地球の裏側

2021年1月16日 (土)

【全米ライフル協会】NRA<ニューヨーク“脱出”計画>テキサス州で破産法申請

 全米ライフル協会NY脱出 訴訟回避へ破産法申請 

時事通信 2021年1月16日(土)9時28分配信

 銃所有の権利を訴え米国屈指の影響力を持つロビー団体・全米ライフル協会(NRA)が15日、非営利団体として登録しているニューヨーク州から「脱出」し、テキサス州で再建を目指すと発表した。

 この計画に伴い、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をテキサス州の裁判所に申請した。

 ニューヨーク州は昨年8月、NRA幹部が資金を不正に流用しているとして、NRAの解散を求め提訴していた。NRAは15日、財務状況は健全だと主張しつつ、「ニューヨーク州の腐敗した政治的な規制環境から離れ、テキサス州の非営利団体として再建する」と説明した。

 これに対し、ニューヨーク州のジェームズ司法長官は声明で「NRAが責任を逃れることは許さない」と述べた。米メディアによると、ニューヨーク州では通常、捜査中の非営利団体は移転できないという。 

 全米ライフル協会テキサス移転 汚職捜査回避目的か 

AFPBB News 2021年1月16日(土)11時55分配信

 米国の有力な銃ロビー団体「全米ライフル協会(NRA)」は15日、同協会とその支部1拠点について、テキサス州ダラス(Dallas)の裁判所に米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表し、テキサス州に移転することも明らかにした。ニューヨーク州での汚職捜査を回避するためとみられる。

 1871年にニューヨークで設立されたNRAは、将来的に「ニューヨークでの有毒な政治環境から解放」されるのを確実にするため、テキサス州で非営利団体(NPO)として再法人化することを決めたとしている。

 ニューヨーク州は昨年8月、金融詐欺などの不正行為に及んだとして、NRAとウェイン・ラピエール(Wayne LaPierre)最高経営責任者(CEO)を相手取り、同協会の解体を求めて訴訟を起こしていた。

 同州のレティシア・ジェームズ(Letitia James)司法長官は、ラピエール氏らNRA幹部4人が長年にわたり会員からの会費や寄付金を自らの「貯金箱」として利用し、非営利団体の運営に関する法律に違反して数千万ドル(数十億円)を着服していたと指摘。

 NRAは数十年にわたって全米の銃保持者や愛好家らの意見を代弁し、合衆国憲法修正第2条の銃保持の権利を引き合いに出して、銃規制の緩和や撤廃で大きな成功を収めてきた。

 米国銃規制の闇女神の見えざる手映画化秘話 

CINEMORE 2020年12がつ30日(水)17時04分配信/金原由佳(映画ジャーナリスト)

スピルバーグとジョン・マッデンが取り合った、英国人教師の独学による初めての脚本

 一般社会においてブラックリストに載るというと、キャリアにおいて大きなダメージを負うイメージにあるが、ことハリウッドではThe Black Listに名前が連なることは大きなステップアップを意味する。というのも、The Black Listとは大手スタジオの重役たちが選ぶ、映画化されていない優秀な脚本のリストであるからだ。

 2005年、当時27歳で映画スタジオの幹部だったフランクリン・レナードが行ったアンケートに端を発し、今では250人以上の映画関係者が、まだ映画化されていない優秀な脚本に投票をし、それをリスト化。この中から、『ジュノ』や『レスラー』、『ソーシャル・ネットワーク』『 英国王のスピーチ』『 スポットライト』などアカデミー賞を受賞する作品が現れるようになり、いまや脚本家の青田買いの場ともなっている。

 『女神の見えざる手』もThe Black Listで見いだされ、映画化されたものだ。

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 脚本家はこれが一本目のジョナサン・ペレラ。

 イギリスで弁護士をしていたペレラは、仕事を辞めて、アジアでの教職に転職。韓国で英語教師をしているとき、独学で脚本作りを学び、あるとき、母国イギリスのロビイストが不正行為で逮捕されたことに発想を得て、一人の天才的なロビイストの違法行為すれすれの活動を描くことを決意する。

 ただし主人公は野心溢れる女性へと変換。それまで勝つためにはどんなことをも厭わなかったクールな女性が、ある政治家に依頼された大きな仕事だけは、頑として引き受けず、逆にその案件を徹底的に反対する立場を取るという物語となった。

 一時はスティーブン・スピルバーグも興味を持ち、自ら映画化しようとしていたというが、手を挙げたのは脚本家と同じ、イギリス出身の映画監督、ジョン・マッデンだった。脚本家も監督もイギリス人だからこそ、鋭く切り込む内容になったともいえる。

 なぜなら、ヒロインのエリザベス・スローンが徹底抗戦するのが、大物政治家たちによる、女性たちの積極的な銃保持のキャンペーンだったからだ。製作を請け負ったプロダクションが、フランス人監督、リュック・ベッソン率いるヨーロッパコープなのも興味深い。

ヨーロッパ人の鋭い視点が炙り出す、アメリカの銃規制が進まない闇

 ご存知のように、アメリカでは銃の保持については、「合衆国憲法修正第2条」の「規律ある民兵(ミリシア)は、自由な国家の安全にとって必要であり、武器を保有し携帯する人民の権利は、侵害されてはならない」という一文で、一般市民による銃器所有の正当化を認められている。

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 ここ数年、アメリカでは社会に居場所をなくした者の苛立ちや、自身の現状への不満や失望を端にした無差別乱射事件が絶えず、その度に、世論から銃規制の声が高まるものの、それが進まない。それもこれも、この「修正第2条」を含む「合衆国憲法修正10カ条」が「合衆国憲法」の「人権」に関する「権利章典」であるからだ。

 つまり、銃の保持と携帯もまた、人権の権利であるという考え方である。

 とはいえ、この「修正第2条」が作られたのは1791年のことで、開拓時代の事情を2010年代の現在の社会にそっくり当てはめるのはおかしいという考えた方もある。

 特にオバマ前大統領は銃規制には積極的で、2012年のコネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件の衝撃を受け、2013年には、全ての銃販売に身元チェックを義務づけると共に、軍隊で使うような襲撃用銃器や大量の弾丸を装填できる弾倉の販売を禁止する銃規制強化案を発表している。

 ところが、この強化案がすんなり通らない理由の一つに、銃規制に一貫して反対している全米ライフル協会(NRA)の存在がある。『女神の見えざる手』でジェシカ・チャステイン演じる凄腕ロビイスト、エリザベス・スローンに、銃保持のキャンペーンを依頼してくるのはチャック・シャマタ演じるビル・サンドフォードであるが、彼は銃擁護派団体の代表である。

 ちなみに、事務所の社長とともに、このサンドフォードから仕事を依頼された瞬間のジェシカ、「は?馬鹿じゃないの」と言わんばかりにプッと吹き出し、悪い冗談を聞いたかのように大笑いする。周囲が戸惑う中、引き受けるわけがないと啖呵を切って、その場で事務所をすっぱりやめてしまうからカッコいい。

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 だが、銃擁護団体の力は強大で、銃規制法案を通す側の立場に立ったエリザベスにありとあらゆる仕掛けをもって、彼女を貶めようとしてくる。『女神の見えざる手』はこの騙し、騙されのコンゲームをスリル満点に描いたものだが、よくこれがイギリス・アメリカの合作で作れたなと感心してしまう。

 というのも映画の中の銃擁護団体のモデルと思われるNRAはハリウッドと関係が深く、『 ベン・ハー』によるオスカー俳優、チャールトン・ヘストンがこの団体の会長を5期勤めていたのは有名である。

 1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件を契機に、アメリカでの銃保持に強く疑問を持ったドキュメンタリー作家、マイケル・ムーアは『 ボウリング・フォー・コロンバイン』でチャールトン・ヘストンにアポなし突撃取材を試み、彼を質問攻めにして、都合の悪い質問に対して、口ごもる姿を容赦なくカメラに収め、『 猿の惑星』を筆頭に、ヘストンの演技を愛してきた観客に様々な問題定義を施している。

ロビイストとは何をする仕事なのか?

 さて、『女神の見えざる手』は、今のアメリカが手をこまねいている「銃規制」の法案を実現しようとする女性ロビイストを題材にしていて、ある意味、アメリカにこういう人物が現れればいいなという現実とは遠い、希望を描いているともいえる。

 だが、ジェシカ・チャステイン演じるエリザベスは全然良い人としては描かれない。ジョン・マッデンは脚本に惚れ込んだ理由として、ヒロインが実に野心的で、品行方正な人物とは言い難いところを挙げている。

 映画の中で彼女は簡単に人を切り捨て、目的のためには、身内のスタッフの過去を暴き、その弱さを平気でマスコミに使い、利用もする。

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 恋などする時間もないし、そもそも恋も愛も求めていない彼女は、性欲を満たすためだけにエスコートサービスを利用しているのだが、そういうプライベートが後々、敵側に突かれ、大きな危険を舞い込むことにもなってしまう。

 さて、そもそもロビイストとは何をする仕事なのか。

 ロビイストとは、ある特定の主張を有する個人または団体が、政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う、私的な政治活動であるロビー活動をする人のことをいう。ちなみに先にあげたNRAもロビー団体の一つである。

 日本では東京オリンピック誘致などでロビー活動についていろいろと注目されたが、あまりにも政治の場でロビイストの力が絶大であるがために、前オバマ大統領がロビイストを規制しようとしたのも有名な話である。

 まさか、銃規制に猛然と立ち上がるロビイストの映画ができるなんて、彼はどう思ったのか、聞いてみたい気もする。

 金融の街、ニューヨークにウォール街があるように、政治の街、ワシントンにはロビイストの事務所は立ち並ぶKストリートがある。ジェシカは現役のロビイストに何人もあってその話し方、立ち居振る舞い、思考の在り方など、徹底的に取材し、身に着けたという。

 現在、アメリカには3万人ものロビイストがいると言われるが、これまで映画の中には、影のフィクサーとして出てくることはあっても、ここまで表立って主役として描かれることはほとんどなかった。ロビイストがなぜ、そこまで強い力を持つかというと、企業からの献金を政治家に持ち掛け、巨額のやり取りを実現させるからである。

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 個人による寄付で政治活動をしたオバマはそれをきらい、献金も厳しく禁止しようとしたが、トランプ大統領は逆にロビイストへの門戸をそれは広く大きく開けて、規制緩和にも積極的だ。

 もし、エリザベスが本当に存在していたら、「銃乱射を止めるのは銃」と言ってはばからないトランプ大統領に対してどう振舞うだろう? そんな夢想が止められない。

 最強の圧力団体全米ライフル協会破産申請した裏事情 

FLASH 2021年1月17日(日)20時04分配信

 アメリカ最強の政治的な圧力団体「全米ライフル協会(NRA)」が1月15日、破産法を申請した。

 米議会襲撃事件以降、NRAに対する世論の風当たりが強くなり、まもなく銃規制を謳う民主党政権に取って変わるが、それだけが原因ではなさそうだ。会員数500万人を超え、豊富な資金を持つ歴史ある団体の破産申請は、どうやら計画的で打算的だったようだ。

 NRAは南北戦争直後の1871年に設立された。射撃訓練や銃器の教育をおこなう組織として、また合衆国憲法修正第2条に規定されている「武器を保有し携帯する権利」を擁護する社会運動を進める団体である。1963年のケネディ大統領暗殺で銃規制運動が高まった頃から、むしろ会員数は激増し、反メディア・反銃規制のロビー活動団体というイメージが定着した。

 NRAは長年、巨額の資金を政治につぎ込んできた。協会では、政治家たちをA+からFまで7段階にランク付けしており、トップランクの議員には数億円規模の寄付がおこなわれる。

 政治的立場から共和党議員のランクが高く、これまでジョン・マケイン氏は7億円を超える寄付を受けている。トランプ大統領は、2016年の選挙事務所立ち上げからNRAと手を組み、当時31億円ほどの寄付を受けたという。また、1月5日におこなわれたジョージア州の決選投票には4.6億円を注ぎ込んでいる。

 逆にF評価である民主党のヒラリー・クリントン氏に対しては、批判広告などのネガティブキャンペーンを繰り返している。

 アメリカでは銃の販売店が街中に点在し、スポーツショップや量販店などで1万円代から気軽に購入できる。近年の高校銃乱射事件を受けて、ラピエールCEOが「子供たちを守るため、すべての学校に武装警官を配備するべきだ」と述べたのは有名な話だが、NRAの長年のロビー活動により、銃規制が次々に弱められてきたのが現実だ。

 だが、そうして風潮にようやく批判の声が届くようになってきた。銃乱射事件が起きたサンフランシスコでは、「どこの国にも精神衛生上の問題はあるが、量販店などで容易に銃が入手できるのはアメリカだけで、それはNRAの影響によるものだ」と協会を批判、2019年に市議会が満場一致でNRAを「国内テロ組織」と認定した。

 2020年夏には、ニューヨーク州が、NRA幹部の資金流用疑惑と協会の解散を求める裁判を起こした。ラピエールCEOは、カリブ海やヨーロッパへのプライベートジェット代やブランド服など5200万円、他の3幹部たちも合計66億円ほどの資金を流用したという。

 カマラ・ハリス次期副大統領や民主党議員から解体を求める声が強まるなか、1月16日、NRAからAランク評価を得ていたローレン・ボーベルト議員の辞職が報道された。

 彼女はコロラド州で銃を所持したまま利用できるレストランを経営しており、銃所有の権利を強く主張している。国会に銃を持って行くと公言したことで物議を醸した新人議員だが、陰謀論と呼ばれる「Qアノン」の信奉者で、議会襲撃の際、乱入者の手引きをしたのではないか疑われていた。

 NRAの破産申請は、こうした逆風のなかで取られた一手だった。NRAは、実際には資金に困っていたわけではない。コロナ禍の政情不安で銃の売り上げは伸びており、2020年は近年最多で1700万もの審査がおこなわれ、新規の銃購入者は500万人もいた。NRAのウェブサイトにも「資金状況はここ数年間でもよい方だ」と書かれている。

 では、なぜ破産法を申請したのか。これは、ほぼ間違いなく裁判逃れだとされている。申請ではテキサス州での再起が明記されているが、銃愛好者の多いテキサス州へ移ることで、厳しいニューヨーク州の訴訟を避けられる可能性が高いのだ。

 司法長官は「逃げることは許さない」とツイートし、ニューヨーク州でも、移転や破産の適用を阻止する動きが始まっている。一方、かねてからNRAにテキサスへの移転をすすめていたトランプ大統領は、「訴訟はひどい話で、NRAはテキサスでとても素敵な人生を送るといい」とコメントしている。

 訴訟はどちらの土地でおこなわれるのかわからないが、新たな地で再建を果たしても、多額の資金流用疑惑や腐敗体質が消えるわけではない。大統領の言うような「素敵な人生」がやってくるかどうかは不明だ。

トランプ大統領米軍基地での退任式典要求

産経新聞 2021年1月16日(土)9時06分配信

 ロイター通信など主要メディアは15日、トランプ米大統領が20日正午に開かれるバイデン次期大統領の就任式を見届けることなく、同日朝にワシントンを離れると報じた。

 これまでは就任式の直前、新旧大統領がホワイトハウスで一緒にコーヒーを飲んで歓談することが慣例となっていたが、今回は行われない見通し。就任式にはトランプ氏の代わりにペンス副大統領が出席するとみられている。

 トランプ氏は大統領専用機で、ワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地から南部フロリダ州の別荘マールアラーゴに向かう。

 トランプ氏は同基地で、米軍の儀仗隊から21発の礼砲で見送られる「退任式典」を実施することを要求しているという。

 ドナルドトランプ大統領は敗者として去る 

CNN.co.jp 2021年1月15日(金)18時30分配信/デービッド・アクセルロッド(TV司会者)

 伝記作家はこう述べている。かつて、ある冷酷非情なニューヨークの不動産開発業者が悪意のこもった教訓を息子に授けた。やがて米国の大統領となる息子に。

 この世には2種類の人間がいる。フレッド・トランプは事業家見習いの我が子にそう説いた。それは相手の息の根を止める者と、敗れ去る者だ。

 伝えたいことは明白だった。戦いには必ず勝て。どんな手段を使ってでも。ルール? 基準? それは敗者のためのものだ。フレッド・トランプは敗者など眼中にない。

 この教訓を、ドナルド・トランプは嫌というほど叩き込まれた。

 生涯を通じて、トランプ大統領はそうした信念に基づき行動してきたように思える。世界は弱肉強食のジャングルで、強い者が勝者となり、望むものを手に入れる。どんなことをしてでも必ず手に入れる。弱い者だけがルールに従って戦い、敗者となる。

 トランプ氏の世界では、うそをついて相手の優位に立つ行為はほとんど問題にならず、むしろそうしないことが問題とみなされてしまうらしい。他の連中を出し抜かなくては、間違いなく自分が出し抜かれてしまうからだ。

 それこそがトランプ氏の事業経営の考え方だったように思える。行く先々で後に引けない状況を作り出し、仲たがいしたビジネスパートナーからの訴訟沙汰は数知れず。債権者や規制当局、納税の義務を巧妙に逃れているとの疑いをかけられ、業者への未払いや顧客を欺いたといった非難にもさらされている(本人は商取引であれ納税申告であれ不正は一切行っていないと主張する)。

 そうした哲学を、同氏は大統領の職務にも持ち込んだ。ルールや基準に著しく違反し、民主主義の機能を守る制度を弱体化させているのだ。

 さかのぼればあの時、2015年6月にトランプ・タワーのエスカレーターを下り、扇情的で人種差別的なたわごとを浴びせかけながら政治の世界に足を踏み入れたあの瞬間から、トランプ氏はことあるごとに品位を欠いたうそをつき、利己的な物の見方と陰謀論とを振りまいてきた。同氏は故意に、皮肉をこめて国を分断した。自分を大統領に選んだまさにその国を炎上させることで、自身の目的を果たしたのだ。

 権力の座に就いたトランプ氏のサクセスストーリーは、誇張されたリアリティー番組でのイメージの上に築かれたものだ(番組内で同氏はビジネスの巨人として出演していた)。つまり、自分の功績を大きく見せる習慣がすでに身についていたのである。史上最大!史上最高!これまで誰も目にしたことのないものを見せる! 彼は我々にそう約束した。

 なるほど。今回ばかりはトランプ氏の言うとおりだ。

 我が共和国の長い歴史の中で、2度にわたって弾劾(だんがい)訴追を受けた大統領は1人もいない。これは記録に残る屈辱であり、今後もその衝撃が色あせることはないだろう。そしてそれが象徴するのは、歴代で最も腐敗し、混乱し、破壊的だったこの大統領の任期そのものにほかならない。

 おそらく、何が何でも父親から与えられた命令を遂行しなくてはならないとの思いに駆られてのことだろう。フレッド・トランプの息子は我が国の民主主義に対する大変な罪を犯し、権力の座を保持しようとした。

 2度にわたり、同氏は2020年大統領選への介入を試みたといわれる。1度目は19年、外国の指導者(ウクライナの大統領)に汚職の捜査を不当に開始、公表するように圧力をかけるという考えられない行動に出た。捜査の対象は対立候補と目される人物の中でトランプ氏が最も恐れた相手、ジョー・バイデン氏その人だ。

 トランプ氏は皮肉をこめつつも効果的に、この最初の弾劾を党派対立によるものとして描き出し、大統領職にとどまった。当時共和党でトランプ氏への有罪票を投じたのは、ミット・ロムニー上院議員ただ1人だった。

 これに懲りるなどということは全くなく、トランプ氏はさらに勢いづき、立法と司法の決定によって20年の大統領選の結果を覆せると信じ込んだ。自由かつ公正な投票で自身が完全敗北したにもかかわらずだ。

 かくして、米国大統領がたきつけたクーデターの試みにより5人が死亡し、我々の民主主義が傷つく事態となった。大統領は最後の、なりふり構わぬ行動として連邦議会を止めにかかった。議会は憲法上の義務を遂行し、バイデン氏の選挙人投票に基づく勝利を承認しようとしていた。

 議事堂が包囲される様子を目の当たりにし、トランプ氏の一派の中にさえ、もうたくさんだと考える人々が現れた。下院で行われた大統領の弾劾訴追決議案の採決では、共和党の議員10人が賛成票を投じ、トランプ氏が今後連邦政府の役職に就くことができなくなる状況に一歩近づいた。

 もっと多くの共和党議員が政党の垣根を越えて行動するべきだったが、トランプ氏は依然として根強い信奉者の集団を支持基盤に抱え、彼らからの忠誠を確保している。そのため、あまりにも多数の共和党議員が将来の予備選でのトランプ氏と忠実な支持者の存在を恐れて屈服してしまった。そうしなかった議員らは称賛に値する。

 今回のようなクーデターの試みが起こるに至った経緯については、さらにたくさんのことを学ばなくてはならない。なぜこれほど多くの米国民がトランプ氏の敗北は明白なのに詐欺的な言説を受け入れてしまったのかという問題についても同様だ。

 ただ、上院がトランプ氏の歴史的な2度目の弾劾に対していつ、どのように行動しようとも、これだけは分かる。同氏はあと1週間で大統領職を退く。誇りある前大統領としてではない。扇動的な反乱を仕組んだ不名誉で利己的な人物として退くのだ。連邦議会議事堂と我々の民主主義に対する暴力的な反乱。それが彼の墓碑銘になるだろう。

 訴訟と公職の資格剥奪の脅威が目前に迫っている。しかし大統領はすでに、あらゆるものの中で最も手痛い罰を受けている。フレッド・トランプの息子でありながら、敗者として去るのだから。

 トランプ氏バイデン新大統領就任当日の朝にホワイトハウス退出 

時事通信 2021年1月16日(土)11時17分配信

 ジョー・バイデン(Joe Biden)氏が20日の就任式で宣誓し、第46代米国大統領に就任する頃、前任者のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は午前中にホワイトハウス(White House)をヘリで飛び立ち、すでにワシントンから遠く離れた場所にいる──米政府高官が15日、このように明らかにした。

 匿名を希望した政府高官によると、トランプ氏は、自身が所有するフロリダ州の高級リゾート施設「マーアーラゴ(Mar-a-Lago)」に向かう。マーアーラゴはトランプ氏の法定住所で、ホワイトハウスを出てから同氏はここに住む予定だ

 退任する大統領が次期大統領の就任式を欠席するのは、トランプ氏で約150年ぶりとなる。

 ビットコイン保存のHDDうっかり捨てた英国人男性72億円で発掘許可申請 

CNN.co.jp 2021年1月16日(土)13時45分配信

 仮想通貨ビットコインを保存したハードディスクドライブ(HDD)を誤って捨ててしまった英国の男性が、地元自治体に対し、ごみ埋立地の発掘を許可してくれれば7000万ドル(約72億円)を支払うと申し出ている。

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 IT業界で働くジェームズ・ハウエルズさんは2013年6~8月の時期に、7500ビットコインを保存したドライブを廃棄。ハウエルズさんがその4年前にマイニング(採掘)を行った時、ビットコインの価値はまだ低かった。

 しかし、ビットコインの価値が高騰したためハードドライブを探したところ、ごみと一緒に誤って捨ててしまったことが判明した。

 その後、なくなったビットコインの価値はさらに上昇。そこでハウエルズさんはウェールズのニューポート市議会に連絡を取り、ハードドライブが埋められていると思われる埋立地の区画の発掘許可を求めた。

 ハウエルズさんは発掘許可と引き換えに、保有するビットコインの現在価値の4分の1に当たる額を支払うと提案。このお金は地域住民に配ることもできるとしている。

 ビットコインは2009年、「サトシ・ナカモト」の名で知られる1人もしくは複数の匿名プログラマーによって発明された。本質的にはコンピューターファイルであり、利用者の端末の「デジタルウォレット」に保存される。保存後は決済手段に活用することが可能で、全ての取引は「ブロックチェーン」と呼ばれる公開リストに記録される。

 ビットコインの価格は最近史上最高値をつけた後、現在は1ビットコイン=3万7000ドル付近で取引されている。

 ハウエルズさんがハードドライブがないことに気付いた時、保有するビットコインの価値は計約900万ドルだった。現在のレートでは推定2億7300万ドルに相当するという。

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 ビットコイン操作されているクオンツ投資会社の調査担当者 

Bloomberg 2021年1月15日(金)14時34分配信

 アレックス・ピカード氏は2017年にビットコインで多額の利益を得たため、金融関係の仕事を辞めてフルタイムのビットコイン採掘者になることにした。そのベンチャーは1年もたたずに頓挫し、同氏はクオンツ投資会社リサーチ・アフィリエーツで働くことになった。

 調査担当バイスプレジデントの同氏は自身の経験を基に、新しいビットコイン信奉者らに対し、市場は操作されている公算が大きいと警告を発している。

 同氏はリサーチ・アフィリエーツのウェブサイトに掲載した「ビットコイン:魔法のインターネットマネー」というリポートで、「恐らく、ビットコインはリテール投資家と一部の機関投資家、冒険をしてみたいマネーの熱狂によるバブルにすぎないのだろう。しかし私の意見では、はるかにありそうなシナリオは、この『バブル』が熱狂ではなく詐欺によって作られているというものだ」と論じた。

 ビットコインがドルを裏付けとするステーブルコインの「テザー」の不正な取引によって影響されていると指摘する学術論文もある。

 テキサス大学オースティン校のジョン・グリフィン教授とオハイオ州立大学のアミン・シャムス教授は19年の論文で、大規模な取引をする1人のトレーダーが裏付けのないテザーを発行しそれをビットコインに変換することで、人為的なビットコイン需要が生まれ価格が上昇するという仮説を展開した。

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 こうした主張は目新しいものではなく、市場操作の疑いは仮想通貨に付きまとっている。

 ピカード氏にとっては、仮想通貨の値上がりの魅力はリスクを上回るものではない。さらに同氏は、仮想通貨は「投資手段でも価値の保管場所でもインフレヘッジでもない」と論じている。

 同氏の会社、リサーチ・アフィリエーツの創業者、ロブ・アーノット氏は18年に共同執筆した論文で、仮想通貨をインターネットバブルに比較していたが、ピカード氏は「市場操作の話が真実であるならば、ビットコインは伝統的な意味合いでのバブルですらなく、それよりはるかに悪い可能性がある何かの一つだ」と指摘した。

 

2021年1月 9日 (土)

【コロナ第3波】英国首都「重大インシデント」宣言✍“変異株”感染拡大中

 英ロンドン「重大インシデント」宣言、コロナ感染「制御不能 

ロイター 2021年1月9日(土)1時25分配信

 英首都ロンドンは8日、感染力が強い新型コロナウイルス変異種が国内で制御不能となり、病院が対応できない恐れがあるとして「重大インシデント」を宣言した。

 英国の新型コロナ死者は7万8000人を超え、世界で5番目の多さ。ジョンソン首相はイングランドで新たに全面的なロックダウン(都市封鎖)措置を導入し、ワクチン接種を急いでいる。

 ロンドンのカーン市長は、感染拡大が「制御不能」で市内の病床数が今後数週間で限界に達する恐れがあると懸念。「ウイルスがロンドンにもたらす脅威が危機的な状況にあるため、重大インシデントを宣言する」と表明した。

 重大インシデントは通常、攻撃や重大事故の発生時に指定され、特に「重大な被害、損害、混乱、または人間の生命や福祉、不可欠なサービス、環境や国家安全保障に対するリスク」などがある事態に適用される。

 カーン市長によると、市内の一部地域では市民20人に1人が感染。救急車の搬送要請は1日最大9000件に上るという。

 ペロシ米下院議長トランプ核攻撃阻止”を軍トップと協議 

AFPBB News 2021年1月9日(土)5時34分配信

 米民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は8日、錯乱した状態にあるドナルド・トランプDonald Trump大統領が残りわずかとなった任期中に核ミサイルを発射する事態を避けるため、米国防総省のマーク・ミリーMark Milley統合参謀本部議長と協議を行ったと明らかにした。

 合衆国憲法で定められている大統領権限の制限について米軍制服組トップと協議を行ったと公に認めるのは異例トランプ氏の任期終了までの期間をめぐり米政界で緊張が高まっていることを示している。

 ペロシ氏は民主党議員への書簡で、この錯乱した大統領の状況は危険極まりなく、わが国と民主主義に対する彼の情緒不安定な攻撃から米国民を守るため、われわれはあらゆる手段を講じなければならないと説明。

 さらに、トランプ氏が辞任せず、マイク・ペンスMike Pence副大統領と閣僚が合衆国憲法修正25条で定められた大統領罷免の手続きを開始しないならば、弾劾手続きを開始する準備があるとも言明した。

