないことは明らかです。娘は懸命に生きてきました。Aは、掛け替えのない娘、妹です。あらためてA母、A兄は、死刑を望みます」

遺族の心情を逆撫でしている

 3人目に殺害されたCさん(当時20、神奈川県、施設職員)の両親の代理人も、こう主張した。

「愛しい息子を突然、奪われました。お腹を痛めて産んだ子の骨を、どうして私が拾わないといけないのか。遺族に対しての慰謝の気持ちも表されていない。一言の謝罪もない。Cに対しては、証拠隠滅の達成しかない? 遺族には深くは思わない? 遺族の心情を逆撫でしている。傍聴することによって、事件のことを知ることができた。極刑を科すことが希望です」

 4人目に殺害されたDさん(当時19、埼玉県、大学生)の両親の代理人は、無念さを訴えていた。

「裁判所には考慮していただきたい点があります。一つは、Dは、部屋に行ってから数十分で襲われたのです。(殺害しなかった)Yさんを待たせているから、『早く済ませないといけない』という理由からでした。もう一つは、Yさんの存在です。ヒモになりうるとして生かされました。それ自体はよかったかもしれません。しかし、ヒモになれないなら殺害をしてしまう。そうした命の選別は受け入れることができません。

 両親にとって、Dは大切な一人娘でした。そんな娘を、人ではないような姿にしてしまいました。どうしても許すことができません。Dの事件の証拠調べ以後も、すべて傍聴しました。そうしたのは、強い恨みを保つためでした。辛い気持ちを抑えて、出来る限り出席しました。結論としては、死刑を望みます。首吊り士の名の通り、絞首刑が最もふさわしい」

改善、更生、社会復帰などは考えられませ

 Hさん(当時25、神奈川県)の父、母、兄の代理人は、Hさんと約束していたことを振り返りながら、白石被告を社会に戻さないように訴えた。

「被告人にとっては9人のうちの1人かもしれないが、わたしたちにとっては、掛け替えのない娘であり、妹です。娘はハロウィンや家族旅行を楽しみにしていました。しかし、部屋に明かりがついていても、暗闇の世界にいるようになってしまいました。いまだ娘の死を受け入れることができません。

 娘は法廷では『H』であっても、9人のうちの1人でも、記号としての『H』でもありません。被告人は、大切なHのことを無残に殺害したのです。

 2017年11月9日、身元が判明し、18年4月13日、遺体が家族のもとへ戻りました。どれだけ愛されていたことか。それなのに、Hは殺害され、バラバラにされ、遺棄されました。そのことで深い悲しみと憤りを抱かせました。被告人が法廷で述べていた発言で、遺族は傷つき、処罰感情を強くさせました。反省をしていないことの現れです。改善、更生、社会復帰などは考えられません。

 命をもって償ってもらいたい。死刑を科すのが相当です」

殺されることの承諾はない

 9人目に殺害されたIさん(当時23、東京都)の兄も、代理人を通じて、「殺されることの承諾はない」などと訴えていた。ただし、Iさんの代理人だけは「死刑」や「極刑」という言葉を使わずに、陳述をしていた。

「妹は殺害の承諾をしていませんでした。弁護人の主張は、1)引きこもりがちだったために、兄以外の異性と会うのは苦手。にもかかわらず、白石に会いに行く。それは死ぬ目的だった、というものです。また、2)部屋に入って、お酒と薬を飲んだ。それは死の準備行為だとも言っています。本当にそうでしょうか?

 家族や友人から『死にたい』と相談されたら、どうするでしょう? 死ぬのはダメという前提のもとに話を聞いていても、だんだん面倒になることがあります。兄はそうなっていました。Iさんは、『話を聞いてもらえない』と思っていたことでしょう。だから、『この人なら話を聞いてくれる』と思ったんではないでしょうか。会いに行くことは自然なことだったのです。Iさんはグループホームで、生活支援を受けながら暮らしていました。弁護人の主張はミスリーディングです。

 嫌なこと、苦しいことがあれば、お酒を飲む。飲むことで気分が楽になることはあります。Iさんはまさにその状態でした。『安定剤だよ、気分が楽になるよ』と言われれば、飲むことだってあります。

 酒や薬を飲むことは、殺されてもいいとの決断とは言えません。自分の気持ちを聞いてくれる、受け入れてもらえると思ったからでしょう。殺されてもいいという承諾ではない。それは弁護人の論理の飛躍です」

極刑になったら、演技をする甲斐がない

 論告前日の最後の被告人質問で「『一部の被害者や遺族には何の考えもない』。(この答えは)本心ですか?」と検察官に質問された白石被告は「本心です」と述べた。また、裁判官に「ここは遺族も傍聴している裁判ですが、本心でなくても遺族の心境を配慮して言うこともできたはずですが、なぜ言わないのですか?」と問われ、「ここまでしてしまったら、演技してもダメです。結局、極刑になったら、演技をする甲斐がない。正直に言うしかない」と述べ、死刑を受け入れているというよりも、諦めているようにも見えた。

 一方、最終弁論で弁護側は、責任能力について、「このような事件を平気で行った白石被告が、精神障害がないのは本当か?」などとして、精神鑑定について「違う医師が判断すれば、別の結果になるのではないか」と疑問を呈した。また、白石被告の供述は不合理で、信用性がないとして、「承諾がなかったとするのは疑問が残る」などと承諾殺人であることを訴えた。

 判決は12月15日に下される。

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 座間事件が映す「若年層の死因1位自殺」の闇 

東洋経済オンライン 2020年12月1日(火)8時21分配信/青沼 陽一郎(作家)

 自殺者が増えている。10月だけでも全国で自殺した人は2158人になり、前年同月と比べて619人、40.2%の増加だ。この増加傾向は今年7月から続いている。

 それに、今年になってから、いわゆる芸能人の自殺が目立つ。9月には女優の竹内結子と芦名星が、7月には三浦春馬が自ら命を絶っている。さらにさかのぼれば、フジテレビの番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーの木村花が、5月に自殺している。同番組をめぐるSNS上での誹謗中傷が原因であるとされる。いずれも22歳から40歳までの若い世代だ。

 こうした日本の状況を象徴するような事件の裁判員裁判が11月26日に結審した。神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件だ。

自分も自殺願望があるようにして誘う

 白石隆浩被告(30)は、2017年8月から10月にかけて、ツイッターで自殺願望をほのめかす相手を見つけると、自分にも自殺願望があるように「いっしょに死にましょう」「殺してあげます」などと持ちかけて、遺体発見現場となったロフト付きのアパートの部屋に誘い、殺害している。

 しかも、9人中8人は15歳の高校生から26歳までの若い女性で、部屋で首を絞めて失神させたあとに、必ず性行為に及んでから、首に巻いたロープで30分から1時間ほど吊るして確実に命を奪っている。

 残る1人の20歳の男性は、最初の被害女性Aと白石被告と、自殺を目的に3人で会ったことから面識があり、事件の発覚を恐れたことが理由だった。

 いずれも絞殺したあとは、ロープから降ろした遺体をバスルームに運んで解体。その一部は一般ゴミといっしょに捨て、頭部などはクーラーボックスなどに詰めて部屋に置いていた。その9人の遺体の一部が、同年10月30日にアパートから発見された。

 9人の所持品のうち現金は、勝手に自分で使っていた。つまり奪ったことになる。

 まさに猟奇的な事件だった。

 もともとは、路上やネットを使って風俗のスカウトの仕事をしていた白石被告。それが「女性のヒモになりたい」と考えはじめ、スカウトの経験から「自殺願望のあるような女性なら言いなりにしやすいだろう」と判断したことが、自殺願望を持つ女性とつながるきっかけだった。

 法廷で白石被告はこう語っている。

 「ツイッターを使ってキーワード検索をし『疲れた』『さみしい』『死にたい』とつぶやいている女性をフォローしたりダイレクトメールを送ったりしました」

 「何か悩みや問題がある人のほうが口説きやすいと思いました。操作しやすいということです」

 そこで最初の被害者となる女性Aと実際に会う。だが、そこでは自殺を思いとどまらせる。

 「もともとヒモになることや、お金を引っ張るという目的に対して、頑張って口説こうと思っていました」

 彼女に貯金のあることはわかっていた。その金でいっしょに住むことを前提に、ロフト付きの部屋を借りる。ロフトがあれば、首を吊りやすいと考えたからだった。

 すると彼女に、他の男の影を感じるようになる。いずれ彼女は自分から離れていく。そこで殺害を決意する。その手順は前述の通りだ。

金づるになりそうかを見極める

 「継続的に、女性をレイプして、お金を奪おうと思いました。Aさんの件で約50万円と部屋が手に入り、いざ殺人や死体損壊をすると、意外とうまくいき、次もやれる自信がありました」

 同じように、自殺願望のある女性を誘い出し、相手が金づるになりそうかどうか見極め、金づるになりそうもなく、本気で自殺する気もないと判断すると、いきなり首を絞めて性的暴行を加える。そして、ロープで吊るして、金を奪って、遺体を解体する。それを繰り返す。

 裁判では、弁護側が承諾殺人を主張。被害者に自殺願望があったとして、「殺害方法や日にちを伝え、自らの意思で被告に会いに行き、死を実現させた」としている。

 これに対して、検察側は「承諾はなく、単なる殺人」と主張。しかも被告人本人も、承諾はなかった、として弁護側と主張が食い違い、被告人質問でも弁護側の問いかけには答えようとしない、異例の展開になっていた。

 被告人質問では検察の尋問に快活に答え、被害者全員について殺害直前の承諾は「なかった」と明言している。むしろ、最後の被告人質問で白石被告は、この期間のことについて、こう述べている。

 「自分の快楽をずっと追い求めた生活だった」

 こうして振り返ると、その猟奇性ばかりに視点がいきがちな事件だが、その前にまず着目すべきことがある。この事件の背景に隠された日本の事情だ。そこを見落とすべきではない。

 なぜ、こんなに若い人たちが「死にたい」とつぶやき、白石被告と結びついたのか。実は、日本という国は、20代から30代の死因の第1位が「自殺」なのだ。それがもう20年以上も続いている。

 判決までに77日間の審理期間が予定されていた、この座間の事件の裁判員裁判がはじまった9月、厚生労働省は昨年2019年の「人口動態統計」を公表している。

 そこにある5歳ごとの年齢階級別に表示される死因の順位を見ると、15歳から39歳までの死因の第1位がいずれも「自殺」だった。2人に1人がなるとされる「がん」よりも多い。しかも、10歳から14歳まででは、「自殺」が死因の第2位を占め、2017年には同年齢階級の第1位になっている。

 さらに、40歳から49歳までの死因の第1位は「がん」だが、第2位は「自殺」となる。50歳から54歳まででは「自殺」が第3位、55歳から59歳までで第4位、60歳から64歳までで第5位だ。

 国内の日本人の自殺者数は、3万2000人を超えた2003年をピークに、年々減少傾向にある。ところが、20代、30代の死因の第1位が「自殺」である傾向は、もう20年以上変わらないで推移している。こんなに若者が自ら死を選ぶ国は、先進国といわれるなかでも日本だけだ。

欧米各国の死因1位は事故

 政府は10月27日の閣議で2020年版『自殺対策白書』を決定している。その中でも、15歳から39歳までの死因の第1位が自殺であることを確認すると、「先進国の年齢階級別死亡者数及び死亡率(15~34歳、死因の上位3位)」とする図表を提示している。

 それによると、2013年から2015年までの各国の統計で、日本は自殺が死因の第1位だが、フランス、ドイツ、カナダ、アメリカ、イギリスは、いずれも自殺が第2位で、イタリアは第3位となっている。各国とも第1位は「事故」だった。

 人口10万に当たりの死亡者を示す自殺の「死亡率」を見ても、日本は16.3だが、フランス7.9、ドイツ7.5、カナダ10.6、アメリカ14.1、イギリス7.4、イタリア4.1となっている。やはり日本が高いことがわかる。ちなみに、韓国は同年齢階級の死因の第1位が自殺で、死亡率は日本と同じ16.3となっている。

 今年の死亡者数の増加は、新型コロナウイルスの影響が考えられる。そうだとすると、これは「新型コロナウイルス関連死」と見たほうが正しい。

 芸能人の自殺が目立つのも、個々の事情を検証する必要はあるとしても、もともと同年齢層の自殺が多かったことを加味する必要がある。

 まして、座間の事件が起きたのは3年前のことだ。前述のようにこの年は10歳から14歳までの死因も第1位が自殺である。

 ずっとそんな状況が続く日本の現実を突いたのが、この事件だった。希死念慮を抱く若者がこの国には多いことを、少なくとも白石被告は知っていた。そういう人間を操作しやすいという自信も抱いていた。だからこそ、不気味なのだ。

現代の日本の闇を象徴する座間事件

 国は、芸能人が自殺すると「厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センター」が厚生労働省と連名で、「メディア関係者各位」とする通達を出し、報道を過度に繰り返さないこと、自殺に用いた手段について明確に表現しないこと、などWHO(世界保健機関)の『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道に徹するように要請する。模倣して若者の自殺が増える傾向にあるからだ。

 しかし、自殺者数が減少傾向にあったとは言え、若者の自殺が死因の第1位であったことは、もう20年以上も改善されないできた。メディアに注意喚起する以前に効果的な対策が実施できていないことの証左だ。

 それができないから、今回のような事件を生んだ。現代の日本の“闇”を象徴する事件なのである。

 検察は最後に白石被告に死刑を求刑した。判決は12月15日に言い渡される。

 

2020年11月29日 (日)

【座間9人殺害】公判✍白井被告の母親「何故こんなことが出来るの?」

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年11月26日(木)18時42分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

Aさんと手をつないで白井被告が明かした幸せな日々謝罪の言葉

 2017年10月に神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった事件の裁判員裁判が11月25日、東京地裁立川支部で行われ、強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)に対する最後の被告人質問が行われた。

一部の被害者には謝罪したかった

 被害者一人ひとりに対する現在の思いについて聞かれると、白石被告は、一部の被害者や遺族に対しては「何を思っていたのか、周囲の人がどんな思いで接していたのか、聞いているとわかりました」として、「深い後悔がある」と話した。その他の被害者や遺族との差について、「一緒に過ごした時間の長さやその被害者の家庭環境、逮捕につながったかどうか」を挙げ、謝罪をしたい旨を述べた。そして、実際に「申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 前日の白石被告は弁護人の質問にはすべて答えたが、この日は、約50問について小さな声で「黙秘します」と繰り返した。そんな中でも答えた質問は、裁判を通じて弁護人が白石被告の意に反して争ってきたことへの反論だった。

「私の親族に多大な迷惑をかけることはわかっていました。できるだけ公判前整理手続きを簡単に終わらせて欲しかったです。そこを配慮して欲しかったです。できるだけ報道されないようにして、その上で、一部の被害者には謝罪したかったです」

Aさんとは幸せな日々だった

 白石被告は、できるだけ審議せずに、簡単に終わらせたかった旨を話した。最初から最後まで、弁護人との関係は良好にならなかった。ただ、他にもいくつかの質問には答えた。最初の被害者Aさん(当時21、女性)については「幸せな日々だった」と話した。

「相武台前駅付近を歩いたときや不動産屋めぐりをしたときに、手をつないでいて、なんとなく落ち着いて、幸せな時間でした。死にたい話はしたとは思いますが、普通に異性として接しました。口説きがうまくいって、なんとなく、Aさんの方から『ホテルへ行こう』と誘ってくれた。希死念慮を消滅させるのも楽でした。口説くのはうまくいきました」

 また、Aさん、Cさん(当時20、男性)と3人で会った2017年8月15日の夜、Aさんからカカオトークで「Cさんは死ぬのをやめた。私もやっぱり、生きていこうと思います」とのメッセージを受けた。弁護人から「このメッセージは、Aさんが亡くなった後に、カムフラージュするために指示したのか?」と聞かれて、白石被告はこう答えた。

「私が(2人の)前を歩いていて、CさんがAさんを口説いていたんです。その状況で送られてきたので、カムフラージュではありません」

白石被告の部屋で首を吊る練習をした女性がいた

 これはBさん(当時15、女性)が白石被告にLINEで「生きていこうと思います」と送ったときと同じように、指示したものではないとした。

 弁護人は、被害者9人のほか、3人の女性と会っているかという点についても問いただした。1人は、事件前の8月上旬に会って10月中旬まで交際していたXさん。もう1人はDさん(当時19、女性)を殺害する前後に白石被告の部屋に泊まっていたYさん。この2人については、公判ですでに明らかになっていた。

 弁護人によると、もう1人はZさんだ。Zさんは2017年9月11日に白石被告の部屋に来た。当時はロフトの梯子にロープが結ばれていて、そこで首を吊る練習をした。その練習を白石被告が手伝っている。その上で、刃物を見せて「解体する道具なんです」と説明した。すると、Zさんは部屋を出て行ったという。

 筆者の面会では、被害者以外に4人と会い、1人は男性。残り3人の女性のうち、1人とは「8月から10月まで付き合っていた」と話した。それがXさんだろう。もう1人は「10日間住んでいた」と言っていたが、それがYさんだろう。残りの1人については、「部屋を見てクーラーボックスがあるのを見て逃げた女性がいた」という。それがZさんなのだろう。

 このZさんに関しては、検察側の質問に答えている。Zさんは女子高生だった。

「(首吊りの練習は)記憶にはないのですが、言われてみれば、そうしたかもしれません。『クーラーボックスの中に生首が入っている』と話しました。そのためか帰りました。その女性とはその後もLINEでやりとりをしていましたが、もう会うことはありませんでした。お金を持っていそうで、私に対して好意を持っている感じがありました。お金を引っ張れるかもしれないと思いました。女性をしっかりと口説いてから情報を与えたので、通報することはないと思っていました」

ヤクザでも警察官でも、殺すつもりでした

 白石被告の部屋のロフトには、布団が敷かれており、横にナタを置いて寝ていた。

「身を守るためです。被害者の人数がそれなりになっていましたので、関係者や、関係者の身内にヤクザがいるかもしれませんので、家に乗り込んでくるんじゃないかと思っていました。そのときは殺すつもりでした。もし警察官が1人で来た場合でも、殺すつもりでした」

拘置所内で売っているおやつを食べたかったから

 また、白石被告は拘置所内で筆者を含めて、複数のメディア関係者の取材を受けている。検察官は「どうして取材を受けたのか? 遺族の気持ちを理解しようとしたのか?」と聞いた。すると、こう話した。

「拘置所内で売っているおやつを食べたかったからです。(被害者の遺族の心情を思うよりも)おやつを食べたいという欲求には勝てませんでした」

 お金を無心するなら、女性のヒモになるのではなく、親族を殺害する選択はなかったのか、という検察側の質問には、

「選択をするとしたら父になります。しかし、父から(金銭的)援助を受ける態勢はできあがっていましたので、殺す必要はないです。母や妹は、7年間会っておらず、居場所もわかりませんでした」

 と述べた。事件後、家族は面会に来ていないという。

「面会には1人も来ませんし、手紙もありません。寂しい。悲しい。しかし、これだけのことをしたのだから、見放されても仕方がない。本当に申し訳ない。自分の存在があったことを忘れて生活をしてほしい」

一部の被害者には深い後悔を持てません

 白石被告自身は親族を思う気持ちがあるようだが、一部の被害者や遺族に対しては、同情心や共感的な態度はないようだ。

「正直、一部の被害者には本当に後悔しています。しかし、一部の被害者には深い後悔を持てません。(後悔の感情を)持てているのは、AさんとEさん(当時26、女性)、Fさん(当時17、女性)、Iさん(当時23、女性)です。その違いは、過ごした時間の長さと、家庭環境。逮捕につながったかどうかです。ただ、自分でも家族が同じことをされたら、殺した人間を執拗に追い詰め、殺していただろうと思います。

 一部の人には、どこかのタイミングでしっかりと謝罪をしようと思っていました。私が起こした行動によって、命を奪ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。大人しく、罪を認めて罰を受けようと思います」

 また、検察官にEさんの元夫が傍聴に来ていると告げられた。Eさんと元夫との間には子どもがいた。

「まだ未来のある子どもさんに、しっかりと母性を伝えることができない状況にしてしまい、申し訳ありませんでした」

育て方が悪かったの?何故こんなこと出来るの?」母親の悲痛な叫び

文春オンライン 2020年11月27日(金)12時12分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

 11月26日、2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判が結審した。検察側は死刑を求刑した。強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の被告人質問を聞いていると、自身と、被害者の母親に関するエピソードがよく出てきた。

 改めて、法廷でのやりとりを振り返る。

母親が心配しているという言葉を聞いて

 まず、殺害をしなかった女性3人のうち、Yさんは、「母親が心配している」と言ったことで、白石被告は実家へ帰宅することを許している。

 実は、6人目の被害者だったFさん(17歳、女性)も「母親が心配している」と言って、白石被告のアパートから帰ろうとしていた形跡がある。しかし、白石被告もFさんも寝てしまい、最初に白石被告が起きる。そのとき、Fさんが寝ている顔をみて、性欲が増したことから、レイプして殺害することを思いついたという。もちろん、月5000円でもいいから、お金を引っ張れるのなら、生かしてヒモになることを考えていた。ただ、「母親が心配している」という言葉を聞いて、女性を自宅に帰そうとする心情が湧いた。

 一方で、同じように「帰るかもしれない」と思ったEさん(26歳、女性)は殺害している。元夫とのやりとりのために、白石被告の部屋を何度も出入りしていた。Eさんからは、「夫とうまくいっていないことや、他にも彼氏がおり、その彼氏ともうまくいってないということを聞いていた」というが、実際には離婚をしていたので「元夫」になるし、彼氏がいたとしても不思議ではない。「子どもがいると聞いていたか?」と問われると、白石被告は「話が出ていない」と答えた。つまり、Eさんの母親の話と、Eさん自身が母親であることについての会話はなかった。

母親母性へのこだわりがある?

 白石被告は「深い後悔がある」として4人の名前をあげたが、その一人がEさんだ。帰ろうとしていたときに、もし、いずれかの話があれば、殺害しなかったのだろうか。

 検察官は、Eさんの元夫への謝罪を促されたとき、白石被告は「まだ未来のある子どもさんに、しっかりと母性を伝えることができない状況にしてしまい、申し訳ありませんでした」と述べた。わざわざ「母性」という言葉を使った。白石被告は、「母親」や「母性」へのこだわりがあるのかもしれないと筆者は感じた。

母親とは7年間会っていない

 事件発覚から公判が始まるまで、少なくとも、報道レベルでは、母親の姿のイメージができない。ただ、拘置所での面会では、多少母親のことを聞くことができた。中学では塾に通っていたが、その理由は「親に言われてなんとなく」だと語り、筆者が「どちらか?」と聞くと、「母親です。父親は仕事中心で、子育ての時間はなかったです」と答えている。そして、思い出としては「料理」を挙げていた。

 そんな母親とは7年間会っていない。白石被告が卒業後、スーパーに就職したことで一人暮らしを始めた。その後に両親は離婚することになる。

 白石被告の逮捕後、家族から手紙が届いたことはなく、面会に訪れたこともないという。

「寂しいし、切ない。しかし、これだけのことをしたのだから、仕方がない。本当に申し訳ないことをした。自分の存在があったことを忘れて生活をしてほしい」

 白石被告は父親とは不仲で、そのために一人暮らしをしたといっても過言ではない。家族からの手紙がなく、面会にもこないがないことへの感情的な吐露は、母親を念頭に置いた発言ではないだろうかと筆者が思うほどだ。そんな母親の供述調書の一部を抜粋する。

◆ ◆ ◆

 平成元(1989)年に夫と結婚し、平成2(1990)年10月9日、隆浩を出産しました。3086グラムでした。隆浩という名前は、いろいろな本を読んで、画数などから決めました。初めての子育てでした。幸せに暮らしていました。

 平成4(1992)年に長女を出産。手狭になったために、座間市内に家を買いました。年に1回は家族旅行をしたり、実家に行ったりしました。自由に物事を考えてもらいたいと、過剰には干渉しないようにしました。そのため、わがままに育ったかもしれません。言うことを聞かなくても、手を挙げることはしていません。

 5歳のとき、幼稚園に入りました。活発な子と比べると、内気でしたが、友達はできました。サッカークラブに入りましたが、ボールを回してもらえないため、1年でやめました。いじめがあったわけではありません。

 小学校の低学年では扁桃腺の病気があり、月1回は熱を出し、病院に行っていました。大人しい性格で、内弁慶でした。ただ、学校の出来事は話してくれました。小学校入学のとき、テレビゲームを買ってあげました。当時は1日2時間。ゲームに夢中でした。何度も注意しました。しかし、外にも遊びに行きました。

 小学校のころはよく外で走り回っていました。低学年のうちに、高学年で習う漢字を知っていました。ゲームの攻略本を読むのに調べたと言っていました。国語だけ、成績がよかったです。クリスマスや誕生日にも新しいゲームソフトを買ってあげました。

 中学に入ると、ゲームの時間が守れなくなりました。しかし、注意をすると、最終的には言うことを聞いていました。野球部に入りましたが、1年でやめました。大人しいので個人競技が、向いていたと思います。このころ、学習塾へ行きましたが、1年も経たずに行かないようになり、やめてしまいます。

 中3になると、成績は中の上。しかし、もともと勉強好きではないので、塾をやめると、成績は下位になりました。仲の良い子とはクラス分けで別々になり、この頃から、「学校へ行きたくない」「気が強い人ばかりなので合わない」と話し、不登校になりました。食事のとき以外は部屋に閉じこもるようになりました。必要最低限の会話のみになりました。

 高校受験は、大学を目指してもらいたかったのですが、少しでも就職に有利な学校へ行きました。家では、学校のことを話さなくなりました。高校ではクラブ活動に入ってないと思いますが、刑事さんから「柔道部に入っていなかったか?」と聞かれました。柔道着を持ち帰って来たことは記憶しています。体育で必要だったと思っていました。

 このころ、「高校はレベルが低い」「クラスメイトがだらだらしているからつまらない」といい、楽しい学校生活ではないようで、休みや遅刻が多くなってきていました。

 家にいるときはゲームをしていました。部屋は散らかっていました。ゲームの時間制限と部屋の掃除を約束したのですが、約束が守れないので、何度も注意しました。すると、「今するところだったのに、やる気がなくなった」と言い、人からの干渉を嫌っていました。

 何度も言っても言うことを聞かないと、夫が注意していましたが、言ってもゲームをやめないことがありました。そんなときは、ブレーカーを落とし、ゲームをやめさせました。隆浩は、部屋の壁に穴をあけるほど、激昂しました。夫とは会話がなくなっていきました。ただ、いつか親の言っていることをわかってもらいたいとは思っていました。

 高校時代はスーパーなどでアルバイトをしていました。スーパーはサミットです。卒業後、就職をしましたが、学校推薦では就職できませんでした。休みや遅刻が多かったからです。

 そのため、バイトをしていたサミットに就職しました。本意でなかったかもしれません。

 しかし、私も夫も安心しました。

 卒業するまでに家出を3回しています。北陸、山陰、北海道。山陰に行ったときは、電車賃を持っておらず、夫が迎えに行きました。このころ、ケータイで自殺系サイトを見ていました。自殺するために家出をしたのではないでしょうか。数日間で帰宅しました。「どうでもいい」「生きていてもしかたがない」と口にしていましたが、突発的に死にたいと思ったのではないでしょうか。「そんなことをしたらだめだよ。生きてさえいれば、いいことはあるよ」と言いました。自殺未遂や自傷行為は見たことはありませんが、練炭自殺のグループに行ったことがあると言ったことがありました。

 サミットでは、ベーカリー部門の担当になりました。××店だったので一人暮らしをしました。不器用でむいていないのではないかと思いましたが、応援していました。この頃、私は夫と別居することを考えましたが、隆浩には相談していません。

 夫は「隆浩のことは俺に任せてくれ」「連絡は取らないでほしい」と言っていました。連絡をとると、私にお金を求めることが予想されたためです。たしかに、連絡がありましたが、私の口座から隆浩の口座に振り込んだこともあります。先輩との付き合いだ、と言っていました。その後は、連絡をとっていません。

 一緒に住んでいたことを考えると、このような事件を起こすとは信じられない。なぜか知りたいです。育て方が悪かったの? なぜこんなことができるの? ご遺族に謝っても謝りきれない。

◆ ◆ ◆

猟奇性の根源を探ることができない

 白石被告は、11月24日、母親の供述調書が読み上げられたことについて、「今はそのこと(母親の供述調書)で頭がいっぱいです。本当に迷惑をかけたんだな」と話した。母親のことになると、いろんな感情がめぐったのだろう。

 ただ、調書など明るみに出た情報では、白石被告の猟奇性の根源を探ることができない。問題にするほどの親子関係でもない。精神鑑定をした精神科医は、父親とは面会しているものの、母親とはしてない。

 弁護側は、11月26日の最終弁論にて、白石被告が母親や妹と面会してないことを指摘した。鑑定書の欄には「家族歴」がなく、証拠提出されていない「メモ」があるだけで、検証可能な方法になっていないとして、精神鑑定に疑問を投げかけている。

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年11月28日(土)6時12分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

悪魔の所業」「同じ人間として許せない法廷に響いた遺族の涙の声

 神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判が11月26日、結審した。強盗、強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の被告人質問を、被害者遺族たちも傍聴席で聞いていた。

 報道記者席や一般傍聴席との間が遮蔽された遺族席が設けられ、涙でかすれる声や怒りの声が漏れ伝わってくる場面もあった。遺族の中には、意見陳述をする人たちもいた。その一部を紹介する。

他人事のように話す白石被告への怒り

 まず、最初に殺害されたAさん(当時21、神奈川県)の母親は証言台で話をした。白石被告との間にも遮蔽物があり、声だけを聞いている状態だ。傍聴席からは曇りガラス越しに姿を確認できる程度だった。他人事のように話す白石被告への怒りが伝わってきた。

◆ ◆ ◆

 あの日から3年の月日が流れました。しかし、私たち家族の中では、時が止まったままです。娘は責任感が強く、思いやりのある子でした。ただ、思春期の頃から、精神的に不安定になり、通院や入退院を繰り返していました。娘なりにバランスを保とうと努力していました。そんな中で、仕事を続けながら、パソコンの資格を取りました。正社員を目指し、5月ごろから準備をしていました。信頼できる人と出会い、生活をすることを望んでいましたが、身勝手な被告人に命を絶たれました。娘が味わった苦しみ、痛みを思うと、引き裂かれる思いで、娘のことを思うと、無念でなりません。

 私がもっと娘の話を聞いたり、寄り添っておけばよかったのかとも思います。私たち家族は何一つ心が癒えることはありません。当たり前の日常は取り戻せない。加害者には、憎しみや怒り、悔しさが湧き上がってきます。報道関係者の取材や裁判では、他人事のように話しています。

 しかも、報道では、娘の名前、顔、生活の一部が書かれました。マスコミが押しよせてきました。数日間は恐怖で仕方がなかったです。現実がなかなか受け止めきれない思いで、被害者の中に娘がいることが夢であってほしいと思いました。加害者には、同じような苦しみや痛みを味わって欲しい。

 死刑が執行されるまで、人権を守られて生活をすると思います。しかし、娘が戻ってくることはありません。21歳という短い人生を、身勝手な犯人に奪われました。強い憤りを抱きました。死刑をもって償ってほしい。

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同じ人間であることが許せない

 続いて、Aさんの兄が意見陳述をした。振り絞るように、妹との思い出を話した。

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 妹が亡くなって数年が経ちましたが、今でも妹のことを思い出します。優しくて、嫌なことでも文句を言わずにしていました。2人で出掛けたことを思い出します。妹は楽しんでいました。お世話になった人へのプレゼントをあげることもあり、私ともプレゼントを贈り合っていました。喧嘩もしましたが、仲が良かったと思います。

 裁判では、犯人が第三者のように質問に答えているのを見てびっくりしました。妹は本気で死ぬ気がなく、頑張ろうとしていたことがわかりました。平気でいる犯人が同じ人間であることが許せない。一刻も早くこの世から消えていただきたい。

◆ ◆ ◆

棺のなかの姿はもはや人のものとは思えず……

 Aさんを殺害した証拠を隠滅するために殺害されたCさん(当時20、神奈川県)の父親も陳述した。口封じのための犯行を「悪魔の所業」と話していた。

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 私たちは、息子がいなくなったとき、時間が許す限り、探し続けました。私立探偵を雇い、借金までしました。事件の一報を知りましたが、まさかとためらっていました。自分自身が不安定になりましたが、仕事の終わりに高尾署に電話をしました。息子の存在が分かり、血の気がひきました。何も考えられなくなりました。残忍な犯行と残虐な内容。私たちは衝撃を受けました。

 息子を引き取りましたが、棺のなかの姿はもはや人のものとは思えず、本当に息子かと信じることができませんでした。あまりの衝撃に麻痺をしていましたが、自宅に戻って、一気に感情が吹き出しました。

 もっと、音楽をよりどころにしていた息子の人生を理解してあげればよかった。一生懸命にギターの練習をしていました。息子の参加したライブの映像をみることができましたが、いきいきと輝いている息子が映っていました。勤めていた施設の利用者にギターを聴かせようと出勤していたこともありました。最初は、息子が音楽で生きていこうとすることを理解できずにいました。しかし、本気なら理解しようと思っていましたが、もう叶いません。

 犯人は絶対に生かしてはおけない。息子は、一時的に、「死にたい」と思うほどの苦しみを抱えていたと思います。しかし、死ぬことをやめ、生きることをあきらめていなかったのです。被告人は、事件の発覚をおそれ、口封じのために殺害し、遺棄しました。人の未来を奪った悪魔の所業です。絶対に許すことはできません。生かして、再び社会に放って欲しくはない。極刑を希望します。

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被告人は今でものうのうと生きています

 同じくCさんの母親も意見を表明した。高尾署で遺体を見た時のショックは言葉にできないほどの悲しみだったという。

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 息子は優しく、繊細でした。ゆえに、悩みを抱えましたが、その都度、家族はサポートしましたし、職場の方も支えてくれました。そのことに早く気がつかせ、救ってあげられればよかったと後悔しています。