 米首都ワシントンでは6日、ジョー・バイデン氏の次期大統領への当選確定を阻止しようとしたトランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂に乱入する事件が発生。警察官1人を含む5人が死亡した。民主・共和両党の議員はこの事件を反乱だと非難。トランプ氏が暴力を扇動したとの批判も高まっている。

 ツイッタートランプ氏📱アカウント永久停止 

共同通信 2021年1月9日(土)8時42分配信

 米短文投稿サイトのツイッターは8日、トランプ米大統領のアカウントを永久に停止すると発表した。さらに暴力を扇動するリスクがあるとしている。

ジャックマーだけじゃない。中国から消えた富豪たち

Forbes JAPAN 2021年1月9日(土)8時30分配信

 アリババの共同創業者でビリオネアのジャック・マーが表舞台から姿を消してから、ソーシャルメディア上では様々な憶測が流れている。マーの消息は不明で、アリババはコメントを差し控えている。

 かつて、中国一の富豪だったマーが最後に公の場に姿を見せたのは、昨年10月に上海で開催された「外灘(バンド)金融サミット」だった。サミットで、マーは規制当局がイノベーションを阻害していると批判し、11月初旬に政府機関から呼び出しを受けたとされる。

 11月3日には、2日後に控えたアリババ傘下の金融会社「アント・グループ」のIPOが突如中止された。その後、国家市場監督管理総局は、アリババを独占禁止法違反で調査していると発表した。マーは、10月後半から姿を見せていない。

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 アリババとアント・グループにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。CNBCは1月5日、事情に詳しい人物の話として、「マーは行方不明ではなく、おとなしくしているだけだ」と報じた。

 マー以外にも、中国共産党を批判して公の場からしばらく姿を消したビリオネアは複数存在する。2015年12月には、大手コングロマリット「復星国際(Fosun International)」の創業者兼会長である郭広昌Guo Guangchangが消息を絶ち、ソーシャルメディアには、郭が上海の空港で警察に連行されたという目撃談が投稿された。

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中国のバフェットも一時行方不明に

 復星国際は香港市場に上場しており、運用資産は1150億ドル(約12兆円)に達する。中国のウォーレン・バフェットと称される郭は、アジアや欧州、北米に投資をし、復星国際を巨大企業に育て上げた。

 郭が行方不明になったというニュースを受け、香港市場では復星国際株の取引が一次停止された。同社は、「郭は司法当局の捜査に協力している」というコメントを発表し、その後、郭は職場に復帰した。失踪理由は明らかにされていないが、習近平が2012年の主席就任から進める汚職狩りに関連するものだと見られている。郭の資産額は75億ドルで、現在も復星国際を率いている。

 2016年1月には、「上海美特斯邦威服飾(Shanghai Metersbonwe Fashion & Accessories)が、同社の創業者でビリオネアのZhou Chengjianと連絡がとれなくなったことを公表し、同社の株式は一時取引が中止となった。中国メディアのChina Dailyは、Zhouが警察に拘留され、インサイダー取引と株価操作に関わる事件の捜査に協力していると報じた。

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 上海美特斯邦威服飾は、1週間後に深圳証券取引所に書簡を出し、Zhouが復帰したことを報告したが、詳細は明らかにしなかった。Zhouは、12歳で学校を退学し、大工やれんが積みを経て、仕立屋になるための修行を積んだという。

 その後、上海美特斯邦威服飾を創業し、2019年には売上高が8億ドルを超えた。Zhouは、娘に経営を譲った現在も同社の筆頭株主で、資産額は13億ドルに達する。

不動産王も失踪

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 ここ3年ほどの間に姿を消したビジネスマンも複数いる。中国の不動産王、任志強Ren Zhiqiangは、昨年3月に政府の新型コロナウイルス対策を批判する文章をネット上で公開した。その中で、任は習近平を名指しこそしなかったものの「ピエロ」と呼んだ。

 2020年3月に、任の友人たちはニューヨーク・タイムズに対して、「任のことがとても心配だ」と述べ、任が行方不明となり、捜索していることを明らかにした。任の父は共産党幹部で、彼自身も長年の党員だが、中国政府は7月に任の党籍をはく奪したと発表した任の資産は没収され、9月には収賄と権力乱用の罪で懲役18年が言い渡された任の支持者たちは、任が習近平を批判したことで罰せられたと主張している。

香港から連れ去られた富豪

 もう1人の大物で、投資会社「トゥモローグループ(Tomorrow Group)」の肖建華Xiao Jianhuaは、香港で失踪した。報道によると、2017年1月に香港のフォーシーズンズホテルから車いすに乗せられ、顔を覆われた状態で連れ去られたという(肖は、普段車いすを使用していない)。

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 肖は、中国本土に連行されたとされている。トゥモローグループは、2020年7月にウィーチャット(微信)上で、「肖は中国本土におり、当局の捜査に協力している」と述べた。同社は、後にこのコメントを削除している。

 中国政府は、トゥモローグループの関係会社が支配株主や持ち株の情報を隠蔽したとして、6社以上を管理下に置いた。肖は、政府高官とのパイプが太く、彼らのために商取引を行っていたとされるが、その後公の場に姿を見せていない。トゥモローグループの広報担当者にコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

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 人民日報予言していた「ジャックマー悲しい運命 

Newsweek日本版 2021年1月6日(水)17時17分配信

一代で電子商取引大手アリババを築いた世界的実業家ジャック・マーでさえ、目障りになれば成功したのは政府のおかげと切り捨てる中国共産党の論理

 2カ月前から公の場に姿を見せず、「行方不明」とも噂される中国のIT起業家にして大富豪の馬雲(ジャック・マー)に関連し、2019年に中国共産党機関紙の人民日報に掲載されたある記事が中国で話題になっている。この記事は、マーがなぜ中国政府の不興を買っのたかを的確に表し、その後の運命をも予言したものとみられるからだ。

 それは人民日報の論説記事で、マーが電子商取引大手アリババの会長を退いた2019年9月10日の数日後に書かれたもの。中国の新進起業家たちのあいだで憧れの的になっていた56歳のマーに対するロックスターのような扱いをばっさりと切り捨てている。

 中国版ツイッターの「微博(ウェイボ)」に再浮上したばかりのこの記事のタイトルは、「ジャック・マーの時代など存在しない。あるのはジャック・マーが生きた時代だけだ」。

「アリババが成功した企業であることはまちがいないし、ジャック・マーがアリババに与えた影響についても疑いようはないが、企業の成功をそのリーダーのみの功績とするのは、まったく非現実的だ」と、記事には書かれている。どんな起業家や企業もその成功は偉大な時代背景に負うところが大きい

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人民日報の記事は、中国有数の大富豪のマーと彼が創業した電子商取引最大手のアリババは、中国政府が用意した経済環境と出合う幸運に恵まれたのであり、その環境のおかげで成功が可能になったのだと示唆する「適切な土壌と気候条件がなければ、苗は大木に成長できない」

成功は時代のおかげ

 記事は次のように結ばれる。「いわゆる『ジャック・マーの時代』など存在しない。あるのはジャック・マーが生きた時代だけだ。その時代が与えるチャンスをつかんだ者だけが、持てる潜在能力を発揮できる。ジャック・マーだろうが、馬化騰(ポニー・マー、テンセント・ホールディングス会長)だろうが、イーロン・マスクだろうが、われわれ凡人だろうが、例外はない」

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盲目的な称賛は、成功をもたらさない成功を手に入れるには、ある人の成功とその時代の関係を理解することが欠かせない

 中国のネットコメンテーターやローカルニュースサイトは、この論説はマーに関する中国政府の「ご機嫌」と最近の事の成り行きを「予言」したものとして話題だ。

 マーは、昨年10月24日に上海で開催された外灘金融サミットで、中国の政治指導者のあいだで大きな物議を醸す発言をしたのを最後に、人前に姿を見せていない

 世界でもっとも注目される中国人実業家であるマーはこのサミットで、厳しく規制された中国の金融システムを批判し、「次世代の」中国の若者たちのためにシステムを徹底的に見直すべきだと訴えた。ここで金融規制当局が「イノベーションを妨げている」と述べたマーは、10月中旬を最後に、ツイッターにも微博にも投稿していない。

常に出席する1月3日の会合も欠席

 マーは、自身が創設した起業家育成コンテスト番組「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」の11月の最終回にも出演しなかった。「スケジュールの調整がつかなかったため」だったと、ロイターなどが1月4日に報じている。

 1月3日に上海市浙江商会の会合を欠席したことも注目に値する。同会の年次フォーラムにつねに出席しているマーが姿を見せなかったことで、微博ユーザーのあいだでは、マーの行方をめぐる疑念が深まった。

 マーは、10月下旬の発言により、中国政府に睨まれる立場に置かれたと見られている。問題になった発言の後、それまで大きな期待が寄せられていたアリババ傘下の金融会社アント・グループのIPO(新規株式公開)は、予定の11月3日直前に延期された。その後の12月には、中国の規制当局が、独占禁止法違反の疑いでアリババの調査を開始した。

 中国の国営メディア各社は、アント・グループとアリババが、規制当局の求める構造改革を「受け入れた」と報じている。

<「吸血鬼悪党呼ばわり

 かつては「マー父さん(Father Ma)」と愛情のこもったニックネームで呼ばれていたマーは、10月の上海での発言以来、中国では罵詈雑言を浴びている。中国メディアには「吸血鬼」や「悪党」などと呼ばれることもある。

 一方で、中国共産党の公式な刊行物は、2020年末を最後にマーについて言及していない。最後の記録は、当時370億ドル規模と報じられていたアントのIPO延期に関連して、マーを召喚した、というものだった。

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 日本人が理解していない「独メルケル政治」のろしぎる本質 

現代ビジネス 2021年1月8日(金)6時02分配信/川口 マーン 惠美(作家)

なぜ、今、突然…

 中国企業はEUや日本のあらゆるところで、現地企業と同じ条件で投資できるが、その反対は不可だ。そのため、競うように中国に進出していた外国企業は、さまざまな不平等に屈しなければならなかった。

 そこで、その状況を少しでも是正しようと、投資条件を平等にするための協定を目指して、EUが中国と交渉を始めたのが2014年。しかし、それから7年。法治国家ではない国との交渉は遅々として進まず、早急な合意など、最近ではもう誰も想像していなかった。

 ところが2020年12月30日、EUと中国が相互投資協定に合意した。なぜ突然、今? その答えはメルケル独首相にある。

 2020年後半、EUの欧州理事会の議長国はドイツだった。EUの各国首長にとって、自分が議長国を務める間に、いかにEU政治に影響を及ぼすことができるかは、腕の見せ所だ。

 議長国は半年の輪番制なので、今、27ヵ国に膨らんでしまったEUにおいては、チャンスは14年に一度しか回ってこない。2020年後半、それを手にしていたのがメルケル首相だった。しかも、彼女は2021年で政治から引退すると言っている。つまり、まさに最後のチャンス。

 議長国首脳としてメルケル首相の挙げていたテーマの一つが、「EUの対中政策」。EUを強化するため、各国でバラバラになってしまったそれを一本に纏めるというのが公式の理由だ。本来ならEUサミットに習近平を特別ゲストとして招待し、華やかに何らかの協定を結ぶはずだったが、これはコロナでお流れ。

 しかし今では、バイデン氏が次期大統領になればEUと米国の関係が改善し、おそらく共同の対中政策が敷かれるとの予測もある。それに、コロナ対策で他にすべきことも山積み。つまり、EUが中国と独自の投資協定を結ぶ緊急性は薄れていたのに、突然、ギリギリの駆け込みとなったわけだ。

その実、EUの全面的譲歩

 交渉はメルケル首相、マクロン仏大統領、フォン・デア・ライエン欧州委員長、ミシェル欧州理事会議長(5年の常任)が、習近平とビデオで行ったが、公開されているスクリーンショット(サイド・バイ・サイドで全員が映っている)では、皆の表情が異様に固い。話し合われた内容は公開されておらず、協定の草案もまだ未完成だが、表情の固い理由は明白だ。

 今後、この協定が守られ、中国市場が外国企業に広く門戸を広げるというシナリオに皆が懐疑的であったこともその一つだろうが、一番の理由は、EUが締結の条件として紐づけようとしていた人権問題が、体よく骨抜きにされていたことだ。

 つまり、協定によれば、中国は今後、ウイグル問題の改善、そして、強制労働の撲滅のために努力をすることになっている。しかし、その結果、たとえ何の進展がなくても制裁はなし。紛れもなく、EUの全面的譲歩である。会議に参加していた人たちが、それを歓迎していなかったことは容易に想像できる。これでは、EUは信用を失墜してしまうからだ。

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 ところが、メルケル首相がそれを強引に押し切った。どうしてもこの協定を結びたかったメルケルに率いられたEUは、揉み手をしながら中国の空手形を受け取ることになったのだ。しかも、この決定には、欧州議会もタッチしていない。欧州議会とは、EUの中で唯一の選挙で選ばれた民主的機関であるが、EUの重要な案件は、たいてい首脳の集まりである欧州理事会で決定されていく。議会は事後承認を求められるだけだろう。

 一方、中国側にしてみれば、これは大成功だ。EUとの結束として、米国に見せつけることができる。これから米国とEUが共同で対中政策を敷いたとしても、その効果は限定的になるだろう。アルトマイヤー経済・エネルギー相のコメント、「この協定は、EUとドイツ、そして世界の自由貿易にとって大きな成功である」という言葉が虚しく響いた。

 メルケルの中国寄りは以前より有名だ。しかも、これまでドイツの主要メディアは、メルケル批判も中国批判もほとんどせずに来た。ところが、今回に限っては様子が違った。

 2020年は中国の暴挙が顕著になった年だ。香港の自由は暴力的に奪われ、台湾もじわじわと追い詰められている。ウイグルで起こっている残忍なことも、ようやく世界に知られてきた。何より、中国の嘘によって疫病が全世界に蔓延した年でもある。そして、それを批判したオーストラリアなどは、あからさまな嫌がらせを受けている。

 なのに、よりによってその年に、メルケルが中国に擦り寄った。「なぜ、今?」という疑問が、あちこちのメディアで噴出した。「間違ったタイミングで、間違ったディール」といったような、メルケル批判の見出しが紙面で踊った。メルケル首相は人権よりも商売を取った。いや、もっと正確に言えば、EUの利益よりも中国の利益を取ったと、多くの人が解釈した。

ドイツの言論の自由は瀕死

 さて、この日の夜8時、第1テレビの総合ニュースでのことだ。そこで何とも奇妙なことが起こった。

 私はこのニュース番組を、3時間遅れでオンデマンドで見たのだが、この投資協定の報道の中で、アナウンサーが、「しかし評論家は、中国がこれら(人権擁護についての約束)を守らないことを懸念しています」と言った。

 そして、このテーマが終わったところで、初めて見るテロップがポンと出た。「今のニュース内容には誤りがあるので、現在、訂正中です」。

 これには流石にびっくり。「誤り」というのは、前述のアナウンサーの一言に違いない。おそらくそのために、どこかから即座にかなり強い圧力が掛かったのだろう。中国大使館から? 独外務省から? それとも、第1テレビの上層部の忖度? いずれにしても、見慣れぬテロップである……。

 翌日、確かめたが、ニュースはそのまま、テロップもそのままだった。ところが、2日ほどたってもう一度確認したら、テロップは消え、画面の下の余白に小さく、こう書かれていた。

 「この放送は、間違いのために修正されました。報道では、『中国企業がこれからはもうübervorteilen(相手に損をさせて利益を得ること)ができなくなる』と報道しました。これを『中国企業がこれからは特典を得ることができなくなる』に訂正します」

 しかし、本当に問題になっていたのは、「評論家は、中国がこれら(人権擁護についての約束)を守らないことを懸念しています」というアナウンスの一言ではなかったかと、私は今でも思っている。だからこそ訂正に数日もかかり、最終的にこの些細な訂正を妥協案とした? ドイツの言論の自由は死に瀕しているのではないか? 

 日本では、「ドイツもようやくインド太平洋領海の安全のために対中包囲網に加わる」というような報道が盛んだが、実際にドイツが行っている政治は、そんな単純な話ではない。ドイツは片手で対中包囲網に加わりつつ、もう一方の手で、大慌てで中国との友好を強化している。

 ひょっとするとメルケルは、これこそが外交だと陰で胸を張っているかもしれないが、それにより、世界中にはっきりと自らの姿を晒してしまっていることに、気づいていないのだろうか。

もう誰もドイツを信じない

 多くの日本人は、メルケル政治の本質を知らない。難民を大量に入れたのが、彼女の人道の証だと思っている人は、メルケルを完全に誤解している。

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 また、ドイツが中国から距離を置くこともありえない。ドイツの産業界には、中国という巨大な市場を棒に振るという選択肢は、少なくとも今のところはない。

 なお、少し付け加えるなら、中国の脅威を認識し、熱心に対中包囲網に加わろうとしているのはクランプ=カレンバウアー国防相で、中国に向かって叩頭政治を展開しているのがメルケル首相だ。つまり、CDU(キリスト教民主同盟)の内部でも、その意見は割れている。

 いずれにせよ、まもなくこの投資協定は正式に調印されるだろう。そして、少なくとも今後は、ドイツが人権問題で偉そうなことを言っても、もう誰も信じようとはしないだろう。

 今年の秋、ドイツは総選挙だ。メルケルは、これをもって政界から完全に引退すると言っている。16年間のメルケル政治の後遺症は、彼女が政界を去ってから、皆がはっきりと感じるようになるに違いない。

 

2020年12月21日 (月)

【コロナ第3波】英国<コロナ変異株>発生!✍感染力7割増

 英国発欧州各国でもコロナ変異株感染力7割増 

朝日新聞デジタル 2020年12月21日(月)7時16分配信

 感染力が従来より最大7割強いとされる新型コロナウイルスの英国の変異株がイタリアやデンマークなどでも見つかり、欧州各国は20日、入国規制の強化に乗り出した。欧州はクリスマス休暇で人の移動が増える時期にあたり、感染再拡大への警戒感が強まっている。

 イタリア保健省は20日、数日前に英国から航空便でローマに到着した乗客から変異株が見つかったため、隔離したと発表した。世界保健機関(WHO)によると、英国と同じ変異株がデンマークで9件、オランダ、豪州で1件ずつ確認されたという。従来より重症化しやすいという証拠は見つかっていないという。

 現地報道によると、フランスは20日、英国からの入国を21日午前0時から48時間、鉄道と空路で、いずれも禁じることを決めた。英国への出国は規制しない。ドイツも近く、航空便の受け入れを停止する方針だ。このほか、イタリアやベルギー、オランダやオーストリア、ルーマニア、ブルガリアなどが英国からの入国を規制する。

 英国政府は20日、ウイルスの遺伝情報を調べた結果を明らかにした。変異株は9月に出現し、11月半ばまでは市中での広がりは少なかった。11月後半にロックダウン(都市封鎖)を導入したにもかかわらず、ロンドン南東のケント州で感染率が下がらなかったことから保健当局が調査。変異株による感染例が増えていたことが明らかになった。その後、この変異株がロンドンや周辺地域で広がっていることを突き止めたという。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、変異株がすでに英国以外にも広がっている可能性があるとしている。

 AFP通信によると、欧州連合(EU)の専門家は、開発されたワクチンは変異株にも有効だとの結論に達しているという。

変異種コロナ危険」…英国科学者警告”次々

Wow!Korea 2020年12月21日(月)8時44分配信

 英国の南東部で出現した、新型コロナウイルスの変異種“B.1.1.7”の危険性を指摘する科学者による警告が次々と出ている。

 英国経済紙のファイナンシャルタイムズ(FT) は、複数の科学者たちの発言を引用し、“B.1.1.7”の前例のない数値とその拡散速度を警戒しなければならないと、20日(現地時間)報道した。

 ウェルカム・トラスト・サンガー研究所(英国を拠点とする公益財団であるゲノム研究センター)で、新型コロナウイルス感染症のゲノムプロジェクトを研究しているジェフリー・バレット博士は「新型コロナの変異種ウイルスから23の変異が確認されたが、このうちの17はウイルスの特性に変化を与える可能性がある」と警告した。

 つづけて「ウイルスの変異が人間の細胞内の浸透力を強くさせる可能性がある。新たな変異種の出現は心配であり、我々がパンデミックで目撃したものとは異なるものだ」と強調した。

 ただ まだ変異したウイルスが、現在 接種されていたり開発されている新型コロナワクチンの効果に影響を与えるという証拠はないという状況である。

 一方 英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の遺伝学研究所のフランソワ・バロー教授は「最近 英国南東部地方の入院率が増加しているが、患者の増加数と一致している。これは 新たな変異種により、深刻な症状へと変化していないことを意味している」と語った。

 から“旅客機乗り入れ禁止”…変異株拡散抑制”のため 

ロイター 2020年12月21日(月)11時45分配信

 カナダ運輸省は20日、パイロットらに対し、英国からの旅客機乗り入れを禁止すると通知した。新型コロナの変異ウイルス拡大抑制のため、複数の国が相次いで英国からの渡航を禁止している。

 通知は、貨物輸送機と安全上の理由で着陸する航空機は対象外としたうえで、この措置は「航空の安全と公衆保護のため必要」と説明した。

 ハイデュ保健相はツイッターで、首相と同相含む閣僚らが20日午後、新たな変異型ウイルスについて協議したと投稿した。当局者らによると、このウイルスは、当初のものより感染力が最大70%強いとみられている。

 英国のジョンソン首相は19日、変異が感染増加につながったとの見解を発表した。

 カナダは今週、米ファイザー社製のワクチン接種を開始したが、感染増は続いている。

 同国の累計感染者数は50万7795人、死者は1万4228人。20日の新規感染者は6203人だった。

 欧州各国英国からの渡航相次禁止変異株懸念 

BBC NEWS JAPAN 2020年12月21日(月)11時52分配信

 イギリスでより感染力が高い「制御不能」な新型コロナウイルスの変異種によるものとみられる感染が拡大していることを受け、欧州各国がイギリスからの渡航を禁止し始めている。

 アイルランド、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギーはそれぞれ、イギリスとの全ての航空便を停止している。これらの措置は短期的なもので、内容は国によって異なる。フランスの措置は英仏間の貨物輸送に影響を与えている。

 欧州理事会は21日により協調的な対応について協議する予定。

 新型ウイルスの変異種はロンドンとイングランド南東部で急速に拡大している。

 ボリス・ジョンソン首相はこれまで3段階だった警戒レベル(ティア)について、さらにその上のティア4(自宅待機)を設定。19日にロンドン(全32地区とシティ・オブ・ロンドン)のほか、イングランド南東部と東部の各州をティア4に指定した。また、クリスマス期間の規制緩和の取りやめも発表した。

 保健当局幹部らは、変異種による死亡率が従来種より高かったり、ワクチンへの反応が異なっていたりする証拠はないとした。一方で、従来種よりも感染の可能性が最大70%高いとしている。

 マット・ハンコック保健相は、変異種が「制御不能」になっており、「我々はこれを制御しなければならない」と述べた。そして、「率直に言って、ひどい1年にとって、信じられないほど困難な終わり」になったとした。

各国の対応は

 19日のイギリスの発表から数時間後、オランダはイギリスからの全ての旅客便を来年1月1日まで禁止すると発表した。20日には、イギリスからのフェリー客の乗り入れも禁止すると発表。貨物の輸送は継続するという。

 同国は14日に厳しいロックダウンを導入したものの、20日には1万3000人以上の新規感染者が確認された。

 フランスは貨物トラックを含む、イギリスとの間の全ての輸送手段を20日深夜から48時間停止した。毎日数千台ものトラックが英仏間を行き来している。

 フランスの禁止措置を受け、英仏海峡トンネルを運営するユーロトンネルは英フォークストンから仏カレーへの輸送を止めるため、グリニッジ標準時(GMT)20日午後10時から英側のフォークストン・ターミナルへのアクセスを停止した。

 21日の輸送を予約していた人は払い戻しが受けられる。カレーからフォークストンへの輸送は継続される。ドーヴァーのフェリー・ターミナルも現在閉鎖されている。

 ジョンソン首相は貨物輸送に関する差し迫った問題について協議するため、21日にも緊急治安特別閣議(コブラ=COBRA)を開く予定。

 毎年この時期に多くの人がイギリスとの間で行き来するアイルランドでは、政府がイギリスからの到着便を20日深夜から少なくとも48時間禁止すると発表。「公衆衛生上の利益のため、イギリス国内にいる人は国籍に関係なくアイルランドへ渡航すべきではない。空路でも、海路でも」とした。

 フェリーでの貨物輸送は継続される。

 ドイツ運輸省は20日深夜から、イギリスからの航空便の乗り入れを禁止した。貨物は除外される。イエンス・シュパーン保健相はイギリス国内で確認された変異種について、ドイツ国内ではいまのところ検出されていないと説明した。

 ベルギーは「予防措置」として20日深夜から少なくとも24時間、イギリスからの航空便と列車の乗り入れを停止した。

 イタリアは来年1月6日まで、イギリスからの全ての航空便を禁止する。イタリア保健省は20日、イタリアでもイギリスと同様の変異種が見つかったと発表した。変異種に感染した人はローマ市内で隔離されている。

 オーストリアもイギリスからの航空便を禁止する方針。ブルガリアは20日深夜からイギリスを発着する航空便を停止した。多くの国が短期的な措置を取る中、ブルガリアは来年1月31日まで禁止するとしている。

 トルコとスイスも、イギリスからの全ての航空便を一時停止している。

 変異株日本の対応は“特段の事情”あれば、英国から入国可能 

HUFFPOST 2020年12月21日(月)16時06分配信

 イギリスで、従来のものより感染力が高いとみられる新型コロナウイルスの「変異種」の感染が拡大していることを受け、ヨーロッパ各国が航空便の乗り入れ停止などの措置を打ち出している。

 加藤勝信・官房長官は12月21日、日本政府としての対応について、もともとイギリスを「上陸拒否対象国」としていることを挙げ「感染状況などを見つつ慎重に対応していく」と話した。

上陸拒否対象国だが..

 イギリスを中心に感染が広がっているのは、新型コロナウイルスの変異種「VUI-202012/01」。イングランド南部のケント州で12月13日に確認され、ロンドンを中心に感染拡大が起きている。

 イギリスのボリス・ジョンソン首相は記者会見で、まだ不明確な点が多いとしたうえで、「致死率が高いことや、重症化しやすいことを示す証拠はない。ワクチンが、変異種に対して効果が低いことを示す証拠も今のところない」と説明した。しかし一方で、「変異種の感染力は、古い種よりも最大で70%高い可能性がある」ともしている。

 各国が対応に追われている。BBCによると、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギーなどは航空便の乗り入れを停止。貨物輸送も一部でストップしているという。

 これに対し、加藤官房長官は21日、定例記者会見で日本政府としての対応を問われると、「厚生労働省でイギリス政府やWHO(世界保健機関)と緊密な情報交換をしている」と回答。日本ではこれまでに変異種は確認されていないことにも言及した。

 そして、今後の対応については「これまでも国民の健康と命を守ることを最優先に、機動的な水際措置を講じてきた。イギリスはもともと上陸拒否対象国に指定をしていて、特段の事情のない限り新規入国は原則禁止にしている。感染状況などを見つつ慎重に対応していく」と状況を見守る考えを示した。

 日本政府は11月30日までに152の国と地域を上陸拒否対象国に指定していて、イギリスも含まれる。一方で「特段の事情」がある場合は新規入国を認めており、その場合も出国前72時間以内のウイルス検査や、日本の検疫での検査、さらに自宅やホテルでの14日間待機などが必要になる。

 加藤長官は「特段の事情があるかないかを勘案する際にも、そうした感染状況を踏まえた慎重な対応が必要だ」と話した。

 新型コロナ時代最も安全』『危険な国ランキング 

Bloomberg 2020年12月21日(月)19時01分配信/Rachel Chang、Jinshan Hong、Kevin Varley

 冬の訪れと待たれていた新型コロナウイルスワクチンの接種開始が、ブルームバーグがまとめる新型コロナ時代の世界で最も安全な国・地域の番付であるCOVIDレジリエンス(耐性)ランキングに変化をもたらした。

 経済や社会に最も痛手が少ない形でコロナに最も効果的に対応している国・地域を特定するため、ブルームバーグは毎月データを算出する。

 国境を閉ざしワクチン契約を確保、国内の感染拡大封じ込めに成功したニュージーランドが12月も1位を維持した。冬の寒さ到来で前回上位だった日本や韓国が苦戦する中、台湾2位に浮上した。

 冬の厳しさで人々は密になり得る屋内で過ごすことが増え、ロックダウン(都市封鎖)を行わずに感染拡大を抑え込もうとしていた国々が脅かされている。11月に2位だった日本7位となり、韓国とスウェーデンも順位を下げた。経済への影響を最小限にして感染を抑制しようとするアプローチには、圧力がかかっている。

 北半球の冬は欧州と米国の厳しい状況をさらに悪化させた。米国はメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくワクチン2種をいち早く承認したにもかかわらず、ランキングは19位下げた。

 メキシコは最下位の53位にとどまっている。検査陽性率の低下やワクチン確保の動きによって他国・地域との差は縮まりつつあるものの、感染者数は依然として多い。

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 今月に入って一部の国で接種が始まったワクチンの影響はさらに複雑だ。

 ブルームバーグCOVID耐性ランキングは経済規模が2000億ドル(約20兆6900億円)を超える53の国・地域を、感染者の増加ペースや全体の致死率、検査能力、国内医療体制の能力、ロックダウンのようなコロナ関連の行動制限が経済にもたらす影響、移動の自由など10の主要指標に基づいてランク付けした。12月の番付ではワクチンの契約に基づく供給数が明確になったため、関連指標を人口に対してワクチンが行き渡る割合のスコアに修正した。

ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明

 英国はファイザーとビオンテックが開発したワクチンの緊急使用を世界に先駆けて今月前半に認めたが、ランキングは11月から2段階下がった。契約済みのワクチンは人口の3倍近くの接種に十分なものの、配布は始まったばかりで、歯止めのかからない感染拡大でロンドンと周辺地域はクリスマスが終わるまでロックダウンされることになった。

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 米国のランキング急低下はワクチン依存戦略のリスクを示した。同国はワクチン2種をいち早く承認し数十万人規模の国民への接種を開始したが、41秒に1人がコロナで死亡し多くの州では病院が能力の限界に近い状況にあるなど、事態の改善につながっていない。

 また、米国が確保したワクチンは人口の154%分にとどまり、この割合はカナダや欧州連合(EU)に比べ少ない。年内には2000万人分の供給があるとしているものの、配布状況は州によってばらつきがあるとみられ、国民の広い層に接種が広がるのはまだ何週間も先のことと思われる。

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 来年1月の耐性ランキングでは、ワクチン接種でどの程度素早く感染拡大を抑えられるかが焦点になる。

 最新ランキングでほかに目立ったのは、オーストラリアとシンガポール、フランス、ナイジェリア、イラク、フィリピンが順位を上げたことだが、いずれも制限の緩和を伴っていた。

 一方で大きく下げたのはギリシャ、インドネシア、トルコ。感染者と死者が過去最多を更新し、新たに一段と厳しいロックダウンを導入せざるを得なくなったドイツの順位も低下した。中国とインドは人口の多さから、国民のワクチン確保で他の国以上の困難に見舞われるもようで幾分下げた。

共通点

 米国やインドなど世界で最も優れた民主主義国家の一部が後れを取った一方で、中国やベトナムなど全体主義的な国家が新型コロナウイルス抑え込みに成功したことは、民主的な社会がパンデミック(世界的大流行)への対応に適しているのかという疑問を投げ掛ける。

 しかし、ブルームバーグCOVID耐性ランキングはその疑問を否定する。11月も今回も、トップ10の大半は民主的な国・地域だ。悪影響を最小限に抑えて新型コロナを封じ込めることに成功している政府は、市民に命令し服従させる力によってではなく、高い信頼と社会のコンプライアンスを引き出すことによってそれを可能にしているように見受けられる。

 市民が当局とその指針を信頼している場合、ロックダウンは不要かもしれない。日本と韓国、そしてある程度においてスウェーデンがこれを示した。ただ、厳しい冬の訪れが今、こうした比較的オープンなアプローチに問題を突き付けている。

 ニュージーランドは最初から、コミュニケーションを重視した。同国の4段階の警戒システムは、感染拡大の状況に伴い政府がどのように、またどういう理由で行動するかを国民に明確に理解させた。

 公衆衛生インフラへの投資も重要だ。20年より前には多くの場所でその価値が過小評価されていた接触追跡システム、効果的な検査が新型コロナ対応で上位にランクされる要因となり、健康に関する知識の普及が手洗いやマスク着用を社会に定着させる助けとなった。これが、経済に大打撃を与えるロックダウンを回避する鍵になったと、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は指摘している。

 メルボルン大学で世界疾病負担(GBD)グループのディレクターを務める アラン・ロペス名誉教授によればまた、社会的結束もこのパンデミックへの対応の成否を分ける要素だった。

「日本や北欧の社会を見ると、不平等がほとんどなく、非常に規律が行き届いていることが分かる」とロペス氏は述べた。「これが、国としてより結束した対応につながり、優れたコロナ対応ができた理由だ」と分析した。

米国のワクチン優位

 米国から効果的な対応が見られなかったことが、今回のパンデミックで最も驚くべき展開の1つだった。超大国の米国が感染者数と死者数で世界最多となり、危機への対応は最初から出遅れていた。医療機器および個人防護具(PPE)の不足、検査と追跡システムにおける協調の欠如、マスク着用の政治問題化など不備が目立った。

 トランプ米政権は予防よりも治療とワクチンを第一に重視した。「ワープ・スピード作戦」と銘打った取り組みの下、ワクチンを開発する製薬会社などに約180億ドルを配分した。一方、国内の各州は危機対応のための資金を求めていた。

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 ワクチン確保の指標では人口の5倍以上に十分な量を確保したカナダが依然トップ。オーストラリアとニュージーランドは人口の2倍以上分を確保、一方で台湾の割合は26%にすぎない。

 人口に対するワクチン注文の割合に基づく新たなワクチンアクセス指標は、中国、インド、米国など人口の多い国が抱える大きな課題を反映する。中国とインドの注文あるいは製造能力は年20億回分を優に超えるものの、それでも人口の少ない国に比べ不利になる。

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 全体として、ワクチンアクセス指標は豊かな国の永続的な強さを浮き彫りにする。こうした国の一部はウイルス抑え込みに失敗しているが、それでもワクチン確保では優位だ。規模の比較的小さい新興国・地域の多くは国内での臨床試験実施やワクチン製造を請け負うことによって供給契約を確保した。

 シンガポールのリー・シェンロン首相は11月にブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムで、「大国は、場合によっては驚くほどの包括的な措置によって自分たちが第一にワクチンを入手することを確実にした」と指摘。「そのような政治的緊急性は理解できる。大国はある程度自分の言い分を通すのが現実だと思う」と語った。

これから

 ブルームバーグCOVID耐性ランキングは53の国・地域の現在のランキングを示すものだが、ワクチンへのアクセスをランク付けすることによって各国経済の将来への展望も提供する。

 いずれにせよ最終的な番付ではないし、ウイルスについてのデータの不完全さや危機の展開の速さを考えれば番付が固定されることは決してない。第1波を比較的うまく乗り切った国・地域も第2波、第3波に見舞われている。その時々の状況や純粋な運も結果を左右するが、これらを定量化することは難しい。

 来年はワクチンの普及がさらに決定的な要素となることは確かだ。物流と保管、国民の不安と、課題は多い。しかし、新型コロナとの1年間の闘いを経て、政府も国民も感染拡大を抑える方法、影響を緩和する方法への理解を深めている。

 順位はデータとともに変わっていく。ブルームバーグは事態の展開に伴い、毎月ランキングを更新していく。

 

2020年11月 7日 (土)

【新型肺炎】欧州再拡大<コロナ感染者数>仏伊など過去最多

 仏伊ポルトガル過去最多 欧州コロナ再拡大深刻 

共同通信 2020年11月7日(土)5時50分配信

 フランス保健当局は6日、新型コロナウイルスの感染確認者が前日から6万486人増加したと発表した。同国で1日の増加数が6万人を超えたのは記録上初めて。イタリア、ポルトガルでも1日の新規感染者が過去最多を更新。感染再拡大の深刻度が増している。

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 イタリア政府は11月6日、感染者が前日から3万7809人増え、累計86万人を超えたと発表した。過去最多更新は2日連続。

 ロイター通信によると、ポルトガルでは6日、1日の新規感染者数が5550人を記録した。春に続き、政府の非常事態宣言を議会が承認、国民に外出制限を義務づけることを可能とした。

 コロナ禍後投資先に、マクロン大統領が売り込み 

ロイター 2020年11月7日(土)3時59分配信

 マクロン仏大統領は6日、新型コロナウイルスの危機が落ち着いた後の欧州の投資先としてフランスを売り込む好機とみて、世界の投資家に対するアピールを開始した。当局者が明らかにした。

 フランスや多くの欧州諸国が新型コロナ感染第2波の中にあるにもかかわらず、マクロン氏は投資家が欧州連合(EU)を離脱する英国や「安定的」なドイツよりもフランスの1000億ユーロ規模の経済復興策を好むとみている。

 ある大統領顧問は「投資家は今、白紙の状態にある。国際的な大手企業の最高経営責任者(CEO)は各国がどのように危機に対応しているかに注目していることもある」と話す。別の顧問は「英国はEU離脱で停滞しており、国をアピールできない状態だ。ドイツの復興策は供給側より需要側を重視しているため、新たに宣伝するものがない」と語った。

 マクロン氏はこの日、新たな投資を確保するためにタタやユニリーバ、コカ・コーラ、ザランドなどのCEOと電話会議を開催。これまで世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)前に開催していた「フランスを選ぼう」会談のオンライン版となる。

 新型コロナ感染が再び急増する中、フランスは先月にロックダウン(都市封鎖)の再導入を余儀なくされた。当局者らは、こうした状況下で投資のアピールをするタイミングについて、投資家が第2波以降を見据え、新型コロナ後の長期的な視点で勝てる国を今見極めていると指摘。ある当局者は「欧州全体で感染が急増している。CEOはこのような波がいくつか来ることを十分理解している」とし、「フランスが危機管理だけでなく、先を見て経済を一変させることに注力していると証明するのが重要だ」と述べた。

 仏経済は第3・四半期に16%持ち直した。第2・四半期は、新型コロナの感染拡大を抑えるために欧州の中でも非常に厳しいロックダウンを導入したことから、13.8%減と過去最大の落ち込みを記録した。2回目のロックダウンを受け、第4・四半期は再び縮小するとみられる。

 フランスは危機の打撃を抑えるために税控除や国が補助する一時帰休、企業への融資保証など4700億ユーロを超える支援策を導入してきた。そのほか、法人減税や再生可能エネルギーへの投資を含む1000億ユーロの2カ年計画を発表している。

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ロックダウンドミノ  欧州行動規制がる 

ロイター 2020年11月6日(金)15時54分配信

 英イングランドは5日、新たに1カ月間のロックダウンに入った。ギリシャも7日から3週間の全土封鎖を行うほか、仏パリでも夜間の食品販売が制限されるなど、規制強化の波が欧州全域に広がっている。

 5日、新たに1カ月間のロックダウンが始まった英イングランド。その空には紫色の霧がかかっていた

 前夜はロックダウン前の最後の夜を楽しもうと人々でごった返していたが、5日は打って変わって、静寂が通りを支配した。

 コロナ感染による英国の死者数は、欧州で最多。いまも1日2万人以上が新たに感染している。スナク財務相はロックダウンによる失業者の増加を抑えるため、追加経済支援策を発表した。

 全土でロックダウンを実施する国は、欧州で広がりつつある。そして次はギリシャが実施を決めた。

 ギリシャは5日、全土で封鎖措置を行うと発表。7日から3週間続けられる。封鎖期間中、スーパーと薬局を除いて 小売店の営業は一切認められない。市民の外出には許可が必要で、また時間も指定される。小学校は授業を行うが、高校は閉鎖される。

 一方、仏パリでは6日より、午後10時から翌朝6時までの惣菜やアルコールの持ち帰り販売や配達が禁止される。当局によると酒類を夜間、公共の場所で販売したり飲むことも禁止されるという。

 ロックダウン」再開で国民団結れかけている理由 

現代ビジネス 2020年11月6日(金)8時01分配信/川口 マーン 惠美(作家)

4週間のロックダウン

 10月29日、国会議事堂の演壇の前で、メルケル独首相は言葉に詰まった。

 前日に州の首相たちと定めたコロナ対策について説明していたところ、AfD(ドイツのための選択肢)の議員たちの激しいヤジが飛び、話を続けられなくなったのだ。メルケル首相のスピーチがこれほど妨害されることは珍しい。

 前日に決まったのは、11月2日から4週間の予定で宣言されたロックダウンで、飲食店は閉鎖、ホテルは観光客を泊めてはいけない。旅は日帰りもダメ。また、劇場、映画館、遊園地、美術館、プール、ジム、体育館などもすべて閉鎖、美容院以外のビューティーサロン(ネイルサロンなど)も閉鎖。

 仕事は、できる限りオンラインに切り替える。そして、家での飲み会やパーティーも、最高2世帯、計10人まで。ただ春のロックダウン時と違い、学校と幼稚園、通常の店舗は閉鎖しない。外出も規制しない。

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 メルケル首相は、これらの厳しい措置は感染者の増加を抑えるために「適切で、必要で、(防疫効果との)バランスが取れた」ものだとし、コロナの危険を軽視する人たちのことを、「嘘、歪んだ情報、憎悪は民主的な議論だけでなく、ウイルスとの戦いをも妨害する」と弾劾した。「今冬は厳しく、長い季節となり」、防疫対策には「人間の命がかかっている」。

 それに対し、AfDのガウランド氏は政府のやり方を、「戦時中のプロパガンダ」と攻撃。政府が行う「毎日の『新規感染者数』の発表は、『爆撃速報』さながらで、国民を恐怖に陥れる」と。

 さらに、政府が国会の頭越しに重要な決定を下していることを指し、メルケル首相に向かって、「我が国の主権は国民にあることを思い出していただきたい。それは、つまり、ここ、国民の代表者の集う国会です」と言った。

 この日、メルケル首相に異議を申し立てたのはAfDだけではなかった。FDP(自民党)の党首リントナー氏も演壇に立つと、「メルケル首相、あなたは議論が民主主義を強化すると言う。それは正しい。しかし、議論は決定の前に行われなくてはならない」と首相を名指しで批判した。

三権分立が溶解してしまう

 今回の問題は、言うまでもなく、1)規制が国民の基本的人権を制限するものであること。さらに、2)そのような重要な決定が、民主主義を無視した形で行われたことにある。

 まず、1)だが、飲食店やホテル、アーティストなどの営業禁止、さらには旅行や家で人と会うことまで制限するのは、憲法で保障されている人権を侵害する可能性が高い。

 基本的人権の制限については、ドイツの基本法(憲法に相当)により例外的に認められているものの、それは、制限が、ある合法な目的を達成するためにどうしても必要で、かつ、効果がある場合に限るとされる。つまり、今回の場合で言えば、ロックダウンがコロナの防疫のためにどうしても必要で、しかも、効果との相関性が明らかでなくてはならないということ。

 しかし、実際問題として、相関性の有無は疑問だ。すでに感染経路の75%は不明だし、政府の下部組織であるロバート・コッホ研究所でさえ、ホテルやレストランがコロナの感染源になっている証拠はないと言っている。

 また、人的交流を制限すれば一時的に感染者は減るだろうが、制限を解けば、また増えるというのが、春のロックダウンをした国々が、現在、体験していることなのだから、ロックダウンが長期的なコロナ防疫に役立つとは言えない。

 2)の国会の頭越し問題も根が深い。

 そもそも、連邦首相が州首相を招集して重大事項を決定するという政治システムは、ドイツに存在しない。元々、ドイツの首相はフランス大統領のように大きな権限を持たず、非常事態を宣言する権利もないし、それどころか、政府さえ非常事態は宣言できないことになっている。

 そこで、春のロックダウン時は、ごくありきたりの「感染防止法」を加工して、保健大臣と政府に大きな権限を持たせるという方法を使った。しかし、その権限がいつのまにか、保健大臣からメルケル首相に移行している。

 国会までが無力化され、このままでは本当にドイツの三権分立は溶解してしまう。なのに、不思議なことに、会議の前はロックダウンに反対していた州首相も、何故か突然、まったく何も言わなくなっている。

ロックダウン再開は正しい対策か

 一方、ニュースでは、集中治療室で医療関係者に囲まれながら生死の境を彷徨っている半裸の患者など、皆を怖がらせる映像ばかりが毎日流される。そして、メルケル首相や保健相は、「国民の総力結集が必要」とか、「これが最後のロックダウンである保証はない」とか、「規則を守るか、死者の数を増やすかのどちらか」などと盛んに脅しを掛ける。

 では、実際の状況はどうなのかというと、検査で陽性反応の出る人は増えているが、病状のある人が急増しているわけではないらしい。死者の数は、これまでの総計は10,812名(11月4日現在)。2017~18年のインフルエンザの死者は21,500人だったので、その約半分だが、そんなことはもちろん報道されない。

 いや、その反対で、コロナ患者の集中治療用ベッドが6割以上空いているという情報が出れば、すぐさま、「ベッドは空いていても看護師が足りないので、このままではすぐに医療崩壊する」。感染してもほとんどは軽く済むと言えば、「治った後、ひどい後遺症がある」。どれが正しいか私にはわからないが、いずれも、ロックダウンを正しい対策として肯定する理由は乏しいように感じる。

 そこで、今になって、これらに反対する人たちが声を上げ始めた。

 コンサートはダメなのに、なぜショッピングモールの雑踏はOKなのか? あるいは、通勤電車は満員のままなのに、なぜクラスターである証拠もないホテルや飲食店が標的となっているのか? あるいは、この措置で感染者を減らしてクリスマスを凌いだとしても、その先はどうなるのか? という質問にも、政府は答えられない。ロックダウンを繰り返すわけには行かないはずだ。

 また、複数の医師会や、ウイルス研究者、心理学者たちも、現在の政府の防疫政策を非難し始めた。

 このままでは経済的不安や孤独からの鬱や自殺、家庭内暴力、アルコール依存、また、感染が怖くて病院に行かず病気を悪化させるなど、他の弊害が大きくなりすぎる。高齢者や健康上のリスクを持つ人々を集中的に保護する形に、早急に変えるべきだというのが、彼らの主張だ。

国民の団結は崩れかけている

 つい最近まで政府やメディアは、コロナ政策に反対するのは極右や極左や陰謀論者であると決め付けていたが、今はもう、そんな風に片付けるわけにはいかない。現在、私のところにも、オペラやコンサートを解禁するよう当局に要請するための署名運動を始めた団体から、オンラインの書類が送られてきている。

 特に、多くのホテルや飲食店は、春以来の苦しい経営の中、営業を続けるために厳しい防疫基準を守り、新しい換気フィルターなどにも投資していただけに、今回の営業禁止で裏切られたように感じており、雪崩を打って裁判に訴え始めた。

 それだけではない。普通の市民も、休暇で滞在していたホテルから強制的に退去させられたり、親族と集まることさえ制限されたりと、だんだん行動の自由が狭められ、私生活まで監視されているように感じている。

 春の頃は、まだコロナが未知のものであったため、国民はロックダウンに対する理解を示したが、今は不満が膨張し、団結は崩れかけている。

 そこで、政府は急遽、新たに100億ユーロの支援を追加し、被害を受けている事業者の11月の粗利(去年の同月の最大75%)を保証することにしたが、コロナ不況は11月で終わるわけではない。

 また、パートで職を失った人たちは、この恩恵もどのみち受けられない。このままでは零細企業やフリーランスは近い将来、公金依存状態に陥り、政府の権限はさらに強まるだろう。片や、すでに巨額の補助や融資を受けている大企業も、コロナが収束した暁には、国営企業のようになっているかもしれない。

 国民の不満に気付いたメルケル首相は、11月2日、慌てて記者会見を開いた。これも稀なことで、焦っているのがよくわかる。

 そこで、対策の正統性を主張しようと思ったらしいが、「今回のロックダウンは感染拡大を遮断するきっかけになるかもしれない」とか、「皆でマスクを付け頑張っているのだ。きっとうまく行く」など、裏付けのない話に終始した。彼女が長々と行った感染学的な説明に対しては、すぐにある医師が反証をあげたビデオをアップしている。

 いずれにしても、国民は団結を要請されながら、ソーシャル・ディスタンスでバラバラにされていく。家族にさえろくに会えず、教会のミサでは、礼拝者はベンチの右端と左端に一人ずつ座らされ、サッカーの試合は観客なし。可哀想なのは学校の生徒たちで、授業中もマスク着用のうえ、頻繁な換気のため、毛糸の帽子と毛布で凍えながらの授業だ。

 また、店では、20平米あたり一人のみという規則だから、スーパーの外には行列ができる。これから本格的な冬が到来したら、あちこちで皆が風邪を引くだろう。

 こういう国民の日常を、メルケル首相が本当にわかっているとは思えない。ここに私はドイツ政府の本質的な問題があると思っている。

 コロナ新規感染者、5日は12万人超 2日連続過去最多 

ロイター 2020年11月6日(金)11時08分配信

 ロイターの集計によると、米国の新型コロナウイルス感染者が5日、新たに少なくとも12万0276人確認され、1日当たりの新規感染者数として2日連続で過去最多を更新した。

 米国で1日当たりの新規感染者数が10万人を超えるのは過去7日間で3回目。

 この日は全米50州のうち20州で新規感染者数が過去最多を記録した。

 感染は全米で広範囲にわたっているが、新規感染者でみると中西部の状況が特に深刻。

 5日には、イリノイ州で新規感染者が約1万人報告され、テキサス州と並んで過去7日間の感染者が全米最多となっている。

 このほか5日に感染者の伸びが記録を更新した中西部の州は、ネブラスカ、インディアナ、アイオワ、ミシガン、ミネソタ、ミズーリ、ノースダコタ、オハイオ、ウィスコンシン。アーカンソー、コロラド、メーン、ケンタッキー、オレゴン、ニューハンプシャー、オクラホマ、ロードアイランド、ユタ、ウェストバージニアも記録を更新している。

 一部の都市と州は感染拡大抑制のため、夜間外出禁止や集会人数制限など新たな措置を発表しているが、連邦政府レベルでの措置は講じられていない。50州中17州ではマスク着用を義務付けていない。

 韓国各国で新型コロナ感染者急増、日10倍仏600倍米1200倍 

中央日報 2020年11月7日(土)11時59分配信

 韓国は100人、日本は1000人、ドイツは2万人、フランスは6万人、米国は12万人。最近の一日の新型コロナウイルス感染拡大ペースだ。欧州と米国では冷たい風が吹き始め、新型コロナの感染が急速に広がっている。日本も新規感染者数が韓国の10倍にのぼる。

欧州で死者30万人超える

 今年春の急速な感染拡大後、小康状態だった欧州では、冬が近づく中でまたウイルスが急拡大している。

 AFPによると、1週間前から全国に移動制限措置を施行中のフランスは、6日(現地時間)の集計基準で一日の新規感染者数が過去最多の6万486人となった。累計感染者数は166万人、累計死者数は3万9865人にのぼる

 ドイツでも6日、一日の新規感染者数が2万1506人にのぼった。ドイツで新規感染者数が一日2万人を超えたのは初めて。累計感染者数は61万9089人、累計死者数は1万1096人。

 イタリアでは5日、一日に445人の死者が出て累計死者数が4万人を超えた。累計感染者数は約87万人。

 今月5日から来月2日までイングランド全域で封鎖措置を施行中の英国は、新型コロナ累計死者数が4万8475人と、5万人に迫っている。英国の累計感染者数は約114万人。

 感染拡大で欧州全体の新型コロナ累計死者数は30万688人と、30万人を超えた。

米国で一日12万人の感染者

 米国でも新型コロナ感染者が急速に増えている。米ジョンズ・ホプキンス大学は5日の一日の新規感染者数を過去最多の12万1888人と発表した。コロラド州・イリノイ州・ミネソタ州・オハイオ州・ペンシルベニア州・ユタ州・ウィスコンシン州などで新規感染者数が過去最多となった。ワシントンポストは東部から西部にわたる20州で一日の新規感染者が過去最多を更新したと伝えた。

 5日の死者数は1187人と、1週間前に比べて20%ほど増えた。この日を基準に米国の累計感染者数は964万3922人、死者数は23万5199人となった。先月30日に累計感染者数が900万人を超えたが、10日も経たないうちに1000万人を超える可能性が高い。

韓国は新規感染者100人前後

 日本は5、6日の新規感染者数がそれぞれ1048人、1123人と、2日連続で1000人を超えた。累計感染者数は10万6916人。

 韓国の一日の新規感染者数は100人前後で統制されている。6日の新規感染者数は89人と、4日ぶりに100人未満となった。

中国入国制限再び強化 日本は帯同家族のビザ発給停止

時事通信 2020年11月7日(土)7時09分配信

 中国政府が新型コロナウイルスの流入を防ぐため、11月に入って外国からの入国制限を再び強化している。

 英国やフランス、インドなどでは発給済みの査証(ビザ)効力を相次ぎ停止。日本では駐在員ら本人の渡航は認めるが、帯同する家族へのビザ発給を停止した。

 駐日中国ビザ申請センターは2日、ビザ申請条件を、中国の地方政府発行の招聘(しょうへい)状を持つ本人らに限定すると発表。9月から認めていた「同行配偶者および未成年子女」を対象から外したため、日本にいる帯同家族は中国に戻れなくなった。

 一方、英仏印各国やイタリア、ベルギー、ロシア、フィリピンなどの中国大使館は5日までに、ビザの効力を停止すると発表。中国外務省の汪文斌副報道局長は5日の記者会見で「やむを得ない臨時的な措置だ」と理解を求めた。

 中国では、新疆ウイグル自治区で先月発生した集団感染が400人以上に拡大しているほか、海外からの入国者の感染が連日数十人規模で確認されている。11月以降は中国に向かう国際線の搭乗客全員にPCR検査に加え抗体検査も義務付けるなど、冬を前に警戒を強めている。

 体操中国代表防護服着用来日、母国でも非難 

東スポWeb 2020年11月6日(金)17時33分配信

 体操の国際競技会(8日、国立代々木競技場)に参加する中国選手団が、新型コロナウイルス感染防止のため防護服、ゴーグルなどの完全装備で5日、成田空港に来日し、中国でも物議を醸している。

「新浪体育」など各媒体は、中国選手団の来日の様子を報じる日本の記事を引用する形で報道。日本のネット上での反応を加え「中国体操選手団が防護服での訪日に、日本のネット民は『見くびらないでほしい』と怒りの声」などと伝えた。

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 ものものしい完全防備ぶりは中国でも違和感を感じる人は少なくないようで、中国のネット上でも「これは確かに失礼」「家に招かれたのに、手袋をしたり、椅子にカバーをしたりすれば家の主人はどう思う? やりすぎ」「ここまでする必要があるなら、行かないほうがまし」と疑問の声も上がっていた。

 今大会は新型コロナウイルス感染拡大後、日本初の国際大会。男子の内村航平(31=リンガーハット)が一度はPCR検査で陽性となったものの、実際は「偽陽性」だったことが明らかになり、話題となった。

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 コロナ禍で「在庫処分」大量発生、アパレル業界の地殻変動 

毎日新聞 2020年11月1日(日)9時30分配信

 新型コロナウイルスの感染拡大で、アパレル業界が苦境に立たされている。外出自粛で小売店の販売が落ち込み、大量の売れ残りが発生したためだ。「大量生産のツケ」とも言える在庫処分の現場を訪れると、コロナだけでは説明できない業界の構造変化も垣間見える。 

 10月下旬、大阪市西成区の倉庫にはシャツやスカートなど全国から集まった売れ残りの服が段ボールに入ってうずたかく積まれ、従業員らは商品の検品やブランド品を示すタグの切り取りを手際よくこなしていた。倉庫は同市中央区の「shoichi(ショーイチ)」が運営している。

 同社はメーカーの売れ残りを定価の1割ほどで買い取り、東京、大阪など14カ所の直営店などで格安で販売している。ブランド品のたたき売りはメーカーのイメージを傷つけるため、販売前に自社のタグに付け替える。こうした厳格な管理がメーカーからの信頼を集め、2000社以上から在庫を引き取ってきた。

 ◇ 引き取り量が倍増

 山本昌一(しょういち)社長は「今年はコロナの影響で春物の服が売れず、6、7月の引き取り量は例年の倍以上になった」と語る。昨年8月に取材で倉庫を訪れた時は、空間に余裕を感じられたが、今は見上げるほどに段ボールが積まれている。

 同じブランドロゴの箱がいくつも積み重なる光景を目の当たりにして「売れるか分からないのにこんなに作らなくても」と感じた。倉庫を案内してくれた同社営業部の野崎陸さん(25)も「今は秋の決算期の処分に合わせて在庫が流れ込んでいる。昨年と比べたらものすごい量」と語る。