 次男を出産したとき、息子がポケモンを差し出し、「これをあげる」と言ったときのことを思い出します。

 とても可愛かった。それが目に焼き付いています。息子は、私にとって、愛おしい存在です。もうその表情を見ることができないと思うと、心の中が空っぽになりました。

 事件前、息子は病気になりました。入院し、治療を受けていました。入院中の様子を見ていくと、順調に回復していました。入院前と変わらない生活が送れる、日常に戻れると信じていました。

 行方不明になったとき、思いつく限りの場所に行き、探しましたが、8月29日、あの日から息子の姿をみることができなくなりました。事件が発覚し、数日後に高尾署へ行きました。あの姿をみて……(涙声で聞き取れない)……大切な子……(同)……胸が引き裂かれる思いです。

 生きていこうとした息子を騙し、犯人の身勝手な理由のために殺されましたが、どれだけ無念だったことでしょうか。息子の人生はたった20年で終わらされました。しかし、被告人は今でものうのうと生きています。これからつながっていただろう命、人生も奪われました。どれだけ罪深いことなのか。極刑をもって、この世から消えて欲しいです。

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証言の最中に白石被告はうなだれた

 ヒモになろうと思ったYさんをカラオケボックスで待たせている最中に、白石被告は、アパートに呼んだDさん(当時19、埼玉県)を殺害している。そのDさんの母も話をした。DNA鑑定で、身元が特定できたのは、Dさんの誕生日だった。

 この証言の最中、白石被告はうなだれた。刑務官に取り囲まれているために、傍聴席から白石被告の様子が見えにくい。凝った肩を動かしたり、深呼吸をしたり、机の上のノートや資料を見たり、だるそうにすることは公判ではよく見かけたが、うなだれる姿を筆者は見たことがなかった。

◆ ◆ ◆

 小学校ではクラブ活動や宿泊学習でのキャンプファイヤー係になり、がんばっていました。中学校ではクラス対抗の合唱や委員会活動を頑張っていました。教員になりたいと思ったのもこの頃です。高校受験の面接で、部活をやり直したいと言っていた通り、3年間、演劇部で頑張っていました。

 大学入学後、ともだちと泊まりがけで遊びに行ったこともあります。成人式の準備もしていました。年越しのカウントダウンのイベントも楽しみにしていました。しかし、約束を果たすことなく、19歳9ヶ月でこの世を去りました。

 娘が行方不明になって事件発覚までの数ヶ月、昼夜問わず探し続けました。結局、見つけることはできませんでした。DNA鑑定で娘であると分かっても、すぐには受け止められませんでした。対面できた日は、娘の誕生日でした。変わり果てた姿でした。声をかけたのは、「誕生日、おめでとう」ではなく、「やっとみつけられた」「ずいぶん探したよ」ということでした。どれだけ苦しい思いをしたことでしょう。

 被害者が特定される前に、マスコミの報道が過剰になりました。インターホンを押されたり、家族だけでなく、近隣にも迷惑をかけました。実名報道を控えて欲しいとお願いをしましたが、無視されました。なぜ、被害者だけが苦しまなければならないのでしょうか。

 被害者は自殺願望があり、自ら犯人に接触したと言われていますが、間違っています。娘はこれまでも悩みを抱えてきましたが、一つ一つ問題を解決してきました。事件の直前、成績に悩んでいました。しかし、娘がこのような小さなことで希死念慮を抱くはずがありません。

 大学から面談通知が来ていました。両親とともに呼ばれていたため、「留年が決まったわけじゃない。きっと避けるためのヒントをくれるんだよ」と諭すと、娘も納得していました。生きてさえいれば解決できた悩みです。少し、気が重かっただけで、逃げたい、話を聞いて欲しいとツイートしただけと思います。

 被告人のように悪意があり、下心をもって近づいてくる人がいることを知らなかったのです。なぜ、19歳で殺されなければならなかったのでしょうか。娘は、夢や希望、未来の全てを奪われました。

 被告人は、女性に会い、ヒモになれるかを判断し、ヒモになれないとレイプし殺害しました。犯行を重ねるたびに目的が変化していき、異常な性欲を満たすことが多くなり、殺害までの時間が短くなっていきました。そして、次第に殺害や解体に慣れていったのですが、裁判では「記憶がない」と繰り返すばかり。「悩みを深掘りした」というが、内容を覚えていない。身勝手な通り一遍な発言を繰り返しました。

 被告人は、娘のことを「無口な人、職業のことしか聞き出せなかった」と言っていました。無口なのは、心を許していないからで、警戒をといていないからです。

 今でも19歳の娘が心の中に生き続けています。時々、家の中で娘の気配を感じます。「ただいま」「おなかすいた」と帰ってくるような錯覚をすることもあります。寂しさに耐えきれず、涙が止まらなくなることはあります。生きている限り、こうした感情が続くのでしょう。どうか、娘を返してください。娘との幸せな生活を戻してください。私たちの願いはそれだけです。それが叶わないなら、重い罰を受けてください。

 娘を殺害した被告人には、極刑が下ることを信じています。娘を思い、自分たちを振り返る3年間でした。私たち遺族を支えてきた方々には感謝します。

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捕まらなければ、後悔していません

 こうした遺族の意見を聞いて、白石被告はどのような心境になっていたのだろうか。翌日の被告人質問では、弁護側から「一連の事件について後悔しているか?」との質問がされた。白石被告は「結果として捕まってしまったので後悔している」と答えた。

 これまでに話をしていないことがあるかを問われても「これまでに話した通りです」と、あっさりした反応だった。検察側の質問にも「捕まらなければ、後悔していません。捕まったら失敗したことになると思った」と、それまでと変わらない言動に終始していた。

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2020年11月28日 (土)

【座間9人殺害】公判✍鑑定医「精神障害を想定しないと説明できないものではない」

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年11月17日(火)18時42分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

ロフトに吊して…白石被告が9人目の被害者、23歳女性の遺体を撮影した理由とは

「(死ぬのは)本日、希望です」

 2017年10月に発覚した、神奈川座間市のアパートから男女9人の遺体が発見された事件で、強盗・強制性交等殺人で起訴された白石隆浩被告(30)の裁判員裁判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれている。11月16日には、9人の殺害に関する証拠調べ、被告人質問、中間論告が終わった。

犯行が徐々にエスカレートしていった

 9人目に殺害された東京都八王子市のIさん(当時23、女性)は冒頭の文章をTwitterのダイレクトメール(DM)を送った。Iさんの事件については、他の被害者と違って、白石被告は会う前に殺害を決意している。また、殺害後に遺体を携帯電話で撮影していることが明らかになり、犯行が徐々にエスカレートしていったことがわかる。

 冒頭陳述によると、Iさんは、幼少期は引越しを繰り返していた。両親は離婚。中学3年生で不登校になった。高校に進学するが、退学。2014年に統合失調症と診断された。2017年6月、一緒に住んでいた母親が亡くなり、9月からはグループホームに入居。生活保護を受給していた。この頃から投薬治療を始めている。

 Iさんは人見知りで、引っ込み思案の性格だ。兄の供述調書によると、病気のため兄以外とは話せず、人との関係を築くのが苦手だった。時に男性は苦手であった。一方、兄とは頻繁にLINEのやりとりがあった。Iさんは「寂しくてTwitterで話をしてしまう」と兄に話をしていた。

〈部屋はロフトがあるので、首吊りがしやすいです〉

 そんな中、9月20日、IさんはTwitterで、こうつぶやく。

〈#自殺募集 死にたいけど、一人じゃ怖いので、一緒に死んでくれる人いませんか?〉

 このツイートに、白石被告とは別の5つのアカウントとやりとりをした形跡がある。

 このころ、白石被告は複数のアカウントで「死にたい」「寂しい」「疲れた」などと呟いている女性を物色していた。白石被告は9月22日、「@死にたい」というTwitterアカウントからIさんに「ご一緒に死にませんか?」とDMを送った。これに対して、Iさんが返信することはなかった。

 しかし、Iさんは、10月2日になってから「@死にたい」にDMを送った。このとき、白石被告はこんなメッセージを送った。

〈薬やお酒で恐怖を和らげて、首吊りはどうですか? 部屋はロフトがあるので、首吊りがしやすいです〉

 このやりとりの後、IさんはDMを送っていない。しかし、3週間後の10月23日になって、Iさんは「@死にたい」にいくつかDMをする。

〈本日、希望です〉

〈所持金は1000円しかありません。(首吊りの)道具は(持参しなくて)大丈夫でしょうか?〉

〈どこ住みですか?〉

〈男性ですか?〉

「私は、死ぬつもりはありません」

 そして、白石被告を信用させるためだろうか、自ら自身の写真を撮って送信している。白石被告は、お金を引っ張れるヒモになるか、ヒモになれないなら、失神後にレイプして殺害しようと思っていた。この時点でIさんに収入がないと判断し、殺害を決意している。

「一緒に死のうというやりとりをしていました。私は、死ぬつもりはありません。お金がないとわかり、レイプして殺害しようと決めました」

 それまで、白石被告の犯行は、自宅に呼んでからヒモになれるかを判断し、できないなら失神後にレイプして殺害し、所持金を奪うという手口だった。しかし、Iさんの場合は、会う前から「お金がない」と判断し、すでに“見極め”を行っていた。他の被害者とは違う手順だ。

 9人を殺害したことから、それぞれの殺害状況と混同したり、忘れてしまっていることが多いが、イレギュラーなことが起きた場合は、「覚えている」と述べることが多い。そのため、会う前にレイプして殺害する決意をしたことは、白石被告の中では、特異な点として記憶に残ったのだろう。

弁護側は「Iさんは、死を決意していた」と主張

 待ち合わせ場所はJR八王子駅だった。時間は13時45分ごろだ。Iさんは白石被告に会う前、白石被告へのDMで〈楽しみにしています。ワクワクしています〉と送信するなど、楽しみにしている様子もあった。

「(8人目の)HさんとIさんの2人は、他の人と違った特徴がある。白石さんから電車に乗って迎えに行っている。特に、Iさんの場合は、お金がない白石被告が、わざわざ(小田急線)町田駅まで行き、(JRに)乗り換えて八王子駅まで行っています」(弁護側中間論告)

 Iさんと合流したとき、白石被告が「私の部屋で首を吊るか、Iさんの部屋でするか」と聞くと、Iさんは白石被告の部屋を選んだという。以前のDMで、白石被告は「部屋にロフトがある」ことを伝えており、Iさんは知っていた。弁護側はこの点を強調し、「Iさんは、死を決意していた」(同)と主張している。

 合流後、白石被告とIさんは、八王子駅から町田駅へ向かい、JRから小田急線に乗り換えて、14時47分、相武台前駅に着いた。そして、15時ごろには白石被告のアパートまで行くことになる。

「合流した直後は、私の部屋で自殺しましょう、という会話はありましたが、その後は、自殺の話はありませんでした。楽しそうに話をしていたので、出会い目的かと思いました」

逮捕後は「本当に死にたい人はいなかった」と供述

 Iさんの「楽しみ」や「ワクワク」は、白石被告との出会いが目的だったのか。それとも、自殺願望を実現することへの気持ちだったのか。白石被告は、出会い目的と勝手に判断した。気持ちの確認は何もしていない。

 逮捕後、白石被告は「本当に死にたい人はいなかった」などと供述し、筆者との面会でも同じことを繰り返した。たしかに、死ぬのを止めたことを明言した犠牲者もいるが、Iさんを含めて、気持ちを確かめていない人もいたのだ。

 部屋では1時間半から2時間後にIさんを殺害しているが、白石被告はこれまでのような“見極め”をせずに、いきなり背後から胸を触り、押し倒し、首を絞めるという行動をとった。そして、殺害後、白石被告は、吊るしたIさんの胸と陰部の写真を携帯電話で撮影した。

「容姿がタイプだったんです。自慰行為をするために撮影しました。そして、床に寝かせて、死姦しました」

 Iさんを含め、9人の殺害は、殺害の承諾があったのかが争点だ。そのことを考える上で、議論になっているのが、抵抗があったのかどうかだ。Iさんの場合は、白石被告の記憶が曖昧になっている。

 ただ、逮捕後の調書(2017年11月27日、同年12月23日)によると、「胸を触ろうとしたときに肘打ちされました。馬乗りになったときには、足で蹴飛ばされそうになりました。首を絞めている手を引き離そうとしました」など、Iさんの抵抗の様子を白石被告は供述している。

通常の刑事裁判とは、逆になっている

 こうした供述について、白石被告は公判の中で「今の時点で記憶はないが、取り調べ時点のほうが記憶が新鮮なので、そう話したのなら、それが正しい」などと話す。今回の事件の被告人質問では、一貫して、こうした答え方をしている。

 ただし、「逮捕後に何がなんだかわからない状態で供述したことと、落ち着いてきて喋れるようになったときの供述と、証拠を見せてもらった後の供述」とはニュアンスが異なる旨の発言もしている。そのため、検察側は供述の一貫性を主張するが、弁護側は供述が信用できないと反論。被告人の供述を信用するかどうかについて、通常の刑事裁判とは、逆になっている。

 その上で、検察側は、「殺害の承諾も、所持金を奪取する承諾もない」とした上で、「性欲を満たしつつ、所持金を奪った、自己中心的な単なる殺人であり、強盗・強制性交等殺人である」と結論づけた。

 一方弁護側は、会うまでのやりとりでは、「Iさんが自ら白石被告のところへ会いに行き、部屋にも強制されずに入っている。部屋に入ってからは、ロフトがあり、ここで首を吊るんだと分かったはずだが、帰るそぶりはない。白石被告に死を委ねている。そして、白石被告に勧められた安定剤を拒否することなく飲んでいる。それは死への決意を加速させた。承諾がないとするには疑問が残る」と反論した。

肉片はジップロックに入れて、新聞紙で包みました白石被告が語った悍ましい遺体解体の実態

文春オンライン 2020年11月25日(水)20時51分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

「1日8時間の冷蔵庫のアルバイトは体力的にキツくはなかったんですが、面倒でした。バイトで物を運んだり、走り回るよりも、一人の女性を家に連れ込んで殺害し、解体をして遺棄する方が楽でした。(殺害して、解体することは)負担にはなったが、引き換えで得られる(失神後の強制性交の)快楽のほうが勝りました」

一貫して「楽をして生活をしたい」と語っていた

 2017年に神奈川県座間市のアパートから男女9人の遺体が発見された事件で、裁判員裁判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で11月24日に行われ、強盗・強制性交等殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)は被告人質問でこう答えた。これまでに9人の殺害に関する証拠調べが終わり、それを踏まえた総括的な質問が行われた。また、白石被告の母親の供述調書も読み上げられた。

 これまでの被告人質問では、弁護人に「黙秘します」という回答を連発していたが、この日は、すべてに答えていた。白石被告はこれまで一貫して「楽をして生活をしたい」と語っていたが、逮捕前の仕事である、SNSを使っての風俗のスカウトの仕事をしていたことについて弁護人から「自宅にいて、楽に稼げる仕事だと思ったのか?」と聞かれ、「はい、そうです」と答えた。しかし、売春をすることを知りながら風俗店に斡旋した職業安定法違反で逮捕されたことについて、「人生こんなこと、というか、出来事があるのか」と思ったようだった。

成功体験となった高校時代の”家出”

 事件前について、弁護人が質問をした。職業安定法違反事件で有罪判決が出た後、一時、父親と一緒に実家で暮らすことになったが、父親との関係はうまくいかず、父親からお金を無心しようとして、希死念慮があるように装っていたという。

「落ち込んだふりをしました。具体的には、『死にたい』と言ったり、『働いていく自信がない』などと言いました。また、父親が家にいることを知りながら、ロープを横に置いて寝たり、ロープをベランダのつり革にぶらさげて首を吊るふりをしました。父がこれを知って、心配させました。公園で首を吊ろうとしたり、20メートルの高さの橋まで行ったこともあります」

 なぜこんなことをしたのか。実は、白石被告にとって、成功体験となる出来事があった。それは高校生のときの家出だ。3回している。場所はそれぞれ北海道、北陸、山陰地方だった。このときは、両親に自殺系サイトを見て、練炭自殺をするグループに参加したことがあると伝えていた。

「父親とは不仲でしたが、家出後、態度が軟化し、お金を引っ張ることができました。お小遣いを引っ張れたのです」

「解体している間も、DMのやりとりをしていました」

 事件を起こす1ヶ月前には、遺書のようなメモを書いている。家族と、通っている病院に宛てたものだった。内容は「意識不明になったら、治療をせずに殺してください」「今日こそ、自殺するので、殺してください」などだ。

「私が自殺する意思がある内容を示すものです。しかし書くだけで、未遂はしていません。死のうとしたわけではありませんから。そのメモは、自分の部屋の、目立つところに置いていました。父に対して、私が精神的に弱っていることをアピールしたのです。自殺しそうな状態でお金を無心すれば、お金を引っ張れると思ったのです。メモを読んだかはわかりませんが、父は態度を軟化させました。お金を引っ張ることが目的です。創作の文章であり、私が強い希死念慮を持っているように、父に印象付けをしたかったのです。その目的に沿って書きました」

 その結果、「効果を発揮」して、市民税や国民健康保険料を全額支払ってもらうことができたという。

 また、弁護人は、9人の遺体を解体している間のことについても質問した。

「解体している間も、他の人と(TwitterのDM等で)メッセージのやりとりをしていました。解体中にメッセージが来ても、追われている感じではありませんでした。解体しているときは、一回、一回、目の前のことに集中していました。一方で、やりとりをしながら、相手からお金を引き出せるか、引き出せないなら、レイプして殺害できる相手を探していました。寝る時間はありました。(メッセージのやりとりは)肉体労働とは違って、布団の中で寝ながら携帯を触っているだけでした。半睡眠状態のような感じです」

「一人あたり、大きな骨が8本出ます」

 遺体解体では、「血抜きをしていれば、肉をそぐときには血はほとんど出ません。食肉を切ったり、魚をさばくときの心境とはまったく違います。やらなければ、つかまってしまうという必死な面と、こうすれば効率的に作業ができるなとも考えていました」と白石被告は述べる。その上で、頭部遺体は猫砂を入れたクーラーボックスに入れているが、弁護人から「表情は目に入ったのか?」と聞かれて、こう答えている。

「目に入りました。こんな顔をするのか、という感じでした。ただ、全員のことは思い出せません。(今日のやりとりでは)最後の方、Iさんの表情は思い出しました」

 その後、匂いを消すために、腕や足、肋骨などの骨を鍋に入れた。

「一人あたり、大きな骨が8本出ます。両側を煮ます。そのため、16回、煮ることになります。2~3時間で終わりましたので、1回10分ぐらいだったと思います。その後、冷蔵庫に入れて、乾燥させました。長くても30分ぐらいだったと思います。

 肉片はジップロックに入れて、新聞紙で包みました。新聞紙に包むジップロックは1つのときもあれば、2つのときもありました。4つぐらいにわけて、ゴミ袋に入れました。40リットルや50リットルの大き目な袋です。1回では4~5袋になりました。一度では捨てられないので、2~3回にわけて捨てました。朝になって、出勤する人や通学する人がいるときに捨てれば、怪しまれないと思いました。他の住民が捨てて、ゴミがたまり、匂いがあるような時に捨てたのです」

 協力した女性に対する恨みは」白石被告が法廷で声を荒らげた瞬間 

文春オンライン 2020年11月25日20時51分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

 2017年に神奈川県座間市のアパートから男女9人の遺体が発見された事件で、11月24日、白石隆浩被告(30)の被告人質問が東京地裁立川支部の法廷で行われた。検察側の被告人質問の模様をレポートする。

直前までは正直、やってしまっていいのか

 一貫して「楽をして生活したい」と語っている白石被告に対して、検察官が「働いたらよかったのでは?」と聞くと、実はアルバイトの面接をしていたことを明らかにした。

「9月か10月、途中で面接をしました。近所のファミレス。デニーズです。しかし、ホールとキッチンは埋まっていて、『配達ならいい』ということだったんですが、断りました。実際に働こうと思ったのは、デニーズだけでした」

 また、1人目の被害者Aさん殺害の直前、躊躇はしなかったのか、という点についても質問があった。

「正直、やってしまっていいのか、と直前までは思っていました。殺害しているときは無我夢中でした。殺害後は、(逮捕されないように)完璧な状態にしないといけないと思いました。悪いことをしたな、これは罪になることをしたんだなと思いました。ただ、殺害後は、解体と遺棄に集中しました。Aさんのことを顧みることなく、次の標的を探しました」

 それぞれの被害者の悩みを聞いて、同情や感情移入をしたかも聞いた。

「正直に言うと、自分の損得しか考えておらず、相手のことを考えていませんでした。悩みを聞きながら、『お金があるのか? それとも、私に好意があるのか?』しか考えていませんでした。死にたいという希望を叶えようというのもまったくありません」

虫に食べさせるか、薬品で溶かすか

 殺害した9人の他にも、白石被告は、女性2人と会っている。殺害した女性と、殺害しなかった女性との差はなんだったのか。検察官が聞いた。

「私に対する好意があるかどうか。お金があるかどうかです。短時間で見極められると当時は考えていました。それは、態度や言葉使い、表情で判断しました、ただし、事件前は、相手が仕事をしていたら、お金を借りたり、部屋に入り込もうとしていました。おごってもらえればいいと思っていたときもあります」

 遺体を解体するのではなく、他の選択があったのかも聞かれた。

「(遺体を)虫に食べさせるか、薬品で溶かすかです。虫はミルワームです。私のイメージではミミズのようなものです。しかし、成虫になると、ハエのように飛び回るというので、部屋の中で飛び回ったら嫌だなと思いました。虫は嫌いでしたから」

 殺害を重ねていくと、頭部遺体を入れたクーラーボックスが増えていくが、遺体の確認をしたのだろうか。

「テトリスのように下から敷き詰めていました。移動させるときには確認をしています。逮捕後にも確認しましたが、表面が欠け落ちていました。見たときは、逮捕されたこともあって、まずいことをしたと思いました。同じ人間という生き物をこんな状態にしてしまった、と」

殺されていい人ではなかったと思います

 逮捕数日前の10月27日、座間市立図書館で、白石被告は7冊の本を借りている。どんな本を、どんな目的で借りたのだろか。

「洗脳と宗教関係の本です。今後、知り合う人に対して、洗脳を使うことができれば、より、お金を引っ張れると思ったからです」

 この日の最後の質問は、被害者への思いだった。Aさんに対してはこう語った。

「過ごした時間が長かったこともあり、何も殺すことはなかったのではないか。まじめにお付き合いをしていればよかった。公判が始まり、Aさんの状況を聞くにつれて、そのように考えました。Aさん自身がいろいろな人に必要とされていました。殺されていい人ではなかったと思います。証拠調べを聞いて、もしかしたら、私に対して本当に好意があったのではないかと思いました。ただ、Aさん以外に、強い感情が湧きません」

 Bさん、Dさん、Gさん、Hさんに対する答えは次のような同じ回答だった。

「会って短時間で殺害してしまったので、正直印象が薄い。遺族の方とも面識がないので、何も思いません」

 Cさんは唯一の男性だが、「(Aさん殺害の隠蔽という)明確な殺害の目的がありました。証拠隠滅の達成感しかありません。悪いとは思わないです。遺族に対しては面識がないので、深くは思いません」と話した。Eさんに対しては、「会って数時間で殺害をしました。子どもがいらっしゃる方ですかね。証拠の中でお子さんに触れた部分がありましたので、これからのことを思うと申し訳ないと思っています」と述べた。

逮捕の原因になりましたので、恨んでいます

 Iさんに対しては「(待ち合わせ後)そのまま、Iさんの部屋に行き、真面目に付き合っていればよかった」と、振り返った。

 事件の発覚は、IさんがTwitterで自殺募集のツイートをしていることを知ったIさんの兄が、Twitterを使って探そうとし、それに協力した女性が現れたからだ。その女性が囮役になったことで、事件が明るみになった。捜査段階では白石被告は、「Iさんの兄がいなければ、捕まることはなかった。とても恨んでいます」と供述したというが、現在の心境について、次のように答えた。

「今は、正直、Iさんのお兄さんと、協力した女性に対する恨みは残っています。警察で協力者がいたと聞いたので、この女性かと思いました(※やや、声を荒らげる)。結果的に逮捕の原因になりましたので、恨んでいます」

 この日は、白石被告の母親の供述調書が読み上げられた。母親は「亡くなった方や遺族の方のことを思うと、自分が生きていていいのかと考えます。責任の取り方が思い浮かばない」などと話していたという。

 精神鑑定をした医師の尋問も行われた。医師によれば、中核となる犯行動機は、楽して生活をしたいということと、楽して性欲を満たしたい、という2つとし、なんらかの精神障害を想定しないと犯行を説明できないというものではないとして、刑事責任能力に影響する所見がないと判断した経緯を説明した。

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関連エントリ 2020/11/26 ⇒ 【座間9人殺害】公判✍「若く尊い命が奪われた」白石被告に死刑求刑

 

2020年11月26日 (木)

【座間9人殺害】公判✍「若く尊い命が奪われた」白石被告に死刑求刑

 座間9人殺害公判「卑劣かつ冷酷、猟奇的」白石被告に死刑求刑 

産経新聞 2020年11月26日(木)12時42分配信

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、15~26歳の男女9人が殺害された事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の第23回公判が26日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれ、検察側は「卑劣かつ冷酷、猟奇的で残虐、非人間的な犯行だ」として死刑を求刑した。同日午後には弁護側の最終弁論が行われ結審する予定で、判決は来月15日に言い渡される。

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 殺害の承諾の有無が最大の争点となった今回の公判では、被害者9人を3グループに分けて審理。検察側は被害者全員について殺害の承諾がなかったとする一方、弁護側は「自分の意思で被告宅に行っており、殺害されることを想定していた」などとして承諾殺人罪の適用を主張していた。

 検察側はこれまでの中間論告で、4~7人目の被害者について「自殺願望は被告宅に行くことになったきっかけにすぎない」と指摘。8、9人目の事件は「一緒に死ぬ」と嘘をついておびき出した上での「極めて自己中心的な単なる殺人だ」と厳しく非難していた。

 座間9人殺害、白石被告に死刑求刑 判決1215の予定 

毎日新聞 2020年11月26日(木)12時27分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)に対し、検察側は26日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた裁判員裁判で死刑を求刑した。

 起訴状などによると、白石被告は17年8~10月、ツイッターなどで自殺願望をほのめかした15~26歳の男女9人をアパートの自室に誘い、女性8人には性的暴行したうえ、9人全員をロープで首を絞めて殺害したなどとされる。判決は12月15日の予定。

 座間9人殺害、検察側「承諾なし明らか」全被害者の審理終了 

産経新聞 2020年11月16日(月)20時50分配信

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、男女9人が殺害された事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の第20回公判が16日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。検察側は8、9番目に犠牲となった2人に関する中間論告で「2人が殺害を承諾していなかったのは明らかだ」と主張。弁護側は「2人とも死を強く決意していた」と述べ、全被害者の審理が実質終了した。

 次回24日と25日には被告の責任能力に関する審理や遺族の意見陳述などを実施し、26日に検察側が論告求刑する予定。

 8番目の被害者は横浜市のアルバイトの女性=当時(25)=で、9番目は東京都八王子市の女性=当時(23)。

 検察側は、被告が自殺願望のあった2人に「一緒に死ぬ」と嘘をつき、性的暴行や所持金を奪う目的を隠していたと指摘。「2人が本当の目的を知っていれば承諾したはずがない。自殺するつもりであることと、他殺されてもいいということは全く別だ」とした。

 これに対し弁護側は中間弁論で、2人とも対人関係が苦手だったのに初対面の被告に会いに行き、被告宅で自ら薬を飲んだことなどを挙げ、「死の実現を被告に委ねていた」と述べた。

 座間9人殺害白石被告「すごく楽な生活犯行2カ月 

産経新聞 2020年11月24日(火)19時47分配信

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、男女9人が殺害された事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職、白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の第21回公判が24日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。白石被告は殺害や遺体の解体を繰り返した約2カ月間を振り返り「すごく楽で、自分の快楽をずっと追い求めたような生活だった」と述べた。

 白石被告は29年8月下旬に最初の被害者を殺害してから10月末に逮捕されるまで、犯行を繰り返す傍ら、新たな女性に出会うためのやりとりをSNS(会員制交流サイト)で進めていたとされる。

 被告人質問では「誰かに会うとき以外は布団の上で携帯(電話)をいじっていた」「1日8時間、物を運ぶ倉庫内のアルバイトより楽だった」などと述懐。「証拠の処分をしなきゃとか、今やり取りしている人は金になりそうかとかを考えていた」とし、被害者の気持ちを考えることは「なかった」と淡々と述べた。犯行は自身を養ってくれる女性に出会うまで続けるつもりだったという。

 また2人目の被害者までは「本当に殺していいか迷った」ものの、以降は「罪の意識が薄くなった」と説明。ただ、逮捕後に捜査員と部屋に残していた頭部の遺体を確認した際、初めて「ちょっとまずいことをしたなと思った。同じ人間という生き物をこんな状態にしてしまった」と気付いたと明かした。

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 検察側が、改めて被害者に対しての気持ちを1人ずつ質問すると、数人について「申し訳ないと思う」「死んでいい人間では決してなかった」などと話す一方、多くは「正直、印象が薄い」と回答。公判を通じて遺族の気持ちを「しっかり確認した」と述べたが、ほとんどは遺族と面識がないことを理由に「何も深くは思わない」などとした。

 事件は最後の被害者の兄がSNSで情報提供を呼びかけたことで発覚した。白石被告は「兄らへの恨みは残っている。結果として直接の逮捕の原因となった」と話した。

 法廷では白石被告の母親の調書が朗読された。事件について「信じられず、育て方が悪かったかと疑問ばかり。9人のご遺族には謝っても謝り切れない気持ち」とし、被告を「虫を殺すことができないくらい気の小さい子だった」と振り返った。また被告の精神鑑定を担当した医師は、法廷で「被告に精神障害は認められない」と証言した。

 座間9人殺害鑑定医被告の説明は合理的精神障害を否定 

読売新聞オンライン 2020年11月25日(水)7時14分配信

 神奈川県座間市で2017年に起きた男女9人殺害事件で、強盗・強制性交殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判の第21回公判が24日、東京地裁立川支部であり、被告の刑事責任能力を巡る審理が行われた。起訴前に検察側の依頼で精神鑑定を行った精神科医が証人出廷し、「精神障害はなく、犯行への影響は認められないと判断した」と説明した。

 被告の刑事責任能力を巡っては、検察側が鑑定結果を踏まえて問題ないと主張し、弁護側は何らかの精神障害の影響で事件を起こしたと反論している。

 精神科医は、18年4~9月の間に計約60時間、被告と面談するなどして鑑定結果を出したとし、「精神障害の診断名は付かなかった」と証言。犯行の内容も「(金や乱暴が目的だったなどとする)被告の説明は合理的で、精神障害を想定しなくても説明がつく」と語った。

 この日は被告人質問も行われた。検察官から、被害者への心境を問われた被告は、最初に殺害した同県厚木市の女性(当時21歳)について「公判で女性の周囲の状況を聞いた。女性はいろんな人から必要とされており、死んでいい人では決してなかった」と話した。

 座間9人殺害白石被告まってしまったので後悔している 

テレ朝news 2020年11月25日(水)12時00分配信

 神奈川県座間市で9人が殺害された事件の裁判で最後の被告人質問が行われ、被告が「結果として捕まってしまったので後悔している」などと述べた。

 白石隆浩被告(30)は3年前、座間市の自宅アパートで男女9人を殺害した罪などに問われています。25日は22回目の公判が開かれ、最後の被告人質問が行われました。弁護側が「一連の事件を起こして後悔はしていますか」と聞くと、白石被告は「結果として捕まってしまったので後悔しています」と述べた。

 また、検察側が「判決を待つ今の心境は」と尋ねると、白石被告は「頭のなかは母親のことでいっぱいで、迷惑を掛けて申し訳ないと思っています」と述べた。午後には被害者参加制度に基づいて遺族らが意見を述べることになっていて、26日の検察側の論告では厳しい求刑が予想される。

 座間9人殺害白石被告極刑でも控訴しない」一部遺族に謝罪 

毎日新聞 2020年11月25日(水)19時40分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)は25日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた裁判員裁判の被告人質問で、一部の被害者や遺族に「命を簡単に奪ってしまい、申し訳ありませんでした」と謝罪した。そのうえで「(判決が)極刑でも控訴しない」と述べた。

 白石被告は、被告人質問で検察官から、遺族に謝罪をしていないと指摘されると、「どこかのタイミングで謝罪するつもりでした」と述べ、「私の起こした行動により命を簡単に奪ってしまい、申し訳ありません。おとなしく罪を認めて罰を受けます」と述べた。

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 ただし、謝罪は、最初に殺害されたとされる神奈川県厚木市の女性(当時21歳)ら4人の被害者・遺族に向けてのものだと説明。「一部の被害者には深い後悔は持っていない」とも述べたほか、「捕まったことは後悔しているが、(事件には)感情が湧いてこない」とも話した。

 検察官に判決後の考えを問われると「このままいけば極刑。私の親族に迷惑をかけたくないので控訴せず、罰を受ける」と語った。

 矢野裁判長は同日、弁護側が求めていた白石被告への再度の精神鑑定を却下した。捜査段階の鑑定を担当した医師は24日の証人尋問で「被告に精神障害はなかった」と述べたが、弁護側は「何らかの精神障害があり、今回の事件に影響を与えた疑いがある」と主張していた。

 座間9人殺害公判、遺族「かけがえのないして」意見陳述 

毎日新聞 2020年11月25日(水)21時08分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判は25日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれた。この日の法廷では5人の被害者の遺族や弁護士が、被害者参加制度を利用して意見を述べた。我が子の命が奪われた怒りを、その思い出とともに裁判官・裁判員や被告本人に訴え、全員が極刑を求めた。