 新型コロナは、百貨店などのアパレル小売店を営業自粛に追い込み、メーカーの経営を圧迫させた。5月には紳士服「ダーバン」などを展開する老舗レナウンが経営破綻。オンワードホールディングスは2021年2月までに約700店を閉鎖する。東京商工リサーチによると、今年4~9月に倒産した3858社(負債額1000万円以上)のうち、アパレルを含む繊維業は245社に上った。

 ショーイチの山本社長は「引き取る商品の量は倍増したが売り上げは例年並み。残念ながら弊社の在庫量は増えている」とこぼす。それでも「アパレル業界が大変な中、うちが在庫を引き取るぐらいはやらないと。短期的な目線は捨てて、『在庫に困ったらショーイチに電話』というインフラ的な存在になれれば」と覚悟を決めていた。

 シーズン前に大量生産

 そもそも季節ごとに商品を入れ替えるアパレル業界では、シーズン前に流行を予想して商品を生産する。近年では価格を抑えた服を大量生産するファストファッションが潮流となっている。

 経済産業省によると、国内のアパレル商品の供給量は1990年代初頭で約20億点だったが、2010年には約40億点に倍増した。一方、国内のアパレル市場は15兆円から10兆円規模に縮小、大量生産による「売れ残り」も増加したとみられる。

 昨年取材した都内の産業廃棄物会社の社長は「有名ブランドの在庫を年間100トン以上焼却している」と明かした。無断転売や違法投棄によるブランドイメージの悪化を避けるため、メーカーの担当者が処分時まで立ち会うことも多いという。今回、コロナ禍での業界の裏事情を聞こうと再びこの会社に取材を申し込んでみたが、なぜか社長と連絡がつかなかった。

 「捨てる会社が減っている」

 しかし、在庫の増加はコロナ禍だけが原因ではないようだ。山本社長は「在庫を焼却処分するなどの『捨てる会社』が目に見えて減ってきている。今は一部のハイブランドだけで、サステナブル(持続可能)な方向に進もうとしている」と業界の変化を感じている。

 分岐点となったのは、18年の英高級ブランド「バーバリー」による在庫廃棄の報道だ。数十億円分の商品を焼却処分していたことが明らかになり、国際的な批判を浴びた。それ以降、各メーカーも在庫処分に神経をとがらせるようになった。

 バーバリーは毎日新聞の取材に「18年9月に在庫の廃棄をやめた。商品をニーズのある地域に移動させるなどしている」と説明。ユニクロなどを運営する「ファーストリテイリング」も「価格を下げたり、翌シーズンに繰り越したりして売り切っている。焼却などの廃棄はしていない」と説明する。

 より前向きな動きもある。ユニクロは顧客が不要になった自社の服を回収し、新しい服に作り替える取り組み「RE.UNIQLO(リ・ユニクロ)」を9月にスタート。第1弾として、11月2日から国内での回収品62万着で作ったダウンジャケット(税別7990円)を販売し、今後も商品メニューを広げていくという。

 ただ、ある業界関係者は「リサイクル品は製造費がかかるため、正規品より高価になりがち。環境意識の高い欧州では受け入れられるが、リーズナブルな商品を求める日本では厳しいだろう」と冷ややかな見方を示す。

 生産体制の見直しが必要

 一方で、アパレル業界のマーケティングに詳しい大妻女子大の中島永晶教授は「今の業界は、服作りよりも在庫の圧縮が最大の関心事になった。今回のコロナを機に目先のトレンドに左右される生産体制を考え直すべきだ。翌シーズン以降も販売できる商品などで在庫を適正化しつつ、利益重視の経営にシフトする必要がある」と指摘し、業界の意識改革を促している。

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2020年10月13日 (火)

【耳学】“犯罪者天国”✍「南アフリカ共和国」警察機構の闇

 日本の凶悪バラバラ殺人犯南アフリカで17年も野放しだったワケ 

現代ビジネス 2020年10月13日(火)14時01分配信/時任 兼作(ジャーナリスト)

コロナを恐れて突然出頭

 「指名手配されている紙谷惣です」――。2003年に殺人を犯し、南アフリカに逃亡後、現地で事業を行い、潜伏を続けた犯罪者。それが17年後の今年8月下旬、同国で感染が拡大する新型コロナウイルスに怯えて自ら南アフリカの日本大使館に出頭し、警察関係者を驚かせた。この出来事は、いまなお捜査関係者の間で話題となっている。

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 殺人事件が発生したのは2003年9月。元飲食店員が千葉県市川市のレストラン駐車場で暴行を受け、その後、埼玉県戸田市のマンションに監禁された挙句殺害され、遺体はバラバラにされて遺棄された。その年の10月、東京都奥多摩町の町道で、切断された腕が見つかり捜査が開始された。

 背景には、飲食店を訪れる客のクレジットカード情報を抜き取り、カードを偽造する詐欺計画をめぐってのトラブルがあったという。殺害された元飲食店員が、詐欺に加担することを断ったのだ。

 2004年1月、警視庁は逮捕監禁容疑で男女8人を逮捕し、のちに殺人、死体遺棄などの容疑で再逮捕したが、主犯格と目された松井知行容疑者と今回、殺人の実行犯として出頭した紙谷惣容疑者は事件直後に国外に逃亡。米ハワイ経由で南アフリカに入国していた。警視庁は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際指名手配したものの、身柄を押さえることはできなかった。

南アフリカ警察はまったく動かず

 その後について、捜査関係者が語る。

 「海外逃亡後、ふたりは別の詐欺事件にかかわっていたようだ。そのことが判明したのは、2010年のこと。南アフリカで開催されたサッカーワールドカップに際し、架空の観戦ツアーを名目に高額の旅行代金がだまし取られる事件が発生した。その捜査を進める中、松井らが主導していることがわかった。

 警視庁は2014年6月、詐欺の容疑で日本国内の共犯者5人を逮捕し、松井らについては新たに同容疑で国際指名手配をした。それと同時に、ふたりの南アフリカにおける所在もつかめたため、南アフリカの警察当局にコンタクトを取り、身柄の引き渡しを求めた。しかし、『死刑制度のある国(日本)に引き渡しはできない』と断られてしまった」

 この事件の最中、紙谷容疑者は松井容疑者とたもとを分かち、その後は中古車販売を行っていたという。一方、松井容疑者は逮捕されぬまま、2016年に自殺してしまった。

 つまり、南アフリカの警察当局は日本側から依頼を受けていたにもかかわらず、まったく動かなかったわけである。

殺人犯と知りつつ見逃した

 南アフリカ警察の消極的な姿勢はその後も変わらず、紙谷容疑者の今回の出頭も捜査当局の働きかけではなく当人が自発的に行ったものだという。捜査関係者が続ける。

 「中古車販売業が行き詰まり、借りていた家の大家とトラブルもあったうえ、コロナに感染した疑いが出てきた。紙谷が出頭してきたのはこうした理由があったからとみられる。

 出頭先は在南アフリカ日本大使館で、南アフリカ警察はまったく関与しなかった。紙谷は大使館員に対して殺人や指名手配について認めたうえで、『コロナで仕事も金もなくなった』『同居人がコロナに感染した』などと繰り返し、『日本に帰りたい』としきりと訴えたと聞いている」

 大使館は外務省本省経由で警察庁、警視庁と相談のうえ、日本に送還することにしたというが、コロナが蔓延する南アフリカは現在に至るまでロックダウン(都市封鎖)状態にあり、国際線の発着が原則禁止されていたため、紙谷容疑者を8月末まで大使館付近のホテルに滞在させたのち、9月1日、特別臨時便を手配。3日に帰国させた。同日、警視庁は逮捕監禁容疑で逮捕した。今後、殺人と死体損壊、死体遺棄容疑を追及するという。

 それにしても、なぜこんなことになったのか。どうして17年もの間、自由気ままに日々暮らすことができたのだろうか。もともと南アフリカの警察官のモラルが低いことは有名だが、まさか殺人犯の存在を知りつつ長年見逃し続けるとは、驚くほかない。

警察トップが賄賂をもらう国

 南アフリカ警察の実態を知る日本の警察幹部はこう話す。

 「警察トップからして、賄賂をもらって殺人を見逃すような国だ。南アフリカ警察長官のジャッキー・セレビ氏は、2008年に収賄容疑をかけられICPO総裁を辞職している。つまり、ICPOの統制すら効かないということだ。だから、不正や怠慢があろうと、一向に驚かない。『死刑制度がある国には容疑者を引き渡さない』などという綺麗事は、まったくのおためごかしだ」

 紙谷容疑者が南アフリカに逃亡したとみられる2004年頃、同国では警察長官が2代続けて汚職で更迭されている。先に更迭されたのは、前述したジャッキー・セレビ警察長官。同氏は2005年、殺人容疑で逮捕されたビジネスマンから賄賂を受け取っていた。その後、収賄罪で逮捕され、懲役15年の実刑判決を受けた。同長官は更迭直前までICPO総裁を務めていた。

 その後任となったベキ・セレ警察長官も、警察庁舎の賃貸契約に際し、競争入札を行わずに不当に契約業者を選定したとして、2012年に更迭されている。

 「まさに、紙谷らが南アフリカに逃亡したときの警察長官が、2000年に就任したセレビだ。ちなみに、このセレビの在任中に使われていた南アフリカ警察幹部の公用車が、日本国内で盗まれた盗難車であったことも2007年に発覚している。逮捕要件となった賄賂を渡していた人物も、正体はビジネスマンと言うより麻薬取引業者。つまり、南アフリカ警察は犯罪集団に近い。

 そのあとを継いだセレ長官がやはり汚職で更迭されてからもう8年が経つが、南アフリカ警察の体質は変わっていないとみられる。犯罪者にとっては天国のような国だ」(前出の警察幹部)

 もしコロナが蔓延していなければ、殺人犯はいまなお遠く離れた異国・南アフリカでのうのうと暮らしていたことだろう。

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 バラバラ殺人“半グレ”遺書残し首つり自殺、一体が起こったのか 

文春オンライン 2020年9月16日(水)6時01分配信

 新型コロナウイルスは積年の手配犯の気力すら挫くようだ。警視庁は9月3日、不良グループによる殺人事件に絡む逮捕監禁容疑で、約17年間、南アフリカに潜伏を続けていた紙谷惣容疑者(46)が帰国したのに合わせ、逮捕した。

 警視庁担当記者の話。

「紙谷の同居人が新型コロナに感染した上、生活にも困窮して家賃が払えず、大家とトラブルになって現地の日本大使館に8月下旬から相談していたようです。南アでは、世界で6番目に多い62万人超の感染が確認されている。本来なら捜査員が現地に赴いて同じ飛行機に乗って逮捕しますが、コロナで飛行機も満足に飛ばないような状況です。異例なことに本人が1人でドーハ経由で帰国し、成田で身柄を確保されました」

 事件は語るだに凄惨だ。紙谷らは2003年9月、元飲食店員の古川信也さん(26・当時)と別の男性を車で拉致し、埼玉県内のマンションに監禁。その後、山梨県内のキャンプ場で首を絞めて殺害し、バラバラに刻んで山梨県や奥多摩町の山中に捨てたのだ。紙谷は飲食店などで使われたクレジットカード情報を盗んで使うスキミンググループの1人で、古川さんはスキミングへの協力を断ったことから殺害されたという。

 だが、紙谷に犯行を指示した“首謀者”は別にいる。同じく南アに逃亡した松井知行容疑者(48)だ。

「松井は関東連合グループとも仲が良く、半グレの先駆け。スキミングなどを手がける犯罪集団のトップで、新宿で起きた別の殺人事件に関与した疑いでも国際手配されています。南アに逃亡後も10年のサッカーW杯にかこつけたチケット詐欺事件を主導。被害総額は約1億円で、一部は逃亡資金に充てられたと見られていますが、この詐欺事件でも手配中です」(同前)

16年に南アの海岸で見つかった首吊り遺体の身元は……

 なぜ逃亡先が南アだったのかと言えば、「死刑制度のない同国は死刑制度のある国への犯罪人の引き渡しを拒んでいるから」(同前)だとされる。特に松井の死刑は濃厚で、逆に“安心”して滞在できたわけだ。

 松井が絡んだ事件は他にもある。捜査関係者の証言。

「16年にコンビニのATMから18億円が不正に引き出された事件にも関与が疑われています。元関東連合の男が主犯格ですが、南アの銀行がハッキングされており、関東連合と近い松井の存在が浮上しました」

 ところが――。

「今年に入り、16年に南アの海岸で見つかった首吊り遺体が指紋などから松井と見られる、という報告が入りました。ATM事件から間もない時期の自殺ですが、『ごめんなさい』と書いた遺書もあり、本人でまず間違いない。一連の事件の全容解明は難しくなります」(同前)

 逃亡劇の末路はかくも悲惨なものだった。

南ア逃亡殺人出頭コンビニ18奥円引き出し事件にも関与か

デイリー新潮 2020年9月17日(木)5時57分配信

 17年の時を経て南アフリカから帰国した紙谷惣(そう)(46)。「コロナで仕事も金もなくなった」と出頭した殺人犯に、知能犯の一面があることは知られていない。

 ***

 2003年10月、東京都奥多摩町で、拉致された男性の切断遺体が見つかった。

「この事件で、警視庁が殺人容疑などで紙谷を国際手配していました。今月3日、潜伏先の南アから帰国した紙谷を逮捕監禁容疑で逮捕。警視庁は男性の拉致の経緯とともに、殺人と死体損壊・遺棄容疑でも調べを進める予定です」

 と、警視庁担当記者。事件には松井知行(48)というリーダー格がいるが、

「03年当時、クレジットカードやキャッシュカードの偽造グループにいた紙谷は、不良の遊び人だった松井とつるんでいました。その“仕事”の一環で、東京の六本木に高級クラブを開店する予定だった男性に、松井が、スキミングによる客のカード情報の不正入手を要求。この手口で松井たちは大儲けしていたのですが、この時は拒否されたため拉致して殺したのです」

 男性の遺体発見前後、紙谷と松井はハワイを経由して南アへと飛んだ。

南アから中国を経由

 以来17年。男性殺害の容疑ではこれまでに男女10人が逮捕されているが、彼らは潜伏を続けた。なお松井は南アで自殺したとされる。紙谷こそが、男性殺害事件における真相解明の“最後のピース”なのである。

「南アに逃げた紙谷や松井は、日本から送られてくる盗難ベンツを売り捌いて逃走資金に充てていました」

 捜査関係者がこう明かす。

「紙谷は南アの公用語である英語も理解し、先住民族も使って商売をしていた。10年にサッカーの南アW杯が開催されましたが、その観戦ツアーを騙った被害総額1億円の詐欺事件が日本で起きた。スキミングの知識のある彼の関与も疑われました。居場所を突き止め、翌11年6月に捜査員が南アに赴いたのです」

 だが、南アは死刑廃止国。死刑制度のある国には容疑者の身柄を引き渡さない。

「それで、東京地検検事正名で“死刑は求刑しない”との誓約書をたずさえた捜査員が派遣されたのです。身柄引き渡しが実現しそうなところまでいったものの、結局、叶いませんでした」

 ここで紙谷の身柄をとれなかったことが、のちに、新たな事件を生む結果となった。

「16年、コンビニATMから約18億円が一斉に引き出された事件が起きた。すでに“指示役”や“出し子”など約260人と主犯格を逮捕しているものの、事件は17都府県の広域にまたがっており、盗まれた金の流れを含め、4年経っても全容解明にはほど遠い。一斉引き出し事件に関与していたのは総じて暴力団員や半グレですが、“紙谷が重要な役割を果たしていた”という関係者の供述があるのです」

 その供述とは、

「“一斉引き出し事件で使われたカードは紙谷が作り、南アから中国を経由して日本に入ってきた”というもの。確かに不正利用された偽造クレジットカードは、南アの銀行が発行したクレジットカードの情報が悪用されていた。カード偽造に精通した紙谷が、そのクレジットカードに手を加えた磁気を張りつけていたと見ています。紙谷から“このカードが使えるから、コンビニで1回10万を引き出せ”と指示された人物もいる」

 殺人事件とコンビニ一斉引き出し事件。南アと日本、中国。その“点と線”がつながる日はくるだろうか。

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 座間9人殺害事件公判で振り返る「死にたい若者たち 

文春オンライン 2020年10月7日(水)17時01分配信/渋井哲也(ジャーナリスト)

 2017年10月に発覚した神奈川県座間市での男女9人殺害事件。本格的な審理が10月5日、東京地裁立川支部で始まった。精神鑑定を担当した精神科医の証人尋問が行われた。裁判では、お金と性欲のために行った殺人か、自殺願望者の希望にそった承諾殺人なのかが最大の争点だ。ただ、この日の鑑定医の証言は、事件そのものよりも、筆者が自殺の取材をしてきた過去を振り返るような内容だった。

死にたいとはどういうことなのか

「本当に死にたい人はいませんでした」

 白石隆浩被告(29)は取り調べでも、筆者との面会でも同じことを言っていた。そのことを問いただすと、「学校に行きたくないとか、彼氏にふられたとか……」と答えた。白石被告にとってみれば、“そんなこと”に見えたに違いない。しかし、被害者にとってみれば、少なくともその時は、“死ぬほどの苦痛”だったのではないだろうか。

 ただ、「本当に死にたい」とはいったいどういうことなのか。裁判員は、精神医学的、または心理学的な知識があるという前提にはない。裁判員裁判のため、精神医学的な基礎知識が必要だったのか。

 最初の尋問では、なぜ、死にたいという気持ちが表出されるのかということから始まった。弁護側の質問に鑑定医はこう答えた。

「苦痛や悩みがあるとき、人は解決しようとします。しかし、解決ができない場合は、苦痛や悩みを耐えられません。そんなときに不安定な心境になり、もう耐えられないと思うようになります。そのときに、自殺を思いつくことがあります。希死念慮の他にも、逃げるしかないと思ったり、ひきこもったり、行方不明になったり、アルコールや薬物に走ったりします。自暴自棄にもなり、自傷行為をすることもあります」

 しかし、自殺願望と、自殺を決心して行動に至ることはまた別に考えなければならないとも言っていた。そして、計画性がなくても、衝動的に人は自殺する。周囲がその自殺願望に気が付かないとすると、SOSを発信していないか、発信していても、受け止められない場合もある。

結果として自殺してしまった人も

 筆者は、1998年に生きづらさに関連した取材を始めた。きっかけは、援助交際をしている高校生たち、家出をしている少年たち、摂食障害の女性たちとの出会いだった。彼ら彼女らを取材していると、共通して多かったのは、希死念慮、つまり「死にたい」という感情だった。また、「消えたい」との言葉を使う人も出始めていた。当時は、自傷行為をする人たちや、自殺未遂をしていた人のネット・コミュニティが出来つつあった。オフ会をよく開いたり、参加したものだ。

 私の取材で、自殺願望が強い時期ではなく、自殺を決心してないだろうが、結果として自殺をしてしまったという人がいた。動機としては、そのとき、嫌なことがあり、長い眠りにつきたいと思い、処方量以上の薬を飲んで、そのまま亡くなってしまった。通常、その量では死なないはずとみんなが思う量だった。自殺願望も、決心も強いわけではなかった。むしろ、寝ることで逃げたかった。いわゆる「寝逃げ」をしたかったのではないかと思っている。

周囲が自殺願望に気づかないこともある

 また、鑑定医は「亡くなってしまった人はあまり経験がないが、(自殺を)試みましたという人が一定数いる」と言っていた。そういえば、現場の精神科医に話を聞くと、「それほど患者が自殺をしてない」という話をよく聞く。この裁判でもそんな話を聞くとは思わなかった。

 どのくらいの人数を指してそう言っているのかわからないが、筆者は20年以上、自殺に関連する取材をしているが、数十人が自殺している。亡くなってすぐ友人から知らされ、葬儀に出席したこともある。また、数年後に、家族が故人の日記を整理していたら、筆者の連絡先が書いてあり、電話をしてきたということもあった。まれに、本当は亡くなっていないが、ネット上でのやりとりが疲れたために、自殺したことにした、と話した男性もいた。

「周囲が自殺願望をわからないこともありますか?」と弁護側は聞いた。鑑定医は「あります」と回答した。筆者の取材する人の中に、家族や友人、恋人が、自分の気持ちを知らないし、伝えたくないと言っている人も多い。そのため、亡くなった後に、遺族から「どうして教えてくれなかったのか?」と迫られたこともあった。

自殺直前の言動をそのまま受け取ることはできない

 ある女性が尋ねてきたことがある。恋人と2人で旅行をした翌日、相手の男性が自殺した。女性は「きっと何か原因があったが、私に言えなかったんだ」と思い、会社関係、相手の家族、友人関係から話を聞いたが、誰一人、自殺の理由を知らなかった。ネットやパソコンに痕跡もない。そのため「理由のない自殺ってあるんですか?」と聞かれた。周囲にサインを出さない場合もある。

「死を決めることと、死への決心が強いかどうかは整理する必要がある。方法を思いついたり、死んだ後のことを考えたり、死後の世界を考えたり、様々なことを考えています。死について計画をしたからといって、今すぐ死のうとするかは別。ふいに電車に飛び込む人もいます。一方、うつ病の治りかけがリスクが高かったりします。医療者の立場とすると、『やっぱり生きて行こう』『自殺するつもりはない』と言って退院したけれども、その後、事故になることはあり得ます」(鑑定医)

 自殺直前の言動は、必ずしも、本人の気持ちを表出しない。「生きていこうと思います」という言葉が出たとしても、前向きになったとは限らない。2003年から05年にかけてネット心中が連鎖したが、その取材の一環で、当時19歳の男性と会った。彼は虐待を受けたことで自殺を考えるようになった。取材をしていると、前向きになってきたような印象だった。精神科にも亡くなるまで通院していた。しかし、数週間後、自殺系サイトで知り合った30歳の女性と一緒に亡くなった。

レイプされて殺されるということを知っているのか

 座間の事件の被害者の中には、何度も自殺未遂をしている人がいる。ネット心中やTwitterで自殺相手を募集する人たちの取材をすると、不思議な話ではない。この事件は、白石被告がなぜ短期間で9人も殺害したのかに注目が集まっている。ただし、一方で、若者たちが自殺願望をつぶやく心理についても考えなければならない。特に、今年の8月は、女性の自殺者が40%ほど増加している。若年層ほど、自殺者が多くなっている。

 座間事件後、筆者は、Twitterで「死にたい」とつぶやく人たちに取材した。すると、「10人目になりたかった」という女性が複数いた。そのことを面会で白石被告に伝えたところ、「驚きです。その人たちはレイプされて殺されるということを知っていて言っているのか」と、声を荒らげた。取材した人の中には、むしろ、性被害にあえば、死に向かう衝動に勢いがつくと話していた人もいた。事件の裁判を傍聴して、改めて、そうした人たちの声に耳を傾ける必要があると感じた。

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 座間9人殺害事件は「被害者んだ承諾殺人」なのか 

文春オンライン 2020年10月7日(水)17時01分配信

 承諾殺人か通常の殺人か――。2017年10月までに神奈川県座間市内のアパートで男女9人を殺害した、白石隆浩被告(29)の公判が東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で開かれている。検察側は殺害されることを承諾していないと、通常の殺人を主張している。一方で、弁護側は承諾殺人を主張する。

 9人とも、自殺を考えて、自ら白石被告に会いに行っている。一方では、殺害前には、生きようとしていると思わせる内容のLINEを友人に送っていたりする。これには自殺者の心理が関わっているが、法廷で鑑定医が「自殺をしようとする人が、直前に『生きようとした』と言ったとしても、自殺を試みることはある」と証言するように、裁判員の判断は容易ではない。

◆ ◆ ◆

殺されてもいいから終わりにしたいと書く一方で

 現在は、殺害された被害者9人のうち、3人の被害者について審理されている。被害者はプライバシー保護のためすべてアルファベットで呼ばれる。傍聴席には、被害者の家族が傍聴するために衝立が設けられていた。そんな中に、白石被告が気怠そうに被告席に座っている。

 最初に殺害されたのはAさん(女性、当時21)。弁護側によると、Aさんが自殺を考えるようになるにはいくつかの理由がある。中学時代にいじめにあったり、恋愛での悩みがあったりした。高校1年のときには、1ヶ月ほど家出をしている。帰宅後、精神科に通院すると「適応障害」と診断されたという。その後、自ら通院を止めたが、市販薬で過量服薬し、入退院を繰り返す。入院中にリストカットしたり、自殺未遂を試みたりしたが、看護師に止められた。

 一方、高校時代にスマホを購入。TwitterやLINEをするようになった。と同時に、自殺系サイトを閲覧する。そこで知り合った女性と、海で自殺を図ったこともある。しかし、自分だけが生き残った。弁護側は、この時のことが「心に突き刺さっていた」とする。そして、2017年8月、死のうとして1年が経ち、希死念慮が強まった。「記念日反応」があったのだろうか、自殺をめぐるネット・コミュニケーションの結果、白石被告と出会うことになった。

 白石被告と出会った後にも、Aさんは日記に「殺されてもいいから終わりにしたい」と書いている。殺害される前日にも他の人と「殺されたい」とのメッセージのやりとりをしていた。そのため、弁護側は「承諾していた」と主張する。

 一方、検察側は、殺害される当日、白石被告から「携帯電話を海に捨ててくるように」と指示されたものの、海には捨てず、駅のトイレ内に放置したことのほか、白石被告が「自殺を止めるように」と言うと、前向きな変化があったこと、Aさんは白石被告との新しい生活を考えていたことから、承諾も同意もないと主張している。

いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います

 また、Bさん(女性、当時16)は、学校生活での悩みがあった。弁護側によると、課題の提出が苦手だった。そのため、中学時代から、学校と母親から注意を受けて、叱責をされていた。そのため、学校へいくのを嫌がるようになり、早退や欠席が多くなっていた。

 中学2年生の頃、「部活ノート」を提出することになるが、やはりなかなか書けず、出せないでいた。学校へ行けないという思いが強くなり、出したとしても、先生から「本心を書いてない」と言われるようになる。そんな中で、学校に行くふりをして、家の中で身を隠していたことがあった。Bさんがいた付近には、犬のリードがあったため、自殺をしようとしたのではないかと母親は考えた。Bさんにとっては、提出物が出せない悩みは、死にたいと思うほどのことだったようだ。このことで、学校側は特別支援の対象にした。

 2017年4月、高校に入学したが、入学前の課題提出がまた難関になった。母親に強く指摘されると、家出をしたこともある。1学期の成績は「赤点」だったが、その原因も、提出物を出せていないことだったという。このことで、夏休みは補習をすることになるが、夏休みが明けようとする時期になって、再び提出物が問題になった。そんなときに、Bさんは自殺系サイトを閲覧した。さらに、Twitterに「関東で一緒に死にませんか?」と投稿した。

 その投稿がきっかけで白石被告とつながる。白石被告が「首吊りですか? 飛び降りですか?」と送ると、Bさんは「首吊り」と返事をしている。また、日程に関しても、Bさんは自ら提示をした。そんなことから弁護側は「承諾があった」と主張する。

 一方、検察側によると、Bさんは殺害される当日、「いろいろ考えた結果、生きて行こうと思います」とLINEをしている。白石被告は「しばらく家にいたほうがいい」と言い、居場所がわからないように、携帯電話を海に捨ててくるように伝えた。Bさんは、海には捨てず、海近くの駅のトイレに放置した。言いなりになっていないことを含めれば、承諾も同意もしてないと、述べた。

オレ、これからは生きていきます

 Cさん(当時20)は男性だ。弁護側によると、小学校高学年のときに「高機能自閉症」と診断された。人の気持ちを汲み取るのが苦手で、対人関係に悩みがあった。そんなこともあり、高校卒業後は、知的障害者の支援施設で働くようになった。しかし、体力的にも、精神的にもきつい仕事であり、利用者から暴力を受けることもあったようだ。

 恋人との別れも経験した。事件の2ヶ月前の2017年6月、2年間付き合っていた彼女から別れを告げられた。翌日、その女性にあてた遺書を書き、睡眠薬を過量服薬した。結果、救急車で運ばれることとなり、強制入院する。仕事は7月末まで休むことになったが、退院してすぐに、その女性を駅で見かけたことで、電車に飛び込もうとしたことがあった。

 一方で、音楽活動もしていた。本格的に取り組むようになったものの、バンドリーダーは厳しい存在だった。叱責されることで、精神的に不安定な状態が増した。事件数日前の8月27日、バンドが遠方でライブをすることになった。車の運転はCさん。往復で12時間かかったが、リーダーはCさんに動画の編集をお願いする。すると、リーダーの登場場面が少なかったのか、「余計な編集をするな」と言われ、再編集をする。