 「かけがえのない娘を返してください」。埼玉県所沢市の女子大生(当時19歳)の母は訴えた。証人出廷した際には、被告と傍聴席のいずれもから姿が見えないようついたてが立てられていたが、被告との間のついたてが外され、被告を前にして心境を述べた。公判を傍聴してきたという母は白石被告に「反省や後悔が感じられず、今までにない嫌悪感と激しい怒りを感じた」とぶつけた。

 娘の遺体と警察署で対面した場面も振り返った。娘の20歳の誕生日になるはずの日だった。修復が施された遺体に触れることができず、「誕生日おめでとう。やっと見つけられた。つらかったね」と声をかけ、顔の周りに花を供えたという。「重い刑を科してもらうしか運命にあらがうすべが無い。必ず極刑だと信じています」と述べた。

 神奈川県横須賀市の男性(当時20歳)の両親も同じ形で陳述した。母は「我が子の骨をどうして私が拾わなくてはならないのか。胸が引き裂かれる思いでした」と訴えた。父も「被告は口封じという身勝手極まりない理由で息子を惨殺した。被告だけがのうのうと生きながらえる理不尽は断じて許せない」と語った。

 陳述の間、被告はうなだれるように頭を下げていた。26日にも他の遺族が意見陳述する。

 座間9人殺害白石被告の母親せない子供だった 

TBS NEWS 2020年11月24日(火)21時23分配信

 2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判で、「虫も殺せない子どもだった」とする白石隆浩被告の母親の供述調書が読み上げられた。

 白石隆浩被告(30)は2017年、座間市のアパートで男女9人を殺害し、現金を奪うなどした強盗強制性交殺人などの罪に問われていて、起訴内容をすべて認めている。

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 24日の裁判では、白石被告の母親の供述調書が読み上げられ、彼の母親の調書によると、白石被告は「虫を殺すこともできないような子ども」で、高校を卒業するまでに3回、家出をしたことがあったこの家出について母は、「隆浩は自殺について(インターネットで)調べていたので、自殺のための家出だったと思う」とした上で、白石被告が「生きていても仕方がない」と話すこともあったというまた母親は、「亡くなった9人には謝りきれない」と話した。白石被告は調書が読み上げられる間、被告人席から前のめりになって聞いていた

 これまでの裁判では、被害者9人全員の審理が終わっており、24日の裁判では審理を総括する被告人質問が行われた。この中で白石被告は「遺体と2か月間、一緒にいたが、何を思っていたか」と問われると、「『証拠の処分をしなければ』とか、他にやり取りをしている人でお金を引っ張れる人はいないかと考えていた」と明かした。さらに、「遺体を解体しているときの心境は」との問いには、「やらなければ捕まってしまうと思い、必死だった」と答えた。

 24日の裁判では、白石被告の精神鑑定を担当した医師の証人尋問も行われ、医師は「白石被告には当時も今も、精神障害が認められない」と証言した。25日は、被告人質問と被害者遺族の意見陳述が行われる。

 座間9人殺害、被害者遺族「きてしてほしかった」意見陳述 

TBS NEWS 2020年11月25日(水)19時53分配信

 2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判で、被害者遺族が出廷し、「娘の夢や希望、未来の全てを奪われてしまった」などと話した。

 強盗強制性交殺人などの罪に問われている白石隆浩被告(30)の裁判では、殺害された9人全員の実質的な審理が終わり、25日は5人の被害者遺族の意見陳述が行われた。4人目の被害者となった女性(19)の母親は、「白石被告のせいで、娘の夢や希望、未来の全てを奪われてしまった」「承諾殺人ではなく、身勝手な連続殺人です」と話した。

 また、2人目の被害者の女子高校生(15)の両親の意見陳述は女性の検察官が代読し、「生きて返してほしかった。楽しかった日常を返してください」と涙声で読み上げました。

 下を向いて聞いていた白石被告ですが、被告人質問で、「命を奪ってしまい、申し訳ありませんでした。」と、一部の被害者には謝罪したうえで、「控訴はせずに大人しく罪を認めて罰を受けるつもりです」と話した。

 被害者参加制度を使い、神奈川県の男性(当時20)の父親は息子は心の底では生きることを諦めていなかったと確信していますと話した。母親は涙で体を震わせながら「たくさんの人が人生を狂わされたのです」被告は極刑をもってこの世から消えてほしいですと訴えた。

 26日の裁判では、検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論が行われる。

 座間9人殺害、被害者遺族「被告には絞首刑相応しい 

産経新聞 2020年11月26日(木)19時57分配信

 神奈川県座間市のアパートで平成29年、15~26歳の男女9人が殺害された事件で強盗強制性交殺人などの罪に問われ、26日の裁判員裁判で死刑を求刑された白石隆浩被告(30)は、これまでの20回超の公判でも一貫して「殺害の承諾はなかった」と述べ、検察側の立証にほぼ沿う形での証言に終始して結審した。具体的な殺害状況の直接証拠は被告の供述に限られており、検察側と弁護側の主張は真っ向から対立。厳しい判決も予想される中、どこまで被告の供述を事実として認定するのか、裁判員は難しい判断を迫られている。

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 検察側が最終論告で力点を置いたのは、被告の供述の信用性だった。弁護側が「捜査段階から供述が変遷している」とした被害者の抵抗状況などについて、「一時的な記憶の混乱や減退で、事件の発覚直後から一貫した明確な供述は揺らがない」と説明。「わずかな現金と、殺人をてんびんにかけるのは不合理だ」という指摘に対しても、「常識にかなった判断ができる人間なら、そもそも罪を犯さない」と反論した。

 弁護側は最終弁論で、被告の「全体のイメージとして被害者の抵抗があった」という発言について、「あいまいで、忘れるはずのない重要な場面でも『記憶にない』と答えている」と言及。捜査段階での供述との矛盾点が複数存在するとし、「本当は抵抗がなかったが、取り調べの長期化を避けたかったのでは」と虚偽の供述だった可能性を強調した。

 また、弁護側は「9人の命を奪った重大な責任は負わせる」と述べた上で、強盗強制性交殺人罪ではなく、承諾殺人罪や強制性交致死罪などの成立にとどまるとし、「(有期刑のみの承諾殺人罪であれば)死刑は選択できない。裁判員は上っ面を触るだけでなく、精緻な事実認定をしてほしい」と訴えた。

 最後の審理となったこの日の公判には、8番目に殺害されたアルバイトの女性=当時(25)=の父親らが意見陳述で出廷し、「法廷で娘のことを人ごとのように話をしているのを見て、憎しみが一層強くなった」と声を震わせた。また、6遺族が被害者参加制度に基づく「被害者論告」で一様に死刑を求刑し、「『首吊り士』を名乗る被告にとって、絞首刑がふさわしい刑罰だ」とする遺族の言葉も紹介された。

 座間9人殺害公判、裁判員一同被告は万死に値する死刑求刑 

スポニチアネックス 2020年11月27日(金)5時30分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年、男女9人の切断遺体が見つかった事件で、強盗強制性交殺人などの罪に問われた無職白石隆浩被告(30)の裁判員裁判が26日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれ、検察側は「2カ月の短期間に9人もの若く尊い命が奪われ、万死に値する」と死刑を求刑した。弁護側が「承諾殺人が成立し死刑は選択できない」と最終弁論し、結審した。判決は12月15日。

 極刑の求刑にも遺族の怒声にも、白石被告は感情を表に出さなかった。

 検察側が論告で「(遺族は)苦しみ、悲しみが一生続く。まさに生き地獄」と非難し、被害者の父親が意見陳述で「死んでも許さない。娘を返せ!」と怒声を上げても被告は気だるそうな様子。被告がツイッターで「首吊(つ)り士」を名乗って自殺志願者を探していたため、被害者の弁護士は「絞首刑こそ最もふさわしい」と死刑を求めた。結審直前に裁判長に発言を促されても白石被告は「何もありません」と答えるだけだった。

 被害者らはツイッターに「死にたい」と書き込むなどしていたことから、争点は殺害の承諾の有無となっている。検察側は、被害者が失神するまで抵抗を続けたという被告の供述は信用できるとして「殺害の承諾がなかったことに疑いを差し挟む余地はない」と指摘した。

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Photo_20201127070401過去の短期間に起きた主な連続殺人事件

 

2020年11月14日 (土)

【座間9人殺害】公判✍躊躇なく“殺害と解体”を重ねた白石被告

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年10月30日(金)6時01分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

「寝ている姿を見て、レイプしようと…」5人を殺害し、変質していった白石被告の“犯行動機”

「金払いがいいので、帰そうと思っていました。しかし、寝ている姿を見て、レイプしたくなりました」

 2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人が殺害された事件の裁判員裁判で、10月28、29日、福島県の女子高生・Fさん(当時17歳)が殺害された事件の証拠調べと白石隆浩被告(30)の被告人質問が行われた。

家族や容姿、恋愛などで悩んでいた

 タクシー代や飲食代を支払うFさんから、お金を引っ張れるかどうかを見極めている最中だったにもかかわらず、「寝ている姿を見て興奮した」などと語り、これまでの殺害動機とは違う話をした。また、Fさんの友人たちが、白石被告の家に行くことを止めていたことも明らかにされた。

 冒頭陳述によると、Fさんは家族や容姿、恋愛などで悩んでいた。これまでにも家出の経験があり、小学生の頃、父親の母親に対しての暴力を目撃したことがきっかけだった。このときはすぐに警察に保護されている。高校生になってからも家出をしている。1回目は、Twitterで知り合った友人宅の家で過ごすが、警察に保護された。母親の叱責を理由に、高校2年のときにも家出した。この時もネットで知り合った女性の家にいた。3回目が事件前日、9月27日だった。

 Fさんは、2017年9月18日、「首吊りか練炭希望です。つりじゃないです。#自殺募集 #自殺オフ #集団自殺」などとツイートしていた。このツイートに反応したのが白石被告だった。ただ、2人のダイレクトメール(DM)のやりとりは証拠提出されていない。

「まず、会ってお金を引っ張れるか」

 Fさんが、追跡を避けるためにアカウントを削除している。白石被告も「@首吊り士」というアカウントでやりとりしていたが、「Fさんの殺害後に消している」と答えている。理由については、証拠隠滅ではなく、「他の人とのやりとりが重なって、単純に邪魔だから」としている。そのため、2人がどんなやりとりをしていたのかは明らかにされていない。

「最初のDMは9月末だと思います。28日からはLINEのやりとりが始まります。少なくとも、DMはその1日か2日前にやりとりしていると思います。まず、会ってお金を引っ張れるか、引っ張れなければ、レイプし、殺害し、所持金を奪おうと思いました」

 DMのやりとりで覚えていることもあるという。それは「頸動脈洞反射」というキーワードだ。このとき使っていた「@首吊り士」というアカウントは、首吊り自殺に詳しく、自殺幇助をする、もしくは、同意殺人をするという設定だ。そのため、首吊りした場合に起きる現象である「頸動脈洞反射」について、Fさんから聞かれたときに、白石被告はそのことを説明したという。

「私が死ぬのを見届けてから、後から追ってくれる」

 そんなやりとりをしながら、Fさんは9月27日11時すぎに、福島駅から高速バスに乗り、17時過ぎに東京駅八重洲口に到着する。同日は、ネットで知り合った別の男性の家に宿泊。28日の正午過ぎに、相武台前駅で集合する。

 Fさんは、高2の時に家出をした先の女性に、9月17日、LINEのやりとりで、容姿のこと、恋愛のこと、仕事のことなどの悩みをあげて、「何もかもがうまくいかない。一人でいるのが怖い」などとメッセージを送っていた。その後、9月25日、「首吊り士に会う。一緒に死んでくれる人であり、私が死ぬのを見届けてから、後から追ってくれる人」と話していた。その後、「28日に、首吊り士に会う」ともLINEしていた。その女性は何かあるかもしれないと思い、当時のFさんのTwitterをスクリーンショットで保存した。

 相武台前駅で集合すると、白石被告はFさんと2人で駅前の吉野家へ行き、牛丼をテイクアウトして、自宅に向かった。

「Fさんから『ご飯食べましたか?』と聞かれたので、『食べていない』と言うと、『どこかで食べませんか?』と言われました。近くに牛丼屋があったので、2人で店に入りました」

 このときの姿が防犯カメラに写っており、法廷のモニターに示された。Aさん、Bさん、Cさんを殺害するときには、距離を離して歩いていたりしていた。すでに5人殺害しているが、警察が聞き込みにこず、逮捕もされていないことで油断していたという。また、このとき、白石被告は「お金がない」とストレートに話した。すると、Fさんは「私が払う」と言った。そのため、2人分の牛丼は、Fさんが支払っている。

タクシー運転手は「恋人同士のようにも見えた」

 その後、白石被告のアパートに行った後も、15時47分、アパート前から駅前のセブンイレブンまで行き、スイーツなどを購入した。コンビニでの代金やアパートまで戻った際のタクシー代はすべてFさんが支払っている。タクシーの運転手の証言では「男性が支払った」とされているが、そのお金はFさんのものだった。しかも、運転手からは「いちゃいちゃしているように見え、恋人同士のようにも見えた」というほど話が弾んでいた。

 こうしたことから、白石被告は「お金を引っ張れるか」を見極めていた。

「悩みを深掘りしていましたが、容姿のこと、恋人のことでした。悩みを解消してあげようと、容姿を褒めました。会う前は、死にたいなどの話はありましたが、会ってからはそうした話は出ませんでした。スイーツもかたっぱしから買い、衝動買いをすることでストレス発散をするタイプの子だと思ってました。

 金払いもいいので、お金を引っ張れるのではないかと思いました。17歳で、居酒屋のバイトと聞いていました。当時の家賃が安いので、月に5万から10万あれば、生活ができました。そのため、Fさんからは月5000円から1万円引っ張ることができればいいと思っていました」

福島県に生きて帰そうと思っていた

 部屋で宅配ピザを頼み、その代金もFさんが支払っている。食事をし、コーラで割ったウィスキーを飲みながら、ヒモになろうという流れになっていった。このとき、Fさんもウィスキーのコーラ割りを飲んでいたという。そして、話をしているうちに、白石被告が持っていた安定剤のデパスと、睡眠薬のハルシオンを勧めることになる。

「話をしていたら、不安を感じたと言っていました。そのため、『これを飲めば、安定するよ』と、安定剤を勧めました。また、(1人目に殺害した)Aさんが持っていた薬の瓶を見て、興味を示したので、その薬を飲ませました」

 この頃、Fさんは友人たちとLINEをしていた。捜索願が出されるかもしれないという話になっていた。白石被告は、Fさんからお金を引っ張ろうとしていたことから、この段階では、福島県に生きて帰そうと思っていた。Fさんを心配していた友人とのLINEでは、朝から自殺の話になっていた。以下はその一部だ。

Fさん 今日の夜、実行なんだ。遺書を置いてくるのを忘れた。親に連絡をとって、遺書を送ってほしい。

友人 自殺をするのを協力するのは犯罪になってしまうので、できない。

Fさん じゃあ、現場に(遺書を)添えることにする。

Fさんの最後のツイートは「ろれつが回らない」

 この後、2人はLINEで9時46分から10時25分の間、通話した。その後、友人は、110番通報している。そして、警察から「LINEのやりとりをやめないでほしい」と言われて、その後も続ける。Fさんが白石被告と会う直前にはこんなやりとりがあったという。

友人 どこにいるの?

Fさん ああ、心中相手のところ。あと2駅かな。

友人 どこか教えて。

Fさん 連れ戻そうとするから嫌だ。

友人 心中相手には会えた?

Fさん 場所は夜に言う。またね。

友人 どこにいるの?