 8月前半、Cさんは、すでに知り合っていたAさんと、白石被告に「自殺の手伝い」をお願いするため、3人で会っていたが、このときは希死念慮が弱まった。しかし、再編集となった翌日の8月28日、再び、白石被告と連絡を取る。そのときには「Aさんにやった方法で殺してください」とメッセージを送っている。白石被告がAさんを殺害していたことを知ってのやりとりだ。メモアプリで遺書を書いていたことで、弁護側は「承諾していた」と説明する。

 一方、検察側は、白石被告と会った後、Cさんは「オレ、これからは生きていきます」などとLINEをしている。やはり、白石被告に携帯電話は海に捨ててくるように言われたものの、海に行く途中の駅のコインロッカーに預けている。「しばらく家にいれば」と言われて、Cさんは白石被告宅にいることになるが、それは殺害の承諾でも同意でもない、と断言する。

生きたいという思いと、死にたいという思いが交錯

 いずれも、ある時点では、殺してほしいという気持ちが見え隠れする。ただし、どこかの時点で「生きようとする」メッセージを送ったり、その思いを反映するような行動をとったりしている。そもそも、自殺をしたい、という気持ちと、殺されたいという思いはどこまで一致するのか。仮に一致するとしても、殺されることを同意していたのか。仮に、同意していたとしても、その条件として何が必要なのか。そんなことを裁判員が判断しなければならない。取材をしていると、自殺を企図する直前まで、生きたいという思いと、死にたいという思いが交錯するように感じている。裁判は、自殺の心理だけでなく、裁判員の死生観や倫理観を大いに反映することになるだろう。

 ただ、白石被告本人は、承諾殺人ではないと言うつもりであるという。

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 最初の犠牲者Aさん(当時21歳)を殺したワケ「他に男がいる雰囲気 

文春オンライン 2020年10月10日(土)11時01分配信

「私以外の男性との付き合いがあるような雰囲気だった。2度目のホテルで性交渉を持ちかけたが断られたこと、そして、自分のこれまでの過去の経験上、短期的にお金をひっぱることはできるが、長期的には難しいと思っていたことです」

 被害者の一人、Aさん(女性、当時21)殺害について、裁判員から「迷っていたのに最終的に殺害をしたきっかけは?」という質問を受けた白石隆浩被告(29)は、淡々とこう答えた。

白石被告の素と思われる部分が出た

 神奈川県座間市内のアパートで男女9人を殺害した白石被告の裁判が、東京地裁立川支部で開かれている。最初に殺害されたAさんに関して、白石被告は弁護側からの質問を拒否。弁護側が質問した内容を、検察側や裁判官が繰り返すという異例の展開になった。

 また、これまでの証言と矛盾すると弁護側が指摘した場面もあったが、「答えるつもりはない」とつっぱねた。しかし、法廷では、白石被告の素と思われる部分が出たような気がした。

 白石被告は被告人質問の初日から、弁護側の質問に答えていない。2日目となった10月8日、ようやく弁護側の質問に答えるつもりがない理由をこう話した。

「裁判が長引くと、親族に迷惑がかかる。そのため、(承諾殺人ではないという)検察側の起訴事実を認めてると、最初から弁護人には言っていた。弁護人も『わかりました』と言っていました。ずっと私の希望に合わせますと言っていた。

 しかし、公判前整理手続きに入ってからは『争う』と言ってきた。話が違うので、受け入れられません。解任したいと思ったのですが、裁判所に受け入れられませんでした。仕方がないですが、(承諾殺人ではないという)今の主張は変わっていません。結局、今の国選(弁護人)で裁判に臨むことになりましたが、方針が合わず、根に持っています。以上です」

被告と弁護人の主張が違ったまま進行

 白石被告は、裁判前から弁護人と方針が合っていなかった。公判が開かれる前の報道でも、弁護人の方針とは違っていることが報道されていた。

 私が拘置所にいる白石被告と面会したとき「裁判はどんなスタンスなのか?」と聞いたことがあった。すると、白石被告は、「基本的には(起訴事実を)認める方法。私本人は争わないつもりです。最初の弁護士は『黙秘して』と。その弁護士はお断りした」とも言っていた。弁護人を一度は解任していたためだろうか、裁判所が解任を認めなかった。だからこそ、白石被告と弁護人の主張が違ったまま、裁判が進行することになった。

家族にはもう会うこともないでしょうから

 裁判が長引くと「家族に迷惑がかかる」と思っているようだが、今年7月の面会で家族への思いを聞いた際には「ごめんなさい」とだけ言っていた。ただ、2019年4月の面会では、「ごめんなさい。いや。違うな。もう忘れてください。もう会うこともないでしょうから」と語っていた。

 白石被告によれば、家族は面会にもきていないし、手紙も届いていない。そうした関係が断絶した家族にも「迷惑がかかる」と話す。本心なのだろうか。それとも、弁護人と話が合わないことへの苛立ちから出てきた言い訳のような言葉なのだろうか。

 答えない理由を白石被告が言う前、弁護人は、6つの視点で質問をしていた。

 これらの質問には答えない白石被告だが、同じ質問を検察側が問うと答える。ある意味で、人を操作する戦術なのだろうか。弁護人が思う通りにならないなら、思う通りになる検察側や裁判官の心理を操っているようにも見える。ネット・ナンパでも、長年、そうしてきたのだろう。自分についてくる人だけをターゲットにしたときと似ているのかもしれない。

なぜロープを使って殺害したのか?

 検察側の問いには素直に答えた。

Q「初めてAさんと会った日に、ホテルに泊まることになるが、その途中でガムテープとロープを購入している。一緒に買ったのか? ホテルに持っていったのか?」

A「一緒に買いに行ったのかどうかは覚えていませんが、記録から考えると、おそらく一緒に買いに行っている。購入したものを持ってホテルに行ったのだと推察します」

Q「スマホを片瀬江ノ島駅に捨てるという話になったが、その駅は、1年前にAさんがネットで知り合った人と入水自殺をした場所から近い。それをAさんから聞いていたのか」

A「聞いてなかったかもしれません」

Q「携帯電話を捨てた後、Aさんと一緒に生活をする予定だったが、別の新しい携帯電話の契約の話は出たのか?」

A「新しい携帯電話の契約の話はしていません」

Q「Aさんは片瀬江ノ島駅のトイレ内に携帯電話を置いてきた。財布を捨てたのは確認したのか? 殺害後に奪った所持金はどこにあったのか?」

A「財布を持っていたかどうかは覚えていない。しかし、家を出るときには思っていなかった服を着ていたし、バッグを持っていた。どこかにあったのではないか」

Q「Aさんか片瀬江ノ島駅から戻った後、部屋に戻るが、殺害前にAさんはお酒と薬を飲んでいる。お酒と薬の種類と量は? 首を絞めて動かなくなったAさんをなぜロープを使って殺害したのか?」

A「Aさんがコンビニで買ったお酒。種類はわかりません。薬は、Aさんが日常的に飲んでいるもので、具体的には見ていない。いつも以上に飲んでいたかは、正直、わからない。ロープを使ったのは、山に遺棄しようと考えたときに、首を絞めて殺したのではなく、ロープを使った自殺に見せかけようと画策したから」

私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示

「薬の種類がわからない」と言っていたが、2019年4月の面会では「酒を飲ませて、睡眠薬と安定剤を飲ませた」と答えていた。「睡眠薬と安定剤」という種類を認識していたが、裁判では答えないだけなのか。それとも、面会時の回答が「嘘」あるいは「勘違い」だったのだろうか。

 事件当初、病院で嘘をついて睡眠薬を処方してもらったとの供述をしたとの報道もあった。精神安定剤は「被害者が持っていたもの」と言っていた。睡眠薬や精神安定剤の違いを認識していた可能性があるが、検察側はそれ以上の追及をしなかった。たとえ、誤報だったとしても確かめる価値はあったのではないかと筆者は思う。なかなか証言をしない白石被告。検察側の質問に答えたというだけでも、弁護側に優位に立てると思わせることができ、詳細な部分は、話さない作戦なのか、と思わされた。

 8月23日には、AさんとAさんの母親がLINEをしている。Aさんは「明日の夜、帰る」と送っている。また、友人と電話をしている。これに関連して白石被告は「私は内容の指示はしてない。私以外の他人と死ぬことをほのめかすように指示したが、電話の内容の指示はしていない」と詳細に述べた。

 冒頭陳述等によると、白石被告は8月23日、預かった金と所持金を奪う目的で殺害を決意した。Aさんの首を絞めたところ、失神した姿に欲情して、Aさんを姦淫。その後、ロープで首を吊って殺害した。遺体をバラバラにしたが、その方法はインターネットで検索したという。肉片や内臓等は一般ゴミとして処分。頭部はクーラーボックスに隠した。

ヒモになろうと思ったんです

 この日の質問で、捜査段階で供述していないことを引き出したのは、冒頭の裁判員による「殺害を決意したきっかけ」についての質問だった。

 弁護側は、「性交渉を断られたと証言したが、それは、捜査段階では言っていないのではないか。手書きの上申書を含めて、警察の捜査資料には、そのことはない。この質問にも答えませんか?」と質すと、「はい」と言い、白石被告は答えない。ちなみに、Aさんを殺害した理由について、面会ではこう答えていた。

「早く口説けた。お金を持っていることがわかり、ヒモになろうと思ったんです。しかし、他に男がいるとわかった。だとすれば、他の男に行くかもしれない。部屋を出て行けと言われるかもしれない」

 しかし、実は、白石被告はAさんに彼氏がいることを確認していない。裁判で、「なぜそう思ったのか?」と聞かれ、「彼氏がいないという会話はなかった」「男に困っている雰囲気ではなかった」と答えている。思い込みが強いのと、自信のなさからきた判断のようにも筆者には感じられた。裁判官から「Aさんとの関係を続けていく選択はなかったのか?」と聞かれ、「そういう選択もあったが、Aさんをひきつけておく自信がなかった」と答えた。白石被告の素の部分を垣間見た気がした。

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関連エントリ 2017/11/01 ⇒ 【生首コレクター】<逮捕された部屋の男性>✍殺害も認める・・・・

 

2020年9月17日 (木)

【サグラダ・ファミリア】3月から工事中断✍完成予定大幅に遅れる見通し

 サグラダファミリア教会 2026年完成は困難か 観光客減少で 

NHK 2020年9月17日(木)9時52分配信

 スペインの観光名所で、着工から140年近くたった今も建設が続くサグラダ・ファミリア(Sagrada Família)教会について、工事の責任者は、新型コロナウイルスの影響で、目標としてきた2026年の完成は難しくなったという見方を示しました。

 世界的な建築家、アントニオ・ガウディの代表作であるサグラダ・ファミリア教会は、1882年に着工し、ガウディの没後100年となる、2026年の完成を目指して、建設が進められてきました。

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 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大でスペイン全土に非常事態が宣言されたことから、工事はことし3月から中断されています。

 16日、工事の責任者が記者会見を開き、今後2週間以内に工事を再開することを明らかにしましたが、「感染拡大の影響でスケジュールを見直さざるをえない」と述べ、2026年の完成は難しくなったという見方を示しました。

 理由については、工事の中断に加え、観光客の減少による入場料収入の落ち込みで財政がひっ迫し、工事のペースを遅くせざるをえないためだとしています。

 そして新たな完成時期については、「現状では長期的な展望を描くことはできない」と述べ、見通しは立っていないとしました。

 スペインでは感染が再び広がる傾向にあり、主要産業の観光が大きな打撃を被っていて、サグラダ・ファミリア教会の建設も影響を受けた形です。

サグラダファミリア2026年完成は不可能 コロナ余波

AFPBB News 2020年9月17日(木)10時26分配信

 スペイン・バルセロナ(Barcelona)で建設中のサグラダ・ファミリア(Sagrada Familia)教会は、新型コロナウイルス流行の影響で、計画していた2026年の完成が実現することはないだろうと、同教会のエステーバ・カンプス(Esteve Camps)建設委員長が16日、明らかにした。

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 1882年に建設が始められたサグラダ・ファミリアは、建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)が亡くなってから100年目となる2026年に完成する計画だった。しかし今年3月、スペイン政府が新型ウイルスの感染拡大を食い止めるため全国規模のロックダウン(都市封鎖)を命じたことで、工事は中断。カンプス氏によると、工事は「数週間以内」にようやく再開されるという。

 再開されても、資金不足のため工事はゆっくりと進められることになる。建設費用はキリスト教徒からの献金や、観光客へのチケット販売収入でまかなわれており、いずれもコロナ危機によって大幅に減っているためだ。

 カンプス氏は、工事が完了する「新たな日程を提案することはできない」とした上で、「2026年(の完成)は不可能だ」と述べた。

 カタルーニャ人の建築家ガウディが手掛けたサグラダ・ファミリアは、完成すれば18の尖塔がそびえる教会となる。最も高い尖塔は高さ172メートルだ。

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 しかし現時点では、18塔の中で2番目に高い、聖母マリアにささげられる巨大な塔の工事を終えるための資金しかない。

 工事は今年3月、新型コロナ対策でスペイン政府が全土で実施したロックダウン(都市封鎖)で中断。また、建設費に充当してきた信者からの寄付や観光客へのチケット販売もコロナ禍の中で落ち込み、資金が不足しているという。

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 都会の楽園」のはずが…緑化集合住宅が「廃墟 -中国

AFPBB News 2020年9月15日(火)18時17分配信

 中国の大都会で緑に囲まれる暮らしを提案した実験的な集合住宅は、売り出された当初、「階層的な森林」の中での生活を約束した。各部屋のベランダには、手入れされた庭があるはずだった。

 この集合住宅の不動産業者によれば、全826室が今年4月までに埋まったという。ところが、建物は環境に優しい都会の楽園となる代わりに、荒涼とした世界滅亡後を描く映画のセットのようになってしまった。

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 蚊も植物を好む、ということが問題だった。

 国営環球時報(Global Times)によると、四川(Sichuan)省成都(Chengdu)にあるこの集合住宅には、蚊の来襲が原因で現在およそ10世帯しか入居していないという。

 地元メディアによると、2018年に建設されたこの集合住宅には、植物を育てるための空間として各部屋にベランダが設置されている。しかし植物を手入れする居住者がいないため、集合住宅の計8棟は植物に覆われて蚊に侵略されている。

 今月撮影した写真からは、放置されたベランダが植物にほとんどすべて覆われ、建物の至る所で伸びた枝が手すりに広がっているのが分かる。

 微積分を知らない人が『損している』と言えるワケ 

東洋経済オンライン 2020年9月15日(火)8時21分配信/ステファン・ボイスマン(数学者)

 変化を計算する微積分は、クルーズコントロールや天気予報、建物の構造、選挙公約の経済効果予測、腫瘍が大きくなる速さの割り出しなど、じつにさまざまな場面で使われている。

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 微積分では、どんな場合でも変化に注目する。「何の」変化かはあまり関係ない。必要な数学は同じだからだ。ここではなるべく単純な例で説明してみよう。

スピード違反を取り締まる

 例えば、スピード違反を取り締まるとしよう。このとき、走行する車の速度はどうすればわかるのだろう。

 拙著『公式より大切な「数学」の話をしよう』でも詳しく解説しているが、いちばん簡単なのは、一定の区間を設定して速度を求めることだ。必要な警察官は2人。1人は測定区間の起点に立って車両が通過した時刻を記録し、もう1人は1キロ先の地点で同じように車両が通過した時刻を記録する。

 そしてこの2つの時刻から、車両が区間の起点を通過したときの速度を出すわけだが、そのためには車両がその区間の走行に要した時間も計算する必要がある。車両が時速120キロで起点を通過したとすると、区間を走行するには30秒かかる。つまり区間の起点と終点の通過時刻の差が30秒であれば、その車両は時速120キロで走行していたことになる。

 本当にそうだろうか。この方法だと、制限速度が時速120キロのところを140キロで走っていたドライバーは、起点で140キロでも、区間の1キロを30秒かけて走り、終点を100キロで通過すれば、計算上の起点の時速は120キロになってしまう。

 このような事態を防ぎ、スピード違反を取り締まるには、通過時刻を記録する区間を短くすればよい。半分の0.5キロになれば、時速120キロで走行中のドライバーが減速する時間は15秒しかない。このようにして区間距離を短くしていけば、起点通過速度の計算精度は上がっていく。

 実際には、ミリ秒(1000分の1秒)の単位で自動車の速度が大きく変化することはないので、区間距離を短くするにも限界はある。道路沿いに設置されている速度表示板はかなり正確だが、それはこの計算を1メートル程度のごく短い距離で行っているからだ。

 では、車両が区間の起点を通過するときの正確な速度を知りたい場合はどうだろう。速度表示板の計算で生じるわずかな誤差でさえ許されないとしたらどうするか。計算の精度をさらに上げるには、距離をもっと短くする必要がある。ここまで来れば、「無限」の概念も近い。区間を無限に小さくすることで、無限に精度を上げられる、つまり正確な結果が得られるというわけだ。

「明日は晴れ」の信頼性

 「明日はよいお天気になるでしょう」は、本当だろうか?  天気予報が当たらないというのは、以前は常識だった。しかし、天気予報に微積分が使われるようになってからは変わってきている。大型コンピューターで計算が処理できるようになったおかげで、天気予報の精度は飛躍的に向上した。1970年代の予報と比べれば驚くほどの正確さだ。

 数値計算に基づく予測が取り入れられるまで、天気予報の手順はシンプルだった。

(1) 窓の外を見て、雲の様子や温度などを観察する

(2) 今日と同じ天気の日を過去の記録から探す

(3) 過去に同じ天気だった日の翌日の天気の記録が、明日の天気予報となる

 この予報では、今日の天気は昔のある日の天気とまったく同じで、明日以降も過去の記録と同じように推移することを前提にしている。だが雲の様子と温度だけを考えてみても、まったく同じ日があるとは考えにくい。天気はもっと複雑なものだし、これでは予報がなかなか当たらないのも無理はなかった。

 天気についても「計算して予測する」ことはもちろん可能だ。気象、つまり大気の状態の変化は、微積分を使うととらえやすい。第1次世界大戦のさなか、イギリスの数学者ルイス・リチャードソンは、計算に基づく天気予報を思いつき、過去のデータから、ある日の6時間後の天気を予測してみることにした。もっともこの計算には6週間もかかり、試みは失敗に終わった。

 計算で予報を出すのは、昔も今もかなり難しい。リチャードソンの場合は、時間がかかったばかりか、いくつも誤りがあった。天気には変化する要素がとても多い。大気は移動し、気温や湿度など、さまざまな数値に影響を及ぼす。高気圧と低気圧の位置関係やその動きも、大気圏のほぼ全体にわたって把握しておく必要がある。ほんの小さな変化でも、大きな違いにつながるからだ。

 変化するものがあまりにも多いため、的中率100パーセントの天気予報はまだ実現していない。巨大なスーパーコンピューターを使っても、確実な予報を提供できる計算スピードは達成できないのだ。

 そこで、天気予報ではすべてを正確に知ることはあきらめ、中間をとることにした。コンピューターは、大気をある面積、例えばヨーロッパの広域予報なら10キロメートル四方に区切った範囲内の天気は同じとみなして処理を行う。計算量が膨大になるので、区画はこれよりも小さくできない。このため天気予報には厳密でないところもあるが、それでもこの方法で予報を行うようになって以来、信頼性は大きく向上した。

 さて、「明日は晴れ」の予報を信じるべきか。答えはイエスだ。100パーセント正確な予測はできないにしても、天気予報の精度はかなりのものだ。区画ごとに天気がどう変化していくかは、コンピューターが計算する。大気が移動する速度は微分で、一定時間経過後の変化量については積分を用いて解析する。天気予報は数学のおかげで格段に正確になった。実際、翌日の予報はほぼかならず的中、翌週の予報でも8割から9割程度は当たるようになっている。微積分はこんなところでも役に立っているのだ。

微積分で橋をかける

 変化するのは天気だけではない。ほかのもの、例えば建物も絶えず変化している。見てわかるものではないが、外部から受ける風の力や建物内にいる人間の重さなどでつねに負荷がかかっている。重力で下向きに引っぱられているにもかかわらず倒れないのは、それに耐えられるように建てられているからだ。

 建築は、長らく勘が頼りの技術だったが、20世紀初頭には科学の理論としての性格が強まった。ゴールデンゲート・ブリッジは、全長約2700メートル、ケーブルに使用されているワイヤーの長さは12万9000キロメートルにも及び、1937年の完成時は世界一の長さを誇っていた。圧倒的な大きさの橋はどうやって造られたのだろう。強風による橋の崩落を防いだり、中央部が重すぎてたわんだりしないようにするために、何をしたのか。そこには計算に基づく工夫があった。

 橋の崩落危険度を計算する際に用いられる物理学は、微積分がベースになっている。中心となるのは鋼材のたわみだ。ゴールデンゲート・ブリッジは鋼鉄の塔が大部分の重さを支える構造になっているが、鋼材に生じるたわみの程度は計算で求められる。形状の変化の計算には微分が、さらに全体でどの程度たわむかは、積分が用いられる。なお、この計算では鋼材の向きをはじめ、さまざまな条件を考慮しなければならない。

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 の図に示したように、鋼材を横に寝かせて置くと、そのたわみは立てて渡した場合よりもかなり大きくなる。

構造物の安全性は計算で確認される

 前もって計算ができれば、せっかくかけた橋が崩落するような失態は防げる。橋に限らず、大きく複雑な建物を建てるときには数学が欠かせない。構造物の安全性は計算で確認されるため、それまで誰も見たことがないような建築物も可能になったのだ。

 微積分は世界を変えた。飛行機をはじめコンピューターやスマートフォンなど、現代の科学技術の多くは微積分を応用して実現された。世界をよりよく理解するために微積分は不可欠だ。もしなかったとしたら、人間はいまだに経験と勘だけに頼っていただろう。とっつきにくい印象があるかもしれないが、微積分の基本の考え方とその実用性は十分わかりやすいものだ。

 数学では、記号にまどわされて基礎となる概念を見失ってしまいがちだが、微積分の根底にあるのは「変化をかぎりなく細かく分けて分析する」ことだ。身のまわりにある機械の仕組みを理解したければ、まずこの考え方を押さえる必要がある。大事なのは、その手法が「どのように」機能するかではなく、「うまく」機能することである。

 身のまわりの世界がどうやって成立したのかを知っておくことは悪くない。そうすることで、社会に対するよりよい視点が得られるからだ。

 

2020年9月12日 (土)

【野望の階段】HOUSE of CARDs✍主演俳優「性的暴行」で訴えられる

 超大物俳優性的暴行訴えられる…提出書類に14歳で受けた暴行の様子綴る 

デイリー 2020年9月11日(金)23時30分配信

 俳優のケヴィン・スペイシーが、俳優アンソニー・ラップに性的暴行で訴えられている。ドラマ『スター・トレック ディスカバリー』などで知られるアンソニーは2017年、自身がまだ14歳であった1986年にケヴィンに性的いたずらをされたとしてケヴィンの過去の性的暴行行為を告発した最初の1人となっていたが、今回その件を裁判所に持ち込んだかたちだ。

 TMZによると、アンソニーはニューヨーク市でこの訴えを起こしており、提出書類には、1986年にブロードウェイ作『プレシャス・サンズ』へ出演中、ケヴィンからマンハッタンのイースト・サイドにある自宅のパーティーに招待され、当時未成年だった自身がケヴィンに性的暴行を受けた様子が綴られている。ケヴィンはアンソニーのお尻を掴み、ベッドに連れて行き、その後身体を重ねてきたそうで、怖くなったアンソニーはバスルームに逃げ込んだ後、ケヴィンに引き留められたものの、その場を後にしたと主張している。

 アンソニーは、この出来事により、心理的外傷、重度の感情的ストレス、屈辱、恐怖、怒り、うつ、不安で苦しんだとされている。

 さらに同書類には、その経験により俳優業から退かざる負えない状況になり、その経験からの回復へ向けての医療費の出費を心配していると綴られているほか、名前は伏せられているもの同じく14歳だった時にケヴィンから性行為を迫られた原告がいることにも触れている。

 3年前にアンソニーがケヴィンの性的暴行を告発した際、ケヴィンは発表した声明の中で、自らがゲイであることをカミングアウトしていた。

 「俳優としてアンソニー・ラップをとても尊敬していますし、称賛しています。私は彼のストーリーを聞いて恐怖におののいています。正直言って、そのことを思い出すことができません。30年以上前のことでしょう。しかし、もし彼が表現するような行為を私がしていたなら、それが深く不適切な酔っ払い行為だったであろうことを心から謝罪します。そして、彼が表現する感情を長年持ち続けてきたことを申し訳なく思います」

 「このストーリーが、私の人生におけるほかの幾つかのことに向きあうことへつながりました。私がプライバシーを固く守ってきたことでより広まった僕に関する数々の噂があることは知っています。私に最も近い人々は知っていますが、私はこれまで女性とも男性とも関係を持ったことがあります。私は人生を通して男性を愛し、彼らとのロマンティックな出会いを経験してきました。私はこれからゲイの男性として生きることを選びます。私は正直にオープンに、このことに対処してゆくつもりで、まずは私自身の行動を注視することから始めます」

 人を傷つけるのが大好きなの英国を震撼させた11歳の快楽殺人 

現代ビジネス 2020年9月11日(金)21時01分配信

 1968年5月、イギリス。とある空き家で1人の子供が遺体で発見された。遺体は現場近くに住んでいた4歳の男児、マーティン・ブラウン。

 特に争った形跡も外傷もなく、遺体の近くには空になった薬の瓶が転がっていたことから、警察はマーティンが誤って大量の薬を誤飲し、事故死したと断定。そのまま処理されることとなった。

 だが、その事件は紛れもなく殺人事件だったことが後に明らかになる。それも、まだ幼い1人の少女、「メアリー・ベル」による犯行だったのだ――。

荒んだ幼少期…賢くも粗暴な性格に

 メアリー・フローラ・ベルは、1957年5月26日、イギリス・ニューキャッスルで生まれる。彼女の母親は未婚の17歳。そのせいか、荒んだ幼少期を過ごしたという。

 母親はたびたびメアリーを親戚に預け、自分はろくに世話をすることもなかった。また、メアリーが生まれて間もなく結婚するが、その父親もほとんど働かず、家を空けることが多かったため、家は常に散らかっていたそうだ。

 育児放棄という悲惨な環境で育ったメアリーの“狂気”は、小学生に上がった頃にはすでに見え隠れしていた。

 非常に賢く学業の成績も良かったメアリーだが、その反面、異常なほどにプライドが高く、常習的に嘘をつく性格だったという。また、友達や下級生に大怪我をさせるなど、素行も極めて悪かったようだ。

 そしてメアリーが11歳の誕生日を迎える前日、1968年5月25日――。ついにその狂気は現実のものになり、彼女は初めての殺人に手を染めることとなる。

第一の殺人、警察を挑発する行動も

 第一の事件の被害者、マーティンは、メアリーによって絞殺された。しかし、冒頭で触れた通り、同事件は事故死と処理された。これはメアリーの首を絞める力が弱く、証拠となる絞殺跡が付かなかったからとされる。

 殺人の時点ですでに異常ではあるものの、もしこれが普通の心理を持つ犯人であれば、結果的に証拠が残らなかったことを良しとしただろう。だが、“快楽殺人者”メアリーは違った。

 犯行の翌26日、メアリーはあろうことか、殺害に及んだマーティンの保育所を荒らし、さらに自分を犯人と突き詰めることができなかった無能な警察に対し、挑発的なメモを残したという。

 そのメモには、「私が殺した。だからまた来る」、「マーティン・ブラウンを殺した。くそったれ。ゲスやろう」といった文面が書き殴られていた。だが、これも警察には悪質なイタズラとして処理されるだけだった。

 メアリーの狂気に満ちた行動は続く。さらに4日後、マーティンの自宅を訪れ、彼の母親に対して「マーティンがいなくなって寂しい?」「私、棺に入ったマーティンを見たいの」と嘲笑うなど、残忍かつまるで自分が犯人であると主張するような行動をとったのである。

 だが、これほどまで大胆な行動をとっても、メアリーが疑われなかったのは、前述の通り普段から彼女に異常なまでの虚言癖があり、また、その当時、11歳という年齢で殺人を犯した前例がなかったためだ。結局、事件当時、周囲に疑う人間は現れることはなかった。

殺人はそれほど悪いことじゃないわ

 犯行から2ヵ月以上経った7月31日。痺れを切らしたメアリーは、3歳の男児、ブライアン・ハウの絞殺に及ぶ。さらにその際、遺体の腹部にはわざわざメアリーの頭文字である「M」の字を刻んだ。

 2回目の犯行が前回と違ったのは、わずかながらメアリーによる絞殺の跡が残っていたことにある。ここで初めて警察は、当時11歳のメアリーと13歳のノーマ・ベル、2人の少女への事情聴取が行われた(2人は親族関係ではなく、友達同士)。

 この事情聴取の中で、犯人しか知り得ない情報をメアリーが話したことが決め手となり、また殺害時刻に2人が一緒にいたことから、共に殺人容疑で逮捕されることとなった。

 法廷では、事故死と認定されていた1回目の事件の殺人容疑も浮かび上がったものの、裁判になると、メアリー、ノーマの両者が責任をなすりつけ合い、お互いに無罪を主張する様相を呈した。この時、メアリーを見ていた精神科医は彼女を「11歳とは思えないほど、利口で危険」と評している。

 裁判の結果は、ノーマは保護観察処分で無罪に、一方のメアリーは2件の殺人事件について有罪になる。収容施設で精神治療を受けたのちに釈放、という形での懲役刑が科され、1980年、22歳の時にメアリーは釈放。その後、幸せな結婚生活を送ったという。

 11歳にして“快楽殺人者”となったメアリーは、以下のような発言を残している。

 「大きくなった看護婦になりたい。人に針が刺せるから」

 「殺人はそれほど悪いことじゃないわ。人は誰でもいつか死ぬんだもの」

 我々の想像を遥かに超えた狂気は、これからも語り継がれるであろう。

 本当は無罪かもしれない5人の凶悪殺人犯 

RollingStone 2020年4月20日(月)21時33分配信/Translated by Akiko Kato

 近年、実録犯罪ものが再びブームになっている。とくに注目を集めている冤罪ものでは、様々な司法制度の過ちに光が当てられる。

 闇に葬られた証言、矛盾する時間軸、視野の狭さ、主観的状況証拠や心理的プロファイル頼みの捜査や、昔からよくある手抜き捜査――こうした冤罪の特徴が、長年有罪確実と考えられてきた有名事件にも当てはまるとしたら? 米国で起きた5つの殺人事件を例に挙げてみる。

スコット・ピーターソン

 A&Eネットワークで放送された6話完結のドキュメンタリー『The Murder of Laci Peterson(原題)』は、長らく解決したと思われていた事件を違う視点からとらえた作品だ。ドキュメンタリーでは、今は死刑を待つ身のスコット・ピーターソンの貴重な音声が登場する。妊娠した妻が失踪して殺害されてから彼はめったに発言せず、証言台に立つことはなかった。検察側の勝利に終わった事件は、彼の家族や弁護団、法律の専門家やジャーナリストに話を聞きつつ、公判中の映像や、有罪と死刑の評決を支持する陪審員とのインタビューを交えて、徹底的に検証される。

 陪審に提示された証拠の中でもとくにひどかったのが、ピーターソンとアンバー・フレイ氏との束の間の情事だ。2人は妻のレイシーさんの失踪後も連絡を取り合っていた。フレイ氏は警察に協力してひそかに通話内容を録音したが、有罪につながる証拠は何ひとつ掴めなかったものの、ダメージは絶大だった。ピーターソンが結婚生活と父親になることに不満を抱えていたことを示す証拠はこれだけだったが、検察側は殺人の動機として位置づけた。

 検察側は、レイシーさんがどこで、どうやって殺害されたか、という仮説を立てられなかった。ピーターソン宅からも、彼が所有していた倉庫からも、サンフランシスコ湾に遺体を捨てるときに使ったとみられるボートからも、血痕や争った形跡は一切発見されなかった。ピーターソンは警察に対し、その日はバークレー・マリーナで釣りをしていたと供述した――3カ月後、まさにその場所でレイシーさんとお腹の胎児が(別々に)発見された。偶然であるはずがない、と検察官は主張した。だがピーターソンのアリバイは衆知の事実だった――ドキュメンタリーは他の誰かがレイシーさんを殺害したと仮定し、もしピーターソンに罪を着せて容疑を逃れようと思ったら、どこに遺体を捨てるべきか分かっていたはずだ、と論じている。

 次に登場するのが、20名以上の近隣住民の証言だ。隣人たちはその日の午前中、レイシーさんによく似た妊婦が犬を散歩している姿を見たと供述したが、検察はすでにレイシーさんが死亡したと主張した後だった。警察はろくに確認もせず、これらの証拠は信憑性に欠けるとして却下した。だがドキュメンタリーでは、こうした目撃証言を裏付けるとみられる新たな証拠として、いつもピーターソン家に郵便物を届けていた郵便局員の証言を紹介している。ピーターソン夫妻はマッケンジーという犬を飼っていて、郵便物を届けるたびに必ず吠えた。だが、クリスマスイブの日は静かだった、と局員は語った。つまり、その日家には誰もいなかったということだ。局員のデジタルスキャナーの記録によると、ちょうどレイシーさんの目撃情報と同じ時間帯だった。もしピーターソンが家を出た後、レイシーさんがまだ生きていて犬を散歩していたなら、彼が彼女を殺害することはできなかったはずだ。

 もしスコット・ピーターソンが無実なら、誰がレイシーさんを殺したのか? 複数の目撃者が、クリスマスイブの朝にピーターソン宅の道向かいで強盗があったと証言している。そのうちの1人は、強盗に関与した2人の男とレイシーさんが対峙しているのを見た、とまで言っている。ドキュメンタリーによれば、なかなか筋の通った説明だ。

アシッド最高、豚を殺せと繰り返し叫びながら侵入者は一家を襲った

ジェフリー・マクドナルド

 いまから50年ほど前、アメリカ合衆国陸軍のグリーンベレーの軍医だったジェフリー・マクドナルドは、妊娠中の妻コレットさんと2人の幼い娘をノースカロライナ州のフォートブラッグ近郊で殺害した容疑をかけられた。1970年の軍法会議では無罪とされたが、約10年後に刑事裁判で有罪判決を受けた。彼は現在、これまでの自説を裏付ける新たな証拠に基づいて、無実を証明するべく戦っている。

 マクドナルドはずっと変わらない。1970年2月に4人の侵入者――3人の男と1人の女――が、「アシッド最高、豚を殺せ」と繰り返し叫びながら一家を襲った、と彼は主張している。2人の娘はそれぞれの寝室で刺殺され、マクドナルドと妻は夫婦の寝室で発見された。ベッドのヘッドボードには血で「PIG」と書かれていた。コレットさんはアイスピックとナイフで40回近く刺されていた。マクドナルドが刺されたは肺の一カ所のみ。

 刺し傷を受けていたにも関わらず、陸軍犯罪捜査官はマクドナルドの説明を信じず、1970年5月に殺人罪で起訴した。6週間にわたって行われた軍法第32条に基づく審問で、70人の証言が行われた結果、審問官を務めた陸軍大佐はマクドナルドを無罪とし、民間当局に他の容疑者を追及するよう要請した――警察の情報屋をしていた麻薬常習者のヘレナ・ステークリー(マクドナルドが供述した女の侵入者と特徴が一致していた)と、彼女の元陸軍兵士の恋人は、ともに自分たちがやったと証言したと言われている。

 その後数年間、マクドナルドは普通の生活を送っていた。だが1974年、それまで協力的だった義理の父親が態度を一変し、彼がやったに違いないと刑事告訴したため、マクドナルドは殺人罪で訴追された。検察側は、マクドナルドがエスクァイア誌でマンソン・ファミリーによるシャロン・テート/ラビアンカ殺人事件の記事を読み、それらしき犯行現場をでっちあげてヒッピー集団に罪を着せようと考えたのだ、と主張した。マクドナルド本人も弁護側の証人として証言台に立ったが、反対尋問でこてんぱんに叩かれた。結局有罪判決が下され、3件の終身刑が言い渡された。

 以来、マクドナルドの事件は世間の関心と論争を集めている。1983年には、ジョー・マクギニス著の実録犯罪ベストセラー『Fatal Vision(原題)』に取り上げられた。この本はマクドナルドを計算高い社会病的者として描き、TV用ミニシリーズにもなった(続いて出版されたジャネット・マルコム著の『The Journalist and the Murderer(原題)』は、マクギニスのアプローチを徹底的に覆し、報道倫理を示す決定版となった)。マクドナルドの支援者の1人、映画監督のエロール・モリス――冤罪を扱った1988年の名作ドキュメンタリー『The Thin Blue Line(原題)』の監督――は、2012年の著書『A Wilderness of Error(原題)』でこの事件を再検証した。500ページに及ぶ超大作は、証拠の大半が紛失、放置、または汚染され、あるいは説得力に欠けていたことを詳らかにした。

 何十年も上訴は却下され、ごく最近では2014年にも却下された。だが2017年1月、マクドナルドは新たな証拠に基づいて連邦裁判所に上訴した。犯行現場から、家族のDNAとは一致しない3本の毛髪が見つかったのだ。さらに、裁判を担当した検察官がステークリーに証言台で偽証するよう強制した、という宣誓供述書も見つかった。身元不明のDNAはステークリー(すでに他界している)のものとも一致しなかったが、マクドナルドの弁護団は、確かに侵入者がいたことを示す証拠だと言っている。連邦上訴裁判所の判断がいつごろ出るのかはまだ分かっていない。

検察側はルーティエを、子供のいない「華やかな」生活を懐かしむ軽薄な女に仕立て上げた

ダーリー・ルーティエ

 子供たちを殺害した罪で有罪判決を受けたダーリー・ルーティエは現在上訴中(Photo by Donna McWilliam/AP)

 1996年6月6日未明、テキサス州ダラスでダーリー・ルーティエが緊急通報した。取り乱した声で、自宅に何者かが侵入して自分と2人の息子を刺した、と叫んでいた。数週間後、ルーティエは6歳のデヴォン君と5歳のデーモン君を殺害したとして起訴(最終的には有罪と)された。55人の女性死刑囚の1人である彼女は、今も無実を主張している。ルーティエの支援者によれば、警察当局が初めから彼女を犯人と決めつけ、捜査もずさんで、警察の仮説と矛盾する証拠を黙殺していたという。

 警察はすぐに彼女を疑った。ルーティエは残忍な襲撃のことをほとんど覚えていなかったからだ。本人の話では、彼女は子供たちと一緒にリビングで映画を見ながらいつの間にか眠ってしまったという。その間、夫は2階で生まれたばかりの三男と眠っていた。ルーティエは、デーモン君に揺り起こされたことと、男の背中が暗い部屋を出ていき、キッチンを通ってガレージへ消えていくのを見たのは覚えていた。辺りが血だらけなのを見て、彼女はすぐに911に通報した。

 ルーティエは首の大動脈付近を刺され、緊急手術が必要な状態だった。だが、検察側は自分で刺した傷だと主張した。病院で撮影された写真には、ルーティエの腕に防御傷とみられるあざが写っていた――陪審がこの写真を目にすることはなかった。

 それに加えて、血の付いたルーティエと子供たちの衣類は、汚染されることもお構いなしに、同じ証拠袋に入れられた。検察側の証人トム・ベヴェル氏は、ルーティエの寝巻についていた血しぶきは息子たちを繰り返し刺したとみて「ほぼ間違いない」と証言したが、弁護側はこれに反論する法医学の専門家を証人に召喚しなかった。以来、ベヴェル氏の鑑定は説得力に欠け、誤解を生じさせるものとして非難を浴びている。この20年間以上、ベヴェル氏の鑑定で少なくとも3つの冤罪が起きている。

 また支援者いわく、警察は現場写真を撮る前に家具や物を動かし、犯行現場をいじっていた。そして侵入者が押し入った形跡――切り裂かれていたガレージの網戸や、近くの路地に落ちていた血まみれの靴下――はルーティエが「でっちあげた」ものだと、早急に結論づけた。

 これほど凶悪な犯罪を犯す明白な動機が見つからなかったため、検察側はルーティエを、子供のいない「華やかな」生活を懐かしむ、軽薄な女――実際彼女は「髪を脱色し」、豊胸手術をしていた――として描いた。最も忌まわしい証拠は、子供たちの墓で撮影されたTVのニュース映像だ。そこには笑いながら、パーティ用のスプレーを手にはしゃぐルーティエの姿が映っていた。

「子供を2人亡くしたばかりだというのに、彼女は文字通り、子供たちの墓の上で踊っているんです」と、検察官は陪審に語った。

 実際のところ遺族と友人らは、生きていれば7歳になるはずだったデヴォン君の誕生日を祝っていたのだった。数時間前には厳かな法事が行われ、ルーティエは終始すすり泣いていた。映像にはその部分も収められていたが、陪審は「パーティ用スプレー」の部分しか見せられなかった。審理の間、陪審はこの映像を7回も見させられた。

 裁判の後、陪審員の1人はこう認めている。「もし、その日の出来事をすべて残らず目にしていたら、私は有罪に票を投じなかったでしょう」

 2002年には著名な法医人類学者の鑑定が行われ、ガラステーブルで見つかった血のついた指紋はルーティエ家のメンバーとも、捜査関係の誰とも一致しなかったと判断を下した。現在行われている上訴裁判では、追加で行われた最新DNA検査が審議されている。テキサス州は、有罪を認めれば仮釈放なしの終身刑に減軽すると提案したが、彼女は拒否した。

犯人は被害者から気絶寸前まで首を絞められたこともあったと証言

ジョディ・エイリアス

 ジョディ・エイリアスは恋人を殺害したとして有罪判決を受けたが、本人は正当防衛だったと主張している(Photo by Tom Tingle/AP)

 近年、アメリカでもっとも嫌われた殺人被疑者としてスコット・ピーターソンと肩を並べる者がいるとすれば、ジョディ・エイリアスだろう。エイリアスは2008年にアリゾナ州メサで、つかず離れずの交際をしていたトラヴィス・アレクサンダーさんの謀殺容疑で起訴された。彼女は2013年まで証言台に立つことはなかったが、それまでメディアは彼女が有罪だと信じて疑わなかった。陪審も同様で、エイリアスは2015年、仮釈放なしの終身刑を言い渡された。

 ピーターソンと違い、エイリアスは無実を主張しなかった。少なくとも、今はそうだ――彼女は裁判で、アレクサンダーさんを銃で撃ったのは正当防衛だったと証言した。だが、アレクサンダーさんが殺害されたとされる2008年6月4日の出来事についての彼女の話は、すでに2度変わっている。彼女は当初アリゾナにはいなかったと話していたが、犯行現場にいた証拠が出ると、現場にいたことは認めたが、殺したのは2人の強盗だと言った。それから2年後、今度は正当防衛だったと主張を変えた。

 2013年、エイリアスの証言は18日間にわたって行われた。この時彼女は2人の性生活を赤裸々に語った。熱心なモルモン教徒だったアレクサンダーさんは、アナルセックスを好んでいた。教会の教義にそれほど違反せずに済むからだ。またエイリアスは、アレクサンダーさんが精神的にも身体的にも暴力的になることがあったと主張し、気絶寸前まで首を絞められたこともあったと言った。そのため(エイリアスの主張によれば)アレクサンダーさんのカメラを落として暴力を振るわれたとき、彼女は命の危険を感じた。検察側は、彼女が撃った銃は祖父母から盗んだものだと主張したが、エイリアスは銃はアレクサンダーさんのもので、撃ったのも事故だったと言った。その後のことは、弁護側の専門家がいうところの外傷後健忘のせいで何も覚えていないが、銃を捨てたことは認めた。銃はいまだ発見されていない。

 それに銃は凶器ではなかった――弾はアレクサンダーさんの眉毛をかすめ、最終的に胸に命中したが、それが死因ではなかった。死に至らしめたのはナイフだった――アレクサンダーさんは胸と背中を27回も刺されていたが、最終的な死因は首からの出血死だった。顎の下を、端から端まで切り裂かれていた。エイリアスはアレクサンダーさんを刺したことも、喉を切り裂いたことも覚えていないと証言したが、バスルームの床にナイフが落ちた音は聞いたと証言した。検察側も主張を変え、先に銃で撃った(エイリアスの説明とも一致する)のではなく、最後にとどめの一撃として撃ったとし、エイリアスの残虐性を示す証拠だと言った。検察のこの仮説は、5年前に行われていた検視報告書と矛盾する。弾丸がアレクサンダーさんの脳を貫通し、それが死因だという検視官の証言もまた然りだ。

 検察の時間軸は、犯行現場の証拠と、洗濯機の中から発見されたアレクサンダーさんのカメラから復元した撮影記録時刻に基づいていた。エイリアスはナイフで刺す「数秒前」、シャワーを浴びているアレクサンダーさんの写真をエイリアスが撮影した、と検察は主張し、エイリアスがアレクサンダーさんの死体を引きずった時にカメラが床に落ちて、「偶然」写真が数枚撮影されたと言った。だが、「偶然」撮影された写真は暗くて画像も乱れており、アレクサンダーさんやエイリアスだとはっきり特定するものは写っていない。彼女の支援者は、手動で追加された撮影時刻の信憑性に疑問を呈している。

 検察側は、アレクサンダーさんが殺されたのは2008年6月4日だと主張した――だが腐敗状態から、検死解剖では死亡日時が特定できなかった。検視官もこれについては証言していない。エイリアスの支援者は、弁護側がアレクサンダーさんの死亡日を示す証拠が薄い点を追及せず、弁護を怠ったと考えている。よりによってその日は、その週で唯一エイリアスのアリバイがなかった日だった。さらに、検察が主張するようにアレクサンダーさんの遺体を引きずるほどの力はエイリアスにはなく、ルームメイトが1時間後に帰宅する前に洗濯機を2度も回すような時間はなかった、と支援者は言っている。

 それから5日以上、アレクサンダーさんのルームメイトは誰も「鼻をつくような」腐敗臭が家じゅうに充満しても気づかなかったことになる。ルームメイトの2人は刑事に対し、彼が死んだとされる日の後も被害者を見かけたと語った。都合のいいことに、2人は証人に召喚されなかった。

 エイリアスの支援者らは、メサ警察が捜査で手を抜いて証拠を黙殺し、弁護士も死刑判決を免れることに一心不乱で、有罪評決のために努力しなかった、と固く信じている。エイリアスは宣誓証言でアレクサンダーさんの死の責任を認めてしまっているため、せいぜい望めるとしても減刑どまりだろう。だが支援者の中には、そもそも刑務所行きになったことがおかしい、と信じる者もいる。エイリアスがアレクサンダーさんを撃ったのは正当防衛かもしれないが、証拠を徹底して再検証すれば、彼女が本当に殺したのかどうか当然疑問が起きるはずだ、と彼らは言う。エイリアスの行動がこれまで予測不能だったことを踏まえれば、彼女が三度証言を変えることも十分あり得る。

刑事からあの手この手で強要され、供述を変えるように迫られた

タイラ・パターソン

 タイラ・パターソンはすでに仮釈放されているが、汚名返上を誓っている。

 1994年9月のとある深夜、オハイオ州デイトンで19歳のタイラ・パターソンは運の悪い時に、運の悪い場所で、運の悪い相手と一緒にいた。数カ月後、パターソンは加重殺人および強盗で起訴され、終身刑を言い渡された。23年後に仮釈放されたものの、必ず汚名を雪ごうと決意を固めている。

 事件当夜、パターソンは友人のベッカ・スティダムと一緒に5人の知り合いと遊んでいたが、別のティーンエイジャーのグループと口論になった。相手のグループにはミシェルとホリーのライ姉妹がいた。ライ姉妹と仲間たちは「狩り」、つまり車に乗って強盗目的で鍵の開いたガレージを物色していたとみられる。2つのグループの間で口論が起こり、ミシェル・ライさんが頭部を撃たれ、射殺された。

 検察も最終的には、ライさんを撃ったのはパターソン被告だったことを突き止めたものの、パターソンはネックレスを盗ったと自供していたため、殺人に関与したとして加重殺人で起訴された。パターソンは、録音された警察での供述は事実ではなく、強要されたのだと主張した。彼女いわく刑事から脅された上、情報を提供したスティダムは釈放されたと仄めかされたため、話をでっちあげたという。

「後ろにいた子がネックスレスを付けていたのが目に入りました」とパターソンは警察に語った。「私がネックレスを取りました。銃で撃ったりはしていません。ただネックレスをとっただけです」

 パターソンはのちに、自分は誰からも何も奪っていなければ――地面に落ちていたネックレスを拾ったが、後でトイレに流した――射殺の現場にもいなかった、と言った。喧嘩の場を収めようとした後、パターソンとスティダムは帰路につき、途中で銃声を聞いた。パターソンは家に着いてから偽名で緊急通報した。陪審は緊急通話の音声はおろか、この事実すら知らされなかった。弁護側は、パターソンも友人のスティダムも証言台に立たせなかった。検察側はパターソンの窃盗の自白に焦点を絞ったが、3人の被告のうち誰がこれらの犯行に及んだかという点になると、生存者の証言は互いに食い違っていた。

 にもかかわらず、パターソンは有罪判決を受け、懲役43年から終身刑が言い渡された。いわゆる「裁判税」――傲慢にも無実を主張して無理やり公判に持ち込んだことに対する罰金――の支払いも命じられた。以来、スティダムとパターソンを含む3人の被告は、神に誓って自分たちは窃盗にも殺人にも関与していないと主張している。12人の陪審員のうち6人は、緊急通報のことを知っていたら無罪にしただろう、という宣誓供述書を提出した。今ではホリー・ライも、最初のうちはパターソンが関与していないと警察に供述していたが、刑事からあの手この手で強要され、供述を変えるように迫られたと言っている。

「今はもう、ミシェルの殺害のきっかけとなった窃盗にタイラが関与していたと思いません」。オハイオ州のジョン・ケーシック州知事に宛てた手紙で、ライはこう書いている。「タイラがずっと収監されているのは間違っていると思います」

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関連エントリ 2015/04/29 ⇒ 【国賓訪米】安倍首相「滞在1週間」✍“異例の歓待ぶり”??

 

2020年8月19日 (水)

【ベラルーシ】反政府デモ<欧州最後の独裁国家>日本人も身柄拘束

 ベラルーシ独裁わり」のまり疫病が齎した革命の機運 

Newsweek日本版 2020年8月18日(火)17時01分配信/グレン・カール(元CIA工作員)

19世紀の飢饉はヨーロッパ全土に革命の機運を広げたが、いま新型コロナ禍のなかでベラルーシの民衆はルカシェンコ退陣を求めて立ち上がった

 8月9日、自由で公正には程遠い選挙により、6度目の大統領当選を決めたベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領。彼は、革命を生む要因について深く考えたことがないのだろう。

 この独裁者の目には、政治は実に単純に見えているようだ。自らの権威にわずかでも抵抗する者は片っ端からたたきつぶす。それを徹底すれば万事うまくいくと思っているらしい。これは、20世紀の共産主義指導者たちをはじめ、独裁者の常套手段だ。

 だが、ルカシェンコにとっての古き良き時代はもう終わったのかもしれない。

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 前世紀末に東欧の共産主義国家の指導者たちが思い知らされたように、革命を突き動かす力を国家が完全に抑え込むことはできない。いま世界は激しいストレスと変化の中にある。世界中の国々で多くの人々がさまざまな問題に抗議するために街頭でデモを行い、政府は激しい重圧にさらされている。ベラルーシでルカシェンコ退陣を求めて過去30年間で最大規模のデモが行われたのも、こうした世界的な潮流の一環と見なせるだろう。盤石だったルカシェンコの世界に亀裂が走り始めたと言えそうだ。

ジャガイモ飢饉とコロナ危機

 1848年、ヨーロッパが革命の波にのみ込まれたことがあった。ヨーロッパの多くの国で怒れる民衆が立ち上がり、より国民の声を反映し、より抑圧の少ない政治を要求したのだ。

 都市化、工業化、教育、ナショナリズムといった要因がこの動きに拍車を掛けたことは、よく知られているとおりだ。しかし、同時代の人々は、民衆を蜂起へと突き動かした最大の要因に気付いていなかった。その前の数年間、ヨーロッパは大量の雨に見舞われていた。アイルランドでは、それが原因で「ジャガイモ飢饉」が起きて、人口の12%が餓死し、13%が国外への移住を余儀なくされた。他の国々でも、天候不良により農作物の不作と飢饉が深刻化した。

 これは、ヨーロッパ全土に革命が広がる引き金になった。最終的に、フランスを別にすれば民衆の蜂起は鎮圧された。それでも、雨が既存の体制への反発を増幅させ、その後の歴史の流れに大きな影響を与えたことは間違いない。

 新型コロナウイルスは、この現象の今日版になるかもしれない。ルカシェンコは、アメリカのトランプ大統領やブラジルのボルソナロ大統領などと同様、この感染症の脅威を軽んじている。ルカシェンコが推奨するコロナ対策は、「ウオツカを飲む」「サウナに行く」「トラクターを運転する」といったものだ。ベラルーシでは、新型コロナウイルスの感染率がヨーロッパで有数の高さに達しているのだが。

3日間で約6000人を拘束

 その上、いまベラルーシの国民は深刻な経済危機に苦しめられている。2020年のGDPの予測値は4%減だ。しかも、この30年間で欧米との交流が深まったことで、国民が抱く社会的・政治的な期待も昔より大きくなった。

 ルカシェンコは大統領選で「勝利」を収めて以降、ますます悪質な行動を取るようになっている。選挙後の3日間で約6000人が拘束され、姿を消したままの人も大勢いる。大統領選で対抗馬だった人物は、国外に脱出せざるを得なくなった。しかし、こうした抑圧的な措置は、崩壊直前の東欧の共産主義国家を連想させる。

 新型コロナウイルスが直接ルカシェンコを失脚させることはないかもしれないが、コロナ禍によるストレスは独裁体制の寿命を縮めるだろう。もしそうなれば、新型コロナウイルス危機がもたらした数少ない明るい材料と言えるかもしれない。

 ベラルーシ大統領私を殺すまで選挙はない 

CNN.co.jp 2020年8月18日(火)17時05分配信

 ベラルーシのルカシェンコ大統領は17日、首都ミンスクの工場を訪問して演説した際、「あたなたちが私を殺すまで」総選挙は行われないだろうと述べた。地元メディアがインターネットに投稿した動画で明らかになった。

 ルカシェンコ氏は工場訪問時、ブーイングを浴び、労働者のグループが声をそろえて辞任を求めた。今月行われた大統領選でルカシェンコ氏は勝利を宣言したものの、ルカシェンコ氏の伝統的な支持基盤が崩れつつあることがまた一つ示された形だ。

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 ルカシェンコ氏は人々の前で、「あなたたちは不名誉な選挙について語り、新たに選挙を実施するよう望んでいる」「私の返答はこうだ。我々は選挙を実施した。そして、あなたたちが私を殺すまで、新たな選挙は行われない」と述べた。

 ルカシェンコ氏は26年にわたって権力の座に就いているが、国内外から圧力を受けている。国内ではストライキが広がるほか、国際社会からも非難の声が出ている。

 独立した選挙監視団からは今月の大統領選について自由で公正なものではなかったとの批判が出ている。国際社会の多くは全国に広がる抗議デモとの連帯を表明しており、再選挙の呼び掛けに応えるようにというルカシェンコ氏に対する圧力が強まっている。

 野党候補者のスベトラーナ・チハノフスカヤ氏は17日、国の指導者として行動する考えを明らかにした。チハノフスカヤ氏は脱出先のリトアニアで撮影された動画の中で、ベラルーシを落ち着かせて正常なリズムを取り戻すため、責任を引き受け、国の指導者として行動する用意ができていると語った。

 国営企業にスト拡大 大統領改憲後の権限移譲も即時退任拒否 

毎日新聞 2020年8月18日(火)21時12分配信

 大統領選の不正疑惑をきっかけに、6選したルカシェンコ大統領の退陣を求める抗議活動が続く旧ソ連のベラルーシで、国営企業の労働者らの間でもストライキの動きが広がっている。生産の一部が止まる工場も出ており、経済面でも政権への退陣圧力が高まりそうだ。ルカシェンコ氏は17日、憲法改正後に大統領権限を移譲する可能性に言及したが、即時の辞任や再選挙は拒否している。抗議活動は今後も拡大するとみられる。

 18日にはベラルーシの駐スロバキア大使が抗議活動に連帯の意思を示して、辞任を表明した。

 地元メディアなどによると、ベラルーシでは13日から一部の企業でストの動きが始まり、17日には大統領選の対立候補だったチハノフスカヤ氏の陣営が、政権に経済的圧力を加えるため、全国規模のストを呼びかけた。