Fさん 今、家だから無理かも。ごめん、死ぬ直前じゃないと通話できない。

 夕方を過ぎると、「帰るよ、信じて」と友人に送っている。同じ頃、母親にも「今から帰る」とのメッセージを送った。これは、白石被告が指示したものだった。しかし、お酒を飲んでいると、いつの間にか2人は寝てしまっていた。Fさんの最後のツイートは「ろれつが回らない」というものだった。お酒と薬が効いてきたのだろうか。

次第に変質していった「殺害の動機」

 2人は眠ってしまったが、先に起きたのが白石被告だった。そのとき、「寝ている姿を見て、レイプをしようと考えました」と証言する。Aさん、Bさん、Dさんを殺害した動機は、ヒモになれないなら、レイプして殺害し、所持金を奪うというものだった。しかし、5人目の被害者・Eさんは、見極めが曖昧なまま、帰ってしまわないように殺害している。そして、Fさんは、ヒモになれそうだと判断したにもかかわらず、レイプしようと考えた。殺害の動機が変質していっている。

「Fさんの寝ている姿を見て、起きないように性行為をするか、起きてしまったとしても、抵抗できない状態で性行為をしたくなりました。そのため、ロフトの階段の下に布団を敷き、眠っているFさんを移動させ、布団の上に仰向けで載せ、後ろ手に結束バンドで縛り、足が動かないように両膝のところをビニールテープで縛りました。ロフトの階段から吊るしたロープの輪のところに首をひっかけました。目が覚めても、すぐに失神させることができますから。両膝が宙吊り状態で、そこから性行為をしました」

 ただし、途中で、Fさんの目が覚める。その後の情景について、検察官や弁護士の質問に詳細に答えた。

「途中で覚醒したとしても呼吸ができないように、口や鼻にガムテープを貼ろうとしました。口にガムテープを貼るときは、誰のときでも、真横に貼り、さらにバツ印になるように、3枚にして貼っていました。

 しかし、真横に貼った段階で、覚醒してしまいました。そのときに、テープの片側がビラビラしていたのを覚えています。口の左側が剥がれていました。完璧に貼っていたら声がでない状態ですが、剥がれていたので、大声をあげられたら困るので、首にあるロープを使って失神させました」

きちんと回答したのは30問ほどだった

 その後の手順は、これまでの被害者と同じだ。ただ、白石被告は、一つだけ自らの回答の撤回を申し出た。

「犯行当時のことについて、先ほど、弁護側の質問に、『捜査段階の記憶のほうが新鮮なため、基本的には、裁判の証言ではなく、取り調べ段階の記憶が正しい。しかし、録音、録画しているわけではないので、100%正しいとは言えない』と言いましたが、『大まかなことでは断片的な記憶があります。しかし、具体的な時刻などはわからない』に訂正します」

 10月29日、Fさんの事件に関する弁護側の被告人質問は、検察側の後に行われた。弁護側は、細かなやりとりを含めると120問以上、質問した。しかし、白石被告は80問以上については、小さな声で「黙秘します」と続けた。一方、「はい」「覚えています」など簡単なやりとりを含め、きちんと回答したのは30問ほどだった。

「悩みは話してくれましたが、私に対して、心の底から打ち解けるのではなく、なんとなく、薄っぺらい内容であったから記憶も曖昧です」

文春オンライン 2020年11月3日(火)20時12分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

 2017年神奈川県座間市で起きた男女9人殺害事件の裁判員裁判の第15回公判が11月2日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で行われた。この日は、7人目に殺害された埼玉県さいたま市の高校生Gさん(当時17歳、女性)に関する被告人質問が行われた。

自転車の前カゴには被害者の内臓が…

 白石隆浩被告(30)は、検察官や弁護人の質問に対して、記憶が曖昧であり、証言に一貫性がなかった。そんななかで、Gさんの遺体の一部を買い物袋に詰め、自転車で運んだことを証言した。また、現在着用しているメガネは、Gさん殺害後に奪った現金で買ったものだったことも明らかにした。

 白石被告は、Gさんを殺害後、自転車で駅方向に向かった。2017年9月30日18時59分、アパートと駅の間の防犯カメラにその姿が映っていた。その静止画像は、証拠調べでモニターに示されていた。そのとき、たしかに、自転車の前カゴには買い物袋があった。

「大きさから推察するに、衣類やカバン、財布、そして、Gさんの内臓が入っており、線路の反対側にあるコンビニのゴミ箱に捨てに行ったと思います」

一切の葛藤なく殺害に及ぶ白石被告

 遺体を解体した後に、内臓を処分するため、白石被告は、その一部はコンビニのゴミ箱に捨てているということだ。他の部分は、燃えるゴミの集積場に捨てている。防犯カメラに映っていた時間帯の後も、ドラッグストアとコンビニで食料品を買っている。クリエイトS・Dでは、カップ焼きそば2つ、ローソンではペペロンチーノ、スモークチキンサラダ、にんにく43グラム、明治チョコレートなど。これらは食事用に購入している。検察官に「(遺体の)臭いがあったと思うが」と聞かれたが、「Gさんの頃には慣れていました。食欲も減退していません」と答えた。

 筆者の面会時には1人目を殺害した後には頭痛がしたと言っていたが、それ以降は、慣れてしまったのだろう。殺害に葛藤はほぼない。Gさん殺害後、所持金3万円程度を奪った。弁護人の質問に、白石被告は「たしか、(お札を)数えて、これだけあればメガネが買える(と思った)」と答えた。実際に、奪った現金でメガネを買っている。そのメガネは、現在、法廷でかけているものだという。

 冒頭陳述などによると、Gさんは埼玉県内に在住していた高校2年生。家族関係に悩みはあったものの、弁護側が「命を絶つほどの悩みは誰にもわからない」と指摘すると、明確に死にたい理由を周囲の人には話していないという。そんな中、白石被告の「首吊り士」のアカウントは、Gさんと相互フォローをするが、白石被告はどのアカウントでやりとりしたのか忘れている。

女性への警戒を解くための周到なやり取り

「どのアカウントでやりとりしたのか忘れましたが、(相互フォローしていたのであれば)首吊り士でしていたのだと推察します。目的は、会ってお金を引っ張れるか、そうでなければ、レイプして殺害し、現金を奪うことです。(やりとりの内容は)一緒に死にましょうだったか、殺してあげるだったかは、どちらかは覚えていません。自殺のいくつかの方法、いくつかの場所を提案し、最終的には方法として首吊りを、場所は私の部屋になるように誘導しました。首吊りが一番確実だと言ったり、公園など外で実行すると、通報されてしまうと言ったり」

 また、検察官に「なぜ首吊り以外のツイートをしないのか?」と聞かれると、白石被告は「私の部屋まで来る理由がなくなってしまいます」と答えた。また、なぜ、この段階で「(白石被告が)首を絞めるとは言わないのか?」と問いただされると、こう答えた。

「首を絞めるということは、肌と肌が触れ合う作業です。男性から女性に触れるような行動をする前提になると、女性側がひいてしまう可能性があるからです。ただし、当時、私は、一緒に死ぬつもりも、ロープで苦しませずに殺すつもりもありませんでした。Gさんにお酒や薬を飲ませ、どちらかが効いている状態になってから首を絞めて、失神させ、性行為をして、現金を奪おうと思っていました。殺害も目的です

 白石被告が、いかに女性が警戒をしない方法で会おうとしていたのかがわかる証言だ。

被害者女子高生が白石被告に会うと決意するまで

 Gさんは9月30日に、「昼食を買いに行く」と言って家を出てから、白石被告に会いに行くことになる。

 ただ、失踪する直前の9月26日から27日の間に、友人と以下のようなやりとりがあったことが示された。

Gさん 学校に不満がある。今日はずる休み。学校楽しくない。

友人 9月になって1回行ったぞ。

Gさん このままではもうダメ。屋上からダイブするか。

友人 学校からダイブ? 楽器とかできるのか?

Gさん ライブじゃなく、ダイブ。

 友人とのやりとりの中では、明確な悩みは示されていない。しかし、学校生活の悩みがあり、この友人は、心療内科や精神科に行くことを助言した。担任や母親の証言によると、9月26日、Gさんは欠席した。登校中に「具合が悪い」と母親に連絡があり、1日休んだ。帰宅後は、漫画を読んだり、スマホをいじっていた。

精神科では診察を受けられず

 9月27日には1時間目は出席したが、学校にいられない状況となり、担任が「もう少し頑張れないか?」と聞いたが、無理な様子だった。そのため、担任は母親に電話をし、帰宅させた。このとき、Gさんは精神科へ行っている。しかし、未成年のためか、診察を受けられず、母親に電話をしている。

Gさん お母さん来て。一緒じゃないとだめと言われた。

母親 なんで一緒じゃないとダメなの? どこの病院? 急に言われても行けない。

Gさん もういい。

母親 大丈夫?

Gさん もういい。治った。

 Gさんはこのとき、病院名を言わなかった。担任は翌28日、Gさんが登校後、面談した。学校に行けなくなった理由を明確にはしなかったが、Gさんは「弟が中学から不登校で、通信制の高校へ行っている。私も通信制高校へ行きたかったが、親に反対された。そのため、ベランダから飛び降りをしようと思ったことがあったが、誰かに止められた」と話していたという。担任は「お母さんも心配している」と言ったものの、心には響かない様子だったという。

「昼食を買いに行く」が最後の一言となった

 9月30日10時30分すぎ、Gさんは「昼食を買いに行く」といい、家を出る。Gさんは、いつもなら近所のスーパーに行くときにはスリッパを履いているが、このときはスニーカーを履いていた。

母親 なんでそんなの履くの?

Gさん いいじゃん

 Gさんは、家を出たあと、10時49分、ゆうちょ銀行で2万円を引き出した。この2万円を引き出したのは、白石被告の指示だったのか? 検察官の質問には指示だったと回答したが、「捜査段階では、指示していないと答えている」と紹介されると、「捜査段階のほうが記憶が鮮明ですので、そちらが正しい」と述べた。

 こうしたやりとりは、この日の質問では多かった。これまでの面会で、「最初の3人目までは覚えているが、それ以降はあまり覚えていない」などと話していたが、そうした記憶の曖昧さを象徴しているやりとりだ。

 11時15分、「Suica」に2000円をチャージし、Gさんは最寄駅の改札を入場した。12時14分、JR新宿駅を出て、同15分、小田急線新宿駅に入り、いったん、町田駅で降りた。白石被告は待ち合わせ場所を相武台前駅に変更し、Gさんは13時16分に改札を出ている。証拠調べの中で、白石被告は13時35分、アパートから駅の間の防犯カメラに、一人で写っている。ただ、同51分、駅方面から一人で自宅に向かう様子がカメラに写っている。

「最初は(待ち合わせに)遅刻しました。なぜなら、(6人目の)Fさんの遺留品が部屋に散乱していて、片付けをしていたからです。Gさんには『過去に何人も人を殺した』とは言っていないので、遺留品が散乱していると不審に思われてしまいます。玄関にあったFさんの靴などは、奥にある電動式保冷庫の横に置いたんです。床にもノコギリや包丁が置いてあったんです。それも、保冷庫の横に置きました」

「部屋になんとなくついてくる子だと判断しました」

 Gさんはその間、駅前のロッテリアで待っていた。白石被告が自殺に関連する話をしている中で暑く感じたため、一度、帰宅することになる。暑くなったので着替えるためでもあった。そのとき、Gさんは「わかりました、待っています」と言っていたという。その後、死にたい理由を深掘りしながら、白石被告の部屋にGさんを連れていく。そこからGさん殺害までの時間は、9人の被害者の中で最も短かったようだ。

「例えばになってしまうのですが、出会い系サイトを通じて初めて会ったとき、部屋になんとなくついてくる子がいます。一方で、誘っても信用されないので、部屋にこない子がいます。Gさんは、なんとなくついてくる子だと判断しました。

 しかし、口説いてみたり、悩みを深掘りしても、心の距離が縮まらないと思ったんです。つまり、信用、信頼、恋愛、依存のいずれの感情でもないことがわかりました。悩みは話してくれましたが、私に対して、心の底から打ち解けるのではなく、なんとなく、薄っぺらい内容であったから記憶も曖昧です」

レイプして殺害しようと即断する

 だからこそ、お金を引っ張れるかどうかの見極めが早く、引っ張れないと判断した。そのため、レイプして殺害しようと、次のような行動を取った。

「まずは玄関の鍵を閉め、チェーンをかけ、背後からいきなり襲っています。仮に暴れて、逃げようとしても、少しでも逃げる手間をかけさせるためです。その次はメガネを外し、浴室に置いたと推察されます。抵抗をされると、破損することが困るからです」

 Gさんを襲った際の抵抗の有無やその程度は、記憶が曖昧だ。失神するまで首をしめたと言ったものの、検察官の質問に、最初は「被害者9人のうち、一番抵抗していたのを覚えている。抵抗が強く、ひっくり返されそうになった。腕を外そうとしていた腕の力が強かった」と述べた。しかし、弁護人から「捜査段階では、Gさんの抵抗が一番強かったとは証言していない」と聞かれると、こう答えた。

「正直、正確には覚えていない。捜査段階の記憶は不鮮明だが、一部は明確、一部は不明瞭になったのも事実です。ただ、捜査段階といっても、逮捕直後のときと、落ち着いてきてからのときと、証拠を見せられたときとでは違っていますので、整合性のない調書になっています」

 加えて、裁判官からの同様の質問にはこう答えた。

「抵抗が強かったという印象があったのですが、現在では、定かではなくなってきました。格闘のような状態になったことに自信がないです。ただ、吊るした後に、足を伸ばしたり、曲げたりしていたというのは覚えています」

 9月30日昼、Gさんはアルバイトがあったため、両親は帰宅しないことを心配しつつも、「アルバイトに行ったのかな?」と思ったという。しかし夜になっても帰宅せず、両親が相談。翌10月1日朝になっても帰宅しないことから、110番通報をした。このときにはすでに殺害されていたことになる。

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年11月12日(木)20時12分配信

「昏睡状態の女性をレイプすることが……」すでに7人を殺害した白石被告が犯行をやめなかった理由

「『@首吊り士』のコンセプトは、殺してあげるというものです」

 2017年に神奈川県座間市で男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗、強制性交殺人などで起訴された白石隆浩被告(30)の裁判員裁判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で行われている。

知人に自殺に関するメッセージを送っていたHさん

 11月11日は、8人目に殺害されたHさん(当時25、女性)に関する被告人質問が行われた。その中で、白石被告は、同事件でもっとも話題になったと思われる「@首吊り士」のコンセプトについて答えた。一方、Hさんの殺害状況については「覚えていない」を繰り返した。拘置所での筆者との面会時には、「最初の3人以外はあまり覚えていない」と話していたが、同様の発言を繰り返したことになる。

 冒頭陳述等によると、Hさんは神奈川県内で両親と兄との4人暮らしをしていた。中学2年生のときにいじめに遭い、不登校になった経験がある。中3のときは欠席も多く、卒業に必要な出席日数ギリギリで卒業した。高校は3年生のときに自主退学。その頃から7年間ほど自宅に引き篭もった。2017年4月、コンビニで働くようになった。しかし、同じ頃、知人に対してLINEで、自殺に関するメッセージを送っている。

「死にたい。疲れた。#自殺募集」

 HさんがTwitterを開設したのは2013年10月。2017年10月2日までは、主にゲームに関するツイートが多く、自殺に関連した内容はなかった。しかし、同年10月17日午前1時7分に、「25歳女 神奈川に住んでいます。死にたい。疲れた。#自殺募集」というツイートをする。このツイートを発見した白石被告は、「私がフォローしたか、Hさんがフォローしたかで(DMの)メッセージを送りました」といい、「@終わりにしたい」と、「@首吊り士」の2つのアカウントでやりとりをすることになる。

 ちなみに、白石被告は筆者との面会で、「5つのアカウントを使っていた」と話していたが、「@終わりにしたい」はその中に含まれていない。

「昏睡状態の女性をレイプすることに快感を覚えていた」

@終わりにしたい はじめまして。私も神奈川県に住んでいます。一緒に死にませんか?

Hさん はじめまして。私も死にたいです。

@終わりにしたい 自殺をするとしたら方法はどんなものがいいですか?

Hさん できるだけ苦しまない方法で。

@終わりにしたい 薬を飲んで、首をつって、意識を飛ばす方法はどうでしょうか?

 白石被告は、これまで同様、心中目的で女性を探していたわけではない。「お金を引っ張れるか。引っ張れないならば、失神後にレイプして殺害し、所持金を奪う」(検察官や裁判官への回答)ことを目的としていた。ちなみに、すでに7人を殺害していることから、「こうした犯行をやめようと思わなかったのか」と検察官に聞かれて、こう答えている。

「当時のことを正直に話すと、昏睡状態の女性をレイプすることに快感を覚えていましたので、やめようとは思いませんでした」

 そのため、Hさんに会うまでに、遺体を解体するために使っていた「猫砂」やストッカー、ハサミ、ナイロンロープなどを追加購入している。ナイロンロープは12メートルのものを購入した。「どうして12メートルを購入したのか?」と聞かれて、白石被告は、「このとき、TwitterのDMでやりとりをしている人が3、4人いたため、必要な分として購入しました。たしか、3~4メートルに区切って購入していたはずです」と述べた。

「一人暮らしではないので、私の部屋は無理です」

 白石被告とHさんのやりとりは深夜であったが、このやりとりの途中で朝になった。Hさんは「そしてまた朝が来た。寝たまま死ねたらいいのに」とツイートをしている。そして、再び、白石被告とHさんのやりとりが始まる。

@終わりにしたい 病院を回って、薬を大量に手に入れました。よろしければご一緒に。

Hさん 死にたいです。

@終わりにしたい いつごろ?

Hさん 何日でも大丈夫です。

@終わりにしたい 明日はどうでしょうか?

Hさん 18時以降から大丈夫です。

@終わりにしたい 場所はどこが希望ですか? 山や森、部屋がありますが。

Hさん 部屋がいいですね。

@終わりにしたい Hさんの部屋と、私の部屋と、どちらがいいですか?

Hさん 一人暮らしではないので、私の部屋は無理です。

自殺場所としてなぜ山や森を選択肢にあげたのか

 白石被告の、これまでの犯行手順としては、白石被告のアパートに連れてくるのが第一歩だ。しかし、DMでは、自分のアパートのほか、山や森を選択肢にあげていた。「これは、なぜか?」と検察官が聞くと、「最初から自分の部屋だけの選択肢ですと、選択の幅が狭い。そのため、相手の女性が『家に来たくない』と思ったら、連絡が途絶えてしまうかもしれないからです」と答えた。

 案の定、Hさんは、自分から「部屋がいいです」「私の部屋は無理です」と答え、白石被告のアパートに来るように誘導された。そして、待ち合わせをすることになる。

@終わりにしたい 失礼しました。では、相模大野駅で待ち合わせでどうでしょうか?