 国営の車両生産や金属加工の大工場などでストに同調する動きが広まり、カリウム肥料生産で世界シェアの約2割を占める化学工場では生産が一部停止。ストが長引けば、取引関係のある他国の経済にも影響を与えかねない状況だ。国営放送の従業員の間でもストが広まっており、一部の放送が再放送の番組に差し替えられる動きも出ている。

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 これに対し、ルカシェンコ氏は17日、視察に訪れた軍事車両の製造工場で「人は余っている。働きたくない人は別に働かなくていい」と解雇を示唆。一方で大統領選の公約としていた国民投票による憲法改正に言及し、「憲法の規定に沿って私の権限を渡そう」と譲歩の姿勢を見せた。改憲後の大統領選実施の可能性も認めたが、「(権力移譲は)圧力や街頭(での抗議)を通してではない」と抗議活動に屈しない考えも強調した。演説を聴いた工場の労働者からは「出て行け」と即時退陣を求めるシュプレヒコールが上がった。

 一方、政権移行を求めるチハノフスカヤ氏の陣営は17日、政権移行に向けた具体的な方法を協議する調整評議会の参加者30人以上を公表。メンバーにはノーベル文学賞作家のアレクシエービッチ氏や人権擁護団体の代表らが名を連ねた。メンバーの一人は最初の会合が18日にも開かれると明らかにした。

 大統領選の不正疑惑を批判する欧米諸国からは懸念の声が強まっている。トランプ米大統領は17日、記者団にベラルーシ情勢について「ひどい状況だ」と述べ、注視していく考えを表明した。欧州連合(EU)のミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)は19日にベラルーシ問題を協議する緊急のEU首脳会議を開催すると発表。ロイター通信によると、会議では抗議活動を続けるベラルーシ国民に連帯するメッセージを発するとともに、ルカシェンコ政権への支援を約束するロシアに対して介入しないように求める可能性があるという。

 一方、プーチン露大統領は18日、メルケル独首相やマクロン仏大統領と電話で協議。プーチン氏は「ベラルーシに対する外部からのいかなる介入も受け入れることはできない」と述べた。

プーチン露大統領内政干渉は許さないEUを牽制

読売新聞オンライン 2020年8月19日(水)11時29分配信

 ベラルーシ大統領選の開票結果に対する抗議行動の拡大を受け、ロシアのプーチン大統領は18日、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領ら欧州首脳と相次いで電話で会談した。露大統領府によると、プーチン氏は一連の会談で「内政干渉は許されない」と述べ、欧州諸国が親欧政権樹立を狙って介入しないようけん制した。

 プーチン氏は欧州連合(EU)のシャルル・ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)とも会談し、「事態の早期正常化」を求めることを確認した。ミシェル氏は会談後、「ベラルーシの危機を解決できるのは平和的で真に包括的な対話だけだ」とツイッターで述べた。ベラルーシではアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が9日の大統領選で6選を決めたとしている。

 ベラルーシ巡り、EU綱引き 独仏首脳ら、露に対話促進求める 

産経新聞 2020年8月19日(水)8時39分配信

 反体制派の抗議デモが続くベラルーシをめぐり、欧州連合(EU)のミシェル大統領と独仏首脳が18日、それぞれプーチン露大統領と電話で会談し、事態収拾に向けて対話を促すよう求めた。プーチン氏はEUの介入を牽制し、双方の綱引きが激しくなっている。

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 ミシェル氏は18日、ツイッターで、「平和で包括的な対話だけが、危機を解決できる」と主張。メルケル独首相は「ベラルーシ政府はデモ隊への暴力をやめ、収監した反体制派を釈放し、対話を進めるべき」だとの立場を伝えた。マクロン仏大統領も、ベラルーシに影響力を持つロシアが、対話を促進すべきだと求めた。

 ロシア大統領府によると、プーチン氏はメルケル氏に「外部からの内政干渉は危機拡大につながり、容認できない」と主張した。一方、マクロン氏との会談では、混乱の「早期解決」が望ましいとの立場を確認した。

 ベラルーシでルカシェンコ大統領が6選を決めた9日の大統領選について、EUは14日、外相会合で「不正があった」と批判。反体制派に対する暴力の責任者に制裁を科す方針を決めており、19日、テレビによるEU首脳会議で協議する。

トランプ大統領ベラルーシ情勢との協議示唆

産経新聞 2020年8月19日(水)8時21分配信

 トランプ米大統領は18日、ベラルーシ大統領選で6選が決まったルカシェンコ大統領に対する抗議デモが同国内で続いていることに関し、「適切な時機にロシアと協議する」と表明した。協議の日程などには言及しなかった。

 トランプ氏はベラルーシ情勢についてホワイトハウスで記者団に対し、「民主的状況になることを望む」と述べ、現状は「民主的とはいえない」との認識を明らかにした。

 ポンペオ国務長官は15日、訪問先のポーランド・ワルシャワで「ベラルーシの国民が主権と自由を獲得できるよう最大限の支援を図る」と語り、欧州連合(EU)と対応に関し協議を進めていることを明らかにした。

 トランプ政権は、ベラルーシ大統領選が「自由かつ公正に実施されなかった」との立場から、平和的な抗議デモを支持する立場を示している。

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 ベラルーシから出国した反政権派候補、大統領就任に意欲 

朝日新聞デジタル 2020年8月18日(火)12時48分配信

 大統領選の不正疑惑に対する抗議が続く旧ソ連のベラルーシで、ルカシェンコ大統領(65)の対立候補として出馬したスベトラナ・チハノフスカヤ氏(37)が17日、「国の指導者として責任を負う用意がある」と述べ、大統領就任に意欲を示した。法制度を整えた上で公正な選挙を実現するとした。国民向けのビデオメッセージで発表した。

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 今月9日に投開票された大統領選で中央選管は1994年から政権につくルカシェンコ氏が80%の得票で6選を果たしたと発表したが、反政権派は反発。市民らの集会、デモが連日各地で続く。チハノフスカヤ氏は投票翌日に隣国リトアニアに出国する一方、自らが当選したと主張している。陣営は政権に対し、平和な政権交代を実現するための協議を呼びかけている。

 一方、ルカシェンコ氏は17日、選挙結果に抗議して労働者の一部がストライキに入った首都ミンスクのトラクター工場を訪れ、聴衆から「やめろ」などと罵声を浴びながら演説。「殺されるまで再選挙はしない」などと主張する一方、憲法を改正して権限を移譲する考えがあるとも述べ、一定の譲歩をする姿勢も示した。

 大統領選の結果巡り退陣要求に晒されるルカシェンコ大統領 

BBC News JAPAN 2020年8月18日(火)15時58分配信

 大統領選の結果をめぐり退陣要求にさらされている東欧ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)は17日、首都ミンスクの工場を視察した。ルカシェンコ氏の再選をめぐり怒りが高まる中、労働者たちからは「出て行け」などと野次が飛んだ。

 ルカシェンコ大統領はこの日、労働者にむけた演説で、批判されている自分の6選を自己弁護した。

「選挙は済んだ。あなた方が私を殺すまで、ほかの選挙はない」

 一方で、国民投票を実施し、「憲法に従って私の権限を引き渡す」意思はあると述べた。しかし、「圧力や、街頭での抗議によって権限を引き渡しはしない」と強調した。

労働者からブーイング

 ルカシェンコ氏は工場で話す間、労働者からブーイングや野次を浴びせられた。

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 BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ記者は、ルカシェンコ氏が野次られる動画をリツイートした。

「ルカシェンコが、自分に対する国民の怒りがどれほど強いか信じていなかった(あるいは信じたくなかった)のだとしたら、今は確実に感じ取っているはずだ」

https://twitter.com/BBCSteveR/status/1295291253022752768

 9日の大統領選では、1994年から実権を握ってきたルカシェンコ大統領が6期目当選を決めた。中央選挙管理委員会によると、ルカシェンコ氏の得票率は80.1%、対立候補のスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)は10.12%だった。

 しかし、この選挙結果は不正だと批判する声が高まっている。

 チハノフスカヤ氏は、自分は実際には60~70%の票を得たと主張している。

暫定大統領に就くと示唆

 現在はリトアニアに脱出しているチハノフスカヤ氏は、暫定大統領を務める可能性を示唆している。

 同氏は17日にビデオメッセージを公開。平穏と正常を取り戻し、政治犯を解放し、新たな選挙に備えるために「国家の指導者」になる準備が出来ていると述べた。

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 複数の国営工場でストライキが起きており、多くの従業員が大統領に反対する行進に加わっている。この動きは国営テレビにも広がり、17日にはテレビ局スタッフがストライキを起こした。

 26年にわたり政権を握るルカシェンコ氏は、隣国ロシアと緊密な関係を維持してきた。ベラルーシはエネルギー供給においてロシアに大きく依存している。

ルカシェンコ氏に対する圧力

 選挙後、警察当局は抗議行動に暴力で対応している。また、拘束された人たちが拷問を受けたとの証言もある。こうした事態が、16日の大規模な抗議集会を巻き起こした。

 地元の独立系ニュースサイトTut.byによると、16日の抗議集会は「独立後のベラルーシ史上最大規模」だった。

 同日には親政府派の集会も開かれた。公式には約6万5000人が参加したとされているが、非公式には約1万人とされる。一方で、野党集会には約10万人から約22万人が集ったとの非公式データがある。

 この1週間で、警察との衝突で数百人が負傷し、2人が死亡した。また、約6700人が逮捕された。

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 17日には、ミンスクの管弦楽団が歌で抗議した。

https://twitter.com/BBCWillVernon/status/1295314918976163840

 ベラルーシのイーゴリ・リェシェニャ駐スロヴァキア大使は、デモ隊との連帯を表明した。

 リェシェニャ大使はBBCに対し、「私はベラルーシとベラルーシ国民を代表している。憲法によると、それが唯一の力の源だ」と述べた。

国際社会の反応

 欧州連合(EU)は19日に緊急ビデオ会議を開く予定だ。

 欧州各国の外相は先週、「暴力、弾圧、選挙結果の改ざん」の責任を負うベラルーシ当局者に対し、新たな制裁措置を準備することで合意した。

 イギリスは17日、「不正な」選挙結果は受け入れないとした。ドミニク・ラーブ英外相は「世界はベラルーシ当局による暴力行為を見てぞっとした」と述べた。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領も同日、ベラルーシでの「恐ろしい状況」の行方を見守っていると述べた。

 一方、ルカシェンコ氏はロシアのウラジミール・プーチン大統領に助けを求めた。

 ルカシェンコ氏によると、プーチン氏はベラルーシが外部からの軍事的脅威を受けた場合に、包括的な援助をすることで合意したという。

 両首脳は16日に2度目の協議を行った。その中で、ロシア政府は「ベラルーシの状況について、同国が外部から圧力を受けていることを考慮して」話し合ったとしている。

 

2020年8月16日 (日)

【重油流出】船倉に100㌧✍再び「座礁船真っ二つ」流出始まる

 モーリシャス座礁船から10㌔先でも重油を確認 

朝日新聞デジタル 2020年8月15日(土)10時24分配信

 インド洋の島国モーリシャスの沖合で長鋪(ながしき)汽船(岡山県)所有の大型貨物船が座礁し、燃料油が流出した問題で、日本から国際緊急援助隊として派遣されている外務省や海上保安庁の職員が14日、ビデオ会議システムを通じて会見を開いた。貨物船から北に10キロ先でも油が流れ着いているのを確認したという。

 団長を務める外務省の胡摩窪(ごまくぼ)淳志さんらは「マングローブ林や沿岸に付着した油の除去や清掃が課題になっている」と指摘。貨物船については「船内に残る油はほぼ回収された。今後は船の撤去作業に進んでいく見込みだ」と語った。

 隊員は6人で、モーリシャス政府からの支援要請を受けて、10日に日本を出国。現地での被害状況の調査や対策支援にあたっている。新型コロナウイルスの感染防止策として、隊員はマスクや防護服を着用。移動も制限されているという。

 モーリシャス沖の座礁事故直前、約20人の乗員が誕生パーティー 

時事通信 2020年8月14日(金)22時53分配信

 インド洋の島国モーリシャス沖で座礁した貨物船から大量の重油が流出した事故で、複数の船員が地元捜査当局に対し、事故前に船員の誕生日会を開いていたと供述したことが明らかになった。

 地元紙レクスプレス(電子版)が13日、報じた。

 レクスプレスによると、船員らは、無線通信Wi―Fi(ワイファイ)に接続するために島に近づいたとも供述している。報道によれば、貨物船にはフィリピンやインド、スリランカ人の計約20人の船員が乗船していた。 

 座礁船で乗組員が誕生会…Wi-Fi接続のため陸地接近 

読売新聞オンライン 2020年8月14日(金)19時03分配信

 インド洋の島国モーリシャス沖で海運大手の商船三井が運航する貨物船が座礁した事故で、モーリシャス紙レクスプレスは13日、船の乗組員が捜査当局の調査に「船が陸地に接近したのは、Wi―Fi(ワイファイ)の電波を得るためだった」と話したと報じた。

 観光が主要産業のモーリシャスでは、インターネットに接続できる無料ワイファイが全土で整備されている。記事によると、乗組員は、船内では座礁直前まで乗組員の誕生会が開かれていたとも話しているという。貨物船はパナマ船籍で、インド人やフィリピン人など20人が乗船していた。

 商船三井は14日、「報道は認識しているが、事実関係の確認がとれていない」とコメントした。事故では1000トン超の重油が流出した。

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 地元紙、座礁船Wi-Fi求めてモーリシャス島接近 

朝日新聞デジタル 2020年8月14日(金)16時58分配信

 アフリカ南東部のモーリシャス沖合で日本企業が所有・運航する大型貨物船が座礁し、燃料油が流出した問題で、地元紙レクスプレスは13日、貨物船の複数の船員が地元捜査当局の調べに、「WiFiに接続するために島に近づいた」「事故前に船員の誕生日会を開いていた」と供述していると報じた。

 事実であれば、事故を招いた貨物船側の判断や管理態勢などが厳しく問われることになりそうだ。

 事故当時、貨物船にはインド、スリランカ、フィリピンの船員20人が乗っていたが、全員救助された。貨物船をチャーターしていた商船三井などは9日の記者会見で、座礁した原因について「高波や強風で浅瀬に近づいた可能性がある」と推測していた。

 モーリシャス政府は、船主である長鋪(ながしき)汽船(岡山県)に賠償を求める方針を示している。同社の広報担当者は「当事者としての責任を痛感しており、賠償については誠意を持って対応する」と説明している。

 モーリシャス沖貨物船重油流出、なぜ深刻なのか 

BBC NEWS Japan 2020年8月14日(金)19時32分配信

 インド洋の島国モーリシャス沖で座礁した、日本の会社が所有する貨物船「わかしお」から流出した重油は、過去の事例と比べると量が比較的少ない――。複数の専門家がそう指摘している。それでも、サンゴ礁や島の南東部の海岸に及ぼした打撃は甚大で、影響は長期にわたるという。

 沖合で起きた過去の流出事故と異なり、今回は環境保護の対象となっている2つの海洋生態系と、国際的に貴重な湿地帯である自然保護区ブルー・ベイ・マリーン・パークの近くで起きた。

 つまり、流出の量よりも場所が、環境への深刻な影響という意味で、大きな懸念材料となっているのだ。

 鮮やかな青緑色の海が広がり、数多くのインド・ボリウッド映画の舞台となってきたモーリシャス・マエブール村沖の青いサンゴ礁地帯は、今や黒と茶色に染まっている。

 わかしおは7月下旬、ポワントデスニーで座礁。6日に重油が漏れ出した。衛星写真は、モーリシャス本島のポワントデスニーと別の島との間に、重油が広がっている状況を示している。

 サンゴ礁に漏れ出した重油は1000トンを超えるとみられている。多くの地元住民がボランティアとして参加し、重油の除去活動を続けている。

 座礁から2週間近くたった8月7日、モーリシャス政府は非常事態を宣言した。

生物多様性のホットスポット

 モーリシャスは特有の植物や動物が密集する、生物多様性のホットスポットだ。

「風と海水の流れは助けになっていない。重要な海洋生態系のあるエリアに、重油を運んでしまっている」と、環境保護団体グリーンピースの元戦略家で、流出現場近くの島にいるスニル・モクシャナンダ氏はBBCに話した。

 国連の生物多様性条約によると、モーリシャスの海は、魚800種、海洋哺乳類17種、カメ2種を含む1700種の生き物のすみかとなっている。

 サンゴ礁、海草、マングローブが、並外れて豊かな海をつくっている。

「これだけ豊かな生物多様性のある海は、もうほとんど地球に残っていない」と、英ブライトン大学で海洋生物学を教えるコリーナ・チョカン博士は言う。

「流出した油は海面でギラギラしているものだけではない。油の一部は水に溶けて、水面下にムースのような層をつくる。さらに海底には分厚い残留物がたまる。つまり、海洋生態系全体が影響を受ける」

 わかしおは約4000トンの燃料を積んでいたとみられている。うち1200トン近くがすでに流出したと、運航会社の商船三井は説明している。

 プラヴィン・ジャグナット首相は、悪天候の中で貨物船の燃料はタンクからすべて除去されたと話した。ただ、タンク以外に少量が残されているという。以前は、船体が真っ二つに割れ、さらに重油が漏れ出す恐れが指摘されていた。

 燃料はヘリコプターで海岸に運ばれ、わかしおを所有する日本の海運会社、長鋪汽船の別の船に移される。

 わかしおが、なぜこれほどサンゴ礁に近づいたのかは明らかではない。警察が現在、捜査を進めている。

 商船三井の小野晃彦副社長は記者会見で、流出と「多大なるご迷惑をおかけ」したことを「深く」わびた。

サンゴの変色

 深刻な影響が心配されているものの1つがサンゴ礁だ。多様な生き物が暮らすことから、サンゴ礁は海の熱帯雨林とも呼ばれる。

 米海洋大気局によると、海に住む魚の約25%が、健康なサンゴ礁に頼って生きている。

 サンゴ礁は海岸を嵐や浸食から守る。モーリシャスの主要産業である観光業にとって、サンゴ礁と海洋生態系は大きな柱だ。

「流出した油から毒性のある炭化水素が出て、サンゴ礁を変色させる。サンゴ礁はやがて死んでしまう」。国際的な流出問題のアドバイザーで、米アラスカ州に住む海洋生物学者のリチャード・スタイナー教授は、そう指摘する。

 スタイナー教授は昨年、ソロモン諸島沖のサンゴ礁で油の流出が起きた際、同国政府を支援した。

「流出した油は多くはなく、数百トン程度だった。それでも、サンゴ礁はものすごい被害を受けた」

過去の油流出の影響

 これまでの油の流出は、環境保護が重大事となっている場所では起きていなかったものの、海洋動物や植物に深刻な影響を及ぼした。

 2010年にメキシコ湾でおきた「ディープウォーター・ホライズン」事故では、約40万トンの原油が流出。プランクトンからイルカまで何千種もの生き物が死んだ。

 長期的な影響も出た。海洋生物の繁殖力が弱まり、成長が損なわれ、傷や病気が目立つようになるなどした。

「研究者は流出事故から何カ月間も、メキシコ湾北部の魚レッドスナッパーの皮膚に損傷があるのを確認した。2012年までには、損傷は少なくなり程度も軽くなった」と、米南フロリダ大学の海洋生物学者スティーヴン・ムラウスキ博士と、同大学のシェリー・ギルバート氏は、カンバーセション誌で報告した。

「ゴールデン・タイルフィッシュ、ハタ、ヘイクなどの経済的、環境的に重要な種が現在も、炭化水素にいっそうさらされていることを示す他の証拠もある」

 1978年には、フランス・ブルターニュ沖で大型原油輸送船が座礁。20万トン超の原油が海中に漏れ出した。

 フランスの海岸は約320キロにわたって原油に汚染された。軟体動物や甲殻類などの無脊椎動物が何百万匹も死に、鳥類も2万羽が死んだとみられる。カキの養殖場も汚染された。

 専門家らは、こうした油の流出事故で除去できる油は、最善の努力をしても一般的に10%未満だとしている。

 フランスは今回のモーリシャス沖の流出事故で、近隣のフランスの海外県レユニオン島から、汚染防止装置を軍用機で輸送した。日本はフランスの活動を支援するため、6人のチームを派遣した。モーリシャスの南東部には、同国の沿岸警備隊と警察が配備されている。

「モーリシャス政府は早急に環境影響評価をすべきだ」とスタイナー博士は言う。

「影響は何年も続くだろう」

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 モーリシャス原油流出事故日本危機感あるのか 

alterna 2020年8月14日(金)16時45分配信/森 摂(オルタナ編集長)

 商船三井が運航する大型貨物船「わかしお号」がインド洋・モーリシャス島沖で座礁し、燃料の重油1000トンが流出した。現場は、湿地や浅瀬の国際保全条約である「ラムサール条約」の指定地域でもあり、その影響が懸念される。長く環境問題に取り組んできた諸先輩方は、31年前にアラスカ沖で座礁したバルディーズ号事故を思い出すだろう。

 事故が起きたのは2020年7月26日。モーリシャス島沖で、ラムサール条約の指定地域に含まれているポワントデスニーで、ブルーベイ海洋公園に近い。カビダス・ラマノ・モーリシャス環境相は記者会見で「われわれは環境危機に直面している」と話した。(AFP電子版)

 フランスは8月10日までに国防省の指揮のもと海軍が出動し、重油処理設備を現地に送り込んだ。重油処理設備は、モーリシャスから西に150キロほどのところにある仏領レユニオン島から運んだという。

日本政府や国内メディアの動きは鈍い

 一方、日本政府の動きは鈍い。10日午前、流出した重油の除去や環境保護対策を行う日本政府の緊急援助隊を出発させたものの、その人員はわずか6人。海上保安庁の専門家や外務省職員らで、どれほど活躍できるのかは疑問符が付く。

 商船三井は8月7日にホームページを更新し、「燃料油の流出で現場海域・地域に甚大な影響を及ぼしています。当社は座礁事故発生後より社長をトップとする海難対策本部を立ち上げ、日本およびモーリシャスをはじめとする関係当局と連携して対応しています」と表明した。

 過去の大型海難事故としては1997年に日本海で沈没したロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」事故(重油約6200トン流出)や、2010年の「メキシコ湾原油流出事故」(180万トン流出)などがよく知られている。

 環境活動に長く取り組んでこられた方々は、1989年3月に米アラスカ沖で座礁した「エクソン・バルディーズ号」事故を思い出すだろう。この事故では約4000万キロリットルが流出し、海鳥が最大50万羽、ラッコが最大5000頭が死ぬなど、地域の生態系に甚大な被害を及ぼした。

世界の環境対策を変えた「バルディーズ号事件」

 実は、「バルディーズ号事件」はその後の世界や日本の環境の取り組みに大きな影響を与えた。この事故をきっかけに同年、米国の環境NGO「環境に責任を持つ経済主体の連合」(セリーズ)が、環境保全に関して企業が守るべき「10の倫理原則」を発表した。

 すなわち1)生物圏の保護 2)天然資源の持続可能な利用 3)廃棄物の削減と処分 4)エネルギーの保全 5)リスクの低減 6)安全な商品とサービス 7)環境の復元 8)情報提供 9)経営陣の参加 10)評価と年次監査ーーの10原則だ。

 この原則は当初「バルディーズ原則」と呼ばれ、後に「セリーズ(CERES)原則」と名称を改めた。セリーズには、環境活動の専門家や企業の担当者、環境保全を推進する投資家グループらが多く参加した。

 セリーズ原則を受け入れた企業への投資を奨励することで、環境保全型の企業を金融面で支えた。つまり、今日の「ESG投資」の草分け的な存在だ。このころは「社会的責任投資」と呼ばれ、その後、「サステナブル投資」や「ESG投資」と名前を変えてきた。

 セリーズ原則は、企業によるその後の環境への取り組み、とくにISOなどの環境マネジメントシステムや環境監査の仕組みづくりに大きな影響を与えた。日本では、1991年に民間有志がバルディーズ研究会を結成し、原則の理念を広めるための活動を行った。(参考記事「バルディーズ原則(CERES原則)とは」)

 この研究会(略称:バル研)は、国内の環境専門家の「第一世代」が数多く参加した。彼ら彼女らが、日本の環境報告書や、2000年代以降のCSRレポート、サステナビリティレポートの流れを作ったと言っても過言ではない。

 1997年には、セリーズを母体として、企業の持続可能性に関する報告書(CSRレポート/サステナビリティレポート)における国際的なガイドラインを策定することを目的としたNGO「グローバル・リポーティング・イニシアティブ」(GRI)が立ち上がった。

 興味深いのは、これらの流れが「業界横断型のネットワーク」で形成され、そこに企業の環境担当者や多くのNGO、大学関係者らが参加したことだ。いまでも企業のサステナビリティ/CSR報告書はGRIが定めた開示手法が基本になっている。

エクソン社の「3つの失敗」とは

 ところで三井商船の「わかしお」号からの流出原油は1000トンとされる。これを重油の比重(0.9)で計算すると、111万キロリットルだ。「ナホトカ」や「バルディーズ」よりは少ないが、ラムサール条約の指定地域という点が気になる。

 日本のメディアは、今回のモーリシャス「わかしお号」事故への関心があまり高くないように映る。商船三井も重い社会的責任を背負った割には、動きが鈍いように思える。

 ブログ「エクソン社の3つの失敗」によると、次の3つのポイントが重要になる。

(ここから引用)
「第一の失敗は、事故後すぐに責任のある経営層が現地に赴かなかったことです。 経営層が事故処理に送り込んだのは地位の低い役員であり、最高責任者であったRawl会長が現地を訪れたのは22日後でした。

第二に、事故後、多くのメディアが現地に乗り込んだにもかかわらず、エクソン社は 「会社の方針についての取材は本社のあるヒューストンとニューヨークのみで対応する」と決め、しかも情報を積極的に提供しようとしませんでした。

第三に、エクソン社の最高責任者がオイル漏れ事故が起きてからほぼ一週間というものコメントをしませんでした。 一方、会社の作成した一般向けの情報とは異なる情報が石油業界の別ルートから流されました。 オイル漏れ事故に関する全国紙への謝罪広告は事故から10日も経ってから行われ、しかもその中でエクソン社は事故の責任を認めませんでした」
(引用終わり)

 エクソンは「バルディーズ」事故で25億ドルもの懲罰的損害賠償を負わされた。商船三井も、事故の対応を誤れば、損害賠償だけでなく、投融資の引き上げや株主代表訴訟の可能性も否定できなくなる。

 ちなみに商船三井グループのホームページにはサステナビリティのコーナーがある。

 そこでは(重大海難事故・油濁による海洋汚染・労災死亡事故・重大貨物事故のゼロ)など「4ゼロ」がうたわれている。

 しかし、2013年に同社運航のコンテナ船「MOLコンフォート」が座礁し、船体が真っ二つになって漂流した事故のことは1行も書かれていない。セリーズ原則で言うと、今回の事故は、7)8)9)10)辺りの対応が気になるところだ。

 そもそも、海難事故による大量の原油流出は世界では数年に1度の頻度で起きている。商船三井の事故も含めて、原油流出による生態系や観光資源の棄損は由々しき問題である。

 左の「エクソンの失敗」にもあるように、社長ら責任ある経営陣が直接、現地に行って、謝罪や陣頭指揮を取らなければ、世界の批判の矛先は、商船三井だけでなく、わが国そのものに向けられる可能性すらある。

 重油流出の衝撃、モーリシャス生態系重大な危機 

ロイター 2020年8月14日(金)13時56分配信

 インド洋の島国・モーリシャスの周囲には、数世紀を生き抜いてきたサンゴ礁がある。それが今、座礁した日本の貨物船から流出した重油によって何日間も窒息状態にあり、一部は危機にひんしている。

 科学者らは、重油流出による影響の全体像について、まだ見通せないと語る。重油やその塊の除去に奮闘するモーリシャスの住民らは、海中に浮かぶ死んだウナギや魚を目にしている。海岸には、油まみれの海鳥が足を引きずりながらはい上がってくる。

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 衛星画像を見ると、事故現場となり、ターコイズブルーの海が広がるブルーベイ海洋公園から、重油1000トンが海岸に沿うように北へと流れ出している様子が分かる。

 観光に依存するモーリシャスの経済にとって、この事故は今後何十年にもわたって影響を及ぼしかねない、と科学者は言う。

 モーリシャスで事故調査に当たる海洋学者のVassen Kauppaymuthoo氏は、ロイターの電話取材に対し「重油流出が起こったのは、影響の大きさという点でモーリシャスにとって非常に重要な海域だ」と言う。「被害からの回復には何十年も要するとみられ、中には二度と元に戻らないものもあるかもしれない」と指摘する。

 危機にさらされている海洋生物は、浅瀬を覆う海藻、サンゴ礁を泳ぎ回るクマノミ、海岸を囲うように根を絡ませるマングローブ林、そしてモーリシャスの固有種で絶滅が危惧されるモモイロバトなどだ。

 事故現場近くの小島・エグレット島の自然保護区は、巨大なウミガメがゆっくりと歩く島で、科学調査基地もある。ブルーベイ海洋公園全体でサンゴは38種類、魚類は78種を数える。

 重油流出事故は「生態系に甚大なショックをもたらす」と語るのは、モーリシャス出身で英キール大学の講師を務める環境科学者のアダム・ムールナ氏。「油は、生命のネットワーク全体に連鎖的な影響をもたらすだろう」──。

封じ込めできず

 重油は7月25日に海洋公園で座礁した日本の貨物船「わかしお」から流出した。なぜ、これほど海岸に近い場所を航行していたのかは、未だ不明。座礁から約1週間後、破損した船体から重油が流出し始めた。

 ただ、当局者らによると、船内の油抜き取りを終えた後の流出は止まっている。

 貨物船を保有・管理する長鋪(ながしき)汽船(岡山県)は13日、賠償に応じると表明した。

 モーリシャス海洋保護協会のジャクリーヌ・ソージエ会長によると、影響を受けた海岸線は既に約15キロメートルに及ぶ。ソージエ氏はロイターに対し「われわれには重油除去の設備も専門知識もなく、被害を抑えるのは時間との勝負だ」と述べた。

 地元住民は無防備な姿で有毒に汚染された海に入り、髪の毛やサトウキビ処理工場から出たキビのさやなどを使い、できる限りの油を急いで吸い取ろうと努めている。

 環境毒物学者のクレイグ・ダウンズ氏は、人々と野生生物に「今後10年から20年、相互作用的な影響が出てくるだろう」と語った。

悪循環

 真っ先に被害が及ぶのはサンゴ礁と魚だろう。観光業と漁業が経済を支えるモーリシャスにとって、とりわけ厳しい事態だ。

 専門家によると、今生き残っているサンゴも、海洋熱波への抵抗力が衰えている可能性がある。海洋熱波は気候変動の結果、この海域を襲うようになっており、一部で既にサンゴ白化現象を引き起こしている。

 これ以上、そうした状態が続けば、サンゴ礁の将来は非常に暗くなると専門家は懸念する。

 マングローブ林への影響も懸念されている。マングローブの根は幼魚を育む場所を提供している。

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 英エクスター大学の海洋保護教授、カラム・ロバーツ氏は、重油がマングローブ周辺の堆積物の中にも沈殿し、カニや軟体動物や稚魚を窒息させる可能性があると指摘。「いったん堆積物の中に沈殿すれば、除去は非常に難しい。樹木は病気になって死ぬかもしれない」と言う。

 マングローブに巣を作ったり、近くの干潟から飛び立ったりする渡り鳥も悪影響を受けやすい。重油を摂取したりしてしまった鳥は病気に弱くなり、飛べなくなる恐れすらあると、専門家は言う。

 マングローブと同じく、大量の二酸化炭素を吸収する海藻は、海岸を波から守る上で不可欠の役割を果たしている。

 また、陸地では打ち上げられた油が固まり、永続的な変化をもたらす恐れがある。

 2010年のメキシコ湾岸原油流出事故のその後を研究した米ルイジアナ州大学の環境科学者、ラルフ・ポーティエ氏は「長期的には油はたまり、そこで散ったり劣化したりすることで、海岸がアスファルトのようになる可能性がある」と説明。 「悲劇そのものだ」と語った。

関連エントリ 2020/08/13 ⇒ 【重油流出】モーリシャス政府「商船三井に損害賠償請求」方針を明言

 

2020年8月14日 (金)

【歴史的合意】イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)<国交正常化>の見通し

 イスラエルUAE国交正常化 イラン協力関係重視 

時事通信 2020年8月14日(金)0時21分配信

 トランプ米大統領は13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化で合意したと発表した。

 トランプ氏の仲介で、イスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子の3者が同日電話会談し、合意に達した。トランプ氏はツイッターで「大きな進展があった!  歴史的な和平合意だ」と強調した。

 アラブ諸国はこれまで、パレスチナ国家樹立と引き換えに、イスラエルと国交正常化する案を提示していた。イスラエルとパレスチナの和平交渉が進展しない中での国交正常化の動きは、交渉停滞を固定化する可能性がある。湾岸諸国がパレスチナ問題よりも、対イランでのイスラエルとの協力を重視する姿勢が鮮明になった。

 3カ国の共同声明によると、今回の合意を受けてイスラエルは占領地ヨルダン川西岸の一部併合を凍結。イスラエルとUAEは数週間以内に、投資や直行便、大使館開設などに関する合意に署名する。調印式はホワイトハウスで行われる予定。11月の米大統領選での再選に向け、トランプ氏が外交実績として仲介を強調する狙いがありそうだ。

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大統領選控え、トランプ氏に大きな外交的勝利 イラン包囲網構築

産経新聞 2020年8月14日(金)9時22分配信

 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)がトランプ米政権の仲介で関係正常化に合意したことは、11月の米大統領選で再選を目指すトランプ大統領にとっては大きな外交的勝利となった。トランプ氏は、中東政策の2大目標である「イスラエル防衛」と「対イラン包囲網の構築」に向け、引き続き中東で積極外交を展開していく構えだ。

 トランプ氏は13日、関係正常化合意に関し記者団に「皆が不可能だと言っていた」と指摘し、1978年に当時のカーター大統領が仲介した、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相による中東和平をめぐるキャンプ・デービッド合意以来の成果を上げたと強調した。

 米国はUAEの国内3カ所に米軍基地を置くなど、両国は対テロ連携などを中心に緊密な安全保障関係を構築している。

 トランプ氏はUAEに加え、サウジアラビアやエジプトといった中東・ペルシャ湾岸地域のイスラム教スンニ派諸国およびユダヤ国家イスラエルとの「大同団結」を後押しし、イスラエルを弾道ミサイルで脅かす同教シーア派国家イランを封じ込める大構想を描いており、この日の合意は同構想を大きく前進させるものとなる。

 特に、ペルシャ湾を挟んでイランの南に位置するUAEが親イスラエルに転じることは、イランに対する新たな圧力要因となるのは確実だ。

 中東和平を外交分野での重要懸案に掲げるトランプ政権は1月、イスラエルとパレスチナの新中東和平案を発表したが、占領地ヨルダン川西岸に建設されたユダヤ人入植地のイスラエル主権を米政府として認めると表明するなど、内容がイスラエル寄りだとして和平協議は進展しなかった。

 しかし、この日の合意内容にはイスラエルがヨルダン川西岸地区の併合を停止することも含まれているほか、同国とUAEとの接近で、将来的には両国やサウジによる「反イラン連合」がイスラエルの立場に理解を示す形で中東和平を支援することも想定される。

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 トランプ氏はまた、今回の合意で「米国が中東にいる必要はなくなった」と述べ、米国の中東関与の在り方を見直す考えを示しており、中東やペルシャ湾に展開する米軍の撤収・削減論議が再び活発化する可能性もある。

パレスチナUAEは裏切り者」イスラエルは歓迎「新時代の到来」

共同通信 2020年8月14日(金)8時54分配信

 パレスチナ自治政府は13日、アラブ首長国連邦(UAE)によるイスラエルとの国交正常化合意は「パレスチナの人々に対する裏切りだ」と非難し、合意撤回を求めた。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は現地時間13日、声明を出し、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意について「パレスチナの人々に対する攻撃だ」と猛反発し、合意がパレスチナ和平の妨げになるという認識を示した。

 アッバス議長はアラブ連盟に緊急会合開催を求め、こうした立場を訴えていく方針。マルキ外相は、駐UAE大使の召還を発表した。 

 パレスチナ問題解決を正常化の前提としてきたアラブ諸国の一角が崩れ、イスラエルのネタニヤフ首相は「新しい時代」が来ると歓迎。調印式は米ホワイトハウスで数週間以内に開催される見込み。

 イスラエルとアラブ諸国の平和条約締結は1994年のヨルダンが最後。イスラエルはエジプトとヨルダン以外のアラブ諸国と国交がなく関係正常化を悲願としている。

 急速に高まる原油輸送の地政学リスク 

JBpress 2020年8月14日(金)6時01分配信/藤 和彦(経済産業研上席研究員)

 米WTI原油先物価格は、米国で新型コロナウイルス感染が広がる直前の3月上旬の水準にまで回復した(1バレル=40ドル台前半)。

市場は需要超過だが在庫は記録的規模に

 まず供給サイドの動きを見てみると、OPEC加盟国の7月の原油生産量は、前月比97万バレル増の日量2332万バレルだった。サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)は、原油価格を上昇させるために、6月の原油生産量をOPECプラス(OPEC加盟国とロシアなどの産油国)で決定された減産分に加え、日量118万バレルの追加減産を行っていたが、7月にそれを打ち切ったのが主な要因である。

 8月からOPECプラスは、協調減産の幅を日量960万バレルから日量770万バレルに縮小した(期限は今年12月末まで)。これまでの減産の遵守率が低かったイラク等が今後「埋め合わせ減産」を行うことから、実質的な減産幅は810~830万バレルとなる見通しである。

 世界最大の原油生産国となった米国の生産量は、コロナ禍前には日量1310万バレルを誇っていたが、足元では日量1070万バレルにまで減少している。大量の債務を抱えたシェール企業にとって、現在の原油価格では収益が上がらないからである。

 次に需要サイドだが、国際協力基金(IMF)は8月4日、「今年の世界の原油需要は前年に比べて8%減少する」との見通しを示した。

 世界最大の原油輸入国となった中国の6月の輸入量は、前月比154万バレル増の日量1294万バレルと過去最高を更新した。「茶壺」と呼ばれる独立系の製油所などが4月の原油価格急落時に大量の原油を購入したのがその理由である。

 7月の原油輸入量も日量1208万バレルと高水準だったが、原油貯蔵スペースに限界があり今後は輸入量は減少するとの見方がある(7月21日付OILPRICE)。中国の上期の原油供給の輸入依存度は73.4%と過去最高を更新した。

 世界の原油市場の状況は、OPECプラスの減産などにより、6月から需要超過の状態となったとされているが、記録的な規模に積み上がった在庫が上値を抑えている。

深刻な財政赤字に苦しむ湾岸産油国

 今年(2020年)8月2日は、湾岸危機(イラクがクウェートに侵攻した事件)が勃発して30年に当たる記念日だった。30年前の中東地域では、米国が自らの軍事力や影響力を誇っていたが、今や見る影もなく、秩序の担い手として役割を放棄しつつある。

 米国でシェール革命が起きたものの、湾岸産油国は依然として世界の原油供給の主要な担い手である。だが、昨今のコロナ禍による原油需要の急落で深刻な財政赤字に苦しんでいる。

 世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの第2四半期の財政赤字は291億ドルに達した。歳入の過半を占める原油収入が前年に比べて45%減少したからだ。深刻な財政状況に対処するため、7月から付加価値税を5%から15%に引き上げたが、さらなる増税措置が検討されている。

 サウジアラビアなど湾岸産油国は「レンティア国家」と呼ばれている。石油など天然資源から得られる収入の一部を国民に享受させる代わりに、選挙権など政治的権利を認めないという国のあり方である。

 2011年に「アラブの春」が勃発した際、サウジアラビア政府は公務員や軍人の給料を2倍にするなどの措置を講ずることで国内の治安を維持してきた。だが、深刻な財政難のせいで「国民との約束」を果たすことができなくなりつつある。

 その矢先の7月23日、「高齢のサルマン国王が胆のう炎で入院した」との報道が世界を駆け巡った。株価が暴落するなど一部に動揺が見られたが、30日にサルマン国王は無事退院した。息子のムハンマド皇太子への譲位は時間の問題と言われているが、皇太子が進める「脱石油改革」は遅々として進まず、強引の政治手法が災いして王族との対立が深刻化している。

 湾岸危機の主犯だったイラクの国内状況は現在も混沌としたままである。最近の原油安でサウジアラビア以上に痛手を被っている。公務員給与の遅配が発生し、バグダッドなどではコロナ禍にもかかわらず反政府運動が再び激化しつつある。消滅したとされるイスラム国の残党たちのテロも頻発している。

 アラブ首長国連邦(UAE)では8月1日、アラブ諸国として初めて原子力発電の商業運転が開始されたが、「イエメンのシーア派反政府武装組織フーシの攻撃目標になる」との懸念が生じている(8月1日付アルジャジーラ)。

 サウジアラビアは中国の協力を得てウラン鉱石からウラン精鉱(イエローケーキ)を抽出する施設を建設したことが明らかになったが、米情報機関は「核兵器開発につながる恐れがある」として警戒を強めている(8月5日付ニューヨーク・タイムズ)。

ホルムズ海峡、マラッカ海峡に封鎖の懸念

 米国との対立が激化するイランは7月28日、ペルシャ湾へ通じる要路であるホルムズ海峡で、米海軍空母の模型を含む複数の偽装の標的に打撃を加える軍事演習を実施した。

 ホルムズ海峡と言えば、その封鎖は日本の原油輸送にとって長年の「悪夢」だったが、原油供給を巡る地政学リスクはホルムズ海峡にとどまらなくなっている。

 7月上旬、中国はイランとの間で4000億ドルの資金援助の見返りに、ペルシャ湾上のキーシュ島を25年間借り受けることで合意した。海上でも「一帯一路」を進める中国が、ペルシャ湾内に軍事拠点が確保できれば、インド洋からペルシャ湾にかけての中国海軍の展開能力が飛躍的に高まることになる。

 中国が、核開発の分野でサウジアラビアを支援し、米国の制裁に苦しむイランに救いの手を差し伸べている状況について、米国で「中国はまもなくホルムズ海峡と紅海を封鎖する能力を獲得するのではないか」との懸念が生じている(8月5日付ZeroHedge)。

 原油供給の対外依存度が高まる中国は、中東地域での影響力を高めるばかりだが、この動きに気をもむのは米国ばかりではない。「中国との軍事的緊張が高まれば、マラッカ海峡の封鎖を検討すべきである」──このように主張するのはインド海軍の専門家である(7月9日付OILPRICE)。

 インドネシアとマレーシア間を通るマラッカ海峡は、アジア地域への物質輸送の大動脈である。日量1600万バレル(日本の1日当りの原油需要の4倍)の原油が、日本、中国、台湾、韓国などに輸送されているが、インド海軍がマラッカ海峡の封鎖を検討している背景には中国との対立激化がある。

 6月15日、標高約4200メートルのヒマラヤ山脈の国境沿いのラダック地方ガルワン渓谷で中印両軍による衝突が生じ、45年ぶりに死者が発生したが、インドと中国の対立は海洋にまで及んでいる。「インド洋の支配権を中国に握られる」と危機感を募らせたインド海軍が、インド洋のアンダマン、ニコバル両諸島を起点としたマラッカ海峡封鎖を立案し始めたというわけである。

南シナ海で急速に強まった米中間の緊張

 南シナ海も「平和な海」でなくなりつつある。

 米国はこれまで経済的利益のために中国の「蛮行」に目をつぶってきたが、コロナ禍を契機に「堪忍袋の緒」が切れてしまった感が強い。ポンペイオ国務長官は7月13日、「南シナ海の大半の地域にまたがる中国の海洋権益に関する主張は完全に違法だ」とする異例の声明を出した。

 さらに米国政府は7月24日、米国の知的財産権と米国民の個人情報を守るため、テキサス州ヒューストンの中国総領事館を閉鎖したが、「中国が領有権を主張する南シナ海の沖合でベトナムと油田開発を進めているエクソン・モービルへの妨害工作の中心人物が、ヒューストン中国総領事館で勤務していたことが関係していた」との見方が浮上している(7月24日付米FOXニュース)。

 南シナ海を巡る米中間のつばぜり合いは既に生じていた可能性がある。

 中国では「米国が南シナ海で中国が領有権を主張する暗礁などを奇襲攻撃して爆破する可能性がある」とする懸念も出ており、急速に強まった米中間の緊張が、武力紛争にまでエスカレートする可能性が高まっているのである。

 このように、石油危機の震源地は、ホルムズ海峡だけではなく、インド洋からマラッカ海峡、さらには南シナ海にまで広がってしまったのである。

 日本のエネルギー安全保障は、「世界の警察官」である米軍がホルムズ海峡の安全な航行を保障するとの前提で築かれてきたが、ゼロベースから再検討する時期に来ているのではないだろうか。

米株反落景気対策協議の難航懸念―国債利回上昇

Bloomberg 2020年8月14日(金)6時09分配信

 13日の米株式相場は反落。S&P500種株価指数は終値ベースの最高値を再び上回る場面もあったが、午後に失速して下げた。米景気対策協議の行き詰まりと、景気回復の兆しの両方が意識された。米国債利回りは5営業日連続で上昇。原油は値下がりした。

 S&P500種では、エネルギーや不動産、資本財の下げが特に目立った。一方、アップルの堅調が寄与し、ナスダック総合指数はプラスを維持。ダウ工業株30種平均では、シスコシステムズの急落が重しとなった。朝方発表された先週の米新規失業保険申請件数は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が3月に始まって以降初めて100万件を下回った。

 米国債利回りは上昇。財務省は、過去最大規模の30年債入札を実施した。

 ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値では、S&P500種は前日比0.2%安の3373.43。ダウ工業株30種平均は80.12ドル(0.3%)下げて27896.72ドル。ナスダック総合指数は0.3%上昇。米国債市場では、10年債利回りが3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、0.71%。

 外国為替市場では、ドルが主要通貨に対して軟調。ただ、米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が、中国は破壊的な勢力であり、「注意深く監視していく」必要があると述べた後、下げを縮めた。ユーロとポンドは、対ドルで堅調を維持。米通商当局が、欧州製品に対して検討していた大幅な関税引き上げを見送ったことが好感された。

 主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.2%低下。失業保険申請件数の発表後には0.4%低下し、この日の安値を付けた。

 ドルは対円で変わらずの106円91銭。ユーロは対ドルで0.2%高い1ユーロ=1.1812ドル。

 ニューヨーク原油先物相場は反落。国際エネルギー機関(IEA)が世界の石油需要見通しを下方修正したことが材料視され、約1週間ぶりの大幅下落となった。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は43セント(1%)安の1バレル=42.24ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は47セント安の44.96ドル。

 金スポット相場は続伸。ドルの続落が背景となった。UBSグループのアナリスト、ジョバンニ・シュトーノボ氏は「われわれは金相場に前向きな見方を維持している」とし、年内に再び2000ドルを試す可能性があると指摘した。ニューヨーク金先物相場も続伸。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は1.1%高の1オンス=1970.40ドルで終了。

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 史上最高値現在も「買え」という理由 

PRESIDENT Online 2020年8月13日(木)9時16分配信/江守 哲(ファンドマネージャー)

金価格は上がらざるを得ない

 金価格の高騰が止まらない。8月5日の海外市場では、1トロイオンス=2044.34ドルの高値を付け、国内小売価格も1グラム=7608円の史上最高値を付けている。その後、値を下げる日もあるものの、むしろ、これから買って長期で保有したい人にとってありがたいものとなっている。

 7月27日に出版した拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)では、「金1トロイオンス=2000ドルの非常識な未来を読み解く」としたが、タイミングを合わせるように金価格が急騰し始め、あたかも金の先行きを予言していたかのような結果になっている。

 筆者は以前から、中長期的なトレンドにおいて金価格は上がらざるを得ず、投資対象に必ず組み入れるよう投資家に勧めてきた。残念ながら実行する投資家の絶対数は限られていたわけだが、その考え方が正しかったことが今まさに証明されている。

 拙著で詳しく解説しているが、一般の個人は資産の3分の1程度を金で保有するのがベストだというのが私の考えである。筆者が勧めるように投資を行っていた投資家の資産は、今はしっかりと増えているはずである。

金を買うのはもう遅いのか? 

 金価格が史上最高値を更新し続けていることもあり、筆者のところには最近になってマスコミから取材申し込みが殺到している。

 かねて金投資の重要性をマスコミやセミナー、私が発行するメールマガジンで訴えてきたが、今年に入るまで反応はさほどでもなかった。ところが、価格が高くなるとこのように問い合わせが増えるものである。

 その一方で、別の問い合わせも増えている。それは、「今の価格水準で買うべきか」というものである。すでに史上最高値を更新していることから、多くの投資家は「買いそびれた」「今から買うには高すぎる」などと感じているようである。

 また、現在のような市場動向になると、「価格高騰に乗り遅れたくない」との一心で飛びついて買いたくなるものである。このように焦って行った判断は、往々にして失敗に終わるケースが少なくない。

 そのため、今回の金価格の上昇も、「投資家は買うのは避けるべき」という結論になりそうだが、本当にそうなのだろうか? 

高かろうが安かろうが買い続けるべき

 はっきりいえば「出遅れた一般人が今から金価格高騰のメリットを享受する方法」があるのか否かということだ。

 結論から述べると「価格が高かろうが、安かろうが、買い続ける」べきである。金を保有する意味・意義を考えれば、その理由がわかるだろう。

 金を保有すべき理由には、主に次の3つが考えられる。

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① リスクヘッジ
② 低金利時代の長期化
③ インフレヘッジ
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 ❶ リスクヘッジ

 多くの一般人は、株式投資を資産形成の中心に据えているだろう。これ自体は正しい。しかし、理解していないことが2つある。

 1つは、株式と金は逆相関にあるという点だ。株価が下げたときに、金は上げやすい傾向がある。これは統計で明確に証明されている。したがって、株式投資を行う際には、株価の下落リスクを緩和させるため、同額の金を保有するというのが本来「正しい姿」であると考える。

 もう1つは、金投資のパフォーマンスは、過去20年で見ると株式投資よりも高いことだ。これもほとんど知られていない「事実」である。この点から、金投資を資産形成に含めないのは、むしろ大きな問題であるといえる。

 ❷ 低金利時代の長期化

 金には金利がつかないため、金利が高いときには現金に比べて保有コストが高くなる。しかし、今は世界的な低金利時代である。そして日米欧の中央銀行は、現在の低金利政策をこの先数年間は維持すると言明している。

 金利を引き上げたり、あるいは現在行っている国債や社債などの資産買い入れ政策をやめたりすれば、金利が上昇し、経済に悪影響が出ることになる。現在のコロナ禍では、そのような政策の失敗は許されない。したがって、当面は低金利状態が続くことになる。これは、金を保有するうえで大きなメリットになる。

 ❸ インフレヘッジ

 現時点でインフレリスクが顕在化しているわけではない。しかし、欧米などでは、「将来のインフレに備えるべき」との論調が少なからず聞かれる。

 インフレになれば、現金の価値は自然と目減りする。現金を保有するよりも、何か物を買ったほうがよいことになる。その場合には、今も昔も第一に選好されるのが「金」である。

 日本ですぐにインフレになるとは考えにくいところだが、「将来に備える」という観点を忘れてはならない。そもそも金投資は長期で行うものである。今日明日に収益を上げようと考えないことが重要である。

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価格に惑わされず長期分散投資すべし

 これらの点を考えると、「金価格が下げるのを待って買いたい」とか、「将来いくらになるだろう」などといった予測は、ほとんど意味をなさなくなる。「押し目」を待って買いたいと考える投資家は多いだろうが、押し目が来るかどうかは誰にもわからない。

 金投資の目的を正しく理解していれば、「資金と時間を分散し、ゆっくりと買い進めていくのがベスト」であることがわかるだろう。

 これは、株式投資にもいえることである。なんでもそうだが、いちどきにすべてをつぎ込むのは正しい方法ではない。

 投資の達人でもない限り、一般人であれば、やはり資金分散・時間分散が正しい投資方法であろう。そうすれば、結果として購入価格を平均値に寄せることができ、資産価格の上昇が資産増加につながるだろう。

継続して投資をすればよいことがある

 金価格の歴史を振り返れば、1990年代後半に円建て金価格が1グラム=1000円を割り込んでいたとき、積み立て投資を継続していれば、今ごろ金資産は相応に増えているはずだ。また、リーマン・ショック時や今回のコロナショックなどの危機で金価格が下げた際に積み立て投資を継続していれば、やはり資産は増えていることになる。

 継続して投資をしていれば、将来によいことがある典型的な例である。

 現在の金市場を取り巻く環境を考慮すれば、金価格がバブルであると断じることはできない。むしろ、今後さらに上昇してもおかしくない材料が多いのが実態である。その理由は、拙著を読んでいただくのが近道である。

長期的には金価格1万ドルになっても驚きはない

 将来の金価格を予測しても仕方がないのだが、数年後、数十年後の金価格を想定すれば、それこそ5000ドルや1万ドルといった想像もできない価格水準になっても私は驚かない。

 たとえば、原油相場は1990年代まで長らく10ドル台で取引されていたが、2000年代に入ると急伸し始め、最終的には150ドル近くまで上昇している。新興国が台頭し、世界の石油需要が拡大したことで、一時的ではあるにしろ10年間で15倍に跳ね上がったのである。

 また、ナスダック指数も今や1万ポイントを上回っている。2000年のハイテクバブル時には、5132ポイントに達し、まさにバブル化したが、その後はバブル崩壊で暴落し、1108ポイントまで下げた。当時は、「二度と5000ポイントを超えることはない」といわれていたが、いまや20年間で安値から10倍の水準に達している。

 一方、金価格もつい15年前までは、500ドル以下の水準での取引が常態化していた。それが今になってようやく4倍になったにすぎない。今後も上昇が続き、5000ドルや、2015年の安値水準から10倍に相当する1万ドルになっても驚いてはいけないだろう。

一般人こそ今すぐ金投資を開始し、ゆっくり増やすべき理由

 繰り返すが、金は値上がり益を積極的に狙う投資対象ではない。あくまで株式投資のリスクヘッジである。とはいえ、現在の市場環境や各国政府・中央銀行の政策が継続されるのであれば、値上がり益も期待できる状況にあることも事実であろう。

 今はまさに金にとって最高の投資環境が整っている。だからこそ、高値に慌てて買いつくのではなく、長期的視点で、資金を分けて時間を分散しながら買い続けるのがよいだろう。

 私としては「株式・金・現金の3分割法」を唱えているわけであるが、「資産の3割も金で持つのは怖い」と感じる方も多いかもしれない。しかし、最終的にはこれくらいの配分にしたほうが、投資効果を発揮しやすいのである。

 いきなり資産の3割を金で保有するのは難しいと感じるのであれば、最初は5%くらいから始めるとよいだろう。そして、10%、15%、20%といった具合に徐々にその割合を増やしていくとよい。そうすれば、徐々に金投資の効果を体感し、金保有のメリットが理解できるようになるはずだ。

 世界や日本の富裕層、資産家は、早くから金投資を始めている。彼らには「資産を減らさない」「インフレに備える」などの明確な理由がある。しかし私は、一般人こそ、今すぐにでも金投資を始めるべきと考えている。

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出遅れた一般人が今から金投資を始めるには? 

 一般人にとって、金投資ほどシンプルで簡単な投資対象はないだろう。何も考えずに、一定額を一定のペースで買い続けるだけでいい。

 投資に回せる資金の3分の1を買い続けるだけ。そして、その方法も極めて簡単である。

 ❶ 上場投資信託(ETF)を買う

 実は、株式市場でも金を買うことができる。株式投資をすでに行っている投資家であれば、証券口座を持っているだろう。金は株式と同じように買うことができることを、意外に知らない投資家が多い。金価格に連動する上場投資信託(ETF)を買えば、金の地金を買うのと同じ効果がある。

 ❷ 現物を買う、純金積み立てを利用する

 金現物が良いというのであれば、地金商で実際に金の地金を買えばよいだろう。資金に応じてさまざまな種類がある。ただし、時間分散が可能なほどの小さいロットでは買えない可能性がある。資金的な問題があれば、純金積み立てなどの方法に頼るやり方もあるだろう。

 ❸ 先物・CFDを利用する

 上記以外にも、先物市場やCFDを利用する方法もある。証拠金制度を利用して、少ない資金で多くの資金の投資が可能であり、資金を効率よく使用できるというメリットがある。

 このように、金投資にはさまざまな方法があり、他の金融商品や銘柄などを取引するのとまったく同じようにできる。さらに、時間分散しながら投資するだけであり、市場分析や難しい投資判断を行う必要すらない。

 ここまで理解できれば、あとは実際に金投資を行うだけである。

 5年後、10年後、20年後を見据え、今すぐにでも金投資の準備を始め、実際にスタートするとよい。そうすれば、その分だけ早く、金投資の重要性への理解が進み、さらにその成果も享受できるはずである。

 

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