Hさん はい。行ったことないですが、大丈夫です。

@終わりにしたい 18時以降の待ち合わせでどうしょうか?

「@首吊り士」と「@終わりにしたい」の人格の違い

 白石被告は、Hさんに会うまでに、「@首吊り士」でもやりとりしている。

@首吊り士 フォローありがとうございます。自殺を考えているんですか?

Hさん はじめまして、死にたいです。

@首吊り士 今日、これからはどうでしょうか?

Hさん 今日はちょっと。

@首吊り士 明日以降は? 本当に辛いなら、未遂にならないようにサポートしています。

 どうして、「@首吊り士」でもメッセージを送ったのだろうか。

「『@終わりにしたい』のアカウントは、自殺願望か、一緒に死にたいことをツイートするのがコンセプトでした。一方、『@首吊り士』のコンセプトは、殺してあげるというものです。『@終わりにしたい』では、Hさんからの返信が途絶えそうだったからです。『@首吊り士』のコンセプトのほうがいいのか?と思ったんです」

手足をバタバタと……法廷で明かされた8人目の被害者、25歳女性への悍ましい犯行

文春オンライン 2020年11月12日(木)20時12分配信/渋井 哲也(ジャーナリスト)

「18時以降から大丈夫です」

 座間9人殺害事件で8人目の被害者となったHさん(当時25、女性)は、自殺を呼びかける白石隆浩被告(30)のTwitterアカウント「@終わりにしたい」にこんなDMを送っていた。

コンビニで働き始め、明るくなっていたのに……

 なぜ、Hさんは「18時以降」と言ったのか。それは週2、3回しているコンビニのアルバイトの勤務があったからだ。母親の証言によると、犯行のあった前日の10月17日は、いつも通り、午後1時からアルバイトのシフトが入っていた。

「以前は引きこもりで、部屋でゲームをして、食事の時だけ部屋から出るような生活でした。しかし、コンビニで働くようになって、ハキハキ喋るようになり、表情も明るくなりました。家では冗談を言ったり、明るいのですが、外では引っ込み思案な性格です」(11月10日、母親の証人尋問)

 しかし、Hさんは、自殺願望が強まり、「自殺募集」する前日、10月16日、自殺関連のキーワードを検索している。例えば、「ストレス」「息苦しい」「うつ病」「精神安定剤 市販」「殺され願望」「殺されたい願望」「睡眠薬 首吊り」「自殺オフ会」「とにかく死にたい」「なんかもう疲れた」「今すぐ死にたい」などだ。

 その中には、「酸欠少女」も入っている。シンガーソングライターだが、どんな曲を検索していたのか明らかになっていない。あえて死を連想するものとしては「来世で会おう」があるが、アニメ「僕だけがいない街」や、アニメ「僕のヒーローアカデミア」のエンディングテーマ曲も歌っているので、必ずしも「死」を連想させるものばかりではない。

白石被告が相模大野駅まで足を運んだ理由

 白石被告の犯行手順であれば、それまでは相模大野駅で待ち合わせをしたとしても、最寄駅である相武台前駅まで相手を誘導していた。しかし、Hさんの時は、相模大野駅まで白石被告も行っている。

「相武台前駅は、神奈川県の中では田舎な方です。もし、相武台前で待ち合わせをしたら、Hさんが来る気をなくしてしまうのではないかと思ったからです。ネットの出会いの話になりますが、直前になって会うのをやめたり、当日来なかったりのようにバックれられたとしても、自分の時間が無駄にならないようにしていました」

「悩んでいるようには感じませんでした」

 Hさんに会ったとき、「私の部屋で一緒に死にましょう」といい、白石被告のアパートに行くきっかけにしたという。そんなHさんの印象としてはこう答えている。

「悩んでいるようには感じませんでした。シンプルに言えば遊びに来たような感じでした。補足が必要ですが、『寂しい』『疲れた』『死にたい』と呟いている人の中には、出会い目的の人もいます。Hさんも、出会い目的なのではないかと推察します。なぜそう思ったのかといえば、出会った後は深刻そうには見えませんでした。『今すぐ死にます』という感じではなかったです」(弁護人への回答)

 殺害状況については、「今は記憶にない」「覚えていない」を繰り返した。

「お酒や薬が効いていたと思ったため、背後に周り、胸を触り、突き倒して、馬乗りになり、首を絞めました。この記憶はありますが、はっきり説明すると、全体的な意識として、一人ひとりにしていることは同じなので、Hさんも同じ手口でやったと思います」(裁判長への回答)

初対面で外見を褒められた

 つまりは、最初の3人と、寝ているときに縛った人(Fさんと思われる)の4人については「腹を殴った」ことはない、ということになる。Hさんをどうしたのかは記憶が曖昧だ。ただ、Hさんの個別の記憶については「明確な記憶はない」としながら、こう話した。

「部屋に入って、30分から1時間、長くても2時間ほどは雑談していました。自殺の話は、会った直後はしていました。私に好意があるかどうかを確認しようとしました。私に対する好意の面では、笑って話をしていましたし、態度や雰囲気でイケそう(=口説けそう)でした。他の人からのDMで『胸は何カップあるんですか?』というものがあって、『気持ち悪いね、変態だね』と言って、打ち解けていました。また、初対面で外見を褒められたというのもあります。しかし、収入がなさそうだったので、レイプして殺害し、所持金を奪おうと思いました。奪ったのは数百円です」

 失神させる過程で腹を殴った人もいる、との捜査段階での供述ついても聞かれたが、「Aさん、Bさん、Cさんと、(寝ているときに)縛った人以外で、殴った人がいるという記憶はあるのですが、具体的に誰かは覚えていません」と答えるのみだった。

ぶら下がっているときに上着をはいで……

 抵抗の有無についても、殺害の承諾があったかどうかの争点の一つになっているが、裁判長の質問にこう答えた。

「Hさんの抵抗については具体的には覚えていません。しかし、全員が、首を絞めている私の手を外そうとしたり、手足をバタバタさせたり、体を動かすことはしていたのは間違いない。縛った人のときはものすごく簡単に失神させることができました。他の人は、その記憶がありません」

 失神後はどうか。

「レイプした後、首を吊る状態にしたときに、ロープと首の間にはタオルを使いました。縄があたるあたりの、あごの、喉側の部分です。警察の科学捜査がどこまでできるかわからないのですが、仮に遺体を埋めたときに、死因がわからないようにするためです。また、失禁して飛散するのを防ぐため、ズボンは履かせました」

 また、「上着はどうしたのか?」と検察官に聞かれた。

「Hさんは、ぶら下がっているときに、上着をはいで、胸をみていた記憶があります。ハサミで切っていたので、胸の部分が開いていたのを覚えています。これを理由に、Hさんの首つりのことは覚えています。しかし、首を絞めたあたりの記憶が薄れてきています」

母親は「自分の命にかえても、罪を償ってください」

 Hさんの母親は、証人尋問で「ビッグサイズのポテトチップスを買って、ケンタッキーを買って、10月31日にハロウィンパーティーをしようと言っていました。7年間引きこもって、バイトの面接も20回以上しました。やっとコンビニに合格したのです。ほっとしたのも束の間で、こんなことになってしまいました。残念で悔しいです。生きていれば、いろんな未来がありました。(白石被告は)それを壊したのです。十分に反省して、自分の命にかえても、罪を償ってください」と訴えていた。

 失神させた状態乳首舐めて硬くなる様子興奮…異常な性癖かされる白井隆浩被告 (30)そして審理を見守る「女性裁判員」 

文春オンライン 2020年11月14日(土)6時12分配信

 神奈川県座間市のアパートで男女9人を殺害したとして、強盗・強制性交殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判が続いている。舞台は、東京地裁立川支部の101号法廷。地裁は9月30日の初公判以来、被害者9人を犯行順に3組に分けて裁判を進めてきた。11月10日の第17回公判からは3組目、残る8、9人目の被害者の審理が始まっている。

「法廷は遺族など被害者参加人が着席できるよう、傍聴席の3分の1はパーテーションで区切られています。新型コロナウイルス対策で座席は一席飛ばしで、一般傍聴席は十数席程度。初公判時は625人、以降も50人前後の希望者が抽選に並んでおり、地方の裁判所としては注目度が高いと言えます」(社会部記者)

 白石の口からはこれまで、被害者の首を絞めて失神させ、遺体をノコギリ等で解体していく手順や、遺体の一部を鍋で煮ていたことなどが具体的に語られてきた。さらには女性の被害者8人は全員、失神させた上で姦淫したことや、その際に乳首を舐めて硬くなる様子に興奮していたことなど、異常な性癖についても次々と明かされていく。

「遺族の代理人からは、裁判が始まる前から報道内容には配慮するよう求められました。実際、法廷での白石の証言内容はあまりにおぞましく、報道各社も表現を丸めるなどの対応を迫られている。民放では、性的暴行の内容に触れていない局もありました」(同前)

気丈に審理を見守る若い女性裁判員

 事件の残虐さもあってか、懸念されていた通り、裁判員には辞退者も出た。そうした中、この“異常法廷”に臨んだ6人の裁判員。中には若い女性もいるが、おぞましい白石の証言から目を背けることもなく、気丈に審理を見守っている。

「白石は遺体を解体する手口など、犯行の残虐さを問う検察側の質問にはしっかりと答える一方、『水を飲みたい』としばしば公判を中断させるなど、弁護団には反抗的な態度を貫いてきました。中でも男性弁護人の1人からの質問には、『あなたは信用できないから答えません』と回答の拒否が目立ちます」(同前)

 そのため、白石証言の信用性を巡っては、検察側が「信用できる」、逆に弁護側が「信用できない」と主張するなど、“ねじれ状態”が続いているのだ。

「争点は、被害者自らが殺害されることを承諾していたかどうか。女性たちは自殺願望をツイッターに投稿していましたが、白石自身は『死を承諾していた人はいなかった』と一貫して主張し、9件の『殺人』を認めています」(同前)

 ここまで、証人として公判で証言した被害者の家族らは一様に「死刑を望みます」と話している。裁判所の判決は12月15日に言い渡される予定だ。

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関連エントリ 2020/10/27 ⇒ 【座間9人殺害】公判✍被害者遺族「“殺害同意”あり得ない」
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2020年10月28日 (水)

【座間9人殺害】公判✍白石被告「“承諾殺人”ではない」

 〔強盗強制性交殺人罪など〕白石被告、承諾殺人を否定ー東京地裁 

時事通信 2020年10月28日(水)17時48分配信

 神奈川県座間市のアパートで10~20代の男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判が28日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)であり、6番目の被害者となった福島市の女子高校生=当時(17)=に関する被告人質問が行われた。

 被告は殺害の承諾や同意があったか問われると「ありません」と答えた。

 被告は女子高校生について、「恋人と別れ、顔にも自信がないと言っていた。好きになってくれる人を求めて(自分の所に)来たと思った」と話した。

 被告人質問に先立ち書証調べも行われ、検察側は、女子高校生が2017年9月27日に福島駅から高速バスで東京都内へ移動し、翌28日に被告と合流して座間市のアパートを訪れたと説明。事件について「絶対に信じたくない気持ち」「犯人が許せない」とする女子高校生の母親の供述調書も読み上げられた。

 一方、弁護人は、女子高校生の友人らが捜査段階で語ったとされる内容を紹介。女子高校生が事件前、たびたび「死にたい」などと口にしていたと述べた。 

白石被告、捜査段階も「同意なかった」供述 5人目被害者巡り

毎日新聞 2020年10月28日(水)20時27分配信

 神奈川県座間市のアパートで2017年に9人の遺体が見つかった事件で、強盗・強制性交等殺人罪などに問われた白石隆浩被告(30)の裁判員裁判は28日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で、5人目の被害者とされる埼玉県春日部市の女性(当時26歳)の事件に関する白石被告の捜査段階の供述調書が読み上げられた。「(女性は殺害に)同意していなかった」と供述していた。

 検察側が読み上げた供述調書によると、女性は17年9月24日、白石被告と会った後に「寝ている間に殺してほしい」と伝えたという。9人の被害者の中で、会った後にも「殺してほしい」と言ったのはこの女性だけだったというが、白石被告は「(女性を襲った際に)抵抗していたので(殺害への)同意はありえない。私がしたことは殺人罪に当たる」と話していた。白石被告は27日の被告人質問では、殺害の経緯について「正確に記憶していない。捜査段階の方が記憶が新鮮だと思う」と述べていた。

 公判は6人目の被害者とされる福島市の女子高生(当時17歳)の審理に入った。被告人質問で白石被告は「(女子生徒は)金払いがよかった。ヒモになるつもりで口説いた」と述べ、当初は殺害するかどうかを見極めていたが、眠っている姿を見て襲うことを決意したと説明した。

 女子高生の母親の供述調書も読み上げられた。「娘が本当に死にたかったとは到底思えない。17歳で命を絶たれ、悔しくて残念。のうのうと生きている被告を許せない。死刑になってほしい」と心情を吐露していた。

 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年10月28日(水)6時01分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

「失神した女性でなければ…」白石被告が法廷で明かした異常な“こだわり”

「4人目を殺害後、失神した女性でなければ、快感を得られなくなった」

 2017年10月に発覚した神奈川県座間市のアパートで男女9人を殺害した事件の裁判員裁判が、10月27日、東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で行われた。この日は、5人目に殺害したEさん(当時26、女性)に関する被告人質問が行われた。

Eさんの悩みは、「家族から愛されたい」

 白石隆浩被告(30)は、4人目のDさん(当時19、女性)を2017年9月16日に殺害した後、殺害していない女性と同意の上で性行為をしたが、「快感が足りなかった」と証言した。失神した状態で強制性交をすることが目的化していくことを明らかにした。

 冒頭陳述等によると、Eさんは当時無職。弁護側が明らかにしたEさんの悩みは、「家族から愛されたい」というものだった。19歳で夫と結婚。長女を出産する。しかし、家事や育児がうまくできないことから、夫の両親とはうまくいかず、夫と長女と3人で暮らすようになる。その後、Eさんの両親が中古の戸建てを購入。3人はその住宅で暮らすようになった。

 しかし、夫には十分な収入がなく、お金のことで喧嘩になることもあった。そのため、1回目の離婚をする。ただし、3人の生活は続き、復縁する。Eさんは長女を保育園に預けて働こうと思っていたものの、長女に発達障害傾向があり、保育園がなかなか決まらなかった。そのため仕事を始められず、実母から責められることになる。育児疲れから、自殺未遂をしたこともあるが、常に夫が止めていた。

〈いつごろがいいですか? 早く死にたいです〉

 2017年8月30日、夫と2度目の離婚をする。そして、元夫は長女を連れて、自分の実家に住むことになる。自宅はEさんの両親が3人の生活のために購入したものであり、実母は「家から出ていくように」と言ってきた。Eさんは頼る先がなくなった。

 9月23日午前3時8分、EさんはTwitterで、一緒に自殺をする相手を募集するツイートをする。それをきっかけに、白石被告のアカウント「@_」とやりとりが始まる。

@_ フォローありがとうございます。まだ探していますか? 一緒に死にましょう。

Eさん 探しています。よろしければ、ご一緒に死にましょう。

@_ いつごろがいいですか? 早く死にたいです。

Eさん 奇遇ですね。私も今すぐ死にたいです。

@_ 方法は?

Eさん 確実に死ねるなら何でもいいです。

@_ 首吊りはどうでしょうか?

Eさん 問題は場所ですね。失敗したら苦しいので(経験済)

 このやりとりについて、白石被告は「会うことが目的でした。会ったのちに、お金を引っ張るか、もしくはレイプして殺害するか」と検察官に答えている。

「同じ年齢のほうが信用されやすいと思った」

@_ 成功させましょう。森や公園は、整備されたところだと警備は厳しい。整備されていないところだと、樹海のようでとても入りにくい。Eさんの部屋か私の部屋でどうでしょうか?

Eさん 自分の部屋は失敗しています。

@_ 自分の部屋ではどうでしょうか?

Eさん 今日会えればいいのですが。性別や年齢を教えてください。

@_ 大丈夫です。何時ごろがいいですか。26歳男性です。

 このときのやりとりは、白石被告の自宅へ誘い込むための誘導だった。そして、これまで「24歳」と言っていた白石被告だが、今回は本当の年齢を告げた。なぜか。その理由について「Eさんのプロフィールに26歳とあったため、同じ年齢のほうが信用されやすいと思った」と話した。

 ただ、Eさんは日にちをずらす返信をする。

Eさん 1日だけ待ってもらっていいですか? 会いたい人がいます。

@_ まだ幸せになれそうなんですね。

Eさん なれないです。救ってくれるといいんですが。

@_ 元気出せそうなら、死ぬのは中止にしましょう。

Eさん 本当は死ぬ気がなかったんです。でも、2日前から連絡がなくて。

@_ 心の大部分を占めていたものがなくなれば、苦しいですよね。

Eさん 最近、人の感情がわからないんです。

@_ いろいろあって人を信用できないんです。父とTwitterで会った人くらいです。

Eさん お父さんがいればいいじゃないですか。

@_ でも、6年会っていません。両親は離婚しましたし。

Eさん 同じ境遇ですね。自分は話を聞くことはできます。

@_ 死ぬしかできません。

Eさん 一緒に死にましょう。

 こうしたやりとりについて、白石被告は「いい人だと思わせるため」と述べた。

同意に基づく性行為では……

 実は、失神した女性をレイプするという白石被告の“こだわり”が強まるのは、4人目のDさん殺害後だ。

 1人目のAさん殺害より前、お互いの同意に基づいて性行為をしたXさんがいたという。筆者が拘置所で白石被告と面会したときに殺害しなかった4人の存在をあげ、そのうちの1人とは「交際していた」と言っていたが、このXさんのことだろうか。Xさんとは、Dさん殺害後にもう一度会って、同意に基づく性行為をした。その時のことについて、法廷でこう述べた。

「事件前に知り合ったXさんと同意の上で性行為しました。4人を殺害後にも、再びXさんと同意の上でセックスをしたのですが、射精ができませんでした。興奮が足りなかったのです。レイプされることがわかっていない状態で襲うことに興奮しました。いきなり女性に襲いかかることが楽しみになりました。普通の性行為よりもスリルを感じたのです」

 また、弁護側の質問にほとんど黙秘していた白石被告だが、こうも答えている。

「今、冷静に考えれば、いきなり女性を襲うことも楽しみだったと推察します」

女性を無理やり襲うこと自体も、事件の動機だった?

 ただ、弁護側としては初耳だったようで、「そのことはこの公判で初めて言いましたよね?」と問いただした。白石被告は「取り調べでは話したかもしれない」と述べた。弁護側は「それは動機に関わる重要なこと。楽しみと話していたら、必ず調書に書かれているはずだが、書かれていない」と再度問いただす。

 それに対して、白石被告は「失神後の女性との性行為については話したが、そもそも、女性を襲うこと自体について、捜査段階で深掘りがされなかったのだろう。初めて言ったのかどうかは思い出せません」と答えた。つまり、失神後にするレイプだけでなく、抵抗している女性を無理やり襲うこと自体も、事件の動機だったことになる。これが当時の感情なのか、今の感情なのか、現段階では判断できない。

壮絶な犯行現場「ノコギリで首を切り落とし、ぴちゃんぴちゃんと血が一滴ずつ落ちて…」

 神奈川県座間市のアパートで男女9人を殺害した事件をめぐる、白石隆浩被告(30)の証言は続いた。

 10月27日の法廷では、5人目に殺害されたEさん(当時26、女性)の場合は、それまでの4人と違って、部屋で話をして、薬や酒を飲ませて、眠くなってきた状態で襲ったわけではないことが明らかになった。Eさんは、元夫とLINEをしたり、電話をするために、白石被告のアパートを少なくとも5回以上は出入りしていたという。

「私が寝た後で、殺してください」とEさん

 Eさんは、2017年9月24日7時台に相武台前駅で白石被告と合流している。8時ごろには、部屋についているが、その後、元夫とLINEをしている。

Eさん 今日会えない。出かけることにした。

元夫 大丈夫?

Eさん さいなら。

元夫 どうした?

(その後、元夫から4分55秒の通話)

元夫 連絡して。

(その後、Eさんから40秒の通話)

Eさん 死ぬの怖い。

元夫 ちゃんと話し合おう。

Eさん うちが死んだら悲しい?

元夫 悲しむよ。あたり前だろ。

Eさん ありがとう。今、吊っているけど、うまくいかない。

元夫 やめたら。

Eさん やめないよ。みんな私を煙たがっている。

 こうしたやりとりをした後、Eさんはまた白石被告の部屋に戻る。部屋に来る前、Eさんは「私が寝た後で、殺してください」と白石被告に話をしていた。しかし、部屋に来たときには、Eさんは何度も出入りをしていたため、ヒモになれるのかどうかの見極めに時間がかかった。

バッグの中にあったポーチから、所持金数千円を奪った

 そのため、白石被告は「(Eさんが)帰ってしまうのではないか」と考え、Eさんが部屋に戻ってきたときに、玄関の鍵を閉め、薬やお酒が十分に効いていないかもしれない段階で襲った。

「Bさん、Dさんを殺害するときは、薬やお酒が効き、床に手をつき、ぐったりしていた状態のときに、いきなり背後から胸を触って、首を絞めるという手順でした。しかし、Eさんの場合、急に襲って、胸を触らずに、首を絞め、引き倒したという記憶があります。(Eさん以外の)他の人は部屋で話し込んでいたのでそうしましたが、Eさんの場合は、出入りを繰り返していましたので、部屋に戻ったときに急に襲いました」

 襲いかかる時、壊れないようにメガネを外し、浴室に置いていた。その後、レイプをして、下着や上着を着せて、ロープに吊るし、バッグの中にあったポーチから、所持金数千円を奪った。そして、30分から1時間放置し、死亡確認をした。検察側の質問にこう答えた。

「立ち姿勢か、座り姿勢だったかは覚えていないが、背後から右手で首を絞め、左手で顎や口をおさえました。首を絞めるときは、Eさんの顔を見ていません。もし、指で目を突かれたら困るから、顔はEさんの胸やお腹の付近にありました。基本的には相手の指が届かない位置です。

 その後、失神するまでの記憶はありません。おなかを殴ったかどうかは記憶にありません。やったかもしれないし、曖昧です。失神したとわかったのは、相手の抵抗がなくなったからです。一方的な格闘でした。私のほうが力が強いからです。失神後は、陰茎部を挿入し、射精しました」

首を切り落とすための時間は1分から3分

 首を吊った後、放置している中で、遺体を解体するため、ノコギリや包丁の準備をした。

「包丁で皮を剥ぎ、ノコギリで首を切り落とした。切り落とすための時間は1分から3分。切り落とした後は、血抜きをするために、30分から1時間放置しました。最初は水道から水が出るように血が出ているのですが、そのうち、ぴちゃんぴちゃんと血が一滴ずつ落ちている状態になり、血抜きが終わったと判断しました。

 その後、大きな骨と頭部は、猫砂を入れたクーラーボックスの中に入れました。しばらく胴体は浴槽に浮かせて、腐敗を防ぐために、ロックアイスも入れました。消臭のため、柔軟剤を浴槽に入れたり、浴室の換気部分にかけました」

 白石被告は、1人目のAさん殺害後は頭痛に悩まされたという。しかし、Eさん殺害では頭痛などの症状はなかった。コンビニで買ったペペロンチーノやサラダチキンを食べていた。

「食欲の減退はありませんでした」

遺族は「罪を償ってほしいです。死刑を求めます」

 前日、Eさんの母親が証人として出廷。「事件が起きてからすごく苦しくて、これからも苦しい思いをしていかなければならない。そのことをわかってほしい。被告人には少しでも苦しさを理解してほしい。罪を償ってほしいです。死刑を求めます」と涙ながらに証言した。

 また、元夫も証言し、「離婚したのは、一度離れてみようと思ったから。娘とも2週間に1回は会う約束をしていました。最後に会ったのは9月20日。元妻はいつもと変わらない様子でした。(事件後の)9月27日には、これからどうするかの家族会議が開かれることになっていました」などと話した。

 ちなみに、Eさんがいなくなって、母親は警察に行方不明者届を出している。そのとき、Eさんの家にいくと、正面玄関には「おそ松さん」グッズが大量に置かれており、勝手口から家の中に入ったという。そして、テーブルの上にあった名前や作成日はないメモには、「ひつようとされていない。じゃまものあつかい。きらわれもの、もういやだ。こんどこそせいこうさせよう。じさつしたひとがうらやましい」などと書かれていた。

 ただし、この日の法廷でも、白石被告は承諾殺人を否定した。

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 神戸教員いじめ事件」大バッシングを受けた加害者たち“その後 

現代ビジネス 2020年10月28日(水)7時31分配信/秋山 謙一郎(ジャーナリスト)

 やはり、もう、教壇に二度と立つことはないのだろう。犯した罪は、それだけ大きかったということだ。

 昨年、2019年秋に発覚した神戸市教員間いじめ問題で、今年2月、いじめ行為を行っていた加害4教諭のうち、蔀俊、柴田祐介ら両教諭に懲戒免職処分、“女帝”とよばれ、いじめの黒幕とされた40代女性教諭と、その使い走りといわれる30代男性教諭に、それぞれ停職3ヵ月、減給3ヵ月の処分が下された(拙稿『神戸「教員いじめ・暴行事件」、加害者たちは今何をしているのか』)。

 いじめ被害にあった教諭も、関係者によると、すでに復職、現在は、事件の舞台となった神戸市立東須磨小学校とは「別の小学校で心機一転、元気に勤務している」ことから、事件そのものは、コロナ禍での喧噪もあってか、日を追うごとに風化の一途へと向かいつつある。

 だが、事件の舞台となった神戸市民はもちろん、小学生の子を持つ親にとって、やはりこの事件は、未だ忘れられるものではない。

教育現場復帰は現実的ではないが…

 「もしかしたら、また復職して、うちの子の担任になるのではないかと思うと不安でたまりません」

 こう語るのは、神戸市内に住む小学校4年生の子を持つ母親だ。神戸市民のみならず、全国にいる小学生の子を持つ親の不安は、まさに、「やがて、いじめ加害教諭が復職、自分の子の担任になるのではないか」という一点に尽きよう。

 もっとも、懲戒免職となった蔀、柴田の2元教諭は、すでに教員免許状が失効、神戸市以外の自治体や私立学校での教育現場復帰は、もはや現実的ではない。

 制度上、失効した教員免許状の再申請も可能ではあるものの、これだけ世間を騒がせた事件の当事者であることから、他自治体や私立学校が「教諭職」として、あらたに採用する可能性は、ほぼゼロだからだ。

 「わざわざ、世間を騒がせて、いじめ事件の当事者として名が知られている“元教諭”を採用する自治体はない。私立学校でも、二の足を踏むだろう。そんなリスクを取らなくても、もっと教員として相応しい人格の、若い優秀な人は、募れば大勢いるのだから」

 このように、神戸市の小学校で校長を最後に退職した校長経験者は、懲戒免職となった2教諭をはじめ、事件に関わり、その後、神戸市教育委員会へと異動となった加害2教諭と、事件の大きな遠因を作ったとされる前々校長(元校長)らの教育現場復帰は、「まず、あり得ない」と断言する。これは概ね教育関係者たちの間では衆目の一致した見方だ。

仁王前校長は何をしているのか

 さて、前出の校長経験者が言う、「事件に関わった者たち」のうち、事件発覚時の校長、仁王美貴前校長だけが抜けていた。これは、その受けた処分が「監督責任のみを問われたもの」だからだそうだ。

 そうすると事件で処分された者のうち、唯一、仁王前校長のみが、教育現場復帰の含みが残されているといったところか。神戸市教育委員会(以下、市教委と略)に問うてみた。

 「まず、ありません。すくなくとも、今年度、来年度といった期間では、ありえません」

 市教委によると、仁王前校長は、事件後、市教委の上席にある者から、「厳しい内容を持つ研修の意味合いを含めた説諭」(市教委)を受け、校長職を外された。そして市教委へと異動。現在は、ここで事務の仕事に就いている。特に研修を受けることを求められておらず、ごく一般の勤務を行っているという。これは教員や公務員らによると、その世界では、すでに「禊は済んだ」という理解だ。

 とはいえ、事件時、55歳だった仁王前校長の年齢、先の市教委の回答を踏まえると、実質的に教育現場への復帰の道は閉ざされたものとみるのが妥当かもしれない。

前々校長と加害2教諭の現在

 もっとも、教員世界、あるいは公務員のそれでは、皮一枚、首が繋がった格好の仁王前校長とは異なり、他の事件関係者は、すでに懲戒免職となった蔀、柴田の2教諭を除き、現在も、事件への反省を余儀なくされており、教育現場復帰は、完全に閉ざされたといえよう。

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 「前々校長の芝本、残る加害2教諭については、市教委にて、カリキュラムを組み、研修を受けさせています」(市教委)

 その内容は、芝本前校長がパワハラ、残る加害2教諭がいじめやハラスメントといった内容への理解を深めるものだそうだ。彼らは、現在、市教委で勤務の傍ら、上席者の指導の下、時にワークショップ型の研修を施されているという。その主眼とするところは、関係者によると、あくまでも、「教育関係職としてふさわしい適格性を養うためのもの」だという。実際、彼らは、事件後も、その職種は「教諭」のままだ。

 こうしてみると、やはり、遠い将来、事件のほとぼりが冷めた頃、彼らが教育現場に舞い戻ってくる可能性が残されているようにも思える。そうした記者の声なき声に応えるかのように、市教委は、こう回答した。

 「研修の目的は、教育現場復帰を目指すためのものではなく、教育委員会という教育に携わる場で働く者として、必要なそれを身に着けさせるためのものです」

 教育行政を掌る教育委員会の仕事は、学校教育、図書館や公民館といった社会教育、その他、ありとあらゆる事務と多岐に渡る。そのどれもが、教育という一点に集中する。そこでの事務の仕事を行うといえども、やはり教育に携わる者としての適格性が必要だ。そのための研修であり、決して、「来る教育現場復帰に備えてのそれではない」(市教委)という。

加害側に取材を申し込んでみると…

 さて、この事件処分者への待遇について、前出の神戸市校長経験者らに謎解きをしてもらった。その内容は概ね、次の通りだ。

 「監督責任のみを問われた仁王前校長は、定年退職後、例えば児童館など、教育関連職での再就職の可能性が残されている。そして神戸市の校長や教員経験者OB・OGの集まりでも、それなりの居場所を用意されるはずだ。ただし叙勲は難しいだろう」

 対して、厳しい処遇が続く、芝本元校長、残る加害2教諭については、定年後も茨の道が強いられそうだ。

 「勝手にマスコミに登場し、単独で取材を受けた芝本元校長は、もう居場所はない。定年後、すくなくとも神戸市の教育関連職への再就職への斡旋もなければ、採用もないだろう。当然、叙勲もない。残る加害2教諭も同じ」

 一般人には窺い知れない処遇の差は、このような形で“処分”として続くのだ。これが生涯続く。これこそが彼らにとっての罰なのかもしれない。

 しかし、それでも、ごく一般の市民感覚では、彼らが手厚い公務員身分に守られ、安定した給与を手にしながら、勤務の傍ら、研修という名の“お勉強”を税金でさせて貰っていることに、すくなからず怒りを覚える向きもあるだろう。

 そんな彼らは、今、何を思い、事件にどう向き合ってきたのか。市教委に、加害2教諭と、仁王前・芝本元両校長への取材を申し込んでみた。その回答は「仲介は致しかねます――」(市教委)と、にべもないものだった。

 ところが、「市教委として仲介はしないが、マスコミ側が本人と接触、本人が単独で取材を受けることについては市教委側は関知しない」(同)と言う。

 裏を返せば、これはもう、「いちいち市教委や神戸市を通さず、好きに本人とコンタクトを取れ」という意味と理解できる。事実、市教委幹部のひとりは、私的な意見と前置きしつつ、「組織としてマスコミ取材から彼らを庇いだてやしない」「ノーガード」と語った。

 市教委としても、もう、彼らを、持て余しているようだ。

 もちろん、これまでにも、懲戒免職となった蔀、柴田の2元教諭を含め、彼ら事件処分者たちに取材受けの交渉を行ってきたが、現時点では、残念ながら捗々しい回答を得ることができなかった。

公務員はこんなに手厚く守られている

 神戸市教諭の身分を持つ彼らは、今でこそ教壇にこそ立っていないものの、歴とした教育職の公務員だ。市民への責任がある。今日明日とは言わないが、事件後から今日まで、どう過ごし、何を思うのか、公務員として、みずからの声で市民に説明しても罰はあたらないだろう。

 懲戒免職処分により、「神戸市や市教委とは、もう何の関係もない人」(市教委幹部)となった蔀、柴田の両元教諭も、今では“元”がつくとはいえ、やはり公務員、その身分は手厚く守られている。教育関係者や弁護士らによると、彼らが、みずからに下された処分が重たすぎるとして訴訟を起こせば、それが覆る可能性がまだ残されているからだ。

 もし、司法が、そのような判断を下せば、細かい手続き上の問題はさておき、「神戸市教諭」として復職、その際には、「懲戒免職後から復職時までの給与、ボーナスなどの支給が行われることになる」(弁護士)という。

 あくまでも仮定の話だが、もし懲戒免職となった2教諭が復職した場合、他の加害教諭らと同様、「市教委で研修を受けつつ事務を執る」仕事に就き、そのまま定年退職を迎える公算が強い。

 かくも公務員とは、一度、なってしまえば、辞めてもなお、手厚く守られる。はたして、これは、今の時代、市民に受け入れられるのだろうか。

 教育職であるか行政職であるかどうかを問わず、懲戒処分を受けた公務員は、その後、懲戒理由となった事件に、どう向き合い、何を思ったか、一定期間、地方自治体や教育委員会のHPなどで、これを市民に伝えるような仕組みを制度化が急務である。

 そうでもしなければ、彼らもまた、ずっと、ネットを通した大勢の声に苦しめられることになる。声をあげるネット民のなかには義憤に駆られて、あらぬ行動に出る者もいるかもしれない。そうした暴挙を事前に防ぐためにも、市教委による彼らへの“処分後の対応”の可視化が必要だ。

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